表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/15

5話 転校


 僕の名前は「密倉 文佳」。転生前はいじめられっ子の男子小学生だったが、今じゃ超絶美少女になってしまった。共通点と言えば年齢ぐらいだろうか。

 

 他はもう、前世とは何もかも違う。それこそ、トイレやお風呂のやり方から服の着方までだ。


 病院のリハビリ中に婦長さんがいろいろ教えてくれなかったら、今頃僕は違った意味で死んいただろう。


「それで、文佳の学校のことなんだけど」


 変化があったのは性別だけではない。霊的なものが見えるようになったのも変化のひとつだ。例えば、向いのソファに座って話しかけてくるお母さんに、けっこう大きな黒いモヤがまとわりついている。

 ばあさん曰く、これは人の悪意や恨み、妬みなどにより発生する呪詛で、母さんは誰かに呪われている可能性があるそうだ。このまま放置すると、強力な悪霊が寄ってくるとか。


 なので、モヤの尾をたぐりよせて、こっそり握りつぶす。お母さんは外から帰ってくると、いつも呪詛をまとわりつかせているので油断がならない。


「うん」


 退院して家に戻ってきたのは良いのだけど、そこも前世と比べれば別世界だ。敷地がちょっとした公園ぐらいある屋敷で、でも大きくて濃いモヤがそこかしこに巣くっていた。


「お医者様の先生がね、記憶喪失のまま今の学校に行くと、あなたの精神衛生上良くないって言ってたの。確かに、文佳だけお友達を知らないのはいろいろ気まずいと思うし」


 ここは使用人もたくさん働いていたので、怪しまれずにこれだけの呪詛を祓うのはなかなか骨が折れた。一族は相当なお金持ちらしく、恨みもかっていたのだろう。大量の呪詛で一人では全部祓えなかったので、ばあさん様々だ。


「うん」


 ばあさんは霊媒師だけあって、霊とコミュニケーションできる。ばあさんは護衛として守護霊をつけてくれたのだが、彼らが呪詛を祓うのを手伝ってくれた。


「だから、近所の公立に一時的に転校してもらうことにしたの」


 次の呪詛は、立ち上がって手を伸ばさないと届かない。お母さんも立つと届かなくなるし、どうしたものか。


「転校? どこの学校?」


 やることがなくなって、ようやくお母さんの話が耳に入ってくる。確かに知らない人ばかりの学校で記憶喪失の演技をするより、いっそ初めての場所で誰も知らない相手から人間関係を作る方がやりやすいだろう。ありがたい話だ。


「聞いても知らないと思うけど、久山小学校っていうところ」


 急に知っている学校の名前が出て、ちょっと身体が強張る。この屋敷、実家に近いなとは思っていた。


「どうしたの?」

「ううん? なんでもないよ」


 久山小学校は、僕がイジメを受けて、そして死んだ学校だ。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ