珈琲
大変お待たせしました。
ある日の昼休み、私のクラスに凪が来た。
途端、一部の女子は会話を止め、一部の女子は悲鳴を上げかける……そして男子は見ない振りをしている。
この中で一番マシな対応をしてるのが男子ってどういう事なんだろう……。
そういえば最初の頃はこれだけでクラス中が軽くどよめいてたな……なんてどうでもいい事を思い出すぐらいには慣れてきたけど。
「水乃ちゃん、ココア飲みませんか?」
「ん、奢ってくれるの?」
「あぁいえ、さっき間違えて買ってしまったので……」
「ふーん……まぁ貰えるなら貰っとくけど
……凪も甘いの好きじゃなかったっけ?
何で要らないのよ?」
「実は昨日寝てなくて……今凄く眠いので、珈琲を飲んで誤魔化せないかと思いまして」
「……凪、珈琲飲めるの?」
「へ?はい」
「……そう」
「?」
私の知らなかった凪の一面を見た様な気がした。
そして凪が私を置いて大人に近付いてってる気がして、少し悔しかった。
放課後、私は凪と一緒に帰った後で買い物に出かけた。
スーパーの前に自販機があるのを見かけて思わず珈琲を探す。
「……珈琲なんて舌へのテロよ!
甘い物が好きなのに何でこんな苦い物まで飲めるのよ!
凪の癖に生意気な!」
私の指は自販機の前でボタンを押せずにぷるぷると震え、そこで固定されていた。
「大体ね、私は別に甘いのしか飲めない訳じゃ無いのよ!
酸っぱいのだって普通に飲むし、ただ苦い飲み物が飲め……飲まないだけで!」
「わ、おねぇちゃんがじはんきとおはなししてる!」
「……へ?」
思ってる事がダダ漏れだったみたい……
「もしかしておねぇちゃん、コーヒーのむの?」
「え」
「コーヒーはおとなののみものだっておとうさんがいってた!
おねぇちゃんおとな!」
ピッ
「あ……」
どうしてくれるのよっ!
この子供っ!
珈琲飲めもしないのに動揺してボタン押しちゃったじゃないのよっ!!
「ともちゃん」
「あ、おかあさん!
おとなのおねぇちゃん、じゃあね!」
「え」
あの子供帰っちゃったし、本当にこの珈琲どうしよう……。
結局私は珈琲を飲むことも出来なかったので、昨日のお返しと言う名目として凪に押し付ける事にした。
「え、良いのですか?
昨日のは……」
昨日の悔しさと子供とのやり取りを思い出してしまい、顔が熱くなったので、そっぽを向いて凪にぐいっと珈琲を押し付ける。
「単純に間違えて買っちゃっただけよ」
「……水乃ちゃん!」
凪が感動してる所悪いけど……
「間違えて買っちゃったのは本当なんだけどな……」
どっち先に更新出来るかな……