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N;EXUS(ネクサス)  作者: 柴豚
6/13

木瀬 宇田の迷究

〈すみません。気分が悪くなったので、今日はもう切ります〉

そう言い残して、通信は切れた。

「なんだったんだ・・・あんなに慌てて」

「記憶・・・戻ったみたいだね」

「きっと悪い記憶・・・だな」

3人とも黙りこくる。

結城・・この名前を出した途端、女の子は取り乱してしまった。

彼女に何があったのか?

彼女が何を見て、何を思い出したのか?

疑問が嫌になるくらい這い出てくる。

「僕たちは、悪いことをしてしまったのか?」

僕の口から出た言葉。

それを栞がキャッチした。

「・・・良いか悪いかは、まだ分からない。けれど、無理に思い出したことについて聞かなくても・・いいと思う」

「俺もそれは賛成だ」

「・・・そう、だよな」

ここで再び、黙る。

沈黙。白けた。

しかし、こういつまでも感傷にひたってる場合ではない。

重要なヒントが出たのだ。

「結城・・・これが、アイツの本名なのか?」

「・・・そうなのかな・・?もしかしたら、友達の名前かもしれないよ?」

「そこなんだよなぁ・・反応はしたけど、それが何を意味するかはサッパリ分からない」

3人揃って考える。

しかし文殊の知恵等はなく。

ただ各々自問自動する。

結城。

これが、彼女の名前なのだろうか?

改めて思考ぐるぐる。


・・・だめだ。情報が足りない。

これでは、仮説はいくら立てることができても真相には近づかない。

やはり、明日もう一回彼女に聞いてみるか・・・聞ければの話だが。

そう思っていると、不意に狭間が声を上げた。

「・・・なぁ、結城って苗字のやつ、ネットで検索してみるのはどうだ?何かソイツに関わる事件のニュースの記事とかあれば・・」

「・・・そうだな。やってみよう」

「うん・・」

あまり皆乗り気ではない。

分かっている。

結城なんて少し探せば見つかる苗字の奴が起こした事件なんて、今までに山ほどある。

その中で今回の件とマッチングさせるのはどれほどかかることか・・・・

ん?マッチング?

あ・・・まてよ。

「なぁ・・・それさ、調べるときに期間を絞ってみてくれ」

「期間・・?何のだ?」

「普通に考えて、女の子の周りには誰もいない。つまり、外から見ると女の子は、行方不明ってワケだ。するとわかるだろ?女の子の身の回りの人間が、女の子の失踪に気づいて警察に届けて、それが記事(ニュース)になる。 僕と女の子話し始めたのは半年くらい前。つまり、そこから逆算して女の子のが失踪した日を絞りこんで、その日と関係している事件を調べればいい」

そこまで言って、栞も間も同時に頷く。

そう、これは夢でも何でもなくて現実だ。

普通、人一人消えたらニュースにでもなる。

しかし、そこで重要となるのが事件と結城という名前の関連性。

こればっかりは祈るしかない。

何かと運要素の多いな、この研究。

狭間がタッチパネルの上で人差し指をなめらかに滑らせる。

すると、どうやらいくつかヒットしたようだ。

順に読み上げられていく。

「えーっと・・・じゃあ、とりあえず失踪系の記事を読み上げていくぞ。あ、因みに、記事は5/1〜5/10位までを上げるぞ。それで構わないか?」

「あぁ、構わない。たしか、ちょうどその日ら辺に話し始めたんだ。そんな気がする」

「おう。それじゃいくぜ。まずは、5/1のサラリーマン二人が死体で見つかった殺人事件。これは、・・・えーっと・・・被害者の一人が結城だ。 次に、おばあちゃんの転落事故。これは、おばあちゃんの名前が結城さん。あ、5/3な。 んでもって次が5/8の、4歳の結木くん誘拐事件。犯人は1日で捕まってるな。男の子は無事。・・・以上だ」

「なぁ、失踪系はないのか?最後の誘拐事件以外、全く関係ないじゃないか」

「あぁ・・・そもそもこの期間、そんなにエグい事件ねぇんだわ。悪いけど、人が傷ついたり死んでる事件は十日間でこれだけ」

・・・ついてない。

でも・・・これは、押し付ければそれなりに関連はする。

「なぁ、5/1のサラリーマン事件の被害者の親族が女の子ってのはないか?おばあちゃんの事件はあんまり酷くはないと思うし、最後の誘拐事件も無事らしいから、叫ぶほどではない・・・。と、なると限られるのは始めの事件だけだ」

「なるほどー。でも、どうやって調べるの?けっこうもう時間経っちゃってるし、二人の事を調べるのは難しいよ・・・」

「そこなんだよなぁ・・・」

再び、沈黙。

どうしたものか。

でも、同時に少しだけ希望が見えた。

この事件が、もしかしたら女の子の件と重要な繋がりがあるかもしれない。

違う。そう祈るしかない。

正直なところ、これで関連性がなかったら、もう手がかりは何もなくなる。

女の子が、次に出てくる保証もない。

「・・狭間、今見てるサイトとは別の所で、同じ事件は載ってないか?」

「あぁ、今調べてる。待ってろ」

どんな少ない情報でもいい。

お願いだ。

・・・・・・・

静かになる。

狭間の表情が、少しだけ驚いたものになる。

何か見つけたのだろう。

「なぁ木瀬・・・。さっきのサイト、情報少なすぎたわ」

もったいぶらずに、はやく。

「結城 大伍さん。実家に帰り、家族三世代計5人、祖母・祖父・結城・妻・息子で車で旅行に行く途中、交通事故で結城以外、死亡。その葬式の帰りに、妻の方の親父に刺されたそうだ。結城が友人と二人でいるとき、後ろからザクっと。始めに結城を庇った友人が刺されて、次に結城が刺されたそうだ」

「そうか・・・ありがとう」

「にしても随分理不尽だな。これ、交通事故に関しては、運転は祖父がしてたらしい。なのに、妻の方の親父は、結城一人だけが生き残ったのを恨んだみてぇだな・・」

なんとも理不尽極まりない事件だ。

けど、こんな悲惨な話であるならば、女の子が叫んだのは納得できる。

徐々に、二つの事件が近づいてきた気がする。

「よし、ここからは分担して調べてみよう。栞と狭間は、被害者の結城さんについて調べてみてくれ。僕は、女の子と話せるかどうか試したりしてみる」

「おう、それじゃあ俺たちは一回大学の方に行く。二人で話した方が向こうもリラックスしやすいと思うからな」

「そうだね・・・3人で囲って話聞くのも可哀想だし。うん!あの子を口解くのはウダウダに任せた!」

「あのなぁ・・・まぁわかった。じゃあ、何かあったら連絡くれ」

「おう。それじゃあな。邪魔したぜ」

二人は立ち上がり、帰る準備を簡単にする。


「ばいばーい!」

そのまま玄関まで見送り、

がちゃん。

二人は数分で家をおいとました。

さて、ここからは個人作業だ。

ある意味こっちの方が集中できる。

アンプ撫でてネコエネルギーチャージしたら、マイクを入れて待機する。

ん?

今、何か違和感があったような・・・

何だろう?何かおかしい所があった気がする・・・まぁ今はいいか。

とりあえず、推理しながら待機しよう。





推理に耽っていると、今まで女の子と話した記憶が蘇えってきた。

気がつけば、なんだかんだで半年が経っていた。

そそて、この半年で、僕の趣味も気がついたらこの研究のみになっていた。

・・・・もしも。

もしも、この研究が終わり、女の子も元の生活に戻ったら、僕には何が残るのだろう。

とりあえず、趣味はなくなるわけか。

そうしたら、また新しく探すのか。

面倒だ・・・なんてあることないことかんがえながら。

ふと、カレンダーに目をやる。

11月。

あ、そうだ。

ふと、思い出した。

去年の今頃、隣町で連続殺人事件があったんだ。

こっちの街では恐らく被害者はいなかったが、とにかく犯行は残虐なものだったという。

それが、確か2月ごろに終わったんだっけ?

犯人は捕まっていない。

宇宙人とかジャックザリッパーの復活とか色々騒いでたなぁ、世間。

特に無線以外やる事がないから、こういうどうでもいい世間話はよく覚えている。

まぁ本当に心底どうでもいいので、思考を推理に戻す。

あ、そうだドーナツ食べよ。

冷蔵庫からドーナツを5つ程出し、机に並べてシンキングタイム。

糖分が脳にダイレクトにシュートされる。

いい気分だ。頭が冴える。

あ、こらアンプ。それは僕のだ。とるな。













「はっ!?」

気がつくと、 僕は寝てしまっていたようだ。

考え続けたいたら、横から睡魔がきたらしい。

僕は負けたのか。

時刻は・・・・23時27分。

膝の上でアンプが寝てる。かわいい。

そっと撫でてやる。

そういえば、女の子は起きているだろうか?

最後に話したのがちょうど昼ごろだったから、もうそれなりに時間は経ったはずだ。

・・・あ、狭間め、僕にランチ奢るのどうしたんだよ。くそ。

まぁいい、とりあえず声をかけてみる。

「こんばんは。夜遅くに悪い。今、起きてるか?」

〈・・・こっちは夜も分からないですし、それに寝なくても大丈夫みたいです〉

応答してくれた。

もう大分落ち着いたように見える。安心した。

「そうか・・もう大丈夫なのか?話したくなかったらいいんだが・・」

〈いいえ、私も報告しなければいけない事があるので。今は木瀬さん一人ですか?〉

「あぁ、そうだ。話してくれ」

〈はい・・・。順を追って説明しますね。まず始めに。ゆうきさんという名前なのですが・・・〉

〈どうやら、私ではなく、他の人みたいです〉

「そうか・・・今、ちょうどそう考えて、二人を調べに行かせている」

〈そうですか・・。本当にいつも、お手数おかけします〉

お辞儀をしたような気がした。

それほどまでのお淑やかで、心のこもった礼。

「いや、いいんだ。これは僕たちが好きでやってる事だしな。 それで?まだ、終わりじゃないんだろ?」

〈はい。あの苗字を聞いた時、私の頭の中である記憶が走馬灯のように、早送りで流されました。そのうちの少ししか覚えていないのですが、やけに風景がはっきりしてたので、お話しますね〉

「分かった。それで?どんな感じだったんだ?」

〈まず、私は山を歩いていたんです。地面はぬかるんでいて、今にも滑りそうでした。 そして何より崖が多く、遠回りをしながら登っていきました〉

「山・・」

〈はい。山にいた記憶は以上なのですが、その後に、その山の(ふもと)であろう街を歩いている記憶もありました〉

街か・・・できれば、特定したいのだが。

「その街の名前とか思い出せないか?あとは、景色とか。なんでもいいから、教えてくれ」

〈はい。たしか、街の名前は・・・「ひ」から始まったと思います。緑が多く、そこまで大きな街ではありませんでした。あとは・・・駅は工事中で・・・一応使うことは出来てたみたいです〉

「それぐらいしか思い出せないか?」

〈はい・・すみません、結構間が抜けていて・・・・〉

「いや、十分だ。そこまでわかれば、今の時代、すぐに特定できる。疲れているところ悪かったな。 僕は一回切って街の特定するから、何か用があったら呼んでくれ。一応接続はそのままにしとく」

〈あ、有難うございます〉

「おう。本当に些細なことでもいいからな。んじゃ」

そう言って僕は一度席をはずす。

するとそれと同時にスマホに通知が入った。狭間からだった。

《とりあえずネットで調べても大した情報はなかった。明日、俺が事件の現場近くで聞き込みしてくるわ。まぁ新聞部ですって言えば平気っしょw》

あの馬鹿・・・高校生じゃあるまいし・・・

でも実際、それが最善の方法だろう。ここは狭間の情報収集能力に期待する。

《了解。たわけ。それじゃ、明後日にまた集まろう。時間は適当で。》

っと返信。後で栞にも送ろう。




さて、ひと段落ついた所で思考のお時間至高のひととき。

どうやら僕は考える事自体は好きらしいな。

まず・・は・・「ひ」か始まる駅をPCで検索。ざっと見た所・・・うわぁ、めんどくさそう。

その検索結果のタブとは別のタブで、半年前に工事していた駅を検索。

出てきたのは各市役所や、駅のニュース記事。

案外簡単に出てきた。

後は、二つのタブを使って絞り込んでいく。

【日向野駅、改装工事のお知らせ】〔日向野市だより〕

【飛馬駅前、火災復旧のお知らせ】〔飛馬市市役所ホームページ〕

【陽座間山前駅、完成間近!】〔陽座間山にいこう!〕

こんな風に、一致したものの情報を照らし合わせる。

そしてその街をマップで検索。

街の風景に緑が多いかや、近くに山があるかによって選別する。

・・・途方も無い作業だ・・・。







3時間くらい経っただろうか。

もう粗方絞ることは出来た。

最終選考にノミネートされたのは、T県、日向市・S県火鉢市の二つ。

他にもいくつかあったが、山があって緑が多いのは大体ここ。

一区切りつき、どっと疲れが出る。

気がついたらもう真夜中だ。あと2、3時間もすれば日が昇る。

「一旦寝るか・・・」

スマホで目覚ましをセットしてベッドに直行。

シャワーは明日の朝浴びよう。

部屋の明かりを消すと、5秒ほどで眠りについた。








[木瀬 宇田:10%]






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