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13話 同級生たち


「ウチは月夜っていうの。さっきはビックリしたよ〜」

 

 結局、2時間目からは授業は再開されたが、イジメっ子たちは教室に戻って来なかった。

 だからだろう。初日の空気を読み合う気まずさは影をひそめ、昼休みにはようやくクラスの女子が声をかけてきた。


「ごめんねー。びっくりさせたよね」


 彼女は春原 月夜という。名前の静かな印象とは裏腹に、元々活発な女の子で、低学年の頃にはイジメっ子たちとよくケンカしていた。しかし、高学年になって力で負けてしまうようになって以降、イジメっ子たちを無視するようになっている。

 彼女はイジメっ子と対立はしていたが、イジメられっ子を護ったわけではない。だけど、彼女は正しかったのだろう。僕の末路をみればそれは明らかだ。


「ううん。ちょっとスッキリした。あの反応はやっぱりそうだったって」


 同級生は散々イジメ現場を見ている。疑ってはいたのだろう。


「ウチ、純也くんも太志くんも助けられなかったんだよね。もっと早く、あいつらの根性をたたき直せていたら……」


 僕は彼女が少林寺拳法を始めたことも知っているが、多分それで今のあいつらがどうにかできたとは思えない。

 思うに、勝つためなら武器でも何でも用意しただろう。だから証拠をそろえつつ、純也君を護りつつ、あいつらが年齢を重ねて自分の愚行に気づくことに僕は賭けた。


「イジメっ子に舐められないって大事だと思う。月夜さんは正しいと思うよ。こんなことになっても、あいつらの根性はねじ曲がったままだし、たたき直すとか無理じゃないかな」


 あやまちを認められない者は、自分のせいで誰か死んでもやっぱり認められないのかもしれない。月夜さんは考え続けてるからちゃんと成長するだろう。


「ハハハ。ありがと。ねぇ。密倉さんが転校してきたのって、もしかしてあいつらが太志くんを閉じ込めたって知ったから?」


 とんでもない誤解だ。が、まさか僕が文佳に取り憑いたせいで記憶喪失扱いになっているからとは言えない。


「まさか。たまたまだよ」


 少し緩んでいたはずの教室の空気が、また硬くなってきた。みんな僕らの会話が気になるのだろう。


「ふぅん。密倉さんってあのお屋敷の子だよね? 車でお迎えがあるお嬢様が、たまたまこの学校に?」


 密倉の屋敷は二世代前からある。考えて見れば、校区内で有名なのは当然だったか。転校のタイミングも中身が僕であることも、本当にたまたまなのだが。


「事情は話せないけど、本当にたまたまだよ」


 曖昧な笑顔で誤魔化す。月夜は怪訝そうに僕を見て、少しだけ瞳を潤ませた。


「でも、知ってたんだよね? あいつらバカだし、親もバカだから、絶対仕返ししてくると思うけど……」


 そう。それも問題の一つだ。あいつらの親は、自分の子どもの言い分を何でも信じてしまう。今回も絶対トラブルになるだろう。


「おい! 職員室に今度はあいつらの親が来てるぜ! また吠えてる」


 話題になった途端、予想が当たった。これが、あいつらが野放しになっている理由の一つだ。子どもを百%信じているので、関わるだけで親に迷惑をかけてしまう。

 生前、いじめられていたのに、実家に怒鳴り込まれた時は果てしなく困った。


「そう、みたいだね」


 騒ぎながら教室に入ってくる男子を見ながら、ちょっと苦笑いする。

 密倉の家は割とタフなので、怒鳴り込まれても平気だろう。ただ、根本的な解決には、イジメ自体をなくす必要がある。

 イジメっ子の親たちはイジメっ子にとって後ろ盾なので、そこから崩さなければならない。


「職員室、行ってみようぜ!」


 こういうのを野次馬根性というのだろう。男子たちが一斉に行動を開始する。


「ウチらも行く?」


 何事にも情報は必要だろう。僕は月夜さんの誘いに乗って、野次馬することにした。


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