第4話 幕間 異世界通販・内部レビュー「人族、情緒が繊細すぎる件(※当社比)」
異世界通販・顧客対応室。
水晶モニターがいくつも浮かぶ部屋で、
バイヤー・ミルフィは、尻尾を揺らしながら端末を操作していた。
「えーっと……今回のレビューは……」
モニターに、文字が浮かび上がる。
【商品名:惚れ薬】
【使用種族:人族(現代人間界)】
「ふむふむ……」
ミルフィは、首を傾げた。
「“効果が強すぎる”……?」
「“距離感がバグ”……?」
「“精神が追いつかない”……?」
隣で書類を整理していた、角の生えた魔族のスタッフが顔を上げる。
「また人族か?」
「そうですにゃ〜」
ミルフィは、尻尾で画面を指した。
「ドラゴン肉の時もそうでしたけど、
人族さん、すぐ限界迎えますにゃ」
「脆いな」
「脆いというより……」
ミルフィは少し考えてから、真面目な顔で言った。
「情緒が、すごく繊細ですにゃ」
「情緒?」
「はいにゃ。
体力じゃなくて、心の耐久値が低い感じですにゃ」
魔族スタッフは、ふっと鼻で笑った。
「惚れ薬なんて、子供用だろ」
「ですにゃ〜。
初対面で好意を持つくらい、普通ですにゃ」
「犬猫まで反応したって報告もあるぞ」
「それは……」
ミルフィは、少しだけ耳を伏せた。
「ちょっと想定外でしたにゃ」
モニターに、新しいレビューが流れる。
【追記】
【水に浸けると効果が薄まるが、
周囲の関係性が全体的に円滑になる】
「……成功ですにゃ?」
「成功だな」
魔族スタッフは即答した。
「争いが減って、仲良くなる。
むしろ理想的な使い方だ」
「ですよねにゃ!」
ミルフィは、ぱっと笑顔になる。
「人族さん、
もっと仲良くなればいいと思いますにゃ」
「問題は価格だな。クレーム来てるぞ」
「……え?」
ミルフィは、別のモニターを見た。
【支払い金額が高すぎる】
【給料三か月分はおかしい】
【人族基準に合わせるべき】
「……」
ミルフィは、しばらく黙り込んだあと、
小さく首を傾げた。
「……人族さん、
通貨にも情緒があるんですにゃ?」
「知らん」
「難しいですにゃ……」
ミルフィは端末を閉じ、
いつもの明るい声で宣言した。
「次回は、
もっと優しい商品を用意しますにゃ!」
魔族スタッフが、ぼそっと呟く。
「前回も、そう言ってたな」
「大丈夫ですにゃ!」
ミルフィは胸を張った。
「今度は、
**“使わなくても安心できるやつ”**ですにゃ!」
「……それ、本当に商品か?」
ミルフィは答えなかった。
ただ、次回放送の企画書に、
大きくこう書き込んだ。
【次回候補】
【安心感がすごいお守り】
【副作用:依存の可能性あり】
「……まあ、たぶん大丈夫ですにゃ」
その言葉を、
人族側で信じる者はいない。




