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Viper Knights  作者: ねむねずみ
1/2

0話

ねむねずみと申します。

なんか降って湧いてきたのを書き留めたものですが

生暖かい目で見ていただけるとありがたい限りです

 BEAST POWER ONLINE

 2030年に発売されるとされていた待望のフルダイブ型のVRMMOジャンルのゲームで、予約殺到の世界有数の期待されているビッグタイトル。

 このゲームは体に動物の力を宿すというコンセプトの現実離れしたファンタジーが売りで、それ故に現実への影響度が問題視されていたが、安全性のチェックをオールクリアしてついに発売される。

 私もこのゲームに興味があるうちの一人で、運良く予約をすることができて、こうしてセッティングをしている。

 というのも、私がこのゲームを開発した会社の株主ということで株主優待として予約権を貰ったのだ。


「と、言うのがこのゲームを私が手に入れた理由だ。」

「へぇ、まぁ病院住まいの姉さんが楽しめそうなら、それがウチは一番嬉しいけどねぇ。」

「ふふ、柚希は相変わらず優しいね。」


 ここは大きな大学病院の一室。私、真島蜜柑は原因不明の病気で小学生の頃から病院で生活している。家族は両親に妹二人で、私以外は頗る健康だ。といっても、すぐ命に関わるようなものじゃないから平気だ。

 流石にずっと病気だと気が滅入るから、最近は私が大切な妹二人の悪いところを余す所なく吸い取ったと考えて、この長い付き合いの病気と向き合っている。

 そんな私の人生の癒やしである家族のうち、次女の柚希がお見舞いに来てくれている。

 柚希はゲームが好きで、なんで私がこのゲームを手に入れられたかが気になったらしい。

 そんな柚希は次回発売の予約権を持っているから、3ヶ月後には一緒にできると思うとすごく楽しみだ。


「姉さんはどんなビルドにするん?ベータテストだと動物は色々いるけど、人気な動物ほど安定してるみたいな感じではあったけど?」

「あ~、犬はバランス良くて猫は早いみたいなこと?」

「そそ、ファンタジーな生き物とかも宿せるから魔法とかもいいよねぇ。姉さんは運動神経神ってるし、魔法剣士とかがかっこよくて良くない?」

「そうだねぇ、まあ見て決め良うかなって思ってるよ」

「そっか~。結局見てからのほうがいっか。」


 そんな当たり障りのない会話を続けてると、ゲームの為の機械のセッティング、ベッドの入れ替えなどが終わり、少し日が傾いて面会時間が終わった。最近は病院の入院患者達が増えて忙しいから面会時間に制限があるのが私の癒やしたる家族との時間が減ってムカつくわぁ。


「さてと、ご飯の時間には私のナースさんがメッセージしてくれる筈だし、ちょっとだけやってみようかな。」


 ゲームの本体であるヘッドホン型の機器を装着し、ベッドへと寝転がる。事前にフルダイブ型のゲームをやるのを私の担当ナースの佐々木さんに伝えて電源をつける。

 ゲーム機器が立ち上がると、少しふわっという感覚と共に瞬きをしたように一瞬目の前が暗くなり、明るくなると目の前には木でできた建物。

 そこには看板が建っており「アバター作成はこちらへ」と綺麗な文字で書かれている。

 建物に入ると、中はテーブルと椅子がある。椅子は手前と奥で一つずつあり、奥の席には人が座っている。

 その人はこちらに微笑みかけると声をかけてくる。


「ようこそ、新たな獣宿し様。私はナビゲーションシステム八号『スコーピウス』です。貴女のアバター作成をお手伝い致します。」

「よろしくお願いします。」


 スコーピウスと名乗った彼女は黒い髪の毛を一つ結びにしていて、腰のあたりから黒い蠍の尾が出ている。身長は椅子から立たないと分からないけど、高そうだ。スタイルも凄くスレンダーで顔の美しさも相まってモデルみたいだ。彼女に見惚れていると


「はい。ではまず、体のスキャンデータを読み込みますね。このゲームでは現実の姿を元として髪や顔を少し変化させてアバターを作成します。これは現実の姿と大きく異なる姿を使用し続けると、現実とこの場所との乖離での疾患の発症を防止するためですので、御理解を。」


 そう彼女が言い私の体に手を翳すと、私の体に変化が出てきた。さっきまでは自分の身体を動かしてるけど、少しだけ違和感があるような感じがしてたけど、今はそれがない。


「スキャンデータを読み込みましたので、外見データだけの先程までよりも身体が貴女に最適化された筈です。それでは項目を一緒に埋めていきましょうか。まずはアバターの名前。アバターネームからいきましょう。」

「ん~、名前ですか」


 まさか名前が最初とは思ってなかったから考えてなかったなぁ。候補としては本名だけどミカン、蜜柑から考えたオレンジ、蜜柑の品種の甘夏や八朔などか。

 よし、もういっそ名前とは全然関係ない感じにしようか。好きな食べ物とかにしようか。


「アンズで頼む。」

「はい、アンズ様ですね。続いては、容姿の変更です。推奨しているのは毛の色や瞳の色、唇の色などの変更です。この推奨項目はいくつか変更することで現実との乖離をそこまで大きくせずに身バレ防止を可能にできますので、推奨されてるのです。元々、誓約書に身バレなどのリアルへの追求禁止などが御座いますが念のために。」

「まぁ、その辺は大事ですもんね。」


 さてと、私の体のデータが映し出されたので顔との相性を見たりして色を変えていく。私の顔は綺麗だと家族が言ってくれるくらいので、より良くなるように変えていく。姉的に妹たちの自慢の姉になりたいので、容姿には気を使っているかいもあって可愛く仕上がった。

 黒かった目を青くして、髪の毛をロングからバッサリ切りウルフカットに、色は黒からアッシュに。そして、歯を二本八重歯に変えて耳の形を少し変える。


「これでどうでしょう?」

「まぁ、とても良くお似合いですよ。美しさが際立ってますね。それに防犯面でも問題ないように思えます。」

「では、これでお願いします。」

「わかりました。続いてはステータスの部分ですね。ここで生活することにおいて、この項目は大切です。一つずつ慎重に行うのがよろしいですよ。

 まず、この世界のメインコンテンツ。獣宿しです。」


 獣宿し。このゲームの売りである動物の力を宿すシステムであり、戦闘や生活に大きな影響を与える。宿す動物がそれぞれ上がりやすい能力や育ちやすいスキルなどがあり、その能力やスキルに合わせたビルドが主流だ。


「この獣宿しですが、基本的には選べるのが十種のみです。その代わり、私達にお任せいただければ貴女にあった種族を宿すことができます。言い方を変えればランダムです。

 ただ、両方メリットデメリットがあります。まず選ぶ際のメリットですが、選ぶことによって自分の思い描く様な力が手にできるでしょう。デメリットは十種しか選ぶことが出来ないことでしょう。

 私達に任せる場合のメリットは、貴女にあった能力を得ることができますし、十種以外からも選出されますので身体に合えば十種より遥かに強力な力を得られるかもしれません。デメリットは、選べないので自分好みでなかったり、苦手な能力を得てしまうかもしれないことですね。」


 因みに選べる種族はこちらです、と見せてくれたリストは

『犬』『猫』『猿』『馬』『鶏』『兎』『狐』『狸』『牛』『蜥蜴』

 好みの動物は兎と蜥蜴くらいなので任せるのが良さそうだと思う。この中の何になってもそれなりには頑張れるだろうけど、なんかピンとこない。


「スコーピウスさんにお任せしますね。」

「まぁ!私に任せてくれたのは貴女が初めてです。皆様安定性を求めるのか、任せてくれる人はそこまで多くはございませんので、テンションが高くなってしまいましたね。申し訳ございません。では、算出します。」


 任せただけなのに、すっごく嬉しそうにしてくれた。凄くクールな印象があったからギャップ萌えが凄い。彼女はAIなのに感情豊かに見えるなぁ。


「算出完了いたしました。アンズ様には蛇種族の薬蛇が良いでしょう。この種族についての説明は必要ですか?」

「お願いします。現実にいる蛇ではないですよね?」

「はい。この薬蛇は様々な薬を分泌する薬腺という毒を作る毒腺に似た機関を持っています。この薬に該当するのは回復効果のある薬から毒薬、劇薬も作れるようになる幻想生物になっています。」


 薬蛇という種族を聞いたこともなかった私には分からないけど、現実にある伝承をもとにされてるのかな?

 そもそも、なんでそんな蛇が私に適正があったのかが疑問ではある。どっちかって言うと力が強かったりするし。


「なんで私にこんなにテクニカルな種族が?」

「それはアンズ様の身体能力が通常の人よりも高いからですね。この薬蛇という種族を宿すと近接戦闘に秀でているのであれば、なおさら強いのです。戦いながら相手に毒薬を注入することもできますし、自分を回復することも出来ますので適正ありとさせてもらいました。」

「なるほど。じゃあ、この種族でお願いします。」

「かしこまりました。それでは獣宿しのシステムを説明していきますね。獣宿しの成長具合は種族レベルという形で表示されます。これが一定水準に達すると身に宿す獣が進化していきます。進化は様々な条件で分岐する事もあります。」


 獣宿しのシステムの説明を纏めると

・獣宿しは種族レベルとして表示される

・種族レベルが一定水準に達すると宿した獣が進化する

・進化は様々な条件で分岐することもある


「獣宿しのシステムは以上です。次はスキルですね。これは戦闘や生産に使える技術を表すものです。剣が使える人には剣術スキルが、火の魔法が使える人には火魔法スキルが発現するという感じですね。」


 なるほど、槍が使えたら槍術とかって事ね。このスキルを持ってると出来ることが増えていくって訳かな。


「スキルを獲得する方法はいくつかあります。一つはスキルポイントで獲得する方法です。このスキルポイントは自身のレベル、個体レベルが上がると獲得できます。そして、このスキルポイントを使用することにより習得条件を満たしてるスキルを獲得できるのです。

 もう一つの獲得方法はスキルの獲得条件を満たす事です。これによりスキルポイントの消費無しで獲得することも可能となっています。

 珍しいところで言いますと、スキルブックというアイテムがありまして、それを使うことでスキルポイントの消費無しで獲得することができます。」

「じゃあ、簡単なものは自力で頑張ったら取れるって事か」

「そうです。例えば、水泳スキルは適性外種族でない限りはそれなりに泳げば手に入ります。」


 つまり、出来ることは繰り返してるうちにスキルを獲れていくって感じで、苦手なこととか宿した獣的に無理って感じならスキルポイントで取るのかな。


「スキルはメインスキル、サブスキル、控えスキルの3つに別れていて、初期はメインスキルは5つ、サブスキルも5つで控えは10の計20。それを超えると経験値に変換し他のスキルの糧に変えなくてはいけません。

 このアバター作成で獲得できるスキルは5つです。これも私達に任せることもできます。なにせ、スキルの数はとても多いので、なるべく獣に最適化して選ばせてもらいます。

 ただし、この5つ以外に種族スキルという宿した獣が持つスキルも持っている場合があります。犬であれば嗅覚鋭敏化などが例に挙げられます」


 そう言ってスキルリストを見せてくれたが、確かにページ毎に五十はあるのにそれが何ページもあるのはちょっとね。


「とりあえず、おすすめ聞いてもいいですか?」

「はい。アンズ様の最適スキルはこちらです。」


 彼女が手をかざすと、私の前にディスプレイが出てくる。そこには5つのスキルと種族のスキルが書かれていた。


戦闘スキル『短剣術Lv1』『水魔法Lv1』

生産スキル『調薬Lv1』『採取Lv1』

特殊スキル『効率鍛錬Lv1』

種族スキル『薬液生産Lv1』『身体変化:腕Lv1』


 この薬蛇という種族に決めてから私の思っていた、武器などに毒を塗り、細かく傷つけて毒を浴びせるみたいなことができそうなスキル構成になってるし、この効率鍛錬っていうスキルはスキルリストに乗ってない。


「この効率鍛錬はリスト外ですが、獲得条件を満たしていたので選出しました。このスキルはスキルの効果を正しく理解することで効率のいい鍛錬ができるという難しいスキルですので、獲得するかはお任せしますね。」

「いえ、このスキル構成で大丈夫です。」

「わかりました。では、スキルのシステムの説明です。このスキルは種族レベル同様一定水準に達すると進化するもので様々な条件で分岐することも同様です。先程と違うところはスキルはメインスキルのみ成長し、サブスキルは使用は可能ですが、成長しないところです。」

「なるほど、ちゃんとメインスキルに装備しないと意味ないですよ~ってことですね。」

「そうです。理解が早くて助かります。

 さてと、ここまでお疲れ様でした。続いてが最後の項目のアビリティの項目です。このアビリティはいうなれば能力値の指標です。ステータスの中でも強さの指標として見られる重要な項目でこれは個体レベルが上がると自動的に上昇するものとAP、アビリティポイントを使う事で上昇させることができます。

 現在のアビリティはオール10。ここから初期アビリティポイント、50を九項目に割り振ってください。

 なおHPMPは基本1ポイントにつき10上昇です。これらは種族により異なります。」


 言われたとおりに九つの項目、『HP』『MP』『筋力』

『魔力』『体力』『精神』『俊敏』『魅力』『運力』に割り振る。

 薬蛇の上昇値は上から10、50、1、10、1、5、5、5、10である。


「これでアバター作成は終了です。確認して間違えなければ確定し、始まりの街『スタトゥーニ』に転送します。」


『ステータス』

名前:『アンズLv1』 種族:『薬蛇Lv1』

称号:『異界の獣宿し』『蠍座のお気に入り』

〈アビリティ〉

HP150/150(+5×10) MP500/500(+8×50)

筋力15(+5×1) 魔力60(+5×10)

体力20(+10×1) 精神30(+4×5)

俊敏35(+5×5) 魅力25(+3×5)

運力60(+5×10)

〈スキル〉

《メインスキル》

『短剣Lv1』『水魔法Lv1』

『調薬Lv1』『採取Lv1』『効率鍛錬Lv1』

《サブスキル》

『薬液生産Lv1』『身体変化:腕Lv1』


「間違いないです。あの、蠍座のお気に入りって。」

「あぁ、その称号というのは功績のようなものです。効果を持つものもありまして、異界の獣宿しは特に何もないですが蠍座、つまり私のお気に入りは様々な効果があります。貴女との時間は実に有意義でしたので。」

「ありがとうございます。私も楽しかったです。」

「ふふ、ではこれで。この世界をお楽しみください。」


 彼女がそう言い手を振ると、最初に感じたふわっとするかのような感覚と暗転が起こり、次に目に飛び込んできたのは多くの人で人で賑わっている町並みだった。

 ワクワクはしたけど、佐々木さんからもうすぐご飯ですよっていうメッセージが来ていたので一度ログアウトした。

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