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双子の羽織は、江戸を舞う  作者: 絢凪 縁
2/4

忌み双子

父に頼まれ、とある反物屋のとを叩く攝


その店の店主の名前は"着飾 収蔵"(つきかざりしゅうぞう)…


別名"憑き陰り"とも呼ばれるその反物屋での用事を済まし

出た外は色んな物や者やモノが混ざり隠れる夜が広がっていた・

夜の闇が夕刻の明かりを押し出して、

薄暗い情景が(せつ)を包む



徐々に闇が迫り包む江戸の城下町(じょうかまち)の各家々に

次々と火の光が照らし出される。



そんな砂道を急ぎ足で()け、

(せつ)が向かう先は反物屋(たんものや)



「あの掛け軸……やっと見えてきましたね。」



そう口にする(せつ)の目に映るのは

反物(たんもの)織地(おりち)”の2つの掛け軸



その横に吊るされている提灯(ちょうちん)に明かりが宿る。

それはまるで包む闇を()けるようだった。



その提灯(ちょうちん)の前に(せつ)が立ち、格子(かくし)のような引き戸を開く。

夜分(やぶん)に失礼します。着飾(つきかざり)さん」



そう言って中に入ると

沓脱(くつぬぎ)と廊下があり

その先に一五畳程の大きい畳部屋が広がっている。



その奥にこちらに向かれて置かれてる

扉のないタンスに(あざ)やかで(あで)やかな反物(たんもの)

ここぞとばかりに()()められているその光景は

圧倒(あっとう)で、圧巻(あっかん)で、壮観(そうかん)と言わざる負えない



その反物(たんもの)の手前、畳部屋の中心にある帳場(ちょうば)

琥珀(こはく)色の反物(たんもの)を広げ、

片眼鏡(かためがね)で見ている御仁(ごじん)が一人



その人が反物(たんもの)を見ながら返す。

「そろそろ来る頃合いだと思っていたよ。攝坊(せつぼう)



その声色は、女性のような黒髪のサラリとした長髪とは

打って変わって、偉く男気の(まと)った勇良(いさみよ)い声だった。



その”着飾(つきかざり)”と呼ばれた店主は続ける。

「親父様からは聞いている、この琥珀(こはく)反物(たんもの)がお目当て物なのだろう?」


はい、と(せつ)

答え続ける。

「その琥珀(こはく)反物(たんもの)

偉く”癖者”いや”癖物”らしく。着飾(つきかざり)さんしかこの町では扱えていないと……」



まぁ、この店主”着飾(つきかざり)”も中々に癖のある人物なんだけどな

と父はこの頼み事をするときにぼやいていた。



それは心の内に閉まっておこう決め、(せつ)は話を続ける。



「父が新たな羽織を作るようで、それに合った色の反物(たんもの)

色々と探し回ったようなのですが

中々出逢えず、頼れる先が着飾(つきかざり)さん、貴方だったようです」



”それは嬉しいな”そう淡々と返すと

店主、着飾(つきかざり)琥珀(こはく)色の反物(たんもの)をまとめ



(せつ)に手渡した



「大事に扱ってやりな。

さぁもう陽の姿も完全に失くなった。気をつけてお帰り」



それを聞いた(せつ)

ありがとうございます。

と礼を言い(きびす)を返し外に出る。


その後ろ姿を見ながら着飾(つきかざり)が小声呟く


「今日の夜の(おお)い方には”混じり者”が見えた、

 守ってやるんだよ。攝篭(きょうら)…」



それは(せつ)の耳には届かなかった。

引き戸を閉め、外に出ると



空は新月にして朔月(さくげつ)

月の光はなく、夜目(やめ)すらも(にご)す夜が町に広がっていた。

(せつ)は、夜の黒が混ざり海松茶(みるちゃ)色に変わる反物(たんもの)を包み持ち

足を自分の屋敷(やしき)に向けた。



その後ろに

夜猿(よざる)のような大きな2つの目が

”ギロリ”と(せつ)の背中を捉えていた。





「あれが、"惨劇の忌み双子"か・・・」


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