表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/3

月明かりのキス

ガールズラブです。

卑猥な性描写はありません。(それらしい場面は出てきます)


なお連載です。

これからどんどこ登場人物を出していきます。


たまに別の人が主人公になったりします。

 

 賑やかというより騒がしい学生たちの中、自分だけが新しいクラスメイトや寮の同室者に期待することなく、むしろげっそりと掲示板に張り出された表を見ていた。

 佐々木香穂理。2-C。206号室、同室者北條蓮。

 よりによって・・・・・・。滅多に同じクラスで同室という-またその反対もしかりー環境を学校側が配慮しているにもかかわらず、なぜ自分だけがほぼ24時間生活を共にしなければならないのか。

 しかも相手はあの、北條蓮。あいつなんかと24時間一緒の空間にいるなんて、無理。絶対無理。

 なにしろすべてにおいて私と正反対なのだ。話が合うわけがない。第一

自分は北條蓮が大っ嫌いなのだ。

 しかしここで何時間も眺めていても表の文字が変わるわけでもないので、仕方なく荷物でパンパンになったボストンバックを持ち直した。

 荷物が重いせいもあるけど、これからの1年を思うと自然と歩く速度がゆっくりとなる。

 

 広い玄関ホールをくぐると、それまで忙しく新しい自分の部屋と廊下を行き来していた、同じ新2年生のみんなが一斉に自分を見る。

 自意識過剰ではなく、しばらくは何かと注目をあびることになる。

 なぜならあいつの同室者だから。

 やっかみ半分、羨ましそうなのが半分っていったところかな。

「・・・・・・あまり気にしないの。注目されているのもせいぜい1週間ぐらいなんだし」

 声をかけられのと同時に肩をたたかれ、思わずもういじめ!?と慌てた。

 振り返るとそこには去年の同室者、森口美由。

「なんだ、ミユか。脅かさないでよね」

 ミユはスリッパに履き替えながらニヤニヤしている。

「わるいわるい。あんまりにもしょぼくれてた背中だったからさ」

 あまり悪いって思ってなさそう。ジロリと睨みあげた。

 そのまま二人並んでソファーが並んでいる学生室に向かう。

 みんな自分の荷物の片付けで、のんびり休憩する暇なんてないから、ガラガラ。設置されている自動販売機で飲み物を買って、一番奥のソファーに座った。

 「しっかし女の子の気持ちはよくわからないな。あれは憧れの範囲超えているよ。まぁ、崇拝っていうの?そんな子もいるし、結構本気で惚れている子も多いだろうね。私からみたら女が女に惚れるってやつが一番わからん」

「ミユは外に彼氏いるものね」

「うん、だから余計なのかも。でもレン相手だとわかる気がする」

 『レン』って呼び捨てできるんだ、さすがなミユ。

「北條さんって綺麗だものね」顔だけはイイと認める。本当に顔だけだけど・・・・・・。

「そうそう。ただ綺麗なだけじゃなくて色気もあるじゃない」

 は?色気?

「それにレンが異常なほどモテるのって顔だけじゃないし」

「それって大金持ちだからってこと?」

 一応清成学園はお嬢様学校なので、比較的裕福な家庭の人たち(あたしもだけど)が多いけど、その中でも北條蓮の家はダントツで、うわさによるとどこかの国を替えてしまうぐらい資産を持っているとかいないとか。

 この学園も北条家が経営している。つまり理事長の娘で、学校以外にも病院やら国内国外にいくつもの企業を持っているとか。つまりとんでもないお嬢様だ。

 父親が大学教授だけの私とは大違い。

「そうじゃなくてさ。もちろんそれもすごいけど、なんていうか全部すごい」

「まぁ、確かに入学してからずっと首位だもんね。春休み運動部の手伝いでなんか大会まででたんでしょ」

 そういう私は成績はどんなに頑張っても中の下かよくても上の下。運動も得意ではない。

 ほら、やっぱり合うわけない。

 差がありすぎてますます気持ちが重くなる。無意識にため息をついた。

 いやな記憶も出てくるし・・・・・・。

 察しがいい学歴2位のミユが心配顔で

「なに?もしかしてまだあの事件引きずってる?」

 うん・・・・・・と頷いた。


 いつまでも止まない拍手。

 カーテンコールも終わり、気の早い幾人かが既にコートを羽織っている。

 あたしは目を閉じてついさっきまでの演奏を思い出していた。

 クラシック音楽もたまにはいいかも。

 そう思えるぐらい、とても素晴らしかった。

 もう少し余韻に浸っていたいけれど、後ろの席に座っている隣のクラスに退出の号令がでている。次がうちのクラスの番だ。

 仕方がない。目を開けて帰り支度をするか、と思った矢先、唇にプニっとなにかが当たった。グミをやわらかくして温めたみたいな、そんな感じ。

 遠くの方で声があがる。

 なんだろ?

 目を開けると、目の前に顔があった。相手の顔が離れるまでキスをされていることがわからなかった。

「あ・・・・・・あたしのファーストキ、キス」

 慌てて唇を押さえたけど時遅し。

「アハハッ。ごめん。ついつい」

 そう言って爆笑している北條蓮。少しも謝罪の気持ちが感じられない。

 そんなことより・・・・・・。

「ぎゃぁぁぁ!」

 私の叫び声も大勢の生徒の悲鳴にかき消された。


 忘れたくても忘れられない去年の12月の音楽祭のキス事件。

 あのあと、3、2年生の先輩たちにまで知れ渡って、軽い嫌がらせまでされていた。

「せっかく3年が卒業して、これで嫌がらせがなくなる~ってほっとしていたのに。これじゃ同じ2年からもされそうだよ」

 よしよしとミユが頭を撫でてくれるけれど、少しも気分が浮上しない。

「レンに守ってもらえばいいじゃん」

 うんうん、それがいい。一人で納得しているけど、北條に守ってもらう自分の姿が全くもって想像できない。


 2階で3階に部屋があるミユとは別れ、決められた206号室のドアの前。

 ノックをするか、あるいはしないで黙って部屋に入るかで悩んでいる。

 ノックをする=こっちが下でに出る。遠慮している=なめられる。

 ノックをしない=無作法だと思われる=これまたなめられる。

 同じなめられるならどっちがいいかしら。う~ん。

 礼儀としてドアをノックする。あくまでうわべだけの礼儀。そうするように育てられているからなだけ。

「はい、どうぞ」

 中からいくらはハスキーな声。間違いなく部屋に北條がいる。

 急に、緊張してきたのかドキドキしはじめた。ドアノブを握っている手が汗かいてきた。どうしよう、ドアが開けられない。

 いつまでも部屋に入ろうとしない来客に痺れを切らしたのか「どうかしたの?」という声と共にドアが内側から開いた。

 ドアノブを掴んだままだったあたしは急に引っ張られて体制を崩す。

「危ない」

 白い手が私を支える。北條の体温とかすかに香るユニセックスな香水の香りを感じて、身体が熱くなる。

「ご、ごめん」

 当たり前のようにあたしのボストンバックを持ち、右側のベットの上に置く。

「私のほうこそごめん。急にドア開けたからだよね」

「う、ううん。あ、荷物ありがとう」

 自然と視線が北條の唇にいく。

 薄くもない厚くもない綺麗な輪郭の唇。

 本当にあたしはあの唇とキスをしたのかな。

「随分遅い時間に来たのだね。カオリ」

 いきなりの呼び捨てに、思わずバックから出した教科書を落としそうになる。

「あ・・・・・・ミユとちょっと話をしてて。北条さんは早く来たの?荷物もう片付けてあるから」

「『レン』でいいよ」

「あ、う、うん」

「これから1年よろしくね。カオリ」

 握手を求められ、握る。

 綺麗な人とは指まで綺麗なんだ。

「荷物片付けるの手伝うよ」

 早く片付けて一緒に桜を見に行こうね、とウィンク。

 ドキリとした。


 その後天下の北條蓮に荷物の片付けを手伝ってもらい、そのまま中庭に桜を見に行った。きらきらと夕日に光って舞い落ちる花びら。二人して散々騒いだ後、学食で夕飯を食べ、交代でシャワーを浴びて、あとは消灯時間まで自由時間。

 レンはベットに仰向けで寝転がり本を読んでいて、私は机に向かって習慣となっている日記を書いていた。

 窓から月がのぞいていて、木々を薄暗く照らしているのがあまりにも綺麗で、手を止めては月を見ていた。

「UFOでも見えるの?」

 本を読んでいると思っていたのに、レンはあたしを見ていた。

「UFOだって。面白いこと言うね。月が綺麗だから見ていたの」

「月?ああ、たしかそろそろ満月だっけ?」

「かな?結構丸いからそうなのかもしれない」

 レンもあたしの横に並んで月を見る。

「本当だ。綺麗」

「うん」

 明かりを消してみようとレンが言う。そうだねと頷く。

 青白く澄んだ月の光がレンを照らす。思わず見とれてしまう完璧な横顔。

 この人って本当に綺麗なんだ。つくづく思う。

「・・・・・・ごめんね」

 ふいにレンが呟く。聞こえるか聞こえないかの小さな声。

「何が?」

「・・・・・・うん。去年のアレ」

 いいにくそうに言葉を濁したけれど、アレが去年のキスのことだとわかった。

「うん。からかっただけでしょ?もういいよ」

 今朝まで絶対に許せないと思っていたけど今日一日一緒にいて、楽しかったし、こうやって真剣に誤ってくれているのがわかる。

「・・・・・・違うよ」

「ん?」

「謝っているのはたしかにキスしたことだけど・・・・・・」

 レンの指がそっと私の指を握る。

 なんだろ・・・・・・。なんだか変な気持ちになる。

「からかってキスしたわけじゃない。あの時カオリの顔を見ていたらキスしたくなったから・・・・・・したんだよ」

 驚きすぎて言葉が浮かんでこない。

 ぎゅっと強く手を握る。

「あれから私も考えてたんだ。私は別に女の子が好きってわけじゃない。なのにどうしてなんだろうって、ずっと考えてた。そのうちカオリがあのことで嫌がらせを受けているって知って、つからった。・・・・・・本当は何度も謝ろうと思ったんだ。でも怖くて。拒絶されたらどうしようと思うとできなかった。今日同室とわかって、どうしたらいいのか正直にいうと不安だったけれど、でもカオリが普通に話しかけてくれたから、こうして謝ることができた」

 一気にしゃべると照れたのか「もう寝るね」とベットにもぐってしまった。

 その夜あたしはずっと眠れずに、レンが言った言葉を何度も繰り返していた。

 ようやく明け方ウトウトしてきたとき、そっと自分じゃない体温を感じたけど、たぶん気のせい。

 


 


 

ボーイズラブがはやっているならこの際ガールズラブもはやらせたい!

と、一念発起。

高校生を卒業して早十数年。

あのころどんなだったなんて覚えちゃいない。

でも恋の味は覚えていた!!





まだまだ続きます。


誤字脱字あるかと思いますが、読んでやってください。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ