表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
柴田とサッコ  作者: 名雲屋良内
1/27

食堂


-日本-


①食堂


 初冬、二人の男が遊歩道を歩いていた。

 明け方まで吹いていた風が止み、小春日和となった公園の四阿ではリタイアした男達が他愛ない話をし、散歩、ジョギングする者も多かった。

 公園から私鉄の駅に行く道と商店街に行く道が、並行して延びている。

 駅は高架の新駅舎に建て替えられ周辺の再開発が進んでいたが、商店街は昔のままに狭い道を挟んで店が並んでいた。

 二人は商店街に続く緩い坂道を上って行き、古ぼけた食堂に入ると日替わり定食とビールを頼んだ。

 一人が、漫画や雑誌の置かれた壁際の棚で、雑誌の山を積み直している。

 男は何か、雑誌を探していた。すぐに、お目当ての雑誌を見つけるとテーブルに戻った。

「これ」と言って、染みだらけの雑誌をテーブルに座る男に渡した。渡したのは暴力団やエロ記事専門の雑誌だった。

「シバタ、これかい」

 ブラウンの髪と瞳の男が雑誌を開きながら言う。

 雑誌には「昭和の犯罪」と、銘打つ特集記事が載っていて、その中の「毒入りチョコレート事件」の記事だった。

「そう、それだ。サッコ」

 柴田は記事を覗き込むと頷いた。柴田はそれを三週間前に読んでいる。

 二人が生まれる前の事件だった。警察、マスコミを嘲笑した語句と、犯人の似顔絵が、連日テレビを賑わした。

 犯人は「毒入り危険」のメモと、青酸カリを混入したチョコレートをスーパーの売場に置いた。それから菓子メーカーに脅迫状を送りつけた。

 犯人は菓子メーカー、警察、マスコミのを翻弄し、逮捕の機会も擦り抜けた。結局、事件は迷宮入りになった。

「許したる」の一言で、犯人は姿を消したのだ。しかし、菓子メーカーが裏で金銭を支払い、手打ちが行われたと囁かれた。

 サッコはビールを飲みながら、記事を読んでいた。「面白いね」といって記事に目を落とした。二人は、また、ビールを頼んで昼飯にしては長居した。

「できたら、面白いね」

 店を出たサッコが言った。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ