無許可のハンター
グルルルッッッ!
くらい密室で、獣の声が聞こえる。その声は、そこらへんの猛獣とは違う。明らかに違う何かだ。
部屋には異臭が漂う。足元を歩くたんびに、ぐしゃりと何かを踏むような感触が伝わる。
明らかに何かの臓器だ。見た目からして、内臓のようだが、人間とは違うようだ。
強いて言うなら、アンモニア臭だ。
サメの内臓を切り裂くと、アンモニア臭がハンパないらしいが、少し違う。
人間の血も混じってるからだ。
その前には、大きな肉の塊が落ちている。
それは、まぎれもない人間の肉だった。臓器はほとんど残ってはなく、糞に混ざった骨と、食べ残しであろう眼球が転がっている。
髪の長さから見て、女だろうか。
かわいそうに。まだ、20代前半じゃないか。
俺は火葬する事にした。骨は全部回収して、特務警察に渡せばいいだろう。
俺は懐からライターを取り出し、遺体を燃やそうとする。
グルァァァァァア!
今まさに、犯人であろう捕食者が俺を食おうとしていた。
たが………
「残念だな。」
バーン!
俺はデザートイーグルで捕食者の頭を撃ち抜いた。
見事に頭に命中したはいいが、運悪く頸動脈まで撃ち抜いてしまい、半端ない量の返り血が俺の顔と服にかかった。
「あーあ。俺のお気に入りの赤シャツが。」
赤なら別に、気にする事はないんじゃないかと思うだろうが、血は赤というより黒に近い。それ故に、目立つしくさい。
でも、これはこれでかっこいいので良しとした。血の跡がなんとも俺の強さを語ってくれるというか。
肝心の捕食者は完全には死んではいない。脳は吹っ飛ばしたが、心臓が残っている。そのために、ピクピク動いている。
捕食者を殺す方法はただ1つ。
「悪いね。やらなきゃ食えないんでね。」
捕食者の心臓を壊す。もしくは、体から取り出す事だ。
壊してもいいが、捕食者の心臓は高く売れる。心臓と聞いてグロいイメージだが、捕食者に関してはそうでもない。
「捕食者の心臓はダイヤの原石でできてるからな。」
加工すれば、それなりに価値が高い者になる。無論、大きければ大きいほど高い。小さくても、純度が高ければそれなりに売れる。
捕食者の心臓の大きさは強さによって違う。最上級がSクラス。最下級がDクラスだ。
Dクラスは兵隊が10人で仕留める事が出来るクラス。Sクラスに関しては、国全体の戦力が必要となる。
今回の捕食者はBクラスの大型犬タイプだ。
心臓をもぎ取られた捕食者は砂となって消える。その砂は、回収して、専用の業者に処理してもらうのが義務付けられている。
俺は、袋に砂を詰め、部屋を後にした。
「ほら、目的のもんだ。」
依頼されたものを依頼者に渡す。
「ありがとうございます。これは、約束のものです。」
男性は暑い封筒のようなものを取り出す。俺は、封筒を開け、中身を確認する。どうやら問題はないようだ。
「では、失礼する。」
俺は、家を出る。
今回の依頼は、Bクラス以上の捕食者の心臓を取ってきてほしいとの事だ。契約金として、50万。報酬は1000万円の約束だ。
小切手には約束通り、1000万が振り込まれた証拠が揃っている。
「これなら、2ヶ月は遊んで暮らせるな。」
ウキウキしながら、封筒をしまい。再び歩こうとすると……
「警察だ!動くな!」
俺を囲むかのように、警察官が銃を向ける。公安に嗅ぎつけられたか。
その中には、先ほどの依頼主がいた。
どうやら、俺は裏切られたらしい。流石にこの人数を相手にするのは少々面倒くさい。
俺は、腕を上げて降参のポーズ取る。
「よし、そのまま動くなよ!」
警察官が銃を向けたまま、俺の方へ近づいてくる。やめてほしいな。俺は抵抗する気はこれっぽっちもない。下手に警察に目をつけられるのは面倒くさいからだ。
「武器を捨てるんだ!」
言われた通り、俺は愛用のデザートイーグルと大剣を置く。
普通なら銃刀法違反で捕まるだろう。だが、今の世の中では御信用として所持が認められている。無論、マシンガンやスナイパーライフルの分類は警察か軍隊しか持つ事は許可されていない。
俺のデザートイーグルは違反の分類に入る。後、大剣もだ。
だが、それより問題なのは……
「貴様、無許可ののハンターだな!新日本国憲法を知らんのか!」
ハンターの資格を持ってない、ハンター。つまり、免許違反みたいなもんだ。
この世界でハンターになるには幾つかの条件が必要だ。ハンターは国家公務員の分類に値する。
それ故、専門学校を卒業するか、軍隊に入るしかないのだ。
それは、国家に反いた事になるのだ。本来ならその場で死刑なんだが……
「これで、8回目ですね。ミスター、ブラット。」
車から1人の女性が降りてくる。はは、またあいつかよ。もう、いい加減あきらめてくれないかな。
「とりあえず、あなたを拘束します。話はそれからです。レイン=ブラット(漆黒の悪魔)さん。」