表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/12

プロローグ

一昨年pixivに掲載したものを、小説家になろうでも紹介したいと思います。

プロローグ


 晴れた午後、俺達は家族4人で桜並木の間を歩いていた。

 ここは陸上自衛隊の補給所。ここは毎年花見が行われていて、その間は一般人も立ち入り可能になる。


「いつまで戦車撮ってんの。もう行くわよ」

 芝生の向こうで妹の雪乃が呼んでいる。

「わーった。もう一枚撮ったらすぐ行く」

 向こうでは母がこちらに手を振っていた。

 父は呆れた感じで笑っている。


 俺は展示されている旧式の戦車を撮影していた。

 今は右斜め前、正面、真横の三枚の写真が俺のスマホの中に収まっている。

 俺も小さい頃はこれに乗って遊んだが、今は上に乗って遊ぶのはダメらしい。

 いや、もうすぐ高校生だしそんなことしようとも思わないけどさ。


「あっ!」


 どこからか子供の声が聞こえた。

 見ると、陸上自衛隊のマークが入った帽子が宙に飛んでいく。

 お土産で売られているキャップのひとつだ。


 あれじゃどこに流されるか分からないな。


 もし止まってたら、俺が止めることもできるかもしれないけど……。


――フフッフーフー。


 風に乗ってハーモニカの音が聞こえてきた。

 J-POP的なメロディーだが、よく知らない曲のようだ。


 それが聴こえた途端、不思議なことが起きた。

 帽子はまるで竜巻の真ん中に囚われているかのように、一ヶ所をくるくると舞いはじめた。

「何だあれ?……とにかくチャンスだ」


 勢いの落ちた帽子に向かって指鉄砲を構える。

 人差し指の周りに円形の式を構築し、発動方向を指先に合わせて――。


「バァン」


 俺の指から見えない力が飛んでいった。

 その力は帽子に命中し、帽子はくるくると錐揉みを描きながら落ちていき、戦車砲の先に引っかかった。


「ほら、気をつけろよ」


 俺は戦車砲から帽子を取り、子供に渡す。


「かっけー! ありがとーにーちゃーん」


 いつの間にか、あのハーモニカの音は鳴り止んでいた。

 音楽の聞こえた方に目をやると、噴水の方で、俺と同い年ぐらいの女の子がこちらをじっと見つめていた。

 まず、そのお嬢様みたいなウェーブのかかった髪に目がいった。

 口元にハーモニカを当てているが、さっきの演奏はあれだろうか。

(まさか、さっきのが魔術だとバレた?)


「なー、それESPだろー? もっかいやってー」

 子供が好奇心旺盛な顔で訊ねてくる。

 こっちにも魔術を使ったのがバレたみたいだ。

「え? いや、今のは、その……」

「えっ、ESP?」

「何? 何をしたの?」

 まずい! 周囲の注目が集まっている。


「ホラお兄、さっさと行くわよ!」

「お、おいちょっと!」

 いつの間にか隣まで来ていた雪乃に手を引っ張られ、その場を立ち去る。


 あの女の子は、先程と変わらず俺の方を見つめていた。

 その姿も、ゆっくりと人混みの中にまぎれて見えなくなっていった。


 その後、俺達家族は展望台になっている監視塔に行ってから、まっすぐ家に帰った。


 その間、ずっと俺は歓喜に酔いしれていた。

 久々に俺の人並み、いや、それ以下のESPが成功した。

 何より、この力で人助けができたからだ。


原文ではプロローグと1話が繋がっていますが、投稿に慣れていないのもあって、ここで一旦区切ります。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ