凪の目標
遅れてすみません!
出来てるプロットの仕上げしだい更新します!
あの日から僕は水乃ちゃんに頼られたくて、責任感のある男になりたくてクラスの出来る範囲から手伝いを始めた。
それから半年……僕は中学三年になっていた。
半年間頑張っていたおかげか僕はクラス委員になっていて、僕は今担任の先生に呼ばれて職員室に来ていた。
最低限の礼儀としてのノックを二回、「失礼します」と言って扉を開くと、デスクの上に大量のプリントとノートを置いて待ってましたと言わんばかりの表情をした担任が居た。
……その量は、明らかにプリントは1学年分、ノートは二学年分の量だった。
お疲れ様です、先生。
「来てくれたか島崎、早速で悪いんだがこっちのプリントの束を教室まで運んでくれないか」
「はい」
運ぶぐらいであれば、途中、落としたりさえしなければ面倒くさい事ではない。
……が、そっちで良いんでしょうか。
少しノートの方が気になる。
……一応即答はするけど。
「それにしても最近の島崎は変わったよな
なんと言うかこう……どことなく丸くなったと言うか物腰が柔らかくなったと言うか、大人っぽくなった感じが……」
「え?そ……そうですか?」
「何か目標でも出来たか?」
「目標は……そうですね
小さな目標かもしれませんが、出来ました
今はその一歩を踏んでいる所です」
「ほう?どんな目標か気になる……」
実は僕、水乃ちゃんに頼られる様な男になりたいんです。
……言えない。
言える訳が無い。
こんな恥ずかしい事。
考えるだけであまりにも自分の目標が誰かに言える様な物では無いと自覚し、 思わずと言った感じで顔が熱くなる。
あぁこんな時、笑顔で誤魔化せる人が凄く羨ましい……。
ほら、先生も何かを察したのか驚いて言葉が途切れてる。
「あー……聞いちゃまずかったか」
「じゃ……じゃあ、プリント持って行きますね
し……失礼します」
僕は大慌てで先生の隣にあるプリントの束を持って職員室を飛び出た。
恥ずかしい……。
恥ずかしくて走り出してしまいたいぐらいだ。
あまりに恥ずかしかったので教室に戻る途中少し小走りをしてしまい、通りかかった先生に「こらそこ!廊下は走るんじゃない!」と注意されてしまった。
昼休み、今日も先生に頼まれて諸々の雑用をこなす。
勿論、昼食は食べた後だ。
放課後も利用しないと、毎回時間が過ぎてしまう事を最初に学んだ。
そもそも先生の頼む量が少し多いんだ。
僕が同じクラスの誰かに協力を頼むって事を考えていたのかもしれないし、その通り直ぐに終わる様な物かもしれないけど……。
「よいしょっ……と」
「あ、島崎やっと帰って来た
おーい島崎、今日ちょっと急な用事が入ってさぁ
掃除、代わってくんね?」
「え、でも僕にもやる事が……それに用事って言っても掃除終わってからでも……」
「今日実は俺の妹の友達の友達が誕生日でさぁ、誕生日会を開くってんで買い出し頼まれちゃってんだよねぇ……
頼む!お前が頼りなんだよ!」
「た……頼り!」
「おう、頼むっ!!」
「し、仕方ないですね……解っ……解りました
今日だけ、特別ですよ?」
「やりっ!
サンキューな!」
「島崎ぃ、ちょっとノート見せてくんね?
前、授業でノートとり忘れたんだよね……
ほら、島崎のノートって解りやすいからさ!
見せてくれると凄い助かるんだよねぇ」
「あ、凪君!ちょっと日誌を……」
僕、頼られてる……。
僕はクラスメイトの誰かに必ず頼られてしまい、僕は結局一人で全てをこなす事が多い。
先生に頼まれた物とクラスメイトに頼まれた物をこなすと大体は水乃ちゃんの部活の終わりの時間までかかる。
僕が一年から二年の夏休みまでは図書室などで勉強して時間を潰していたんだが、あの日から積極的に手伝っていたら今では沢山の人に頼られてる。
そう思うと、きっとこの調子で良いのだと思える。
今日に限っていつもよりも雑用が多いと思っていたら、水乃ちゃんが迎えに来てくれたらしく、全てが終わった頃には隣に居て、「凪、もうこんなに遅い時間なのに帰ってなかったの、帰るわよ」そう言って僕に手を差し伸ばした。
本来ならこれをするのは僕だった筈なのに……。
僕はまだまだ未熟だと痛感した一日だった。
放課後、いつも通りに僕は先生やクラスメイトから頼まれた事をこなした。
今日はたまたまいつもより少なく、水乃ちゃんの部活の終わる時間帯より少し先に作業が終わり鞄を肩にかけ、教室から出て下駄箱に近い自販機の前で一息付く。
そして思わず、と言った様に二人分のジュースを両手にため息を付く。
はぁ、頼られるって結構大変だなぁ。
でも水乃ちゃんに頼られる男になるって決めたんだ。
この程度で疲れてる訳には……
「凪」
「あ、水乃ちゃん!」
どうやら考え事をしている内に水乃ちゃんの部活が終わった様だ。
僕はさっき買ったばかりのジュースを水乃ちゃんに渡して、下駄箱に向かった。
「凪、最近イジメられてるの?」
「へ……?」
「昼休みにたまたま凪のクラスの人が話しているのを聞いたのよ
最近の凪はチョロいとかどうのって……」
「は?」
靴を履き替えてる途中で水乃ちゃんにまた声をかけられた。
僕は水乃ちゃんの言った内容を理解出来ず、靴を片方履いた状態で顔を上げてしばらく呆けてしまった。
その後、僕は気が付いたら家の玄関前に居た。
多分、水乃ちゃんが僕を送ってくれたんだろう。
後に、僕が「頼られる男」と言う物の本当の意味を知り、理解したのは後に入る高校の生徒会長に指摘された時だった。
これを理解した時、僕は深く反省した。
中学時代の僕は周りから見たらイジメられてる様にも見えてしまったし、僕自身が周りにとっての「都合の良い男」になってしまっていて中学最後の一年間、僕とクラスメイトの関係性がおかしくなっていたのだと気付かされたのだ。
中学生の凪君はまだまだ未熟です!