第4話 君に決めた!
午後。
父はクスマを連れて散歩に出かけた。
目的地に近づく前に、大きな建物が見えてくる。
遠くから見ると、看板にいくつかの大きな文字が書かれている。
『粟のレストラン』
そうだ、彼らはレストランにアフタヌーンティーを飲みに来たんだ。
これはこの村で唯一のレストラン。
なぜレストランの前に「粟」の二文字がついているのか?
なぜなら、この村は粟の村と呼ばれているからだ。
その名の通り、この村には粟がたくさんある。
正直に言うと、
毎日毎日毎日……粟粥ばかり食べているせいで、クスマは粟粥を見るだけで吐き気がする……。
「あぁ~、急にラーメンが食べたくなったな」
しかし、ここでは小麦が生産されていないので、考えるだけ無駄だろう。
─ (•ө•) ─
クスマがレストランのドアを押して開けると、濃厚な粟の香りが顔に押し寄せてきた。一人のひよこの女性がコンロの前に立ち、手にした大きな鍋で「ザッザッ」と料理を炒めている。その動きは武術の稽古のように無駄がない。
おばさんは顔も上げずに、鍋とヘラの音をかき消すほどの大きな声で言った。
「席を見つけて座りな!先に注文だ!注文しない客は相手にしないよ!」
その口調には、有無を言わせぬ力強さがあった。
クスマと父さんは席を見つけて座り、分厚いメニューを開いた。そこに書かれた値段を見て、クスマは思わず父さんに小声で愚痴をこぼした。
「うわ、この値段……それに、入ったら必ず何か注文しなきゃいけないなんて、『ぼったくり店』じゃないか?」
まさか、おばさんの耳がそんなに良いとは思わなかった!クスマの言葉が終わるか終わらないかのうちに、「ガツン!」という大きな音が響き、彼女の手にしたヘラが鍋の縁を激しく叩き、クスマの鼓膜がビリビリと痺れた。彼女は勢いよく振り返り、眉をひそめ、その鋭い目はナイフのようにこちらを射抜き、手にしたヘラからはまだ湯気が立ち上っていた。
「坊主!今なんて言った?『ぼったくり店』だと?」
その剣幕は、次の瞬間にはヘラがクスマの脳天に飛んでくるかのようだった。
クスマはビクッと体を震わせ 、いつでも飛んできそうな鍋を見つめ、生存本能が瞬時に働き、慌てて言葉を言い換えて大声で叫んだ。
「つまり!お姉さんの料理はすごくいい匂いで!お姉さんもすごく綺麗だってことです!」
おばさんの顔から殺気が一瞬で消え去り、口角がわずかに上がった。
ふんと鼻を鳴らし、再び料理に向き直った。
「ふん、口は達者なようだね……。何が食べたいか、さっさと注文しな!」
クスマは胸を撫で下ろし、心の中で思った。
(このおばさん、隕石より怖い……)
父さんは最初から最後まで、まるでとっくに見慣れているかのように、ただ静かに見ていた。父はクスマの背中をポンと叩き、クスマを空いているテーブルに連れて行って座らせた。その顔には、どこか諦めたような笑みさえ浮かんでいた。どうやら、父はここの「ルール」にはかなり慣れているようだ。
「好きなものを注文しろ」
クスマはメニューをよく見た。そこにはこう書かれていた。
Aセット:納豆粟粥。
Bセット:かぼちゃ粟粥。
Cセット:ダイエット☆長芋粟粥。
Dセット:食欲がなくてもこれを食べれば朝から元気いっぱいになれるキノコ粟粥(•̀ᴗ•́)و̑̑
(なんでDセットは、説明文が料理名より長いんだ?)
「やっぱり全部、粟粥じゃないか……」
結局、好奇心からクスマはDセットを注文した。
これを食べ終わったら、お腹を壊さず、元気いっぱいになれることを願う……
一方、父さんはダイエットすると言った後、Cセットを二つ注文した。
(一人で二つも食べるなんて、どれだけお腹が空いてるんだ?しかもダイエット食を二つ?それで何のダイエットになるんだ?)
─ (•ө•) ─
食事の途中、背後から突然、聞き慣れない声がした。
「久しぶりだな、我が親友よ!」
とても人懐っこそうなおじさんが、彼らのテーブルの隣に座り、父さんと話している。
なるほど、Cセットの一つは彼のためのものだったのか。
(道理でCセットを頼むわけだ。この体型、やっぱり父さんと同じでダイエットが必要だな……)
「お前の息子はどう育てたんだ?なんでこんなに痩せてるんだ?水をもらってないもやしみたいに、黄色くてしなびてて、風が吹いたら倒れそうだぞ」
そしてそのおじさんは、クスマの頭に生えているもやしを見た。
驚いたように言った。
「君の共生植物も、もやしなのか。なんて偶然だ。やっぱり俺は人を見る目があるな」
「ハハハハハ」
そして父さんと二人で大笑いした。
(むかつく!この悪趣味なオッサンども、人の傷に塩を塗りやがって……)
父さんが突然、笑いながら言った。
「この役立たずの息子のこと、よろしく頼むぞ、ゼリガ」
(よろしく?誰が誰を?なんでこのおじさんに自分のことを頼むんだ?)
(なるほど、この悪趣味なおじさんの名前はゼリガっていうのか)
その時、クスマの脳裏に閃きが走り、ある知識が浮かび上がった。
クスマは立ち上がり、両手で力強くテーブルを叩き、鋭い眼差しを向かいのおじさんに突きつけ、揺るぎない声で言った。
「君に決めた!ゼリガ!」
父(???)
ゼリガ(???)
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