1話 あっさりと
「おや、太志じゃないか。死んでしまうとは情けないね」
なぜか体育倉庫で目を覚まし、学校を出て帰宅する途中、近所のおばあさんに声をかけられた。
なぜか僕のことを気にかけてくれていた近所のおばあさんで、同級生にいじめられていたところを救ってくれたことは一度や二度ではない。
「死んだ?」
元々言動がおかしいおばあさんではあったが、今回は極めつけだ。まさか死人扱いされるとは思わなかった。
「気づいていないのかい。いたましいことだね」
おばあさんは普段丸めている背筋を少しだけ伸ばすと、周囲を見回した。
「そこのクソガキ! 太志をどこにやったんだい!」
おばあさんは、下校して公園で遊んでいたらしい同級生の一人を急に怒鳴りつけた。僕を体育倉庫に閉じ込めたのに、呑気に遊んでいたのか。
「オカルトババアが出た! 逃げろ!」
おばあさんは一歩で四歩ぐらい進んで、蜘蛛の子を散らすように逃げていく同級生たちに一瞬で追いつく。
公園で遊ぶ子どもを、謎の身のこなしで次々転がすおばあさん。完璧に警察事案で、見ているこっちが不安になる。
そして捕まった同級生たちは、あっさり僕を体育倉庫に閉じ込めたことを白状した――――