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『予言ラジオ』

作者: 衣谷強

『夏のホラー2022』投稿作品です。


放送終了後のラジオから聞こえる奇妙な声。

それが告げるのは回避できない未来の運命。

聞いてしまった少女の運命は!?


どうぞお楽しみください。

 ジ……、ジジ……、ザザ……。


 掠れたノイズが流れるラジオに、私は耳を澄ます。

 日曜日の放送終了後。

 その時間のラジオから奇妙な声が聞こえる、という都市伝説がある。

 ノイズ混じりのその声は、聞く人、またはその周囲の人に向けた予言を放つ。

 その予言の的中率は100%。

 内容は様々で、宝くじで百万円当たった人もいれば、自動車事故に遭うと言われて家に閉じこもっていた人は、居眠り運転のトラックに突っ込まれたらしい。

 そんなのオカルト好きからしたら試すしかないじゃない!

 さて、どんな面白い事が聞こえるのかな?

 

 ジ……、ジジ……、ザザ……。


 ん! 何か聞こえてきた!

 ……!?



 あー……! 聞くんじゃなかった……!

 的中率100%なんだよね……。

 って事は、私の人生はあいつに……!

 片井かたい賢悟けんご……!

 風紀委員の中でも堅物と有名な男……!

 あんな奴に人生をめちゃくちゃにされるくらいなら……!

 やられる前にやるしかない……!

 人気ひとけのない階段の上からどんってすれば事故にしか見えないし、万が一バレても中学生なら多分罪も軽く済む……!

 さぁ、隙を見せろ!


上沢かみさわ信子のぶこさん、先程から私を付け回して、どういうおつもりですか?」


 うぇっ!? 気付かれた!


「同じクラスなのですから、必要ならば声をかけてくださればいいのに……」

「え、いや、その……」


 予言を回避するために、階段から突き落とそうとしてたとか言えない……!


「それともクラスでは話せない内容の話でしたか?」

「えっと、その、それはそうなんだけど……」

「悩み事ですか? でしたらどこまで力になれるかはわかりませんが、聞かせてもらいます」

「……」


 ……何よこいつ。

 堅物だなんて言われてるけど、優しいとこあるんだ。

 こいつになら正直に話しても……。


「あの、さ……。『予言ラジオ』って知ってる……?」

「噂は聞いた事があります。放送の終わった時間に、予言めいた言葉が聞こえてくるという話ですね」

「……それを、昨日聞いたんだけど……」

「何と! ただの噂ではなかったのですね! その予言の内容が上沢さんの悩みの元なのですか?」

「そ、そう……」


 あっさり信じてくれた……。

 私がこいつの立場だったら、馬鹿にして笑ってたかもしれないのに……。


「その内容とは?」

「……えっと、その、わ、私が、その……、『上沢信子ハ片井賢悟ト結婚スル』っていう内容で……」

「何と! それはまた驚きですね! しかしそれならば問題ないのでは?」

「えっ!?」


 どういう事!?

 こいつ私と結婚したいとか思ってたって事!?


「この予言の結婚がどの程度のものを指すのかは分かりませんが、日本には離婚の制度もありますので、一度結婚して離婚すれば予言から解き放たれるのでは?」

「! そっか! あんた頭いい!」


 確かに結婚する事が確定していても、その後一生結婚してるとは言ってないもんね!

 一旦結婚して離婚かぁ。考えもしなかった。


「ただそうすると戸籍に離婚歴がついてしまいますので、一旦提出してそれが戸籍に反映される前に無効にする方法などを調べてみるのも良いかもしれません」

「すごいすごい! あんた天才!」

「何にせよまだ私達は結婚できる年齢ではありません。その時までに対策を講じて実行しましょう」

「うん! ありがとう!」

「お役に立てて嬉しいです」


 にかっと笑う片井。

 相談して良かった!

 ざまあみろ予言ラジオめ!

 お前の思い通りなんかになるもんか!


「そうと決まれば今日の放課後時間ある?」

「特に予定はありませんが」

「そしたら学校帰りにホームキッチン寄って対策考えない?」

「ホームキッチン……。駅前のファストフード店ですか」

「そうそう!」

「……下校時の寄り道は校則で禁じられていますので……」


 うぇ、やっぱり堅物かぁ。


「一度帰宅してから集合でもよろしいですか?」

「……! 勿論!」


 何だ! 意外と話せる奴じゃない!


「以前から興味はあったのですが、行く機会に恵まれず……」

「マジで!? 一回も行った事ないんだ!」

「そうなんです。なのでわからない事だらけで……。あ、服装とかはどういったものが適切でしょうか?」

「……いやー、普通にTシャツとジーパンとかで良くない?」

「わかりました! ありがとうございます!」


 予言への対策が見えた事と、片井が意外といい奴だった事で、私の気持ちはとても明るくなっていた。




 それが墓場への第一歩と気付かないまま……。

読了ありがとうございます。


結婚を回避するためにあれこれ話し合っているうちに、「あれ? 何で離婚しないといけないんだっけ?」ってなるやつです。

となれば人生の墓場に一直線。

予言ラジオさんもこれにはにっこり。


……「どこがホラーなんだ!」ですって?

信子が『階段から落として亡き者にすれば、結婚しなくて済むぞ』思考が怖くないとでも?

やっぱり一番怖いのは人間ですよ。うん。


お名前紹介。

上沢かみさわ信子のぶこ……噂は信じる子

片井かたい賢悟けんご……硬いと堅固から


楽しんでもらえたら嬉しいです。

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― 新着の感想 ―
[一言] ほっこり良いお話でした。 これ絶対ハッピーエンドになるやつと思ってニヨニヨしていたのですが、片井君の口の上手さに思わず舌を巻きましたね。 簡単に丸め込まれる上沢さんの素直なところも好き。
[良い点] あら素敵なお話……。 怖度ほんのりで優しい仕様でいいですね。 ☆⌒(*^∇゜)v
[良い点] 墓場…!なるほど!! ラジオのホラー面白かったです!まさかその結末とは!展開が好きです! 対策を講じようとするふたりがかわいいです! ありがとうございました!
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