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その一歩は未来の為に  作者: 花蝶水月/五月雨黛
凪の高校時代
8/9

バレンタインデー

 



 幼い頃、卒園も近い頃バレンタインの日に僕は遊んでる時に貰った物に大喜びして帰り際、真っ先に水乃ちゃんに話した。


「ねぇみずのちゃん、これみて!」

「……チョコレート?」

「あのね、きょう、あじさいぐみのあかねちゃんがくれたんだ!」

「……そう」

「だからね、いっしょにたべよ!」

「……なぎのバカ!!」

「へ?」

「バーカ!バーカ!」

「みずのちゃん?」

 

 あの日、水乃ちゃんはあの時あのまま走っていってしまった。

 僕はそんな水乃ちゃんをお母さんが迎えに来るまで呆然と見てる事しか出来なかった。





 西野圭吾side(生徒会長)


 昼休み。

 今日はバレンタインデーだ。

 俺の後輩である島崎凪は朝から沢山の女の子からの想いのこもったチョコレートを貰っていた。

 昼休みに仕事があるからと凪を引っ張り、生徒会室に逃げる様に入り昼食を取っていても役員が来る度に凪の元へチョコレートが届く。

 そして凪はこの大量のチョコレートを見て何かを思い出したのか、何かを呟き出す。


「確かあのチョコレートを貰ったのは……」

「どうした島崎?」

「会長!

 いえ、ちょっと考え事をしていて……」

「ははっ!

 島崎は真面目だからなー

 何考えてるか知らないがあまり度が過ぎると頭パンクするぞ?」

「はい、気を付けます……」

「ところで島崎

 お前今のでチョコレート何個貰ったよ?」

「へ?」

「なーにとぼけてんだよ!

 健全な男子たるもの今日という日を楽しみにしてないわけないだろ?」

「今日……あっ!

 バレンタインでしたっけ?」

「え、マジで忘れてたの?」

「いえそうじゃないですが……

 ……そうかあの日は……」

「あの日?」

「あの、会長……つかぬことをお聞きしますが」

「お、おう?」

「もし会長が誰か女の子にチョコレートを頂いたら、そのチョコレートを他の誰かと一緒に食べようと思いますか?」

「はぁ?

 他の日に貰ったチョコレートならいざ知らず、何でバレンタインで貰ったチョコレートを誰かに分けなきゃならんのだ!」

「そういうものですか?」

「何だ?

 まさか島崎、お前せっかく女の子から貰った大切なチョコレートを誰かと一緒に食べようとかそうした事をやったのか?!」

「は、はい……

 随分幼い頃でしたが、一緒に食べようとしていた相手に馬鹿と言われてしまいました」

「あー……そりゃそうだわ」

「正直何故彼女が怒ったのか今でも分からなくて…」

「あー……んとなー……」

「会長?」

「……ま、それは自分で答えを出しな

 いっそ、その相手だった彼女に直接聞いてみるとか」

「は、はい……?」


 全く……確かに乙女心は複雑で分かりにくいが、それでもこいつは鈍過ぎ(鈍感)だ。

 いや、分からない振りをしてる部分もあるのだろう……。






 七瀬水乃side


「今年こそは彼にチョコレート渡すぞ!!」

「がんばれアイカー!」

「チョコレート……」


 そう言えば今日バレンタインだったわね……。


「水乃」

「ん?」

「今年は凪君にチョコレート渡さないの?」

「はぁ?

 ……渡すわけないじゃん」

「何で」

「何でって何で私が渡す前提なのよ

 ……あいつはね、どんな想いでチョコレートを渡しても他の子と一緒に食べようとか思っちゃう……そんな奴なのよ?」

「え」

「小さい頃の話よ」

「あーなるほど……小さい頃とはいえ、せっかく水乃が勇気出してチョコレートを渡したのに他の子と一緒に食べようとかしちゃったんだ凪君」

「ち、違うわよ!!

 他の女の子が凪にチョコレートを渡して私と一緒に食べようとしてたのよ!」

「へ?

 なら……その子には悪いけど、その気が無いって事で良いじゃないの」

「そーいう問題じゃなくて……」

「他の子のチョコレート受け取ってんじゃないわよ!

 ……って?」

「そーじゃなくて……」


 ただ……私が想いを込めて作ったチョコレートを凪に渡しても、凪はあの時みたいに笑って他の子に渡しちゃうんじゃないかって……

 それが例え私のチョコレートじゃ無くても、他の子からのチョコレートだったとしても想いを踏み躙られた気がして……


「どうしても嫌なのよ……」






 島崎凪side


 放課後、学校帰り。

 いつも通り僕は水乃ちゃんと一緒に帰ってる。

 今日が何の日なのかなんて関係無しに。


「…………」

「…………」


 だから、いつもは会話をしてるのに今日だけ水乃ちゃんが話さない瞬間が来て、少し戸惑った。


「……あの」

「何?」

「今日は……バレンタインだったんですね」

「そうね、凪は沢山貰えたんでしょうけど」

「い、いや僕は……

 そう言えば、水乃ちゃんは誰かに渡したのですか?」

「は?何でっ……」

「ちょっと気になって……

 いや、その事だけじゃなくて……」

「?」

「昔…僕が他の女の子に貰ったチョコレートを水乃ちゃんと一緒に食べようとして、水乃ちゃんが怒った事……ありましたよね?」

「あぁ……あったわね

 そんな事も……」

「その、何でかなーって……ずっと分からなくて、ですね……」

「……はぁ、それ本気で言ってるの?

 だとしたら凪、最低よ?」

「え!?

 あ、えっと……」

「バレンタインを何の日だと思ってるのよ!」

「え、えっと女の子がチョコレートを渡して…」

「何で渡すかは勿論解ってるわよね?」

「え?それは……」

「…………」

「…………」

「……もしかして」

「分かった?」

「……僕にチョコレートを渡してくれた女の子の気持ちを無下にしてしまっていたって事ですか?」

「そうよ、全く……今更気付くなんて……

 そんなチョコレートを食べさせられようとするこっちの身にもなってほしいわ」

「……ごめんなさい」

「別に私に謝られても……」


 別にバレンタインが何の日かわからなかった訳じゃない。

 ただその好意が自分に向けられるだなんて思っていなかっただけだ。


「でも……」

「?」

「あ、いえ!」

「??

 なんなのよ……」


 もし、僕にチョコレートを渡してくれたのが水乃ちゃんだったとしたら……

 僕の中に、他の誰かと一緒に食べるという選択肢はあったのだろうか……?

 本当は、バレンタインなんて物が無ければ……


「甘くて美味しいものは皆で食べた方が美味しいんですがね……」

「は?」

「いえ、来年はお詫びに……僕からチョコレートを渡しますね」

「訳分かんない……好きにすれば?」


 きっと選択肢の答えはずっと昔から出てる。




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