第5話
第5話
「わあ~美味しそうですね~」
「おう、まだまだあるから腹いっぱい食えよ!ってなんでだよ!?」
アイシャが取ってきた余計なもの(毒草やら雑草やら)の処理を終えた俺はようやく飯にありつけると思っていた。
思っていたのだ。まさかアイシャが帰らずに夕飯をかっさらおうとするとは思っていなかった。
「なんでお前に飯を与えなきゃいけないんだよ!俺は飼い主か!?」
「んな!?ペットみたいに言わないでください!?私はれっきとした獣人ですよ!?」
「れっきとした獣人なら勝手に人んちで飯食おうとしてんじゃねえよ」
こちとら飯を渡す気はない。久しぶりにクルルソウが手に入ったのだ。ここはいつもより豪華にしようと思って肉も買ってきた。
「私には先生のご飯をもらう権利があります」
「はあ?何を言って…」
しまった!!これを狙ってやがったのかこのワン公は!
「そう、先生が作ったその料理。それには私がとってきたクルルソウも入っているのです!!
取ってきた野草は基本的にとった人のもの。それがルールですよね?つまり私がとってきた
クルルソウが入ったその料理も私のものです!!一部だけですが…」
正直なところ詭弁である。「取ってきた野草は基本的に取った人のもの」それは確かに常識だった。
しかし二人の関係は対等ではない。アクスは薬師、アイシャは一応薬師見習いの立場なのだ。
そして、見習いがとったものは基本的に師匠たるアクスのものとなる。例外は師匠が許可したとき、
そして単独で採取したときだけである。つまりアクスが許可をしなければアイシャがとった野草はアクスのものだ。
とはいえ、上目づかいでこちらをみるアイシャに何の情も浮かばないが、今日アイシャが頑張っていたというのも事実。
これはご褒美を上げてやるべきか。アクスは頭を掻きながら答えた。
「…しょうがない。今回だけだぞ」
「っ!はいっ!!」
こうしてアイシャはアクスの夕飯を一緒に食べることになった。
「そういえばワン公」
「はい?」
食事が終わり、一段落した。ちょうどいいから朝から話そうと思ってたことを話そう。
「もう明日から来なくていいぞ」
「はい?」
ちゃんと聞こえなかったのか聞き返してきた。
「だから、明日からうちの店に手伝いに来なくていい」
アイシャのきょとんとした目に涙が浮かんだ。一粒涙がこぼれた途端、次々と涙がこぼれ滝のようになっていた。
「ちょっ!?どうした!?何があった!?」
「…ひぐっ、…ごめん、な、さいっ、…あれ?…なんで、涙が、でるんだろう…?」
とりあえず頭を撫でる。
「何か知らんが大丈夫だ。いや何が大丈夫なのか知らんがとにかく大丈夫だ」
ずいぶんと情けない言葉しか出ない。ええいっ、俺の口め。こんな時くらい仕事しやがれ。
しかし、情けない言葉に反応したのか、アイシャは泣き止んでいた。
「いきなり泣き出してすみませんでした」
「おう、まあいいが。大丈夫なのか?」
「はい、大丈夫です。」
「そうか…」
真っ赤な目をしてよく言う。
「今までありがとうございました。あと、お役に立てなくてすみませんでした。せっかく助けてもらったのに恩を返せませんでした…」
「おう……ん?ちょっと待て」
なんかあいつ勘違いしてないか?
「恩を返せなかったなんてとんでもない。ワン公のおかげでむしろ今までで一番の売り上げが出たんだ。助かったぞ」
「え?………恩返しをしたいって言うくせに役立たずだから私のことはもういらないんじゃないんですか?」
やっぱりこいつ、完全に勘違いしてやがる。
「あのなあ、そういう意味じゃなくて純粋にお前に使った薬代が回収できるほどの売り上げが出たからな。もう恩返しなんてしなくていいってことだよ」
「っ!」
また泣き始めた。
「今度は何だ?」
「うぅ…恩返し…できてたことが…うれしくて…。ぜ、全然…役に立てなかったからっ…」
「大丈夫だ。ちゃんと役に立ってたよ。ありがとな」
アイシャの頭を撫でる。
アイシャが泣き止むまで、頭を撫でていた。




