キラキラ教室
「ねぇ、おばぁちゃん?おばあちゃんが子供の頃って、学校はどんなだったの?」
「そうだねぇ、おばぁちゃんが小学生の頃は、キラキラネームが多くて、色んな事があったんだよ」
むかしむかし、あるところに天童光宙という男の子がいました。
保育園や幼稚園の頃は楽しかった名前も、小学生に入ると、キラキラネームが恥ずかしくなりました。
「いいよなーお前は、天馬」
「だろっ、俺、天馬だもん」
光宙君は、天馬君の名前をうらやましいと思いました。
「だってよー、天を駆ける馬、天馬だぜ」
「運動会で、ビリッけつ、だったけどね。足遅い天馬」
「……最近、名前負けを感じるんだ」
と、そんなことを言っていると
「名前負けかぁ、でも、僕よりマシと思うよ」
「やぁ皇帝君・・・」
「なんか世界征服する未来しか選択肢がないもんなぁ」
さらに、もう一人やってきて
「ははは……」
「そういや、神王君、あいかわらず影が薄い」
しずかに、かわいた笑いをする神王君。
「ラスボスの魔王とか、余裕で通り越してるもんね」
「そうなんだ、こないだのテストの点も普通だったし、神でしかも王って」
「大多数の普通が許されない」
「光宙ほうが、マシかのかなぁ」
と、男子達が話していると、女子も乱入してくるのでした
「アンタ達は、フリガナをふらなければ、それなりじゃない。私なんて」
「あ、珍子ちゃん……」
「ちん……」
「あら、言う気?アンタラのを股間から引きちぎるわよ」
「お願いやめて」
震え上がる男子達。
「珍子は漢字を変な読み方されなきゃ良いだけでしょ、私なんて」
「あらっ……今鹿」
「鹿よ、鹿。馬鹿じゃなくて、まだよかったけど」
そんなことを言っていると、担任の土良衛門先生がやってきました。
「そうだな、名前が変だと悩むよな……」
そう言う先生に……
「土良衛門先生は、まだいいじゃないですか。私なんて万華ですよ」
「……だ、大丈夫、多分、マンカって呼ぶと思うから」
静まる空気の中に耐えられず、一人の女の子が声をあげました。
「ひどい読みだよね」
「まったくもう、泡姫は……他人事だと思って」
「いいわよね、泡で柔らかそうな姫だし。人魚姫だし」
姫の名前を絶賛されるものの、先生がボソリと言いました。
「いや、泡姫の意味は、大人になったらわかるから後悔するかもしれない」
「……別の意味とか、読み方とかありますもんね」
「心が太い、心太君どうしたの?」
「こないださ、辞書で調べたらさ、心太って読むんだよ」
「光宙より良いって」
やいのやいの生徒達は騒ぎながらも、悲しい声になっていきました。
「よし、みんなで力を合わせて、名前を変えられるように、偉い人達に訴えかけよう」
土良衛門先生が生徒達を引き連れて、偉い人達が居座る国家の中枢に乗り込む大作戦を立てました。
「勝ち取るんだ、恥ずかしくない名前をっ。僕達の未来のために」
そうして、キラキラ教室の生徒達は先生を先頭に、出陣しました。
(おしまい)
「それからね、鳴海…おばぁちゃん達は、仲間の犠牲を踏み越えて、旧国家から名前を変更する権利を勝ち取ったのよ」
「そうなんだ。それで、有得瑠おばあちゃんは、名前を変えたの?」
「読み方はそのままだけれども……ね。漢字を代えたのよ」
「そうなんだ」
と、その時、無造作に家の扉が開けられ、鳴海と有得瑠が話をしているリビングに軍服の男達がやってきた。
「貴様達、新国家から許されていない、旧国家の読みで名を呼んだな。監視ネットワークとAIを甘く見るなっ」
老婆は、兵士に体を掴まれて、連れていかれます。
「鳴海や……おばあちゃんは、これまでみたい。人民解放軍に連行されるわ」
「そんな、有得瑠の名前は、そのままでよかったのに」
軍人に連れ去られる祖母にしがみつく孫。
「旧国家の名を語るのは大罪なのだ、処断する」
「鳴海っおばあちゃんは、旧国家と戦ったんだけどね。新国家は、もっと恐ろしいの。よく覚えておきなさい」
「アリエルおばあちゃんっ!!!」
泣きじゃくる孫を置いて、老婆は軍に連れていかれた。
その数分後、、、老婆の頭蓋骨を鉛玉が貫通しました。
旧名、泡姫さん、(おしまい)




