怪奇事変 放置された家
第三十四怪 放置された家
この街には有名な家、アパートがある。
そこには誰も住んでおらず、誰かが前に住んで居た形跡だけが残された不気味な家として、近所の住民からお化け屋敷と言われる始末であった。
実際はどんな理由があってそこに放置されているかは不明で、調べてみれば地盤の緩みが発覚したとか様々な憶測だけが飛び交っている。
いつからそこに放置されていたのかは不明だが、年期が経っていることを見ればだいぶ昔からなのは明らかである。
稀に近所の子供たちが肝試しで悪戯に入ろうとすることから、市の方で進入禁止のテープなどが貼られているが、お構いなしという感じだ。
中にはスプレーで悪戯描きなどをされる始末で、既に色々な視点から新品は愚か、住居として扱われていた形跡すら怪しい。
朝の通勤時間、この近くに住んで居る子供たちはこの家を通過しなければならない。
学校で不気味な噂から恐怖と言う概念が出ていらい、ボランティアの人たちが此処に配置されることが当たり前となった。
それ以来か、学生たちは安心して通学に専念できているらしい。
「……全く」
老人が呟く。
後ろにある家を見ながら。
「こんな所にお化けなんてものが居るはずなかろうに、がしかし——」
老人は家の中の家具などを見ながら独り言をつぶやく。
「もう数十年経つと言うのに、このまま土地を放置しておくのも勿体ないの~」
そんなことを思いながら家を見ていると、ふと二階のカーテンが揺れた気がした。
「ん?」
目を凝らしてみるも、同じような現象を起きることはなくきのうせいだと判断し、仕事に戻る。
その日は風もなく明るい日で、特に風も吹いていなかった。
児童が帰り道、例の家を通っている。
ボランティアの人もいるので全く恐怖がないと言えば嘘になる。
あの家を見ていると不思議と鳥肌がたってしまうからだ。
学校の間ではお化けが住んでいる屋敷と言われており、怪談として語り継がれている。
ある人物曰く、一階の部屋の奥で人のような姿をした後ろ姿を見たとか……ある人物曰く二階で風もないのにカーテンが揺れたとか。
様々な内容が混合してどれが真実なのかも不明、ただそこにあるだけで恐怖の対象となることから“お化け屋敷”と名付けられた。
実際は屋敷などと大層な物ではに構造物だが、皆此処を通りたがらないため、反対側の歩道に移動して登校することが多い。
「お~い!あまり固まって歩くなよ!そこ!ランドセルで遊ぶな!」
午前と違い午後は若い人物がボランティア活動として児童たちを見守っている。
実際、お化け云々よりもこうして見守れてることで防犯の意識も強まっているため、この家の噂には助けられているのが事実だ。
子供たちはこの家を“お化け屋敷”と呼ぶが大人たちは“防犯の家”と呼んでいる。
何しろその誰が流し方、分からない都市伝説のお陰もあってこうして見守ることができるのだから。
ある程度子供達が通るのを確認すると、青年はアパートの方を向き、家の中を見る。
それが彼の日課でもあった。
「勿体ないな……」
散乱された家の中、家具、全てを置いて此処を出て行った人に何が遭ったのかはわからない。
だが不遇にもこの家があるお陰で、此処の道路に関してはかなり保護者の意見もあって防犯が強くなっているのも事実であった。
実際、昔の話だがこの家が機能を失った時、不法侵入は勿論のこと、ひったくりなども多かったのも事実だ。
そこから子供たちの噂話が流れて以来、学校側も注視するようになりこうして防犯の機能も強くなったと言えよう。
お陰様で夜を除き、昼間は平和なものだ。
同時に——皮肉でもあるが。
「“お化け屋敷”と不名誉なあだ名を付けられたことで治安を守れる……か」
そう言う歴史はこの家に限った話ではないが、それでも不名誉だと思う。
家の中を見ているとそう思ってしまう。
「……ん?」
積み上げられた段ボールが少し動いたような気がした、目を凝らした見ようとするも再度動くことはなかった。
「気のせいか」
それ以降青年が家を見ることはなかった。
どうせ小動物程度なら家の中に侵入することができる。
例えば少し割れた窓、そこから猫が侵入して住処にしている可能性は十分あるのだから。
「はは」
客観的に自分を嘲笑的に笑ってしまう。
子供たちの噂が、周囲の噂をまるで自分も信じてしまっているかのように思えてるからだ。
そんなことはない。
青年は知っていた、この家の真実を。
「(元々地盤が悪くて退去せざる終えなくなったのは事実、大家から聞いたしな)」
大家には気の毒だがその話を聞いてしまっていたのだ。
別に耳を傾けていた訳ではない、本当にたまたま、ちょっと立ち聞きに偶然聞いてしまっただけの話だ。
今となっては都市伝説やら幽霊やら色々噂されるが、真実をしればこんなものだと青年は子供たちの帰宅を見守る。
「此処が例の“お化け屋敷”か」
「ああ。なんでも地盤が悪いって話で、住人が強制退去になった噂だが、その真相とは別に夜な夜な出る白い人影や、朝だと存在をほのめかす様にカーテンや置物を動かしたりとかしてるらしいぜ」
「なるほどな、流石に朝は見張りが多いからな、その現象も収めてみたいもんだが——」
「リスク高いし、夜で良いでしょ。あとは察だけ気を付けて——」
ガタンっと言う物音が聞こえたと同時に2人はその方向に反射的に向く。
今のはドアを開け閉めする時の音のように聞こえたと2人は同時に思った。
互いの顔を見て頷き、スマホやビデオカメラを録画モードにして慎重にアパートの中に侵入する。
「何処から聞こえたか覚えてるか?」
「左上ですね」
小声でやり取りをしながら話、直ぐに目的の場所に着く。
ドアノブに手を掛けて軽く捻ると、ドアは嘘のように簡単にその頑な扉を開くのであった。
「開いたな」
「……慎重に」
なるべく物音を立てない様にしながら慎重に内部に侵入し、ドアを音が立たないように閉める。
中を物色するように見ていくと、まるで夜逃げしたかの如く物は散乱した状態で置かれていた。
「おかしいですね、強制退去って話でも物が此処まで残ってるなんて……」
「これじゃ夜逃げじゃねーかよ、本当に噂通りなんだよな?」
「まぁでもあくまで噂ですからね、信憑性あるかないかで言われたら絶妙ですよ」
「なるほど、まぁ仕方ないか、逆に噂じゃなかったらとくダネだしな」
「ええ、再生数もめっちゃ上がりますよ!」
興奮気味の2人だったが、居間から聞こえた音に反応して押し黙る。
何かが居る……その気配を感じた2人はゆっくりと顔を出しカメラを盾にするように入ると、中は玄関同様乱雑になっていた。
「これ……鼠のフンか何かですかね?」
「きたねーな、でも居てもおかしくねーか」
2人は撮影を続けるも、そこでお互い同時に止る。
「……なんの臭いだ?」
「なんでしょ?なんだか線香みたいな香りが……」
突如なるはずもないインターホンが部屋中に鳴り響く。
「……え?」
「おい、電気何て通って——」
更に追加の呼び鐘、2人は既に緊張と恐怖にとらわれていた。
恐る恐るドアのレンズから外の様子を伺うも、そこには——誰も居なかった。
「……私、のせい」
「おい?」
急に相方がブツブツと何かを言い始めた。
「おい、なんのジョークだよ、止めろよ」
「止めろ?おい、今俺に止めろっつたのかよ!?」
急に胸倉を掴まれてもう意味の分からない状況だった。
気分がしおらしくなったり、急にキレ始めたり、何がなんだか理解が追いつかない。
「私が最初から、しっかり、して——」
「おいいい加減に——」
またインターホンが鳴る。
誰か居るのか?
そう思って窓際から外の様子を伺おうとした瞬間、相方が扉を開けてしまった。
「おい!何やって——」
「誰も居ないみたいですよ」
いや、それよりも先ほどまでまるで乗り移られたように人が変わっていたのに、一変して戻っているという言葉を使った方が正しいのか……相方は何時もの様子に戻っていた。
「お前…大丈夫……なんだよな」
「だ、い…じょう……ブ」
「?」
「だいじょうぶ、わたしが、こんど、こそ……せき、にん」
「おい?」
銀色の光る物を取りだされた、アレは……刃物だ。
「おい!マジでどうしたんだって!?」
「セ…き、にん」
真っ向から突進する形でその刃物は男の腹部に深々と刺さるのであった。
——後日、警察がやって捜査の結果、互いに殺傷し自殺したと断定された。
どちらが加害者で被害者なのか不明な状態だが、数十年放置された廃墟のアパートで2人なんらかの小競り合いがあったと警察を睨んでおり、正当防衛からか2人とも互いに致命傷となるダメージを負いこの世を去って行ったと言う見方で確認されている。
しばらくは夜も付近の巡回を行うものとして、この建物の立ち入りを厳重で周囲の住民ならび、マスコミからも侵入しないように強く念を押した。
だがそのせいもあって朝の方は大変だった。
通学路になっている件の家を通う子供たちが怖がってしまい、欠席する子まで増えたとか。
親も必死の説得や車通勤などを視野に入れたものの、あの道を通りたくないと言う子が多数増加したらしい。
そしてありもしない噂まで出回り始めてしまった。
——あの晩、2人の男性が互いにナイフで身体を刺している姿を見たと——
現場検証からもそれは想像できたことだが、具体的な内容までは公にはしていない。
誰かがそう噂を流したと想像するのが自然だろうと。
だがそれが下級生でもある小学生たちに伝わっている……情報伝達が早いことから噂の流し処は朝のボランティアの人か、教師、或いはその学生の親であるのではないかと疑いの目を向けられている。
当然本人達は否認しているものの、出た噂の目は瞬く間に広がり一時的に学級閉鎖が起きる程であった。
「正直この程度で学級閉鎖って言ったらアレですけど……」
「死人が出ちまってる以上どうしもねーべな、親が子供の心配するのも無理はね」
「けど誰でしょうね?噂を流したのって」
「さぁな。誰であれ馬鹿なことしてくれちゃ大変なことになっちまった」
「そう言えば聞きましたか?」
「なんや?」
「噂ですよ、またあの家の」
「噂は噂だ、もう忘れろ」
「でもそれが、部屋に入って行く女性を見かけたらしいですよ。それも警察が」
「警察はどうしたんだ?」
「当然声をかけたそうですが、“自分の家だから”って鍵まで開けて中に入って行ったとか」
「ほんで?」
「慌てて追いかけて止めようとしたんですけど、ドアは施錠されていて、窓から侵入したものの、誰も居なかったそうです」
「警察も疲れて目がおかしくなっちまったか?」
「でもその警察……次の日からどうも様子がおかしくなって、今は休暇中らしいですよ、新しい警察が巡回に就いたとか」
「なにや良く分からんことばかり起きてるな……」
その噂話は真実であった。
実際、前日の警察はそれを目撃して仲間に情報を交換している。
だが次の日から様子がおかしくなり、真面に働ける状況じゃなかったと同僚は証言している。
噂では——「あの人との家に帰る」と言い残して。
更に状況は悪くなり次のニュースでは警察が家で首を切って自害しているのを家の者が発見し通報。
直ぐに100当番したものの、鋭利な刃が首の骨の部分まで到達しており、動脈を軽々と切り裂いていたことから瞬時の自殺であったことが判明している。
当時、家にはその家族である妻と子供が居たが、皆就寝しており、発見したのは朝方だったと言う。
帰宅後の旦那の様子を伺ったが、どうも虚空を見つめており、何を放しても短く返答するだけだったが、1つだけ違ったのは入浴中の夫の様子がおかしかったところだったと言う。
まるで自分が女性になったように語りだし、あの人の家に帰るとだけブツブツ呟いていたのだと言う。
結局、その後も不可解なことは続き、しばらくこの家の付近を誰も通ることをしなくなったと言う。
警察も巡回はするものの、基本的には車を使い通り過ぎる程度にとどめておき、通学路となっていた道は、別の道を使い遠回りすることで回避。
当然、ボランティアの人たちもそれに対応する形で場所移動をしたと言う。
だがそれでも——好奇心を抑えられない一部の人たちはこの家に魅了され訪れると言う。
未だにこの家の噂はなくなることなく、永遠と引き継がれる歴史の一部として語り継がれていくことになるのであった。
「知ってるか?」
「なにを?」
「あのアパートで夜、男性の男がまるで懺悔をするように家を見つめて謝罪してるんだってよ」
「俺はカーテン越しから女性がこっちを見て笑ってるって話を聞いたな」
「俺は——」
第三十四怪 放置された、噂の家
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