14:探偵館とルール説明
僕を含めて数人ほど数合わせ要員がいるようだが、概ね優秀な若手探偵を集結させた感じ。
これから本当に名探偵になるための教育が行われるのか。それとも隠された真意があるのか。
今は分からない。だけど、三人どころか十人もの探偵が集まっているのだ。文殊の知恵を超えた叡智の閃きで必ず誘拐犯の意図を見抜き、建物から脱出することもできるはず。
周りにいる探偵たちに信頼と希望を込めた視線を向け、僕は大きく頷いた。
『さて、それぞれの紹介がすんだことだし、最後にここのルールを説明させてもらおうか』
「ルール……」
一体どんな理不尽な命令がルールを設けられるのかと身構える。
けれど誘拐犯の提示したルールは、あまりにもシンプルで拍子抜けするものだった。
『一つ、授業には必ず参加すること。ただし体調不良の際は不問とする。
一つ、夜の十時から朝の四時までは自室で過ごすこと。ただし地震や火事と言った緊急事態時は不問とする。
一つ、仲良くすること。閉じられた場での共同生活、一番のストレスは人間関係になるだろうからな。
以上の三つを、ここでのルールとして厳守してもらいたい。違反した者には何かしらペナルティを加えさせてもらう』
「……それだけですか? 脱走や外部へ助けを呼ぶこともルール違反ではないと?」
不審そうに黒野さんが質問すると、誘拐犯はあっさり首を縦に振った。
『ああ。脱走方法を思い浮かんだのなら実行して構わない。勿論こちらは全力で妨害させてもらうがな』
「そうですか……」
いよいよ、誘拐犯の目的が分からなくなってくる。まさかというか、これは本当に、僕らに名探偵になってもらいたいだけなのだろうか。それにしては、あまりに奇矯な計画だ。彼の理知的な雰囲気にもそぐわないし。
しばらくの間、僕らは誘拐犯の真意に頭を悩ます。そんな僕らを黙って眺めていた誘拐犯だったが、ふと『そう言えば、もう二つほど話すことがあった』と切り出した。
『君たちの紹介をしておいて、俺自身の紹介を忘れていたな。今のままだと誘拐犯か犯罪者と言う呼ばれ方になりそうだし、ここで名乗らせてもらおう。警視庁刑事部捜査一課の二神だ。階級は警部だが、まあそれは残りわずかな期間だから気にしなくていい。呼び方は、そうだな、教授にしてもらおうか。一応教師役をやるわけだからな』
どこまで本気で真実か。一切の躊躇なく名前を名乗った誘拐犯――もとい二神教授は、続けてこの建物について言及した。
『それからこの建物の名前も統一しておこうか。ありきたりだが、優秀な探偵が集まっていることだし、『探偵館』としよう。探偵館の設備は全て自由に使ってくれて構わない。退屈を紛らわせるものはかなり揃えられていると思う。食事や衣服については館に常駐している使用人二人に頼めば提供してくれる。他に何か足りないものがあった場合も、使用人に言ってくれ。必要だと判断したら用意させてもらう』
使用人と言うのは、出入り口の前に立っていた二人で間違いないだろう。彼らが何者かも気になるが、話さないということは、推理して当てて見せろと言うことか。
『それから、今度こそ最後になるが、探偵館にはあるギミックが施されている。君たちならすぐに解けるであろう簡単な仕掛けだとは思うが、くれぐれも注意してくれ。
では、君たちの成長と健闘を祈る』
最後の言葉が届くと同時にモニターが切れる。
取り残された僕らは、しばらくの間、真っ暗になったモニターをじっと見つめていた。
『読者への問いかけ』(選択期間:2023/12/31~2024/1/7の24時まで)
誘拐犯――もとい二神教授による説明が終わりました。
主人公こと今志方時宗は、ここまでの展開について整理しようとしますが、一人では落ち着かない様子。誰かに声をかけようかと考えています。共に情報をまとめる相手として誰が良いか――皆様の声をお聞かせください。
①胡桃沢鶉『六感探偵』
②黒野美海兎『生徒会探偵』
③緑川サラ『鬼没探偵』
④黒金吉宏『裏社会探偵』
⑤群青征四郎『電脳探偵』
⑥赤嶺巴『王子様探偵』
⑦明智真白『盲目探偵』
⑧如月宗助『放浪少年』
⑨姫路舞『富豪探偵』
⑩相馬銀嶺『助手探偵』
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