2話 おばあさんと僕
僕の死因は熱中症だったらしい。あの後、遺体は体育倉庫で見つかり、全国的に大きなニュースとなった。
表向き、同級生とのかくれんぼ中に僕が体育倉庫に隠れ、それに気づかず先生が鍵を閉めたと説明されている。
「で、なんで成仏しないんだい? あいつらを恨んじゃいないんだろう?」
が、そんな騒ぎも、数日で忘れられた。あの日の事実を知っているのは、イジメっ子たちとばあさんだけだ。
「先生が来たとき、僕がちゃんと声をあげていれば、死ぬこともなかったんだ。あんな一瞬で生死が分かれるとは思ってなかったけど、あれは僕の自業自得かなって」
ばあさんの家は快適だ。常に冷房が効いていて、日に三回お線香をあげてくれる。一度実家にも帰ってみたが、雰囲気が暗すぎてダメだった。
「霊ってのは、だいたい未練に狂うか、薄れて消えるか、成仏するかなんだけどね。そんな自罰的なことを言いながら、うちに居座る霊ははじめてだよ」
ぶつぶつ言いながら、コップに麦茶を供えてくれる。やっぱり死後はこれぐらい気楽なのが良い。
「僕は誰かを助けたかったのであって、祟って恨みを晴らしても、僕が生き返るわけじゃないからね」
あの陰湿だったイジメも、最初のターゲットは別の子だった。その子が耐えきれずに壊れそうになっていたので、馬鹿なフリをして誘導し、イジメを肩代わりした。
「変な子だねぇ。あたしゃあのクソガキどもが許せないから、あんたが祟るなら手伝おうかと思ったんだがね」
数日一緒に暮らしてみてわかったが、このおばあさんはやるといったらやる。僕が祟りたいと言った瞬間、義憤に駆られたばあさんの手によって、イジメっ子たちは後悔することになるだろう。
「いらないよ。まぁ、あれで僕が死んでしまったのは予想外だったけど」
――ピンポーン――
話している最中に玄関のチャイムが鳴った。
「おや、もうこんな時間かい。あんたは邪魔だから結界に入っときな」
ばあさんはそう言い置いて、玄関へ出て行く。
ばあさんの仕事を見るのは、不謹慎かもしれないがワクワクする経験だった。生前はオカルト好きの怪しいおばあさんだと思っていたのだが、とんでもない。
他の霊が見えるようになったから断言できる。ばあさんは間違いなく本職の霊能者で、おそらく超大物だ。