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第1話 「星に願いを」

 美術室で真っ白なキャンバスに向き合いながら、僕(星野葵)は考えていた。


 人生はカラフルだ。誰だって生きている間に色々な出来事がある。楽しいことや悲しいことがとにかくいっぱい起こって、人生をカラフルに彩っていく。


 でも、今の僕はどうだろう?人生をカラフルに彩っているのだろうか?


 僕の今の人生はきっとカラフルからかけ離れている。



 そう僕の今は真っ暗なんだ・・・。



「星野君?おーい星野君!何ボーっとしとるんだ!」


 横から声をかけられ、僕は現実に戻された。


「あっ・・・・。」


 横を向くとそこには美術部顧問の三木先生が立っていた。


 少し白髪混じりの髪に絵の具が飛び散ったエプロンを着てこちらを不思議そうに見ている。


「星野君、また君ーずっと真っ白なキャンバス見ながらボーっとしとったぞ。今日も作品作りに意欲が沸かんのかね?それとも調子でも悪いのかな?」


 そんなにボーっとしていたのか、気が付かなかった・・・。


「すいません・・・少し考え事をしていて。大丈夫です・・・。」


「ならいいんだけどね。もう遅いから早く帰りなさい。君ぐらいだよこんな時間まで残ってるの。」


 そう言われ部屋にある時計を見ると、時刻は午後六時半を指していた。


 もうこんな時間だったのか、帰らないと・・・。


「はい、もう帰ります・・・。」


 僕は椅子から立ち上がり、キャンバスを手に持った。


 今日も何も描けなかった・・・。


 何も描かれていない真っ白なキャンバスが僕に訴えてくる。「早く描いて!私をカラフルにして!!」そう訴えてる気がする。


 でも、描けない・・・。


 もう何ヶ月も自分が描きたいものが思い浮かばない。描こうとすると手が止まる。まるで思考が停止したみたいに動けなくなる。


 僕は今までどうやって絵を描いていたんだろうか・・・。


「そうだ星野君、何か悩みがあるなら相談しなさい。先生相談のるから。」


 部屋を出ようとする先生が振り返り、僕にそう言い笑いかけた。


 相談・・・。


「はい・・・。」


 下を少し見ながら僕は返事をした。


 先生は僕にあとの片づけを頼み、美術室をあとにし職員室へと戻っていった。僕もキャンバスを隣の準備室に戻し、机の横に掛けていたカバンを持つと、部屋の電気を全て消し美術室をあとにした。


 学校を出ると空は薄暗く少し星が見えていた。


 季節が夏だからだろうか、夜でもあまり涼しくなく、むしろ少し蒸し暑かった。


 帰り道、一人でトボトボと歩いていると、三木先生の言葉が頭によぎった。


 何か悩みがあるなら相談しなさい。先生はそう言った。


 先生に相談すれば、何か変わるのだろうか・・・?


 いや・・・きっと相談してもこの現状は変わらない。


 僕は今真っ暗な所にいる。そこから出たいと思っていない。だから変われないんだ。


 ずっと変われないままなんだ・・・。


『このままでいいのかよ!お前は!!』


 大切な人の言葉を不意に思い出した。そのせいだろうか、何だか胸が苦しくなった。


 わかっているんだ。このままじゃあいけないって、僕が一番わかっているんだ・・・!


 歩く足を止め、空を見て僕は呪文のように呟く。


「僕は変わりたい・・・変わりたい・・・変わりたい・・・!」


 ちっぽけな望み。でも、僕にとっては今一番の願い。


 そんな願いを遠く何億光年も先にある、光り輝く星々に願う。


 変わりたいと・・・ただ願う。


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