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ユニコーンは小難しい。

当作品は下ネタを含みます。

 天まで届きそうな巨大な木々、さえずる小鳥はコーラスを歌うが如く色めき立ち、月の明かりは朝露を照らし仄かに煌めかせる。

ここは人間の世界と幻想の世界を繋ぐ『世界の狭間』。そのたゆたう湖の畔に、現世と幻世を繋ぐ橋渡しをする一角獣『ユニコーン』が居た。


「非処女とかマジありえないですけどおおおおおおおおお!!?」


 一頭のユニコーンは二人組の冒険者の女の方の匂いを嗅ぎ、歯茎を剥き出しにして叫んだ。フレーメン反応である。


「確かにオレは幻想の国まで道案内してるけどさ、処女以外を乗せるつもり無いの! 生理的というか、生物学的に? もう遺伝子的に無理だから!」


 清らか・清楚・貞淑、そういった少女を好むとは聞いていたがここまで拒絶されるとは思ってもいなかった冒険者の二人。

女の方は羞恥と怒り7:3の割合で顔を紅潮させ、男はそれを(なだ)めながらユニコーンに何度も頭を下げた。


「ああもう、分かった分かった! そんな言うなら別の奴呼んでくるから待っとれ!」


 ユニコーンはこれ以上コイツ等に関わりたくない、と渋々腰をあげ別の幻獣を呼んできた。と言ってもこちらもユニコーンと見た目変わらず、角の生えた馬そのものだった。


「オレに何か用か」

「コイツら向こうの国行きたいって言ってんだよ。ほら、俺こだわりあるタイプじゃん? 頼むわ」

「分かった。オレはコイツよりは寛容だ。御婦人、オレの背に乗るが良い」


 そういってもう一頭の一角獣は座り込み、女に背中を乗せる様促した。で、男はというと、背中に乗ろうとした所で咎められた。


「貴殿は背では無く、こちらへ」


 そう言って、首を下げた。男は首を傾げた、よもや首に跨る訳にはいくまい。いくら幻獣が頑丈と言えど大の大人が乗れば辛いし、何より不格好だ。

男がそう聞き返すと、幻獣は声色変わらず答えた。


「下の履物を脱ぎ、オレの頭に乗れるんだ。角を奥までずっぽりハメれば安定もする。大丈夫だ」


 無論拒否した。よもや幻想の国に渡る駄賃として自身の処女を対価にするとは思っていなかった。


「……そうか、今回はダメだったか」


 そういって若干しょんぼり目を伏せた。そして、今までやった人物がいたのか、という反応に男は顔を青ざめていた。

そうなると、オレはお前達を向こうの国まで運ぶ義理は無い。と一角獣2号は背中から女を降ろし、他の奴を呼んでくると去って……戻って来た。


 次に現れたのも勿論一角獣。艶やかなブロンドの(たてがみ)に長い睫毛が特徴的で、しゃなりしゃなりと優雅に歩いて来た。


「お断りですわーッ!!」


 第一声がソレだった。


「わたくし、女の子同士しか背中に乗せたくありませんの」

「お前偏りすぎなんだよ!」

「うむ」


 一角獣1号2号は言って、人の事は言えないだろう。と冒険者二人は心で呟いた。


「何を言ってますの! ストレートなアベックを乗せるなんて断固拒否いたしますわ! 良いかしら、私が理想とするのは……まあ、これはあくまで一例ですが、『紳士な騎士のお姉さま』と『彼女を慕う少女』。これに尽きますわ! 良い? 説明しますわよ? お姉さまがこなれた様子でわたくしの背に乗り、少女に手を伸ばす。そして少女は恐る恐るその手を取り……ああっ! 跨ろうとするもバランスを崩してしまった!! ところが、お姉さまは見事に少女支え、引き寄せ、そのままお姫様抱っこへ! そして問いかける……『もし馬に乗るのが怖いなら、こうしてあげようか。こっちの方が慣れているでしょう?』と……、それを聞いて少女は羞恥にみるみる顔を赤くして、でもそんなお姉さまの優しさについ甘えてしまい、小さく頷き――――……尊い……」


 二人の人間はこれもダメかと話の半分ほどで見切りを付け、次の馬を呼んでくるように頼んでいた。

おかげでスムーズに事が運び、すぐさま四頭目の一角獣が現れた。


「ボク? うん良いけど、さあ乗って」


 今度現れた一角獣はすんなりと二人を背中に乗せる事を承諾し、二人はさっさと背中に乗った。


「皆もあんまり好き嫌いしちゃダメだよ。損しちゃうよ? いろいろと」

「大きなお世話だよ」

「うむ」

「貴方こそ、もうちょっとこだわりを持ってはいかかが?」


 こうして冒険者はやっとのこと幻想の国へ旅立つのであった。


そして三頭の一角獣、ユニコーン、ホモコーン、レズコーンは走り去るバイコーンを見送った。





「ねえねえ! さっき来てた旅人! 小さい女の子居なかった!?」

「いねえよ、帰れ」


 遅れて来たロリコーンはとぼとぼと引き返していった。

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