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終章
「結局、運命を変えることはできない。無力だね?」
猪狩にそう言われるのは、実に百六十三回目のことだった。
体感時間は優に二百年を超えている。
これまでに、後悔はまだ一度もない。
永遠まで、あと何度繰り返せばいいのだろう?
私の行動は変わらない。私の考えは変わらない。私の価値観は変わらない。
同じ行動を繰り返しては同じ結末を迎えている。
こんなことで私は後悔しない。
こんなことで心を折られることはない。
猪狩の言う通り、私は無力で、運命を変えることなどできない。認めよう。
しかし、だからと言って、私は変わらない。『自分の行動は間違っていた』、『こうしておけばよかった』、そんなものはただの言い訳だ。未来に恥じるような行動は、過去に行わなければいい。間違いを悔いることは、弱者の発想だ。自分の行動にくらい、言動にくらい、責任を持つ。
私は間違っていない。
だから、繰り返すことに、迷いなどない。
ただ――
もっと別の人生を選んでいたら、私は、
…………………………。
そして、百六十四回目の罰が、始まる。
後悔はまだ、一度もない。