表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
誘拐学園 〜名探偵育成計画〜  作者: 天草一樹
第三章:躍動する狂気

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

36/48

34:新しい相棒とルールの共通点

投票の結果、相馬さんルートとなりました。お答えいただきました皆様、誠にありがとうございました。

「じゃあさ、ここにいる皆で協力するのはどうかな」


 僕は顔を上げると作り笑顔を浮かべ、そう提案した。

 さっきから誰も彼もが僕を使って(?)事件を解決しようと躍起になっているが、本来なら全探偵が協力して事件に向かうのがベストなはずだ。

 とはいえ裏社会探偵や六感探偵辺りは協力という単語を知らなそうだし、全員というのは現実的ではないのだろうが。少なくともこの場にいるメンバーは他者に頼ることをよしとしている人たちだ。

 だったらこの協力関係だって断る理由はない――


「拒否します」


 そう思った直後、明智さんから断固とした否定の声が上がった。

 瞼は閉じているのに、「何を言っているのですかあなたは?」という冷たい視線を感じる。

 まあ正直この反応は分かっていた。彼女が僕との協力を望むのは、盲目が嘘であるということを知っており、活動がしやすくなるからに他ならない。逆に言えば、そのことを知らない他の探偵と組むことは行動を制限されることと同義であり、デメリットにしかなりえない。

 僕としては、この緊急事態下であれば、その嘘を貫くより皆で協力したほうがいいんじゃないかと思ったのだけど――やっぱりダメだったようだ。

 しかし彼女以外の二人には協力関係を拒む理由はないのではと、期待して視線を向ける。

 赤嶺さんは顎に手を当ててから、「ふむ」と一言。


「僕の指示を最優先してくれるなら別に構わないけど」

「お断りします。私自身の力で解決しなければ、意味はありませんから」


 黒野さんに真っ向から否定され、赤嶺さんはやれやれと首を振った。


「それじゃあ協力はできないね。というか、指示に従ってくれないのなら協力関係と言えないしね」

「……分かりました」


 予想通りというか、誰もまともに協力する気はないらしい。

 僕は大きく息を吸い、小さく吐き出した。


「それじゃあ僕も、皆さんとは協力できません。事件解決より自身のプライドが大事な人たちとじゃ、どっちにしろうまくやれないと思いますし」

「「「……」」」


 ピシリと、空気に亀裂が入る音が聞こえる。

 これはやらかしたかと後悔が少し込み上げる。けれど眠気とストレスで低下した思考力は、空気を読むことを放棄し始めていた。

 タブレットを持ち直し、軽く頭を下げてから僕は自室に戻るため歩き出す。

 するとそんな僕の背に、「君一人で事件を解決できるとでも?」という赤嶺さんの挑発が飛んできた。

 僕は足を止め、笑顔で振り返る。


「まさか。僕みたいな探偵もどき一人じゃ事件解決なんて無理ですよ」

「なら静観すると? それは探偵として無責任じゃ――」

「だから皆さんと違って、プライドよりも事件の解明を優先できる、協調性のある人と組みます」

「それって」


 戸惑いを見せる彼女らに、僕ははっきり名前を告げた


「助手探偵、相馬銀嶺さんです」



  *  *  *



「という感じなんですけど……本当にすいません」

「別に構わないが……。というか、随分苦労してるんだな」


 姫路さんの死体発見から一晩が経ち。

 僕は相馬さんの部屋にて、正座姿で頭を下げていた。

 こちらのくだらないいざこざに巻き込んでしまったことへの報告と謝罪。昨日の話なんてなかったことにして一人で行動しても良かったのだけれど、その場合の皆の行動が読めず、ひとまず経緯を話しておこうと思ったのだ。

 一通り話を聞いた相馬さんは、同情のこもった声で労わってくれたわけだが――


「その、協力関係については全然断ってもらって大丈夫なので。こっちで勝手に言ったことですし」


 協力関係については無理強いするわけにもいかない。相馬さんは推理することに対して否定的だし、僕自身どうしていいかはまだ決められていない。

 相馬さんは眉間に皺を寄せてしばらく黙考した後、「いや、協力させてくれ」と逆に頭を下げてきた。


「実際に犠牲者が出て、その犯人が誰か分かっていない。加えていつ出られるか、助けが来るかも分かっていない以上、流石に手をこまねいているわけにもいかないからな。ただ、俺なんかが役に立てるかは疑問しかないが」

「それは世界で一番無用な心配だと思いますけど……、協力していただけるなら有り難いです」


 自らの意思とは関係なく、自然と事件のヒントを口走る助手探偵。彼の協力が得られるのなら、探偵として三流以下である僕でも、皆と対等に渡り合うことができるかもしれない。

 ……むしろ問題があるとするなら、僕に事件を解決する覚悟があるのかということだけど。


「ええと、じゃあ、一旦現場に行ってみませんか? 相馬さんと一緒なら、何か思い浮かぶかもしれませんし」

「あまり期待されても困るんだが、他にできることもないしな。行こうか」


 僕らは揃って立ち上がると、姫路さんが殺害された放送室へと向かうことにした。

 三階から二階へと階段を下りている最中、ふと今日の講義はどうなるのだろうと気になった。


「そう言えば、今日って講義はあるんでしょうか? というか、これからも講義を続けるつもりなんですかね?」

「どうだろうな。昨日の話的に、講義をすると決めたのが二神であればなくなりそうだが、もう一人の黒幕が決めたものならこれからも続きそうだ」

「確かにそうですね」

「いずれにしろ、今日の講義は出なくてもいいんじゃないか。二神が最初に言っていたルールは既にどれも破られているが、今のところペナルティもなさそうだからな」

「ルール、そう言えばそんなのもありましたっけ」


 初日の最後に二神教授から告げられた三つのルール。


 1.講義には必ず出席すること。

 2.夜の十時から朝の四時までは自室で過ごすこと。

 3.仲良くすること。


 すっかり忘れていたが、探偵館で過ごす上で守るよう言われていた。けれど相馬さんの言う通り、これらのルールは全て破られている。

 講義への出席に関しては姫路さんがずっと破り続けていたし。夜自室にいることに関しても、昨日を含め事件が起きた時は守っていなかった。仲良くすることについては、悲しいことに語るまでもないわけで。

 とっくに形骸化していたルール。思い出してみると、何でこんなものを作ったんだと不思議になってくる。


「特に意味はなかった……? だけどこれって……」

「どうかしたか?」

「あ、いえ、何でもないです」


 ふと閃いたルールに隠されている共通点。しかしまだまだ形になっていない机上の空論でしかなく、それらが意味することにはっきりとした説明はつけられない。

 ただ、相馬さんといたことで早くも取っ掛かりを得られたことに、僕は内心興奮を覚えていた。


最近文章が下手になってて申し訳ない。読書量を増やさねば

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ