五十五話 視線
____クラウド様に、レインフォード伯爵家の調査を依頼してから、数週間が経った。
普段の業務に加え、私のために内密に調査を行ってくれているせいで、クラウド様はずっと忙しそうだ。
そして私は私で、少しでもクラウド様の代わりに公爵家を支えられるよう動いている。
積極的に社交界に顔を出したり、使用人への指示出しを代わりに行ったりだとか。
そんなわけで、ここ最近のグレンウィル公爵家は慌ただしい日々が続いている。
けれど、セーラを筆頭とした侍女達等の協力の甲斐あって、なんとか屋敷を回すことが出来ている状態だ。
本当に、公爵邸の皆には感謝しかない。
……その一方で、三日前くらいからだろうか。
私は生活の中で、確かな違和感を覚えていた。
なんというか……ふとした瞬間に、視線を感じるのだ。
部屋でくつろいでいる時(最近は滅多にそんな時間内けれど……)には感じることは無い。
でも、廊下を歩いている間だったり、庭の手入れを手伝っている時だったり……。
そんな時に、まとわりつく様な視線を感じるのである。
けれど、振り返っても誰もいないのだ。
まさか、心霊現象?
……なんて、馬鹿なことを一瞬考えたりもしたけれど……。
長年家族から虐げられてきた私には、わかってしまう。
これは、人間の『敵意』の目だ。
____誰かが、私を狙っている。
それも、恐らく私の命を。
この屋敷の中の、誰かが。
でも、すぐには捕まえない。
クラウド様にも相談はしない。相談していることがバレたら、警戒されてしまうから。
間抜けな公爵夫人のフリをするの。
そして、獲物が油断したその瞬間に____ぱくりと飲み込んで糧にするわ。
……果たして監視されているのはどちらなのか、この家の公爵夫人は誰なのか……きちんと思い知らせてあげないとね。




