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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

好物はハンバーガー

作者: 猿楽

その日、俺は暇をもてあまし近くのリサイクルショップに車を走らせていた。

10分程の道のりだが信号が多く、交通量もあるので結構混雑する事が多い。

俺の数台前の右車線を走る赤い高級外車が、前の軽自動車を煽っているのが見える。

「あ〜ぁ酷いな派手にやってるよ 」

信号の度に軽にべタ付けで止まる高級車。

「ここは、何やっても一緒なのに」

今日の様に車が多い日は急いでも変わらない。

「あれじゃ前の車もストレス溜まるな」

3回目の信号。

「ん?」

古い軽自動車の運転席から男が降りてきた。

高級車を睨み付けながら近ずく。

その車線だけ進まないのでやがて追い付いてしまった。

高級車の窓を開け甲高い声で叫ぶ女性。

高圧的な口調で男を罵りながらクラクションを鳴らす。

後ろの車はその光景に勝手に巻き込まれる。

ゆっくりと進む俺の車線。目視からドアミラーでの観察に変わる。

「良く見えないな、大丈夫か」

俺は振り返りその場所を見た。

開いた窓から髪の毛を持たれ上半身を引きずり出された女性。


!!

そこに容赦なく振り降ろされるバットと蹴り。

数回殴打した後、更に引きずり出されアスファルトに転がされた。

後は同じ光景が続く。


慌てその場を離れようと動き出す車が数台割り込みを始めた。

身動きが取れないパニック渋滞。

俺はガラガラの軽自動車の前に車を止め見ていた。

助けたいが体が反応しない。呆然とその光景を見ていた。

車列の何人かが携帯で何処かに連絡している。


…臨時ニュースです…

本日未明に護送中の凶悪犯が逃走しました。

場所は○○市○○役所付近です。

見かけた方は速やか警察までご連絡ください。


尚、逃走中の犯人は3名で車を奪って逃げている可能性が有ります。

臨時ニュースを終わります。



その内の1人か…


動かなくなった女性に何か文句を言い放ち男が向きを変えた。


うわっこっちに来た。

俺は慌てて車をスタートさせた。

バックミラーには車に乗り込む男。

猛スピードで追い付いてくる軽自動車。

俺は車を端に寄せやり過ごす。

追い越しざまにチラリと目線が会い、身を縮めた。


軽自動車が去り、一息ついてから、正常な判断力が戻り始める。


ん?


視界の中に見覚えのある車が…


俺の車の横に止まった。


硬直する俺。


乗り込んでくる男達。

俺は言われるままに車をスタートさせた。

ミラーにはドアを開け放たれた赤い高級外車が映る。

「さっきの女ありゃ死んだぞ、まったく」

「あんた見てただろ」

「…」

「世の中先はわからんな」

マジか…

俺は心の中で呟いた。


臨時ニュースです。

逃走中の犯人の奪った車は赤い高級外車との事です。尚、運転していた方は連れ去られた可能性が高いとの事です。

…臨時ニュースでした…


「出来るだけ遠くに行きたいから頼むよ」

「変な真似しなきゃ無事に帰れるから」

「…」


猛スピードで走るパトカーとすれ違う。

すぐに次のパトカーもすれ違う。

4台すれ違った。


「まだばれてないみたいだな」

途中ハンバーガーを買わされそれを貪る犯人達。


満タンの燃料計に目をやり深いため息をついた。


検問を潜り抜け県外に逃げ延びた犯人と俺。

再びドライブスルーに立ち寄った。

山道に入り人気がなくなっていく。


もうすぐ燃料が切れる。


犯人が無言で差し出したポテトの残りを飲み込む。


林道を指示されやむなく入った。

緊張で喉が渇く。


プスプスップススン

燃料が切れた。




ニュースの時間です。


脱獄犯は未だ逃走中です。犯人の特徴は…


続きまして、今日未明○ ○県の山中で崖から落ちたと見られる乗用車が発見されました。

中には運転していたと見られる男性の遺体があった模様です。


「こんなにハンバーガーを食べたのか」

「覚悟の自殺か」

「最後に好きなもの腹いっぱい食べて」

「まだ若いのに」


「ずいぶん遠くから来たんだな」


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