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八話 帰還と再会、そして告白

 豪華な馬車から降りてきた私を見て、御者のケインがギョッとした顔でこちらを見てきた。

 それから一瞬ほっと安心したようにため息をついたかと思えば、今度は怒り顔でズカズカ私の側まで近付いてくる。


「ただいま。遅くなってごめんなさい、ケイン」

「突っ込みたいことは色々ありますけど……遅くなりすぎです! どれだけ心配したと思っているんですか!? セーラなんて一日中泣いてましたよ!」

「それは……ごめんなさい、ちょっと色々あって」


 ケインが怒るのも当然だ。だが、事情を説明する前にまずはクラウド様のことを紹介しなければ。


「私は昨晩から、グレンウィル公爵邸でお世話になっていたの。クラウド様、紹介いたします。こちらは御者のケインです」

「こ、公爵邸!?」


 ケインは怒りのあまり、私の隣にいるクラウド様の姿が目に映っていなかったらしい。ギョッとした顔でクラウド様を見つめてから、慌てて頭を下げた。


「そしてこちらが、クラウド・グレンウィル公爵閣下よ」

「……お嬢様、なぜグレンウィル公爵閣下が家まで送ってくださったのですか? そもそも、昨晩からお世話になっていたとは、どういう……」


 ケインが冷や汗をかきながらコソコソ質問をしてきたのと同時に、伯爵邸の扉がバン!と勢いよく開かれたかと思うと、セーラがこちらまで駆け寄ってきた。


「アイリス様~~~~~!!! ご、ご無事で何よりです……っ! 私、私が服を貸したせいで、お嬢様の身に何かあったらと思うと、私……っ!!」

「セーラ……ごめんなさい。服、貸してくれてありがとう。ちゃんと選択していただいたから安心して?」

「そんなことどうでもいいですよぉ~~~~~!!!」


 セーラは息も絶え絶えに声を絞り出してから、涙をポロポロと流し始めた。よっぽど心配してくれていたのだろう。悪いことをしてしまった。


「セーラ。事情はちゃんと説明するわ。お母様とお父様はどちらにいらっしゃるかわかる?」

「書斎にいらっしゃると思います。アイリス様がお帰りになられたこと、お伝えしますか?」

「いえ、私も一緒に向かうからいいわ。どうせその調子だと、私のことなんて探してもいなかったのでしょう?」

「そ、それは……」

「いいのよ。どうせこの家に帰るのも、これで最後になるから……」


 私がぽつりと呟くと、セーラは目をまんまるにして大声を上げた。


「最後!? ど、どうしてですか!?」

「それを今から説明するのよ。……クラウド様、迎えの者もおらず大変申し訳ございません。私に着いてきてくださいますか?」

「あぁ。まぁ、先に連絡を寄越さなかった俺にも責任はあるからな。それにしたって、伯爵家の長女が返ってきたんだから、まともな迎えの一つくらいあるのが当然だと思うが……」

「……それがこのレインフォード伯爵家における、私の立ち位置なのですよ」

「ほう…………」


 クラウド様、なんだか怒っていらっしゃる? 別にこんな扱い、いつものことだから気になさらなくていいのに。私にはセーラとケインがいたし、今日でこの家ともおさらばだもの。


「では、行きましょうか。セーラ、私達をお父様たちのところへ連れて行ってくださる?」

「はい、もちろんでございます!」


 涙を拭って元気に応えてくれたセーラに、思わず笑みがこぼれた。

 侍女たちがこちらを見てざわつくのも気にせず廊下を進んでいくセーラの後ろ姿を見ながら、ふと思ったことを口にしてみる。


「ねぇ、セーラ」

「はい、なんでしょうか?」

「私、あなたのことが大好きよ」

「っ……! わ、私も大好きです、アイリス様ぁ……」


 しまった、また泣かせてしまった。

 でも言いたくなったんだから、たまにはいいわよね。きっとこれも、クラウド様の影響かしら。


 そんなことを思いながら、父の書斎まで三人で廊下を歩いたのだった。

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