第3話
第三話
「お買い上げありがとうございました!!」
今までは静かでろくに会話も聞こえなかった薬屋に元気な声が響く。
その声の主はついに薬屋の手伝いを許されたアイシャだ。その笑顔は見ただけでけがが治りそうなほど
癒される笑顔だった。今、軟膏を買っていった冒険者はアイシャの笑顔を見て鼻を伸ばしていて、
連れの女冒険者に脇腹をつねられていた。
「なんだか今日はよく売れるなあ」
店主であるアクスは店のカウンター奥にあるちょっとしたスペースの工房で薬を作りつつ、
アイシャがここに手伝いに来るようになってからの売れ行きの上昇を複雑な気持ちで眺めていた。
「品質は変わってないのに、こんなに売り上げが増えるとはな…」
「私のおかげですよね!!」
独り言に割り込むようにアイシャが言った。その顔はいかにも褒めて褒めてと言っているようだった。
というか尻尾がブンブンと振られていて体全体で褒めてほしいと訴えていた。
その様子にアクスは思わず頭を撫でた。
「わふぅ~~~~~~~♪」
なでなでなで
「あふぅ~~~~~~~♪」
なでなでなでなでなでなでなでなで
「ってどんだけ撫でてるんですか!!」
「はっ!?撫で心地がよすぎて意識がなかった…」
「んな!?何を言ってるんですかこのスットコドッコイ!!」
「あ、クロソウがもうない」
「話し逸らすなですよ!!」
「しょうがねえ。今日はもう店閉めて薬草取り行くか…おいワン公、お前も行くか?」
「う~~~行きますよう」
「だったら早く片付けるぞ。ほれ早くしろ」
いつもは薬草のストックを切らすということはないのだが、今日はいつもの倍くらい売れたのでしょうがないだろう。
「んじゃ、行くか」
「はい、ということでやってきたのは南の森でございます。ここは注意しなければいけないような獣や魔物は
おらず、薬草がそこらかしこに生えているので薬師にとってはおいしい森だ。覚えとけワン公」
「はいっ!」
前に薬草をとった時に薬草が群生しているところがあったのでそこを目指す。
「おっ」
「ところで先生、薬草はどこに生えてるんですか?」
「足元」
「え?」
「お前、薬草、踏んでる」
「ええ!?」
せっかく見つけた薬草がいきなり前に来たアイシャによってふみ潰されていた。
「ふええええええ!?ごめんなさい~!」
すぐにその場から飛び退くと土下座する勢いで謝り始めた。
「あ~~気にすんな。誰だって最初はそんなもんだ。ちょうどいい、薬草の説明すんぞ」
踏まれていた草を根からきちんと抜く
「これはクロソウ。見ての通り黒っぽいのが特徴だ。こいつはすごいぞ。まず、だいたい何にでも効く。
もちろん効果はそこまで高くないがな。とりあえず何かあったらこれを探せってのが冒険者の知恵らしいぞ。
んでもって冒険者たちがよく買っていく軟膏の材料にもなる」
「そんな大事なものを私は…」
アイシャは落ち込んですごく申し訳なさそうだった。だから
「だから、あんまり気にすんなって」
そういって頭を撫でた。
「でもっ…」
「もう一つこいつのいいところを教えてやる。実はな…こいつ、どこにでも生えてるんだよ。」
「ふぇ?」
「周りをよく見てみろよ。そこかしこにあるだろ?」
「あ…」
周りにはクロソウがあちこちに生えていた。
「もちろん、10や20踏まれたらさすがに困るが1つや2つ踏んだところで変わりはねえよ」
徐々に安心したのか元のアイシャに戻っていた。
「わかりました!次からは気を付けます!」
「おう。とりあえずここら辺のを取るか。取るときは根からとるように気を付けてくれ」
「わっかりました!!あそこのまとまってるとこからやりますね」
グシャッ
「「あ…」」
アイシャが一歩踏み出したその足元には…
クロソウがあった。
「ワン公~~!!!」
「ごめんなさい~~~~~」
二人で行う採集はなぜか一人でやるときより時間がかかった。




