第二六話 王国からの帰還者
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宝、それは古来より人類を虜にしてきた永遠の浪漫。
魅惑的なその力の前には性別も年齢も国籍も、人種も言語さえ無力。
富の繁栄。権力の象徴。パンドラの箱だって好奇心に駆られれば玩具箱と遜色ない。結果的に世界が滅びようと宝を欲するのは人類の本能であって責めるつもりは毛頭ない。
私にはとびきりの宝があった。たとえ全ての財を投げ打ってでも、私の身を捧げようとも、大罪を背負うことになっても手に入れたい至宝。その価値は世界を切り裂く聖剣――有象無象の邪悪を滅ぼし栄光の未来が手に入る。
しかし腐り切ったこの世界では、どうやら宝の価値を見極められるのは私だけ。愚図ばかりの現実に辟易しつつ、血生臭い争奪戦を避けられるのはありがたい。どころかいずれ宝の方から舞い込んでくるだろうと自負していた。
――なのに、イカれたこの世界は宝をどこかに隠した。前触れもなく、唐突に。
世界は卑怯だ。現状を荒らされないためだけに私の偉大な計画を妨害するのだから。手がかりはない。でもおおよそ見当はついた。
宝は蒼月、あの箱庭のどこかにある。
どんな犠牲も厭わない。時間、金、プライド……あらゆる対価を払おう。
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