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五十三話 どこよりも安心する場所

 公爵家の馬車に揺られながら、クラウド様が私の赤くなった頬をそっと撫でる。


「……痛くないか?」

「それなりには痛いですが……。母はこれから、こんな一瞬の痛みよりもっと苦しい思いをすることになるでしょうから、大丈夫です」

「そうか……。本当は、助けに行きたかったんだが……」

「でも、私を信じて馬車の中で見守っててくれたんですよね。……本当に、ありがとうございます」

「……それがリリーの望みなら、俺は断れないからな」


 私が微笑むと、クラウド様は少し辛そうに、けれども安心したように笑い返してくれた。


「……さて、レインフォード伯爵夫人にはどんな罪をご所望だ?」

「そのことなのですが……今回は、クラウド様には何もしないでいただきたいのです」

「……なんだって?」


 私の発言に、クラウド様は信じられないという顔をする。


 けれど、私は淡々と話を続けた。


「今回の件は、多くの証人がいます。それは噂好きの貴婦人達です。彼女達がいれば、あっという間に今回の件は広まります」

「……まぁ、そうだろうな」

「つまり、自然にお母様……いえ、レインフォード伯爵夫人の評判を落とすことが出来るのです。何せ、自分の娘であり高位貴族の公爵夫人に手を上げたのですから」


 私は最後に薄らと微笑むと、クラウド様は悪そうな顔をして笑った。


「……随分、悪いことができるようになったんだな?」

「公爵夫人としての戦い方を学んだのですわ」

「言うじゃないか。だが……そんなところも愛している」

「ふふ、私もです」


 なんだか、悪戯が成功した子供みたいな顔をして笑い合う。


 ____楽しいわ。


 それにやっぱり、私はクラウド様の隣にいるのがいちばん安心する。


 なんと言っても、私だけの特等席だもの、ね。


 ……けれど、母があれだけで終わるとは到底思えない。

 それに、まだ父だって残っている。


 まだまだ、これは粛清の始まりに過ぎないんだわ。



 ____そしてそれは、私一人の力では決して完遂することが出来ない。

 そのくらいわかっている。


 でも、今の私はひとりじゃない。


 だから今度は、皆の力を借りることにするわ。





「……クラウド様、私のお願いをひとつ、聞いてほしいのです」


 小さく呟くと、クラウド様が神妙な顔をして私の瞳を見つめる。


「リリーの望みなら、なんでもするよ」

「ありがとうございます」


 力強いクラウド様の言葉に励まされながら、私はハッキリと宣言した。





「____レインフォード伯爵家を没落させるため、力を貸してください」

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