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魔法工学はどこまでも行く  作者: キーくん
序章【魔法が使えない少年】
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野外授業②

 白い霧と空間の中を俺達は歩いていた。

今は学園長室に向かう途中だ。


「学園長はなぜ僕らをお呼びになられたんでしょうか」


  小声でレディアスが話しかけてきた。


「さあな、 ……でも、 悪い予感しかしない」


 それに対し、 俺の率直な意見を述べる。


「その予感は是非とも外れてほしいものですね」


 同感だ。


 しばらく歩いていると、 ぼんやりと学園長室が見えてきた。 それはなぜだか遠近法が崩壊しているように見えるくらいにおかしい部屋だった。


「もしかして、 あれですか?」


「うん」


 レディアスの顔が少しひきつっているのが見える。

まぁ、 その気持ちはとてもよくわかる、 俺もそうだったからな……。


「ついたぞお前ら」


 部屋が見えてきてから『5分ほど経過』して、 ようやく学園長室にたどり着いた。

着くの遅くね? と思うかもしれないがこれは正しく『防衛魔法セキュリティ』が働いている証拠だ。


 学園内の至るところに、 というか学園全体に『防衛魔法』が働いている。

それは場所によって効果が大なり小なりの違いが現れる、 例えば教室に部外者が入ってきたりするととりあえずの挨拶がわりと言わんばかりに侵入者の魔力に合わせて『3属の魔法』が発動する。 火、 水、 風、 それら全てが襲ってくるのだ。


さて、 それでは学園長室は?


 こう見えて……というかまだ見えなていないが、 学園長はかなり凄い魔法使いだ。

強大な魔力に強力な魔法に術式、 そして凶悪な思考を持ち合わせる学園長を狙ってくるやからは大勢いる。

そのためその部屋には強固な『防衛魔法』がかけられていて、 『幻覚術式オーバーフィール』と『空間を歪めるなにか』を用いて学園長室を隠している。

『術式』というのは魔法とはまた違う方式の魔力を消費することで発動するもののことだ。

魔法に比べて魔力の消費が激しい分、 かなり強力な効果を発揮するものが多い……が、 使用するために『陣』や魔法と同じく『詠唱』が必要なため使い勝手は悪いと言える。

ぶっちゃけてしまうとこれも俺は使うことができない。

『空間を歪めるなにか』に関しては詳細が明らかになっていない。 恐らく学園長のオリジナル魔法だと言われているが……。


この2つを使用することにより、 今俺達が歩いてきた白い霧と空間が出来上がるのだ。


……にしても、 部屋の前に立ってあらためて思う。



「ほぇ~……。 大きいね~、 扉が」


「大きいですね、 扉が」


そう、 扉の大きさがおかしい、 折り畳み式の部屋か? と思ってしまうくらいに、 部屋の大きさに対して扉がでかかった。


コンコンッとノックをして、


「失礼します、 学園長御用件はなんでしょうか」


ドーバ先生が部屋に入っていく。

中は色鮮やかな壁に赤いカーペットの床、 いかにもお偉いさんの部屋のようだ。

奥には質が良さげの木で作られてそうな机に椅子、 そしてそれに誰かが座っていた。


「おや、 来たのかいね……。 とりあえずそこに腰を掛なね」


少し変わった語尾が気になる、 初老を迎えるくらいであろうこの人こそこの学園の長、【リミナード学園長】だ。


……腰を掛けろと言われたが、 その腰を掛けるための椅子がどこにも見当たらないのだが、 これは床に座れということだろうか。


「学園長、 椅子がないです」


「そうかいね、 じゃあ立っていなね」


このババアっ!

以前、 俺はここに来たことがあるのだが相も変わらずふてぶてしい婆さんだった。


「さて、 手短に話すとあんたらを呼んだのは『討伐依頼』を引き受けてほしくてね、 今から現場に向かってもらうよ」


『討伐依頼』これは近隣の住民に始まり、 町、 都市、 さらには国からこの学園へ魔物や犯罪者の討伐を依頼されるものだ。

討伐のほかにも色々な依頼がくるのだが、 討伐に関しては本来3年生がやるものだったはずだ、 それをなんで俺達が……。


「……具体的にはどのような依頼なのでしょうか?」


レディアスが食いつくように質問した。

こいつがこういうことに興味を示すとは以外だな。


その質問を待っていたかのように学園長は詳細を話す。


「すぐそばの平原にBランクの魔物が現れたらしくてねぇ、既に人的被害もでてるみたいだからね。 そいつを討伐してきてもらうよ 」


Bランク……というと土地とか森とかのボスレベルじゃないか!

すぐそばっていうと、 確かFランク程度の大人しい魔物しかいない平和な平原じゃなかったか?

なんでそんなところに……。


「なんか面白そうだね~」


呑気に俺に耳打ちするカーニャ。

……なぜそう、 楽しそうなんだお前は。


「しかし学園長、 確かにこの3人は1年生の中でも群を抜いて戦力はありますがまだまだ子供です。Bランクともなるとやはり3年生にやらせるのが一番妥当では?」


ドーバ先生が異論を挟んだ。

一応俺達のことを評価してくれていることに少し嬉しさを感じたが、 子供扱いされるとムカッとしてくるのはやはり子供だからなのだろうか。


「【アカシノミ学園】の方針だからねぇ、 『社会に貢献できる人材を育て上げる』その年齢でその子らの力量なら今のうちから経験させておいたほうがいいだろうね 」


「……ですが学園長、 やはり危険かと」


引き下がろうとしないドーバ先生。

俺達のことをそんなに心配してくれるなんてっ……。 いや、 あの顔はとても面倒くさいと思ってる顔だ、 ドーバ先生が呼ばれたということはつまり『引率』の先生として選ばれたということであり……


「だからこそねドーバ、 あんたを呼んだんだろうねぇ?」


こうなるわけだ。

多分、 これを回避したかったのだろう。

ドーバ先生は腕を組ながら嘆息し、なにかを諦めたかのように


「チッ……お前ら、 やりたいかやりたくないかだけ言え」


と言った。


それを聞いた俺達3人は顔を見合わせ、「ねぇ、 今舌打ちしなかったかいね?!?」と驚愕する学園長を無視して、 こう言った。


『やります!』




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