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四十七話 決意表明

「……俺は反対だ」

「あら、何の話ですか?」


 いつもなら穏やかな雰囲気や会話で始まる夕食の時間。

 だが、今日はクラウド様が開口一番、険しい顔をしながら私に告げた。


「リリー……俺が何を言いたいか、本当はわかっていてとぼけているだろう」


 そう言ってクラウド様が困ったように眉尻をさげるので、私も真面目に応えるべくスープスプーンを置いてから口を開いた。


「……クラウド様に、隠し事はできませんね。はい、わかっています。お茶会の件……でしょう?」

「ただのお茶会なら反対しない。今回は主催が問題だから止めているんだ。相手が誰だか本当に知っているのか?」

「逆です。知っているからこそ、行くのです」


 ____そう、私が行こうとしているお茶会の主催は……何を隠そう、レインフォード伯爵夫人。つまりは、私の母だ。


 クラウド様が少し不思議そうな、腑に落ちないという表情で口を開く。


「以前の君は、両親や妹を避けているように見えたが……」

「それは、私がもう彼らと縁を切っていると思い込んでいたからです。でも、実際は違ったではありませんか」

「……君の妹のことか」


 私は静かに頷く。

 少し前……メアリーとその婚約者であるカルヴィン様は、私に執着しているどころか命まで狙ってきた。


「メアリーは言っていました。『お姉さまがグレンウィル公爵夫人になってから、お母様たちはお姉さまの話ばかりするようになった』と……」

「そんなことを……」

「それに、クラウド様の元へ何通も手紙を送ってきて、お金の無心をしているのも知っています」

「…………」


 クラウド様が気まずそうな表情をしてから口を閉ざした。

 私はそんなクラウド様を見て少し迷いそうになりながらも、私が一番伝えたかったことを口にする。


「……気付いたんです。私は一方的に縁を切ったつもりなだけで、状況は何も変わっていない。いえ、むしろ悪化しているのだと」

「…………そうかも、しれないな」

「だから、私は戦います。そして今度こそ、あの両親から……レインフォード伯爵家から解放されて自由を手に入れたいのです」


 私がそう淡々と宣言すると、クラウド様は困ったように笑ってくれた。


「リリー、君にはいつも……驚かされてばかりだな。本当に、出会った時とは見違えるように強くなった」

「今の私にとって、クラウド様の記憶がなくなるより怖いことなんてありませんもの」

「……困った冗談はやめてくれ、悪かったよ」

「ふふ、すみません」


 クラウド様があまりにも気まずそうな、それでいて拗ねたような表情をするものだから、私はつい笑ってしまった。

 張り詰めていたダイニングルームの空気が、少しずつ柔らかくなってきているのを感じる。


「どうやら俺の負けのようだ。……本当は、俺もついていきたいところだが……。招待されているのはリリーだけなうえ、お茶会だからな。今回は、リリーを信じて任せることにするよ」

「はい、ありがとうございます」

「その代わり、迎えくらいは行ってもいいだろう? 俺は君の夫なんだからな」

「えぇ、もちろんですわ」


 クラウド様は私に「変わった」と言うけれど……。雰囲気が変わったのは、クラウド様もだわ。

 以前よりも笑顔が柔らかくなったし、私を守るのではなく、信じて一緒に戦ってくれるようになったもの。


 きっと、気付いていないのでしょうけれどね。

 でも、私だけが知っていればいいことだもの。


「……そういえば、どうしてクラウド様はお茶会の件を知っているんですか? 行くと決めたのは、まだ今日のことなのに……」

「君の大好きな侍女が教えてくれたんだ。『止めてくれ』とな。まぁ、結果はこの通りなわけだが……」


 なるほど、セーラね。

 彼女は元々レインフォード伯爵家で雇われていたんだもの、何が何でも止めたいに決まっているわ。


 でも……ごめんなさい。私は、私の道を行くわ。


「……では、夕食を再開しようか」

「はい。今日のメニューもとても美味しそうですもの、早く食べたいなと思っていたところです」


 私が冗談めかしてそういうと、クラウド様が声をあげて笑った。



 二週間後……私にとっての最大の戦いが、始まるんだわ。

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