1. 目覚め
町に入ると、思ったより人が多い。
建物は小さいが、商人らしき人たちでごった返していた。
「ふむ……俺に必要なのは金だ」
・すぐに働ける
・誰でもできる
・金になる
三拍子そろった場所といえば――
「ギルド、だよな!」
ノリと勢いで町をうろつき、なんとか見つけた小さな建物。
どう見ても酒場兼ギルドです本当にありがとうございました。
カウンターには、いかにもプロな雰囲気のお姉さん。
思わず背筋が伸びる。
「あの、登録したいんですけど……」
「はい、無料でできますよ。では手をかざしてください」
差し出されたのは両手サイズの水晶。
なるほど、ステータス測定ってやつか。
ここでまさかの俺TUEEE展開……くるか!?
「こ、これは……! ステータス評価《C》です!」
「おおっ、すげぇ……のか?」
「ええ、一般は《F》ですよ! ただ……素早さと耐久だけ異常ですね!」
……遠回しにGって言われてる気がするんだが。
「討伐依頼も行けますよ。これとかどうです?」
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討伐対象:ラッシュボア(3~5匹)
場所:北の森
農作物被害が深刻。至急討伐を依頼する。
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お姉さんの笑顔がやけに軽い。
まあ、ここで金を稼がないと始まらない。
そして一時間後、俺は森で叫んでいた。
「あ゛あ゛あ゛ーーーッ!」
疲れた! 眠い! 腹減った! 道もわからん!
こんなんで猪に会ったら死ぬだろうが!
「フゴォォォッ!」
……はい出たーーーッ!!
木々をなぎ倒して突進してくる巨体。牙。完全に殺意。
「やっべ、詰んだ!」
走る。全力で走る。
でも限界はあっさり来た。
転んだ。顔面から。
痛みと絶望で涙目になった俺の耳に、地響きが迫る。
――死んだなこれ。
そう思った瞬間、音が消えた。
「大丈夫か?」
月明かりの下、血塗れの剣を持つ青年が立っていた。
そのまま俺の意識は闇に沈んだ。
???( 一一)「もうちょっと俺に優しい世界でいいと思う」