第2話
第二話
「おはようございます!先生!」
店を開けようと戸を開いたら満面の笑みを浮かべた犬耳少女がいた。
「あ~、お前さん、何でここにいるんだ?」
「先生をお手伝いするためです!」
満面の笑みを浮かべる少女。その目は手伝わせてくれるまで帰りませんと言っているかのように強く輝いていた。
(な~んでこんなことになっちまったかねぇ。)
現実逃避をするように昨日の出来事を思い出していた…
回想
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「お礼に何か手伝わせてください!!」
「断る」
部屋は静寂に包まれた。
「なんでですか!?」
「いや、俺は一人のほうが気楽でいいんだよ」
「助けてくれたお礼をしたいんですっ」
「お礼?んなもんいらん。店の前に倒れられたら邪魔だから治療しただけだ」
「な!?乙女に向って邪魔とか言わないでください!!」
「乙女?ただのワン公の間違いじゃねえか」
「私の名前はアイシャです!!ワン公じゃありません!もう怒りました。私の怒りが有頂天ですよ!!」
「有頂天なのか…」
「うるさいですよ!!覚悟してください!手伝わせてもらうまであきらめませんよ!」
そういうとアイシャは走って去って行った。
「いや、今日は安静にしてろって言っただろうよ…」
―――――――――――
回想終わり
「さあ、そろそろあきらめて私を手伝わせたらどうですか!?」
満面の笑みを浮かべつつ鼻息を荒くしながら詰め寄ってきた。尻尾もブンブンと音が鳴りそうなくらいに振られていた。
「はあ………」
「さあ!さあ!」
「しょうがない…」
「!!っ、じゃあ!」
「おいワン公…」
「はいっ!」
「おすわり」
「はいっ!」
「お手」
「はいっ」
「ゴーホーム」
「わうぅん!!」
アイシャは流されるままおすわりをし、差し出された手に自分の手を乗せたあと走って家に帰って行った。
「って、なんでですか!!私は犬じゃないです!犬耳族ですよ!」
と思ったら帰ってきた。
「いや~、爽やかな朝だな」
「全力でしらばっくれるなですよ!」
目をそらして口笛を吹く。
「こうなったら意地でも手伝わせてもらいますっ!それでは薬草を取りに行ってきますっ!」
勝手に判断して勝手に決めるとアイシャは走って北門のほうへ行った。
(なんで勝手にきめんだよ…というかそっちは岩山だぞ。大丈夫かあいつ…)
彼が店を構える街は北と南に門がある。北門は岩山へ、南門は森へと続いていていつも彼が薬草をとっているのは南の森だ。
(それにしてもなんであのワン公は俺にこだわるかねえ…)
「まいどあり~」
太陽が上がりきり朝の騒動も忘れたころにアイシャは戻ってきた。しかしその様子は朝とは一変して落ち込んでいるようだ。
耳も伏せて尻尾もだらんと垂れている。
「あ?ワン公じゃねえかどうだい薬草はとれたか?」
手伝わせる気はないくせにどんな薬草をとったか気になるのか。思わず声をかけた。
「くぅ~ん。すみません、先生。これしか取れませんでした」
懐から取り出したのは3束くらいの草だった。
「お、おう、ちょいと見せてみな」
朝とは全く違う空気に驚いて思わず受け取ってしまった。
「これは…」
渡された草をよく見ると絶句した。なぜならそれは…
「これはベニトングソウだな毒草だよ。何の役にも立たない。百害あって一利なしだ」
「そんなぁ…」
真実を告げるとアイシャは目を潤ませた。
「もうあきらめろって、そもそも薬草集めは素人にはできねえよ。薬の知識がなきゃその草が持つ意味が分からないからな」
「うう……」
「というか、何でそんなに俺にこだわるんだよ。店の前に倒れてたのを助けただけじゃねえか。」
「先生は知らないですか?犬耳族の掟は」
「なんでいきなりそんな話を?まあいい。で?」
「掟の中にこうあるんです『もし誰かに命を助けられたのなら、その礼のためその誰かのために命を張って手伝いをするべし』と
パパとママに助けられたという話をしたら、だったらなんで掟の通りにしない!?と言われ家から追い出されました。だから私は先生のお手伝いをしたいんです。」
「…そうか……」
ベニトングソウをアイシャに返しながらつぶやく。
その話を聞いて思い出した。犬耳族の掟はうわさで聞いたことがあることに。その時は「そんなこともあんのか~」と思っただけだったが
だが、今話を聞いて、弟子をとらないという自分の中の掟が揺らぐのを感じた。
そのとき、事件は起こった。
「おい、薬屋!こいつ、顔色が悪いんだがどうにかならねえか!?」
いきなり、背中に顔色の悪い男を背負った男が店に入ってきた。
「っ!!」
すぐに顔色をチェックする。これは…
「ん、これならすぐ治る。」
「そうか、そりゃあ良かった」
「今薬を持って……あっ!」
一つ重要なことを思い出してしまった。
「薬がない……」
昨日アイシャに使ったのがその薬の最後の一つだったことを忘れていたのだ。
(くそっ!!どうするどうする。今から取りに行ったんじゃ患者が苦しむ。しかし、取りに行かなければ薬はない…
何かないか、何か…)
周りを見渡して使えそうなものを探す。
そして…目に留まったのはアイシャがとってきたベニトングソウだった。
「アイシャ!その草よこせっ!」
「はっはい!」
アイシャからベニトングソウを受け取ると石うすで葉を潰して出てきた汁を患者に飲ませた。
すると、患者の顔色は元に戻った。
「ふう…」
「おお、治ったか。さすが薬屋だな」
「まあな。こいつはきょう一日自宅療養だ。おら代金おいてとっとと出てけ」
代金を受け取り患者を帰すと店の中には店主とアイシャだけになった。
「ベニトングソウは毒じゃなかったんですか?」
アイシャが問いかける。
「根はな、しかし葉は薬になるんだ。覚えとけ、これから必要になるからなこの知識は」
「っ!!それじゃあっ」
「今回はお前のおかげで助かったからな。しょうがねえ、ここで働きな。」
「ありがとうございますっ!!」




