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三題噺もどき4

雨の跡の公園

作者: 狐彪

三題噺もどき―ろっぴゃくはちじゅうはち。



※吸血鬼さん拭かないで座るから……※

 




 じっとりとした空気が体にまとわりつく。

 空は分厚い雲が多い、せっかくの満月が全く見えない。

 夜道を照らすのは、作られた人工の光ばかりで少し目が痛い。

「……」

 そういえば、梅雨入りが宣言されたらしい。

 それは別段いいのだけど、雨の中で気温がこうも高いとなると、いかがなものか。

 じとじととして息苦しいたらありはしない。

「……」

 久しぶりに雨が上がった夜に、一人散歩に出ていた。

 結局昨日は仕事終わりに衣替えをしてしまったから、いつもよりは薄着である。

 もうさすがにこれ以上気温が下がることはないだろうと言うのもあるが、余計なことを言ったからな……。

 とはいっても長袖のシャツだし、下は夏用という名がついているだけのパンツだからたいして涼しくもなんともない。空気がまとわりつくような感覚ばかりがする。

 袖をまくれば、肌に直接膜が張られるようでどうにも、気持ちが悪い。

「……」

 そんなに文句があるなら散歩に行かなければいいと言うだけなのだけど。

 これでも久しぶりの散歩の機械なのだ。梅雨入りしてしまったこれからは、行けるときに行かないと、何日も引きこもってばかりになってしまう。

 それでもいいにはいいのだけど、籠ってばかりというのは心身共によくないだろう。

「……」

 とは言え、今日どこに行こうかと足を止める。

 先日の、百合の少女の一件が片付いて以降墓場には行っていたからあそこはまぁ、ないとして。少し前に見つけた面白そうな屋敷のあたりも行きたいが行くなと言われたので行けない。買い物も今回は特にないので、スーパーの方も用はない。

「……」

 あぁ、そういえば。

 公園に全く行っていなかったな。

 朝ベランダに出ると、ブランコの声が聞こえるからどうにも忘れていた。いつでもそこにいるのが分かるからなぁ。

「……」

 そうと決まれば、足は公園の方へと向かう。

 雨が降り続いているから、最近は子供たちも公園で遊ぶことはないだろうから、遊具たちがきっと寂しい思いをしているだろう。

 まぁ、あそこにはそれなりの遊具があるし、花壇もあるし、木々もある。

 寂しいことなんてそうそうないだろうが、彼らは総じて子供や人間が好きだからなぁ。

「……」

 そこまで遠いわけではないので、足が向かって道が決まればあっという間につく。

 公園の中にはもちろん、誰もいない。

 ただでさえ、雨だったのだ。そして、よい子は寝る時間である。

「……やぁ」

 入り口近くにある遊具が声を掛けてきた。

 地球儀のような形をした、丸い遊具である。地球儀のような丸い形をしたジャングルジムのような遊具……と言った方が分かるだろうか。

 棒に捕まったり座ったりして、回し手が回して。危なっかしいが乗っている分には楽しいだろう。心地よく風が吹き、気持ちがいいのだろうな。

「……そうか」

 どうやら、ここ最近子供がこない上に。

 話し相手が居なかったことが、らしくもなく堪えたらしい。彼ではなく、ブランコが。

 全くあの子に私は甘すぎるんだろうか……話し相手なんてものはそのあたりに同じ遊具仲間が居るだろうに。

「……こんばんは」

 ブランコに座りながら声を掛ける。

 まぁまぁ、やや興奮気味なようで。

 風も吹いていないのに動かすのはよくないと思うが。誰かに見られでもしたらどうするつもりなのか。そいうの、人間は怖がって寄らなくなるだろう。

「……それはすまなかったな」

 何やら文句のようなものを言いながらも、楽しそうに話し出す。

 私が来ていなかった間の話だとか、最近雨ばかりで誰も来ないからつまらないだとか、あそこの花が咲いたのだとか。

 彼らの日常も、それはそれで、普通でありふれていて、いいものだ。





「ただいま」

「おかえりなさ……」

「……なんだ?」

「……濡れてるの気付いてないんですか」

「は……あ。」









 お題:地球儀・公園・百合

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