表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/11

03

地球から飛び出した人工生命が銀河サイズの

軍団を率いる魔王となり

宇宙全体の生命を根絶やしにしようとします

その魔王を討伐するために人類の切り札

亜空間戦艦マグニファイセントが活躍します

惑星京都


当初の予想に反して

驚くほどあっさりと

一行は惑星に到着した。


日輪星系の主惑星であるこの京都は

日輪で最も文化の発展した星である


嗜好の食文化と文化財を多数保有し

古くから続くものを詫と錆と称して

尊ぶ人々が集う素晴らしき星だ


この星に国の象徴たる皇王がおわす

京の都がある

そして国の中枢たる日輪幕府の

民主主義で

全48惑星より選出された日輪将軍

が逐わす日輪城があるのだ


「惑星京都…か一度は来てみたかったんだ」

バルドはおのぼりさん宜しく

京都の華やかな空気に期待を膨らます

「金閣寺…て本当に純金なんですかね

柱の一本もあれば億万長者所か国が買える」


ストームは「そうか…ここには金閣寺が

あるのか…じゃあ奈良星には銀閣寺が…」

「まあ期待しているのに水を差すようで

申し訳ないが、恐らく金鍍金だろうから

バルド君の期待程じゃないと思うよ」


「え!本当ですか旦那~」


シャレーダーは金閣寺らしい建物を

スキャンしエ!と言う

「キャプテン…アレって純金で出来てます

100%ゴールドですよ」


ストームの笑顔が固まる

「なんだってーーーっ!!」

聖子博士…国家予算をなんて無駄使いを…

この星系の人達に余りに申し訳ないぞ


「お母さん金閣寺を純金だと思っていたんですね

ソコまで世間知らずだったなんて…」


「究極の箱入り娘だったそうだからね…

あの年でサンタを信じていたし…」

二人の会話に後ろから便乗する祭文

「祭文教授…あなたの記憶は」


「ボクはキャプテンのアドバイザーとして

博士に造られた人工生命体だよ…自分が何者か

解った瞬間消えていたメモリーもすべて

復活したさ」


「とにかく助かります…アドバイザーは

大統領の私にとって昔から、なくては成らない

存在ですからね兎に角助かる!」


「君ねー少し頼りないよ~」

エネルギーが枯渇し

マグニファイセントに搭載されていた

カンニングマシーンは機能を停止した

頼りにしていたオブサーバーを失い

途方に暮れていた所に祭文の参入である

有り難い…有り難すぎるぞ渡瀬博士!


京の都には、新撰組を名乗る警察組織がある

そこには、3代目近藤局長を旗頭に

3代目土方歳三やこれまた3代目の沖田など

蒼々たるメンバーで構成されていたりする

「博士~」「お母さん」

博士の思わぬ趣味を垣間見てストームと

シャレーダーは一体何を思うのか

「知らなかったの?

博士…かなりのミーハーだよ」


京の都は表面上は平和そうに見える

流石に星系の主惑星で、此まで隠密理に事を

進めてきたダークネス教徒が

事を構えるには時期早々だと判断したのか

「どう思います祭文教授」


祭文は顎髭を弄りながら

「どうもこうもないね…これは

敵が手を引いたか…それとも」

「僕達以外が全てダークネスに

飲み込まれたかだよ」

その瞬間まるで掌をひっくり返した様に

世界の全てが反転した


「これは…!!」

「我々は集団で幻覚を観ていたのか?」


その瞬間ストーム達ディーヴァ以外の

住民は夢遊病患者みたいになった


「どうかなそれは…僕達を含め民の全てが

幻影に囚われていて、僕達だけ幻覚から

目が覚めただけかも知れないよ」


祭文の言葉通り、ストーム達以外の人々は

この異常な光景が目に見えていない様である


「一人や二人が幻影に掛かっているなら

君達にも解っただろうけどさ…もし

星の人間全てが、ストーム君達も含めて

星の全員が夢の中に囚われていたとしたら」


「夢から覚めるのは容易じゃないよね」

「シャレーダー君まで掛かるなんて

何という凄まじい幻影だ!!」


「こんな事の出来るのは…」

心当たりは一人しかいない

弓姫ディーヴァに変身した日陰姫が

その名を呟く

「幻影魔人…弦間」


「公儀お抱え御庭番を務める

無明衆の中でも天才と言われた

男だね」

事情通の祭文は即答した

「奴は死んでなかったのか…」

ストームも弦間の恐ろしさは

知っている


「惑星規模の幻覚を作り出せるのか

…下手をするとダークネス将軍級だぞ」


ストームは精神攻撃を得意とする

ダークネスの筆頭を思い出しているようだ

「アフリカ大陸の将軍アーモンの事だね…」


シャレーダーも思い出していた

「あの人はヤバいよ

洋子隊長さんが命懸けでやっと

やっつけたんだ」


祭文はアーモンを倒した洋子の戦法を

思いだし「ああ…まさか…そう言うことなのか」

さも意味ありげに呟いた


「どうしたの祭文?」シャレーダーは

弟でありながら髭のおっさん姿の

祭文にやっと折り合いをつけて

呼び捨てで呼ぶことにしたみたいだ


「まあ兎に角だ…弦間が危険な存在なのに

間違いはない…あと奴の幻覚には

相当気をつけないと、いけないこともね」


祭文は自分達がミイラ取りが

ミイラにと言う危険性を敢えて

ストームに伝えた

「祭文教授が居なければ我々は

精神攻撃の言い的にされていましたね」


祭文は自分の頭を指でツツき

「こう見えてボクは超能力系の

ディーヴァだからね…頭脳労働は得意だよ」

超能力系はゾスター血統…シャレーダーと

同血統であるレイディアンスより

シャレーダーの弟として近い存在になる


母親が同じで父親が違う兄弟だった

レイディアンスは異父であるから当然か

「どうせならゴーラの方が良かったな~」

まあゾスターは父として最低最悪の悪なのだから

二人がそう思うのは当然か

「そうだね」としみじみ祭文も兄に同意する


然しいずれにせよ、祭文とシャレーダーは

レイディアンスには遠く及ばない

地道に力を付けていくだけだ

「パワーだけなら惑星規模を

精神交易できる相手にとても

太刀打ち出来ないけれど

何と言ってもエネルギーさえあれば

万能の兄さんが付いているから

安心だね」


「それは…エネルギーがなければ

役立たずだって暗に言われてる気がするな~」

シャレーダーは祭文の言葉に

悪意を感じるも自分達に襲いかかろうと

しているダークネスに備える

「役立たずだと思われるの嫌だからね

ボクも」


京都の民の中にも感性の鋭い者は少なからず

居て、そう言った人達はダークネスに

見つかると狩られて成り代わりされてしまう

こうして気づかないうちに人の数は減少し

隣のいつも一緒にいた人がいつの間にか

化け物と入れ替わっている

それが弦間の見せる幻覚の世界だ


幻覚の世界ではストーム達こそが

今は怪物の姿とされて民達に見せている

京を守護する新撰組にもストーム達は

怪物の姿だ

オマケにストーム達に襲いかかってくる

怪物達は人間の姿をしていて

ストーム達は一度に人間と怪物の

相手をする羽目に合う


「己~卑怯な真似を…」

群雲や椿達ディーヴァは人間を

攻撃できず、怪物と知らずに

連携して攻撃する新撰組を

斬る事が出来ない


「これは不味いヤりにくい…」

「このままだとヤられる!」


その時新撰組の隊員達の目には

ストームは無論のこと

稲葉甑・佐藤・榊・芝・雪野の全員と

姫や腰元の緒御津もシャレーダーや

祭文でさえ怪物に見える

だがそこに祭文が脳波障壁を展開すると

事態が一変した


目の前にいた怪物が突然人間の姿に

変化して土方の剣が止まる

「何!?」


そして先程まで一緒に

戦い仲間だと思っていた方が

怪物の姿に成ったのだから驚きだ

「怪物!」


「どういう事だ!?怪物の方が人間で

人間の方が怪物に成ったぞ!?」


沖田がストームに切りかかるのを

土方は止めた「止まれ総司!」

三段突きと言う技をストームに

喰らわす寸前で

刀の切っ先が止まる


「土方さん」土方歳藏が相手を良く見ろと

言うと沖田はストームを観て驚きの声を

あげ、そしてさっきまで自分が

力を合わせていた隊員の中に怪物が

紛れ込んでいるので2度驚いた

「うわぁあ!」


怪物達は幻覚から醒めた新撰組と組んだ

ストーム達に苦もなく葬り去られる

その死骸からは青い光が飛び出し

刀に施された魔石の飾りに吸い込まれた

「何だこの光?」


「その光は人の魂のようなもの…

人を食う怪物を倒すと魔石が集める仕組みだ」

ザックリとストームがそう説明すると

土方は魔石を観てこう呟く

「さっきまで斬った化け物からは

青い光なんて出なかった…と言うことは」


ストームが「仕方のない事態だった…

それより君達に協力して貰えれば

大変助かるんだがね」


そう言ったストームに

切っ先を向ける土方

「悪いが手は貸せない…今度は

あんたが化け物に見えるかも

知れないからな」


ストームは「解った、直ぐに信用

してくれと言うのも無理だろう

だが…襲ってくる化け物は殺し

身を守る事はしてくれたまえ」


ストームは惜しいとは思いながらも

新撰組の協力は期待しないことにした


折角サムライディーヴァ軍団が

一気に増やせるチャンスなのだが

次の機会を待つしかないか


祭文の能力もシャレーダーと同様

果てしない高さを秘めているが

肝心のエネルギーが無いと

役立たずなのは一緒だと解った


どうもそれが祭文の気に触り

「ボクがもしもメイズディーヴァだったら

其れほどエネルギーを必要としないけれど

出来ることは制限される…とても

惑星全土を精神支配してしまえる

弦間に対抗する事は出来なかったよ」

と憤りを隠せないご様子だ

フン!


「誰も祭文様を役立たずなんて

思う不敬な者は居りません」

とムラクモが言うもシャレーダーは

「信仰心じゃエネルギーは増えないもんねー」

と嫌みを言う兄に祭文は

「嫌みじゃ敵に勝てませんよ兄さん」

と言い返す


どっちみちこの二人は

莫大なエネルギーがなければ

使えない兄弟である


「祭文様の幻覚破りのおかげで

我々は何とか同士討ちだけは

避けられている」


「それ以外のことにエネルギーの

無駄使いをさせることは出来ない」


ストーム等はサムライディーヴァガイさえ

召還できれば殆どのダークネスは

敵ではなくなるが、今は我慢との戦いである

「ガイの召還に掛かるコストがもう少し

押さえられれば相当心強いのだが」


まあそう言いながらも襲い来る

無数のダークネスを葬りながら

先に進むディーヴァ部隊

強力な戦力なのは間違いない

但し、多勢に無勢、流石のディーヴァ戦士も

ひっきりなしにそこらじゅうから

沸いてくる敵に疲弊してくる


「敵の強さが問題じゃない

無数に沸き出してくる敵は厄介だ

これじゃ休む暇がない」

バルドなどディーヴァと言うだけで

大した戦闘能力もないし出来るのはせいぜい

移動手段として船に変身できるくらいだ


「此処から一気に神殿に向かう

原頭、変身してくれ!」

原頭の体は亜空間から現れた船と融合し

宝船ディーヴァ酒天童丸に姿を変えた


その船に次々に乗り込むディーヴァ戦士達

襲いかかるダークネスもまた同じように

ダークネスを信仰するダークネス教団が

小型のダークネスシップに乗り込み

酒天童丸を追撃する


「酒天童丸に武器はないの?」腐っても

闘神であるディーヴァなのだ

バルドに聞けば武装の有無は解る

「知らねーそう言うのはシャレ坊主に

聞いてくれ」


彼に聞いた自分が悪かったと

同じ町民出身である緒御津は

原頭にもう少し活躍してくれと

願いつつシャレーダーに

「それで?」と聞いてみる


次々に襲い来るダークネス教団を

髪による攻撃技である剣嵐で薙祓いながら

シャレーダーは

「中距離攻撃は元より飛行に邪魔になる

武装はしてないよ、当たらなければ

どうという事はない身軽さだけが

最高の武器なんだ」


一理ある、バルドだとなまじ武器に頼って

操船が疎かに成りかねない


「成る程ね…私なんて長刀だし

姫様くらいしか弓の使い手も居ないし」


思えば剣術バカしかいない部隊である

中距離攻撃はシャレーダーと

ツバキだけで賄っている

敵が船に乗り込んできたときが

自分達の活躍の舞台だ


そう考えるとバルドの船の操縦も

中々見事な体裁きである

今や自分の体となった船は

バルドの五体と化しており

文字通り通常では考えられない

動きで敵を翻弄した


ある時は敵の攻撃を急上昇で避け

ある時は横に素早く避けて

自分の体感覚で狭い抜け穴を

ギリギリに入り込んで

そこに追撃した敵は

次々に障害物に衝突し

自爆していった


「ふおおお凄いなバルド君

これならなまじ武器で攻撃するより

敵の数を減らせるな」


「誤射して周りに被害も出さないし

以外と有効な手段なのかもね

反撃せずに逃げるのも」


「このまま正殿まで行けたら良いけど

さすがにそうは問屋が卸さないか」


ストームとムラクモそしてツバキが

そんなことを言っていると

予想通り、巨大なダークネスが

その姿を現し追いかけてきた


その姿は巨大な蛇の怪物で

全長は200メートルはあるだろうか

黒い体に緑の光スリットが全身に入っている

そいつが大口を開けて襲いかかってきたのだ

「おわあああああ」


バルドが悲鳴をあげながら

逃げまどう

「喰われる喰われるうぎゃあああ」


だが蛇ダークネスは

ネズミのように素早しっこく

逃げる酒天童丸を

丸飲みにしようとするが

食らいつけそうになっても

シャレーダーとツバキの髪の毛剣と

弓の攻撃とで邪魔をされなかなか

うまく噛みつけない


「あんな化け物を出してくるなんて

あっちも余裕がなくなってきている

証拠だね」


シャレーダーは祭文にそう言ったが

「それだけお母さんの残したモノリスを

敵が驚異に感じている証拠だよ」


「何かダークネスにとって致命的な

情報があるのかもね」

その言葉で祭文はある程度、母の残した

モノリスの中身について推理しているようだ

鍵さえ手に出来れば全ての謎は解き明かされる


この悲劇を食い止められる

そのためならと祭文は覚悟を決めていた

日輪星系に生きる民の全てが

自分の子供みたいに可愛い


超人である自分を信じて

母神の代理として実に800年

見守ってきた彼等がダークネスによって

蹂躙されようとしている祭文にとって

其れは耐え難い事だ


「ダークネスをこの星系から駆逐してやる」

祭文の中で

其れが産まれて初めて抱いた感情…怒りだった

「ボクは産まれてこの方こんなに怒ったことは

ない…ボクの愛する国民を不幸にし恐怖を

与えるダークネスは許せないんだ」


「皇帝様…」

日輪星系に生きる全ての民が崇める

国の象徴のこの言葉に胸が熱くならない

日輪星系人はいないだろう


シャレーダーは此は使えるだろうと

その映像を保存した地球での知恵だ

「ダークネスはこういう理屈を越えた

人の感情が苦手だからね」

不死身結えに限りある命の輝きに

憧れ尊ぶ意志をもつダークネスも

存在する、高度な知性を持つ

ダークネスと言う生命体にも心はある


ゾスターに強制的な洗脳を受けていない

場合、ゾスターに反抗するダークネスも

一部に居る此が地球人があの戦争に

生き残れた秘訣だ


人類は不死身の化け物相手でも

勝つことは出来る

結束力こそが人類の戦略なのだ

それに人類には希望がある

「超天才、渡瀬聖子が味方する限り

ダークネスに負ける事はない」


「何か言った?」

祭文の独り言に思わず

シャレーダーは

そう反応した


「博士はダークネスを産みだした

この宇宙で一番奴らを理解している

科学者だ…だから奴らの長所も短所も

知り尽くしている…その

博士が数百年かけて退治方を

考えているからには、もうそれを

とっくの昔に発見していても

可笑しくない…モノリスにある

情報はもしかしたら…

それじゃないかってね

推測していたのさ」


シャレーダーは思ってもいない考えに驚嘆した

「そんな…ボクはてっきりエネルギーを

獲得する方法を教えてくれるとばかり」


祭文は浅いなと思いつつ

「それなら敵からエナジードレイン

すれば済む話だ、最も合理的で

敵にダメージを与える方法だしね」


シャレーダーは苦い顔で

「ボクは泥棒から泥棒する様な

下品な事はしたくない…お母さんなら

ボクのためにちゃんとエネルギーを

用意してくれてるはずさ」

と言うお坊ちゃん的発想をする

「お躾システムとか良い子ちゃん回路とか

言ってたけど…これはお坊ちゃん回路と

言い直さなきゃならないかな?」


もう既に答えは出ているのに

願として認めようとしないこの

意地を張る要素が理解不能だな

お母さんに甘えているのか?

ずっと子供だもんと威張る兄に

祭文は恥ずかしくなる


「全く…お母さんがお兄さんだけに

甘々な理由が此だよ

母親の理想の子供がずっと子供の侭の

子供…決して成長しない子供だなんて…

渡瀬聖子の最高傑作は人類の希望じゃなくて

母親の願望の間違いじゃないのかね?」


「超天才でも間違いは犯す…まあこんな

もんなんだよね」

神の御技を持っていても神の知恵より

女の浅知恵が全てを台無しにする

見本みたいなものだ

それに比べレイディアンス兄さんは

いきなりゴーラと命懸けで闘い

勝利した…この時点でダークネスの

強さの限界を突破していたと見て良い


その後全ての世界を敵に回しながら

打ち勝ってきた、戦闘力だけでなく

知力も渡瀬聖子と渡り合えるほどに

鍛え抜かれた…興味深い存在だ

出来れば一度あって話をしてみたかったよ


まあそのレイディアンスを倒したのが

人間の女性だったのも驚愕の事実だけどね

亘理洋子…渡瀬聖子と対をなす存在

シャレーダー兄さんのもう一人の母とも

言える偉人だ


ゾスターが地球人を駆逐したかった本当の

理由はレイディアンスをも倒してしまう

人間の可能性だ…人工悪魔は間違いなく

恐れているのだ人間を!


今や宇宙災害レイディアンス級の化け物さえ

普通に存在するであろうダークネスも

人間の持つ可能性だけは無視できず

こうやって執拗に仕掛けてくる


遙か宇宙の彼方…渡瀬聖子を追って

悠久の宇宙を突き進むダークネス

立ち寄る星雲を食い荒らし

あらゆる文明を破壊吸収しつくす

宇宙最悪のウイルスも

人間の未知の可能性に恐怖しているのは

興味深い


正殿に向かう酒天童丸は追撃する化け蛇を

命辛々かわしつつ、何とかかんとか

都を南下して目的の正殿まで

後少しという場所までたどり着いた


「まったくシツコいとしか言いようがないね

この化け物共は」


「よっぽど我々に知られては不味い

情報が女神のモノリスにあるんだろうよ」


酒天童丸に取り付く怪物は

闘神達ディーヴァがすぐさま

撃退していく

「例え数だけ揃えても俺達ディーヴァには

絶対勝てないぜっ!」

ディーヴァになりたての佐藤が

そう勝ち誇って言った

「俺はサムライディーヴァ・マサムネ

一昨日来やがれ!」


そしてダークネス信者を斬り伏せると同時に

足で蹴り船の外に死体を蹴り出した


だがマサムネだけではないダークネスを

喰らう鬼はどれも凄まじいのだ

「ふう」

稲葉ムラクモ

榊ムラマサ、芝トキサネ

いずれの戦闘力も負けず劣らず

素晴らしい戦果をあげていく

やはりサムライディーヴァは

闘神の中でも群を抜いている種族だ

闘神最強のガイもサムライディーヴァである

剣との相性が抜群に良いのがサムライだ


剣闘神はナイトディーヴァもいるし

他にも種族はあるが

サムライと言う種族はディーヴァとして

安定するのだ、技の多彩さに胆力、そして

単純な統率力、どれをとってもお得な

戦力なのである


強力な刀を使えば一気に戦闘力を増し

技を身につけるだけで強くなる

サムライディーヴァはダークネスにとっても

恐ろしい存在なのだ


「牙持たぬ人々のために俺達は戦う!」

そうした猛者が護る船がそう容易く

落とされる筈が無く、順調とは

言い難いが徐々に神殿へと

酒天童丸は近づいて行った


ダークネス教団も闘いに特化した

サイボーグ強化した団員を送ってくるが

そんな戦力でディーヴァに適うわけがない

次々に撃退されていく


「おのれ虫けらの分際で神に選ばれし

我等の邪魔をしようとは」

「ダークネス様方は我等に魂の安銘を約束されて

いるのだ」

「死を恐れるな戦士達よ

我等神の子達は例え死しても

楽園にて転生し幸せになれるのだ」

ふん!そう叫ぶ教団員を

鼻を鳴らし斬り伏せるムラクモ

「どの宗教も言うことは一緒だな」

「死んで花実が咲くものか」

「生きていてこその人生よ!」


「その通り!人生一度きり

結婚もせず死ねますかってね!」


既婚者が一人も居ないのはこのパーティの

特徴である


「時間があれば結婚だって」

「そうそう今は良い相手が居ないだけ!」


そう言ってムラクモとツバキは

目と目が合う

「良かったら俺と一度結婚してみるか

姫様よっ!」

其れを聞いて顔を赤くし

「其れは死亡フラグよ!」

そう言いながら満更でもない様子である


「艦長と姫様…いつのまに!?」

ツバキの肩に乗る黄金色の魂蟲も

二人を祝福しているようだ


だがその魂蟲がダークネス教徒の

放った銃弾に被弾し砕け散った


「!」


その瞬間魂蟲の心がその場の全員に

以心伝心した


「おいらお母の作ってくれる

カレーが大好きだ」


「このお姉ちゃんは少し

お母ちゃんに似てるところがあるから

おいらが守ってやるんだ!」


「お姉ちゃんが無事で良かった

…さようならお姉ちゃん」


最後にツバキの腕に触れそうな所で

幼い子供の魂は空中に霧散し

そのまま闘神達の魔石に吸収されて

それで子供の想いが伝わったのだ


その余りにも純粋で幼い子供の

想いに、ムラクモは迸る怒りを

抑えられなかった


「ぐおおおおーーーっ」

その剛剣は唸りをあげて

銃を撃った愚か者の乗る大蛇ごと

八つ裂きにした


同じくツバキも悲しみを怒りにかえて

無数の矢で敵を闘滅した


「船を止まるなバルド!人の命を

命とも思わない屑共に絶対に

負けるわけに行かないぜ」


「解ってるよ…ムラクモさん

俺だって奴等は絶対に許せねえ」


ツバキは肩に残った名も知らない

子供の残滓を確かめるように触れていた

その手をムラクモが上から触れる


「敵を討ってやろう…こんな想いを

これ以上誰かにさせないために

ダークネスの奴等を一匹残らず

この宇宙から駆逐するんだ」


「解っております…私ももう

覚悟は出来ておりますから」


だが其れまでにあった

笑いもおふざけも一切消えてしまった

其れほどに皆にとって魂蟲の

消失は心の痛手となった

「奈落であの子の光に俺は安らぎを覚えた

あの時無数の魂蟲がダークネスの

餌食になったが…これほどの痛みを

感じなかったのは何故だ」


「何故これほどまでに…辛いんだ!?」


ストームが呟く

「ダークネス戦争で…地球も人口の

半分が奴等に殺された、だが自分に

関わりを持った子供の命は

数字ではない!」


「実感するのだ…幼い命の灯火は

消えやすいからこそ尊いものなのだ」

それに比べ命の概念が極端に歪な化け物である

ダークネスは人類の敵足に十分な悪魔になり得る

あらゆる驚異にあらがい進化と繁栄を続けてきた

宇宙に済む知的生命体の中でも

文明を滅ぼす強力な兵器も数多と合った


だが…それらでさえ、超新星を喰らい

己のエネルギーとし、知略で戦闘に利用する

怪物には例外だと言える

ダークネスの王ゾスター、その存在は

宇宙全体の驚異以外に何者でもない

小さき命を踏みにじることに何の躊躇もない

それでいて自分をこの世界に産みだした

渡瀬聖子のだけは異常すぎる執着と

独占欲を発揮し宇宙の果てまで

追いつめると言った異常なる精神と

欲望の化身である、はっきりいて

博士以外に何の興味もないのだ

この化け物には


ゾスターだけはどんな犠牲を払おうとも

必ず抹殺しなければならない

何故なら奴は生きた

ブラックホールかもなのだから


人工ブラックホール…それが

ゾスターの正体ではないかと

祭文教授はそう推測した

このまま成長を続ければいつか

銀河を丸ごと喰らうかも知れない

…それこそが怪物ゾスター


何故そこまで極端な推移になってしまうのか

レイディアンスだった

レイディアンスと言う前例が祭文に、あるいは

もしやと…思わせた

レイディアンスの正体は人工マグネター

だった、渡瀬博士は人工的に

宇宙現象を造りだしてしまったの

かも知れない…偶然か…或いは意図的に?

そんな存在を人の手で産みだして

何の意味が?


ゴーラも何らかの宇宙現象級の何か

だった可能性が高い、

当然シャレーダー兄さんもだ…


そして考えたくはないがボクだ…

ボク自身…その類だとしたら…

この日輪に止まる事なんて

有り得ない事だ

自らの意志に反していきなり顕現しないとは

限らない…それが何時起きるかも…含めてだ


明らかに自分に戦闘力はない

シャレーダーのようにディストラクションなど

撃てないしましてレイディアンスのように

単独でダークネス全てを根絶やしに出来る

能力もない

敢えて言えば頭脳だけは渡瀬聖子譲りだと

言えるレベルだと自負するが、それでも

自分があのクラスと肩を並べられる存在

でないことは自己分析するまでももなく

認識できる、そして此からも肩を並べられる

存在には成り得ない事もだ。


さあ祭文の思考の波が治まらずとも

事態は刻一刻進展していく


惑星京都全体を覆い尽くすダークネス弦間の

恐るべき幻惑に祭文の幻惑破りが辛うじて

わずかな範囲ではあるが効いている間に

目的の地に着かねばならない

エネルギーが切れればアウトなのだ

祭文のエネルギーも無限という訳にはいかない

敵を討伐すればエネルギーを奪えるが

それとてダークネス教徒が相手では

所詮は洗脳された人間、何の糧にもならない


「ええい厄介な!本来なら外敵である

ダークネスをこそ力を合わせ倒さねば

ならぬのにこ奴等ときたら」


サムライディーヴァ達は同じ人間を

敵の親派とはいえ殺すことに幾ばくかの

躊躇いがあった


魂蟲を殺されて一時的には

怒りに呑まれたが

数刻断てば無益な殺生に嫌気も


「不味いなこれは…闘神とは言っても

心は人だ疲弊するのは仕方ない」


戦争で人間同士が殺し合うのは

共食いとも言える行為だ…蛮行ともいえるが

所詮同じ人間同士の争い

国の利害もあって話し合いで決着が

つく可能性もある

だがダークネスとの戦争は話が違う

此はもう生存競争に他成らない

どちらが生き残れるか

種の保存を掛けた戦いとなる


神殿に行き着いた一行は

バルドの化身した船のサイズが小さいのを

利用しそのまま神殿の中へと突入した


そう出来るのならそうするべきだ

例え貴重な文化遺産の塊のような

神殿の中を荒らしまくり

壁を傷つけ柱を砕き破壊しようとも

行ける所までは行く、いちいち船を降りて

敵が沸き出す神殿の中を走って進むなど

愚の骨頂である


「あああ神殿の壁がぁあああ~」

「きゃあああ神殿の壁がぁあ絵がぁあ~」


神殿の価値を知る女達が慌てふためく中

男達は気にせずバルドにどんどん

神殿の中を進めと命じた

ストームは大統領として

このあまりの蛮行に凄まじく

後ろめたい気持ちにはなったが


「ここは…申し訳ないが見て見ぬ振りを

させて頂こう」

ひきつり的作り笑顔でそうするしかない

地球星剣初代大統領ストームグレートマーク


日本の美しくも華麗であり

人類にとって最高レベルの遺産に

文字通り土足で踏み居る所業を

自分がする羽目になるとは

ストームも流石に思いも寄らなかった

「ダークネス教徒共に宗教の自由と

権利を与え…国の機関に迎え入れた

結果が此だ…慣用なのは結構だが

悪魔に国を乗っ取られるなど…

許しては成らなかった」

まだ遅くはない…悪魔教徒共はこの機会に

一掃し失われた日輪国の威信を回復するのだ!


政権を乗っ取られると言うのは

言い過ぎだが…ようは国の重要部署に

敵に潜り込まれたのが最大の問題だった

奴等は日輪国の民衆を言葉巧みに

ある程度取り込み、そして子供達を

自分達の教義で教育し思想洗脳した後に

ダークネスの為に働く教徒に仕上げる


反日輪勢力は新聞やテレビにも

当然のように潜入し組織を乗っ取るのだ

「悪魔を崇拝するだけでも厄介なのに

日輪に害し死をも恐れない狂信者共め」

「死んでも自分達の魂はダークネスとして

生まれ変わり幸せになれるなどという

世迷い言を信じている」

「そう教育されたんだ…仕方ないさ」

だが狂戦士達は

「弦間の幻想の世界で奴等は正気の侭

ダークネスのために戦う戦士となる」

「目的のためには己が命でさえ省みない

奴等に説得は無意味だ!

死にたくなければ殺るしかない!」


まあ、だからといって同じ人間を

闘神の力で殺すことに躊躇する

その気持ちが無くなったら

ダークネス共と同じ怪物になってしまう


「狂った教義で洗脳教育されたとはいえ

同じ人間だからね…殺すのに抵抗があるのは

仕方ないこと…むしろ平気で殺せる方が

問題だろう」


機械的にバンバン殺していくのは

サムライディーヴァ達で

基本的に敵に容赦はしない


後、姫もサムライの娘として

戦の心得は享受しているのか

敵の顔面を主に狙い即死を狙う

「この姫様はヘッドショットか…」

庶民根性のバルドには刺激の強い

光景である


シャレーダーも容赦なく敵をなますに

切り裂いていくソードテンペストに

巻き込まれれば教徒共も微塵である


其れほどの実力差を見せつけても

狂信者達は向かってくる

祭文が知る日輪の民の姿とは程遠い


「一皮向けば人も獣か…」

それよりも死を恐れない兵の何と

オゾマシいものよ、まさに自殺である


「こんな行為は自死にも等しい愚かな行為だ

止めたまえ君達!」

日輪の象徴である祭文の必死の声も

狂信者達には届かない

「ダークネスのために死ぬことが

正しいことだと盲信している」

そして死にながら幸せそうに笑う彼等に

恐怖と怒りを感じる


信仰を利用して人間同士を殺し合わせる

その所業…絶対に許さない

祭文はダークネスに対する復讐心を

燃え上がらせた

800年もの長きに渡り育み見守り続けてきた

大切な子供達に何という酷いことを

させるのか、その怒りと口惜しさは

計り知れないモノである

だがその怒りの矛先はダークネスの王である

ゾスターに向けられるべきだ


ダークネスと言う種は既に宇宙そのものに

感染しきり排除は不可能となっている

粒子レベルで宇宙と融合し

今では水素と同じレベルで存在している


ダークネス粒子は原子番号DNとして加わり

科学者も既にそう認識し学会でも発表している

新たに誕生した宇宙の原子それが

DN=ダークネス粒子である


ダークネス粒子とはダークネスの体を

造る際にコアと結合させる接着剤となり

様々な宇宙の現象を

電気に重力、果ては時間まで

再現可能な粒子であり


3D的な立体映像を惑星の

大気中に映し出す事まで可能である


ダークネス戦争で荒廃した地球は

このダークネス粒子の特性を生かし

傷付いた世界を一時的に

覆い隠すことで文明崩壊を免れた

人の精神はそれだけ脆弱なのだ


そして時間をかけて破壊された

都市を復興する

死に絶えた人々も立体映像のモブとして

活動しており都市機能も回復するまでは

そうしてやり過ごせた


「日輪星系もこのダークネス戦で

どうなるか解らない…ダークネス粒子を

利用せざるえなくなる事態も想定しないと

いけないのか」


シャレーダーはダークネス技術が

人類救済の為にお母さんが

発明したものであり

その理念を決して忘れてはならないのだと

祭文に教えた

「人の為に造ったモノが人を滅ぼす」


人工生命体ゾスターが狂っていたのは

フランケンシュタインの怪物だからではなく

私利私欲に利用しようとして

使用方法を間違えた一部の人間達の罪であり

ダークネスそのものが悪いわけではない


ゾスターこそ人間の負の部分が具現化した

悪意の結晶であり、人間が産みだしたからこそ

その驚異を宇宙から取り除くのも人間の

義務であると言う理屈だ

そう、悪まで敵はゾスター


ゾスターさえ滅ぼせれば

後に残ったダークネスは

宇宙の一部として正常に機能する筈である

ゾスターを滅ぼす為に必要なら

ダークネスの力さえ利用する

それがシャレーダーの言いたいことだ


「ダークネスに手を貸すものや

利用するものも僕達の敵だが

ダークネスの持つ能力無しに

ゾスターを滅ぼすのは不可能だね

確かに…手段を選んで倒せる相手じゃない」


まあそれなら尚更のことシャレーダーに

プログラムされているお利口ちゃんプログラムは

邪魔だ…上書きしなければならない

恐らくその上書きプログラムは女神の石碑

モノリスの中にある、何としてでも

石碑にアクセスするコードを入手しなければ

ならない。


石碑のコードを隠すなら考えられるのは

三種の神器のどれかに、そう考えて

神殿に突入した酒天童丸

絢爛豪華とは真逆の質素

飾り気が少なく機能的な

建物構造なのが日本文化の系統を

引き継ぐ日輪の基本様式である


広くて障害となる飾りが少ないのは

助かるのだが、それでも神器が

奉納されている御所は

小さいと言っても20メートルの

長さはある酒天童丸では限界がある

「取り敢えず此処からは走ってだね」


階段のある場所に来て

祭壇に行くにはこの階段を駆け

上がるしかない


「どうやら俺は此処までみたいだ

俺のことは置いて皆は先に行ってくれ、

後の事は頼んだぞ」


階段の先に禍々しい姿をした

ダークネスが待ちかまえて居るのを見て

原頭がそう言って皆を見送ろうとする

「バカなギャグは良いから早く来い!」

シャレーダーに原頭の変身を強制的に解除させて

首根っこを押さえつけキリキリ引き立てる

サムライディーヴァ・ムラクモ


それにしても宇宙船一隻を

亜空間に収納できるというのは

とても便利である

例えば自動二輪とかを亜空間に収納して

運べたら旅先で如何に役立つ事だろう

発電器とかも船に乗せて置ければ

冷蔵庫も使えるから旅先で

冷たいビールも楽しめるな

「俺を飲み会の送迎役みたいに言うなー」


「だいたい冷蔵庫って何だ?俺の船に

そんなもんを勝手に」いやまてそれだと

只で冷蔵庫が手にはいるよな

「俺の船に冷蔵庫やらクーラーやら

ましてテレビなんぞ置かせないぞ」

原頭の言葉に稲葉艦長が

「いや誰も…そんなもんまで置くとは

言ってないぞ」

「落語で饅頭怖いって奴だよ艦長」

そう説明するのは落語好きの佐藤だ

「何だそいれは?」


「本当は好きなのに怖いと言って

自分を怖がらせようとする奴から

好きな饅頭をせしめると言う落語の

ネタだよ」


「成る程~さては冷蔵庫だけじゃなく

クーラーとテレビも俺達からせしめようって

魂胆か?」


原度はトボケるように口笛を鳴らしながら

稲葉から目線をずらす

だが稲葉は原頭の肩を掴み


「良いぜ原頭!この一件がすんだらお前の船に

好きな物を乗せてやる!」

「そして皆で慰安旅行だお前の船を

艦隊の慰安御用船として

毎回利用させてもらうから喜びな」


其れは良い稼ぎになる、船乗りとしては

願ってもない話だ!

宇宙艦隊の慰安御用船となれば

船乗りとして一目置かれる存在だ

密造酒運びから一気に足を洗える

絶好の機会だ


「其れが本当なら妹にもう肩身の狭い

想いをさせずに堂々と船で商売ができますぜ」


「ああ本当だとも

この稲葉が約束する」

原度は妹の愛理の経歴に傷を付けやしないかと

本心では酒の密輸に手を染めたりしたくなかった

だが船のローンと妹の学業に払う金

そして闇会社に借りては成らない金を借りた

その為にしたくもない悪行に手を染めたのだ

今はまだ酒で済んでいるうちはいい

だがやがて悪に染まり麻薬の密輸にまで

手を染めたらもう取り返しは付かない

そういった人生を破滅させてきた者を

多く見てきた稲葉は、民間人でありながら

同じ戦場に身を投じた原頭に人生を

再出発するチャンスを与えたのだ


少なくとも此でこの戦いが終わった後に

原度が道を誤る事はもう無いはずだ。


ストームも稲葉の思いやりに思わず

心が和むが、今は死線の真っ直中にいる身だ

ほっこりしている場合ではない


「この状況でも日本人の気質は

思いやりといたわりの精神が重きを

置かれている…我々アメリカ人との

正義と勇気と希望と言う気質に実に

相性が良い」


「アメリカ人…ストームさんはアメリカ人

だったのか」


稲葉が驚いた顔になる

「それじゃあアメリカ人と日本人が

宇宙の距離を超え

再び協力しあいダークネスから

人類を守るっとしましょうか」


まあ表面上だけは

米と日本は有効関係を築けていた様に見えるが

実際は世界を米が緩やかな実行支配をするのに

日本が手を貸していたと言うのが実状であり

そのせいで世界の人口が加速敵に増加し

地球資源の枯渇と言う事態を招いた


秘密結社ワールドは

そうして増えすぎた人類を人類同士の

争いを避けて尚口減らしする方法として

意図的に人工生命体ダークネスを暴走させ

たのである


当初はダークネスが起こす被害も

コントロールが効くと高を括っていた

ワールドもゴーラという予想外の

存在にアメリカの兵力が負けるとは想定して無く

そこで計画を方向転換し、ダークネスの王

ゾスターと密約を交わして世界の終焉を

回避する計画となった


だがそれもゾスターの計略の一つであり

そもそもゾスターは博士以外に興味が無く

博士が愛情を示す人類に嫉妬しており

根絶やしにする気であった


だがアーモンと言う新たな盟友の

存在が介入しその計画も押し止まり

地球の支配をアーモンに託しゾスターは

後方からの支援を受けつつ宇宙に

進出すると言うアーモンの計画に乗り

あのゾスターがアーモンを信用する

その理由は

アーモンが私欲によって自分に

協力している為である


ゴーラのように種族繁栄のため

私利私欲関係無しに我が身を捧げる

手合いにはゾスターは決して心を許さない

信頼できる根拠がない、そう感じるからだ

無償の愛などこの世に存在しないし

あるとしてもゾスターは決して価値を認めない

のである


人類のためにと言う理由で

渡瀬聖子博士は人工生命体である自分を

消去しようとした、その事がゾスターを

決して他人を信用しない性格にしてしまった

とも言える、いや生まれたときから

博士に対しての異常な執着心があるがために

やがては今のように狂っていたかも知れないが


ゾスターはアーモンが強欲であるがために

自分と似ていると感じていたアーモンは

亘理洋子と言う女に執着し手に入れるために

ゾスターと盟約を結んだ

悪魔の契約書である

ゾスターが去った後の

地球をアーモンが支配し洋子には

聖母として民達の癒しの存在として

統治する世界だ

慈愛の化身のような洋子なら

全ての者を導くのに相応しい


だがそれすらアーモンにとっては

どうでも良いこと

洋子を失いたくないその一心が

豪龍と言う希代の英傑をさえ

ダークネスへの道に迷い込ませた

だがそんなアーモンだからこそ

ゾスターは理解し共に覇道の道を

歩む友として認めたのだ

恐らく洋子はそんなことは望んでいない

だがそれでも自分の意志に従わせ

自分の横に置く事が目的だと

同じだ…自分と…そう確信したとき

ゾスターはアーモンを求めたのだ

只一人の理解者として必要な友人として


博士に拒絶され続けるゾスターには

自分の正当性を誇示できる理由付けにもなる

どんなに拒絶されようとも自分の

横にいることが彼女の為であり幸福なのだ

今は理解できなくともやがて理解できる

このゾスターの考えこそが正しいのだとな。


それは独善的な偽善であり自分の考えを

無理矢理押し付けるだけで愛とは言えない

好意

だが人工生命体である怪物では知能が高くても

所詮怪物…其れが解らないし伝わらないのだ

例え見かけが人間に似ていても

その心が無ければ人とは言えない

人と似て似ざる者…だが

怪物の夢は永遠に終わらない悪夢なのだ


人には考え方と言うか行動原理と言うものが

存在する、それは理念と呼ばれる規範であり

人が集まってどう働き暮らすかの幸せになる

為に必要不可欠な基本的で正しいものである


ゾスターはウイルスと同じだ

まさに病気の様な存在である

人類を病で冒し弱らせる

終いには星そのものを死滅させ

次々に星に蔓延していく災害である


渡瀬聖子博士は意図せずして人類ばかりか

宇宙全体を病巣にする知的ウイルス兵器の

驚異に晒す怪物を造りだしてしまったのだ


その唯一の対抗手段であり

免疫抗体がシャレーダーと

ディーヴァ達なのだ

だがゾスターと言うガン細胞は

時間の経過と共により強力によりしぶとく

その猛毒性を増していく

ゾスターこそは宇宙の害悪であり

最も忌むべき者である

だが我々がそう思う以上にゾスターは

人類を憎悪していた


渡瀬聖子は人類ではあるが

自分の創造主であり

今はダークネス細胞により

混沌の女王として

その英知に相応しい超生命体へと

変身している

少なくても人類を遙かに超越した

存在だ、人類から神と崇められても

可笑しくない筈なのだ


だが彼女は虐げられた

彼女が愛を注ぐ愚かなる人類共にだ


人類など彼女からしてみれば

とるに足らないゴミのような種族だというのに

彼女に最も相応しく釣り合いがとれる

優れた生物はこのゾスターのみだと言うのに

何故彼女はこの余ではなく

あんな者共を気にする?

こうなればゴミ共を綺麗に掃除して

清潔になった世界を彼女に見せてやる

其れを見れば彼女もこのゾスターの

正しさを理解する筈だ

彼女は愚かではないのだから


そうとも

このゾスターを創造した英知の結晶が

愚かである筈がない


その思考がゾスターにとって

都合の良いだけの言い訳にも思える

だが、ゾスターにとって

博士以外はどうでも良く

只々博士が自分以外の何かを愛している

事が気にくわない、だからゾスターは

同じ人工生命体でありながら博士に

溺愛されているシャレーダーと言う存在も

許せないのだ、だがシャレーダーの場合は

同じ人類など足元にも及ばない超次元の

存在だから理解できる

博士がシャレーダーこそが

研究の最高傑作として誇る気持ちは

解りやすい愛とは無縁の確かな

研究成果として認識できる


「だがこのゾスターこそが本当の意味での

博士の研究者としての最高傑作だ…

あらゆるダークネスの頂点であり

最強のダークネスであり

最高の頭脳である」

強さだけでなく優れた洞察力と

指導力、最強生物であるダークネスの王であり

神である究極にして至高の存在にして絶対者

帝王の中の帝王、宇宙の万物を総て手中に


未来永劫、このゾスター以上の存在は

絶対に生まれないと断言できる

宇宙で最強のブラックホールの化身でもある

このゾスターこそが最強の中の最強だと

断言できる

レイディアンスのチート級破壊力と

ゴーラのパワーを吸収したこの

反則的な強さ…そして頭脳は

渡瀬聖子博士とも並び立つ大天才たる

このカイサルゾスターこそが

大宇宙の真の支配者足に相応しい

絶対者なのだ!


祭文教授はゾスターと言う怪物が

この世界に誕生したのは必然だと思った


人類にとってゾスターと言う解りやすい

悪が存在したおかげでダークネスと言う

新たな力を受け入れることが出来たんだ


ダークネスと言ってもゾスターに

無条件で従ってはいない

ある者は敵対しある者は裏切り寝返る

ゾスターを信仰する者や魂を捧げる者が

いる一方でゴーラこそ神だとして

強さだけを求めるダークネスもいる

結局人間と変わらない

色々な考え方や生き方を持つ種族なのだ


「まああれ此考えても時間の無駄だな

結論だけ言えばゾスターを殺す

其れが出来れば僕達の勝ちだし

ダークネスが世界の侵略者だとしても

時間と共にやがては世界に同化する」


「だがゾスターが世界の破壊者なのは

間違いないあいつだけはこの宇宙に

存在しては成らない怪物だ

放っておけば必ずや宇宙そのものを

死の世界に変えるに違いない」


そして神殿の中では本当に死の世界が

展開されていた

今この神殿で生きている人間はいない

全て殺され魂を魂蟲に変えられ

ダークネス獣の餌にされていた

魂の抜けた遺体はダークネスの体の

部品としてそのまま使われ

手や足がその侭の形で目視でき

とても不気味だ


「正に地獄だな…」

「これが日輪神殿の今の姿だと思うと

嘆かわしいばかりです」


「おのれ化け物共め許さんぞ」


ディーヴァの身と成った今なら

ダークネスよりも戦闘力は上だ

その立場になり始めて戦士は

敵に怒りをブツケることが出来る

言い過ぎかも知れないが

只喚くばかりでは負け犬の遠吠えに

過ぎない


「貴様等っただでは許さんぞぉお!!」

「奪った者の命は自分の命で償えーっ」


サムライディーヴァ隊の戦闘力は

凄まじく、怪物軍団の戦力を

次々に薙ぎ倒していく

やはり剣術を極めた者が

サムライディーヴァになると

戦闘力が違うようだ


他のディーヴァとは明らかに

格の違う強さだ


「やはり凄いなサムライディーヴァは…

渡瀬博士もこの力を見通してこの星系の

文化系体を日本式にしたのかも知れないな」


「統率力…忍耐力…戦闘力

どれをとっても素晴らしいものだな

日本人は」


ストームは一つの星系全部が

日本と言う国だけで形成された事が

如何にダークネスにとって驚異であるか

目撃できた幸運に感謝した


このレベルの武士が人口比で考えると

数万…数千万か…、が存在する

サムライディーヴァが数千万…

桁違い過ぎる戦力である


「ガイ御剣一人でダークネスの大軍を

葬れたのだ…この星系の

全サムライディーヴァ軍の

力を結集したならば

ゾスター軍を倒すことも夢ではない」


戦う相手が

ダークネスではなく

明確な敵の名として

ゾスター軍と考えて

ストームは此から敵を

そう呼称すべきと思い立った


大統領がそう呼び名を変えれば

民衆は付いてきてくれる

ダークネスの全てを否定しても

今や粒子レベルで世界に存在する

存在の否定は現実的ではない


妥協すべき所は妥協する…

ゾスターとゾスター軍だけを

敵と認識すればそれで事は足りる

宇宙の支配者になりたければ

好きにすればいい

だが…破壊すると成れば話は別だ


命有るもの全てが貴様の敵に成ると

思い知るが良いゾスター


「それにしても神殿の様子が可笑しいとは

思いませんか祭文様?」

自分の中でゾスターを考察していた

祭文はムラクモの言葉で呼び戻された


「ん?」


どうやらムラクモはこの神殿の中の様子に

違和感を感じているらしい

「もうとっくに三種の神器の祀られた

間に着いている筈なのですが」


神殿に来たことのないムラクモでも

神器の間がこれほど見つからないのは

可笑しいと気が付いている

「そうだね…幾ら何でもこんなに

掛かるなんて確かに可笑しいね」


祭文はシャレーダーに

「幻影以外にも何か仕掛けてきている

かも知れない…兄さん何か感知出来ないの?」


シャレーダーは言われて慌てて

センサーを起動させた

「神殿内の時空に歪みを感知したよ

…しまったな~まさか幻惑以外の手も

使ってくるなんて思わなかったよ」


「エネルギー不足な所を突かれたね

敵も兄さんがフル探知してこないだろうと

予測して罠を二重に仕掛けてきたんだ」


「この神殿に居る間は常に

フルスキャンしてくれ

シャレーダー君」


ストームもシャレーダーが省エネモード

なのは実に不味いと思っていた

そこに来て此である司令塔としては頭が痛い


「キャプテン、兄さんは戦いの要だから

出来る限り能力を使って情報活動だけは

させて下さい」


「無制限に、白鳥さんから

無制限に仕送りが届いていた

あの頃が懐かしいよ~」

と遠い目で呟くシャレーダー


白鳥さんとは何の比喩なのだろうか?

無制限の仕送り?

親だとしたら良い親ではないな

子供を甘やかし過ぎだ

と思うムラクモだった


「おい敵さんも本気を出して来たぞ」


ムラクモはストームにそう言ったが

自分より強い男に偉そうに言うのも

気が引けるのかストームの

背中に負ぶさるシャレーダーに

言っている様に振る舞う

よく考えたらストームは地球からきた

代表だった、流石に

言葉使いには気を付けないとな


育ちの悪さが偶に出るのは

稲葉が平民出身で叩き上げの

軍人だからだろう


だがストームは全然気にしない

「稲葉君、全然それでいい

下手に気を使われても戦場では

意味がないからね」


軍閥のストームは軍人の世界で育った

そのおかげでムラクモは

少なくても同じキャプテン

として同等だと思っている


「済みません…じゃない

済まねえなストームキャプテン、

ディーヴァでもキャプテン職の

あんたがこの場のリーダーに適任なのに

ついつい習慣で出しゃばった」


ストームはムラクモの指揮能力は

今の現場では自分より上だと判断し

指揮系統を混乱させないためにも

ここは譲る事にした

「いや!私が全ての責任を持つ

だから稲葉艦長に指揮を頼むよ」


稲葉はストームが自分の指揮下に

入ることに躊躇したが

そこに祭文が介入し

「皇帝であるボクも君の指揮下に

入って隊を組んだんだ

適材適所を考えても君が適任だろう」


階級も戦闘力も自分より格上の

ストームの扱いは遠慮してしまう

だが現場の指揮に関しては

叩き上げで、なおかつここの事情に

詳しいのは自分の方だと判断し

「解りました!この重役

、謹んでお受けいたします」

と答えた


後の責任は全て引き受けるから

稲葉には思い切り力を発揮して貰いたい

と言う祭文とストームの言葉に感謝し

稲葉はサムライディーヴァとして

初めて指揮を取ることになった


助かった…はっきり言って

自分にはこの難しい局面で指揮を

取るのは難しかったからな…


シャレーダー君は指揮系統は頼りに出来ないし

マグニファイセントの端末君はエネルギー

不足で助言を聞ける状態じゃない

カンニングペーパー無しに

私に戦場の指揮は出来ない


ストームグレートマークは

政治家としても軍人としても

艦長としてもいずれの才もない

ずば抜けた容姿とカリスマで

人を惹きつけるが


多少弁が立ち趣味が筋トレの

大男と言う事以外に取り立てて

特筆すべき才能のない普通の男である


だが無才な故に世界中から優秀な人材を

集め有効活用する才能はストーム最大の

武器だとも言える


人心を掌握し力を結集させ

敵を打ち負かすという

そうした

カリスマ性だけはこの男持ってる!!


稲葉の指揮のもとディーヴァ隊は

その圧倒的な戦闘力と統率のとれた

指揮の元、時空の歪んだ神殿を

突き進んでいった


道成に進めば行き止まり

道を戻れば逆に目的地に進む

祭文の幻覚を阻害する能力がなければ

遭難の危機だったが

シャレーダーの時空レーダーにより

何とか正道を導きだし

怪物共を蹴散らしながら

徐々に目的の場所に近づいた


「どうやら何とかなりそうだ」

ストームがそう言った時

凄まじい数のダークネスの

襲撃が始まった


「こいつら!」

「もの凄い勢いで襲ってくるぞ!」

「どうやら敵も焦っているようだ!」


サムライディーヴァ達が

襲い来るダークネスの怪物を

次々に斬り伏せる


斬られて絶命したダークネスからは

青いエネルギーが抜け出て飛翔し

サムライディーヴァ達の魔石に

吸い込まれていく

それがサムライディーヴァ達の

エネルギーになるのだ


シャレーダーと祭文も

魔石からのエネルギーを蓄積する

恩恵を得て機能を稼働出来る

「敵の数が増えて使えるパワーも

一気に増幅した」

「此で探索区域を拡張することが

出来るよ」


シャレーダーは増幅したエネルギーを利用して

時空の歪んだ神殿内の構造を探査して

正しいルートを確保した


「よーし!これで目的の場所に

たどり着く事が出来るよ」


「でかしたぞ小僧」

シャレーダーの働きにムラクモが

思わずそう言って誉めた

だがそれは早すぎる

「何か大きいのが来る!」


シャレーダーの時空レーダーは

この戦場に途轍もなく大きな何者かの

到来を捉えたのだ


「この大きさは…戦艦?」

シャレーダーの言葉に

その場全員の表情が凍り付いた


其れはこの場に戦艦が現れる

と言う事なのだろうか?


「戦艦と言うと…まさか魔獣戦艦なのかね?」

キャプテンストームが恐る恐る聞いた


「ええ…多分と言うか間違いなく

その戦艦ですね」

そう言って笑顔ひきつる

シャレーダーの後方に

巨大な黒い影が空間をこじ開け

一気に浮上した


「うわああああああ」


神殿も何もかも吹き飛ばし

ストーム達ディーヴァも巻き込み

時空爆発に巻き込んで

一網打尽にしてしまうのが

魔獣戦艦の狙いだった


そのためにまんまと神殿に

誘い込まれたのだ

多くのダークネス信者達も

罠に使う駒として利用したのだ


自分達の命はダークネスの神

ゾスターのために捧げる事に無情の喜び

を感じる狂った思想を持つ者達に

恐怖や躊躇いなど一切無く

ストーム達を罠に填めるために

時空爆発で一緒に吹き飛ぶ凶事に

至ったゾスター教信者達


「狂信者共め」


「あんなイってる目をした連中と

心中は御免だぜ!」


ムラクモ達ディーヴァは

全力の剣技を放つが

巨大質量の前には絶対的に

質量不足だ


もはやこれまでと諦めかけた瞬間

祭文がシャレーダーに

「兄さん亜空間ゲートを!」


そう言われシャレーダーは

マグニファイセントに通じる

亜空間ゲートを展開し

その場にいる全員を収容した


その刹那、巨大質量の魔獣戦艦が

出現し、時空の亀裂と共に惑星の

大気が破裂して

星が砕け惑星京都は大崩壊を起こした


その爆発の中心には時空から出現した

巨大な魔獣戦艦があった


魔獣戦艦ゲルサンド

それが惑星美作の藩主

美作進次郎が融合合体した

ダークネスの名である


「惑星京都が…」

進次郎は自分の行いが決して

許されないであろう事は解っている


だがこれであの恐ろしいゾスターに

この日輪星系の全てを消滅させられる

事態だけは避けることが出来る


超新星でさえ呑み込むあの超怪物ゾスター

人の手でどうにか出来る存在ではない

奴は宇宙の災害だ…

ダークネスの能力に目覚めた

魔獣戦艦の身になってもゾスターに

あらがう術はない


例えどのような誹りを受けようと…

この素晴らしい日輪の世界を

消滅させられる訳には行かない

国が生き延びる為の犠牲…

私は地獄に落ちるだろう…それでも

僅かばかりでも生き延びる可能性に

縋るしかないのだ


その光景を戦艦獣の艦橋から見ていた

一団、ゲンマ・セキサイ・ニオウサ

そして愛理は無言でその地獄の

光景を観賞していた


ゾスター教の信者諸共吹き飛ばした訳だが

まあ教団に属する人間は星系中に拡散している

直ぐに元の勢力を取り戻す事だろうよ


弦間はそう言って目を細そめて喜悦する

ゾスターを神と崇める者からすれば

この程度の犠牲、供物などものの数ではない

所詮人間など生きる価値のないゴミ蟲

程度の存在なのだ


この星系そのものをダークネスの

プラント工場としゾスター軍の

兵器工場とするプランは

これで一気に加速するだろう


美作進次郎もダークネス側の人間となって

何れはダークネスに染まっていく

さすれば少々の犠牲など国の存続のためと

気にしなくなるだろうよ


果たして其れで生きていると言えるのかい?


強力なテレパシーだった

それほどまで強力なテレパスが

そんなに多く居るはずがない


「祭文…生きていたのか?」


弦間の様子に他のダークネス幹部達も

気が付いた


「こう見えてボクは割としぶとくてね…

伊達に800年もあらゆる暗殺から

逃れていないよ」


祭文が生きていると言う事は…

他の者達も生きている可能性がある


「何処にいる?応えろ祭文!」


弦間の間抜けな問いに笑う祭文教授

あはははは

「そんなの亜空間に

決まっているじゃないか

その戦艦獣が現れる寸前に

亜空間ゲートを全快で開いて

都市ごと収納したんだよ」


シャレーダーが都市丸ごとの

空間収納したのは、まさに

危機一髪であった


収納の容量が地球型惑星と

同等のシャレーダーは

その気になれば惑星ごと

収納する事も可能なのだ


「時空爆発だからね被害の

大きさを考えたらこうするのが

一番だった」


シャレーダーはドヤ顔で

自分の能力が都市を救ったのだと

自負する、やはり人の命を

救えたのは嬉しい事実だ


「人口が都市に集中していたおかげだ

惑星の面積全部をカバーする必要がなくて

助かった」


そう言うのは稲葉艦長だった

シャレーダーを背負う必要が無くなった

ストームも参加する


「シャレーダー君の能力を制限無しで

使えるのなら此くらいの奇跡普通だよ」


制限無しでシャレーダーが力を?


「バカな!シャレーダーが

白鳥座からエネルギーを

補給できないと知っているぞ

そんなエネルギーが何処にある?」


祭文は笑いながら

「貴様等から補給したに決まっているじゃないか

他にどう説明がつくんだい?」


「バカな!シャレーダーには其れが出来ない

回路があるはずだ…其れがある限り

そんな真似…」


事実がそこにある

今の状況が全てを物語っていた


「一体どうやった?」弦間は

ゾスターの代弁者でもある

実質この星系全てのダークネス意志

決定機関は事実上、弦間であった


「貴様達が時空爆発を引き起こすその瞬間

三種の神器が発動してモノリスが起動したんだ

渡瀬聖子博士は遙か昔に予想していたんだよ

こうなる事をね」


「この弦間が時空爆発で三種の神器諸共

全てを亡き者にしようとすると?」


ダークネスクイーンである

渡瀬聖子のカオスオラクルは

弦間の目論見を読んでいた

とでも言うのか!?

800年も前にだぞ…

我が行動が予想されていたのか?

信じられない!」


ストームが言い放つ

「シャレーダー君が無制限に

能力を解放出来ると言うことは

どういう意味か…その事をもっと

真剣に恐れた方が良いと私は

君達に忠告するよ」


その物言いに弦間は怒りを覚える

「たかがエネルギー不足を解消したくらいで

いい気になるなよ人間がっ!!」


ストームは驚いた顔をする

「なんと!この状況が君には

理解できないと言うのかね?

これは驚きだ!」


弦間は歯ぎしりして

「何だというのだ

勝ったとでも言いたいようだな

その自信は?」


弦間はストームの余裕の態度が気にくわない

今までは追いつめられたネズミだった

だが今は王者の威厳さえ感じる


「シャレーダー君は今まで

敵のエネルギーを奪えない足枷に

囚われていた…だが」


「神器によって開かれたモノリスには

それを解除するプログラムが入っていた

予想通りにね」


やはりモノリスの中にあったのは

シャレーダーの

枷を外すプログラムだったのだ


「お母さんが許してくれたんだ…

人を救えるのなら悪党から盗んでも

罪には成らないって…お母さんが

言うのなら間違いない、それは

正しいんだ!」


このマザコンが!シネ!!

弦間はそう吐き捨てた


シャレーダーが亜空間から

マグニファイセントを

召還したのは

正しい判断だった


そうしなければ苛立った弦間の

攻撃の矛先は他の惑星に

向けられていたからだ


何処を狙ったか定かではないが

魔獣戦艦ゲルサンドの砲口が激しい

エネルギーの唸りとなって

放たれた一撃を

マグニファイセントは鉄壁の

「バニシングシールド!!」

を転回し

宇宙に散らした


「バカな!ゲヘナの炎を!

何だそのシールドは!?」


ストームが艦橋から仁王立ちで

魔獣戦艦の艦橋に居る弦間に応える


「これはかって宇宙最強だったLの

名を冠する者の盾…」


「バニシングシールド!!」


弦間はゾスター教典に記されている

Lの名を冠する力に警戒せよと言う

教えを思い出した


一つ Lの力は神殺しの力


一つ Lの盾は攻防一体の盾

レイディアンスの

反則級シリーズの武装を、あの船は

持っていると言うのか?


カイサルゾスター様は自らの力を

誇示する際、必ずレイディアンスの

名をお使いになる

その名を出せばダークネスの者共は

どんな馬鹿でも耳を貸す


その恐怖をDNAの深く刻み込まれて

いるかのように無意識に身が竦むのだ


その最強の闘神レイディアンスの

神の盾がマグニファイセントと言う

巨大剣には宿されているのだ


「ええい!本物のレイディアンスとは

格が違う筈だ、そんな紛い物に

この魔獣戦艦ゲルサンドが負けるものか」


弦間はレイディアンスの技の本質を

全く理解できていない

「無駄だ!」


マグニファイセントはレイディアンスの盾を

三角錐状にして傘を畳み其れを回転させた

そうするだけでゲヘナの炎は拡散していく

「遠心力でエネルギーを散らしている

これではどんな攻撃も意味を

なさないではないか!」


その力は魔獣を狩る事に特化していて

全く油断も隙もない

弦間は絶望的な気分を味わっていた


「聞いてないぞ…なんだこの圧倒的な

力は…ダークネスは無敵の筈…それが!」


「無敵じゃないのさ」


その声は直接ゲルサンドの脳から

発せられた

「進次郎…様!」


進次郎の声は澄みきり迷いは消えて

意識がはっきり伝わって来る

その声は何処までも優しく

全てを包み込む包容の声だ


「余は…間違っていた…人間は

決してゾスターに屈しない

何も出来ずただ殺される無力な存在では

無かったのだ」


その言葉を聞き弦間は怒りの声を上げる

「何を言う進次郎!ゾスター様を裏切るのか!?」


「弦間よ…裏切ったのは寧ろお前だ…

人間を見限りゾスターと言う

怪物に寝返ったのはお前だ!」


「何だと貴様!!」


「ゾスター教の教祖の貴様こそ

悪魔に魂を売り渡した張本人だあろう

貴様こそ裏切り者のユダだ!」


「黙れ!!」


弦間は強力な命令装置で君主の

意識を奪った

この支配からは絶対に逃れることは出来ない

この支配を受け入れ了承することこそ

ゾスターにたいする絶対服従の証であり

部下になる事を許す最低限の条件である

自らの意志で受け入れた絶対服従の呪いは

絶対に解けることはない


これを受け入れた時点でもう

終わりなのだ


ダークネスになりゾスターに魂を

捧げるとはこういう事である


一度ネイキッドになってしまえば

もう取り返しはつかないのだ


拷問や脅迫で脅されてネイキッドに

なるより星系の人民を守るために

ゾスターに魂を捧げた進次郎の方が

遙かに強力な支配を受ける


ゾスターから進次郎の魂の手綱を

渡された弦間には絶対に

逆らうことは出来ないのだ


「おのれ…弦間…」


ゲルサンドは進次郎の意識を抑え

弦間の指示通りに動き始める


ゲルサンドの大きさは月程もあり

とても人工的な建造物では

移動する事も困難だった、

だが人口生命体に不可能はない


重力を制御し生物と鉱物を融合させて

まるで巨大な生き物である様に

動けるのだ


結えにゲルサンドは進化までする戦いながら

敵に合わせて形態と能力を適応させるのだ


ゲルサンドはマグニファイセントに

対抗するために船体全体を

アルマジロのように丸めて

鋭い棘を生やして回転し始める


その回転力をつけて近くの惑星都市に

直撃するコースで向かいだした


「おのれ弦間め!汚い手を」


これではマグニファイセントは

矢面に立たざるを負えない


「人間など宇宙のバイキンみたいなもの

この手で殺菌してくれる」


弦間はそう呟くと下卑た笑いを浮かべる

エネルギーによる光線兵器とは違い

超質量による超物理暴力は

無理に止めようとすれば

様々な要因が発生する

レイディアンスの技はどんな攻撃でも

速撃し粉微塵に粉砕する

其れが問題なのである


「レイディアンスの盾を使わないのですか?」


「あの質量だと破壊しても破片が四方に

飛び散る!」


「!?」


ストームを初め数人しか理解が及ばない

「バニシングシールドに砕けた奴の破片は

四方八方に飛んでいき、この星の

各惑星に甚大な被害をもたらす事になるのだ」


「!!」

その地獄絵図は、全員の頭の中に

見えた気がした


天空から火の玉となって襲う

魔獣戦艦の破片

その質量は通常の物質の質量を

遙かに越える高密度の重さを持ち

その大きさからは想像もつかない

散弾となって星を襲う

その速度は光の速さだ


超高密度の光速弾丸に貫かれる惑星に

生き延びる術があるわけがない


「此は下手に攻撃できませんね」


だからといってレイディアンスの盾以外に

あの動く衛生規模の超密度回転体に

対抗できる術がこのマグニファイセントに

あるのだろうか?


今やエネルギー不足の呪縛も解け

すっかり甦った無敵の剣船


その傷は癒え銀に輝く美しい刀身と

白い金属質に変異した東京都庁の船体も

まるで新品である


乗組員達も凍結状態から復帰し

負傷し生命の危険にあった重傷者達の

傷も生命力も奇跡のように治癒されていく


その膨大な燃料は目の前にいる

敵のエネルギータンクから容赦なく

吸い上げているのだ


此までとはまるで違った戦法に

やっている本人達もその効果が今一

理解できていない


この戦力差を逆転する戦法の

効果に一番理解しているのは

やられている相手の方なのは

皮肉な事である


「回転力が上がらない…ゲルサンドの

推力がみるみる落ちていくだとぉ」

弦間はこの新たな

シャレーダー戦法が危険だと感じた


最早その重量差を跳ね返し

マグニファイセントの剣圧が

ゲルサンドの巨体を星系の外に押し出していく

小兵の力士が大きな力士を土俵から押し出す

夢の電車道だ。


相撲に例えるのなら

押し相撲で相手の力士に

一方的に力を吸われ

相手力士は力が増すのに対し

こちらは力を失い衰弱して弱まっていく


「亜空間を通じてエネルギーを敵から

奪うとはエナジードレイン戦法

実に理にかなった戦法だな」


この状況を見ていたダークネスセキサイが

そう呟いた、支配権は弦間にあっても

個人の意志を抑えられないのも

進次郎で実証済みだ


ゾスターは弱者の戯言と言動の

自由を敢えて許す、負け犬の遠吠えで

悔しがる人間の言葉を聞くためなのだが


「これが完璧生物の限界かよ

無様なもんだぜ!」


ダークネスニオウサも人の姿を捨て

怪物の身なりになり果てても

中身は侍のままなので口は悪いままだ


「五月蠅いぞ貴様等!ゾスター様に

使える臣下として恥ずかしくはないのか!!」


仁王左はフンと鼻を鳴らし

「貴様はさっさと旨趣替えしたかもしれんが

俺はまだ奴を主と認めた訳じゃないんでな

俺が主と認めるのは進次郎様だけだ」


「ば…馬鹿め!ならばわしに従え逆らうな!」


ニオウサは

「殿の意識を奪い躰だけを無理矢理動かして

おいて何が従えだ、魂の無い者に価値はない」


弦間は恐ろしい顔でニオウサを睨みつける

「我えの無礼はひいてはゾスター様への

無礼…その物言い決して忘れぬからな

覚悟して置け」


ニオウサは面倒くさげに

「活きるのは結構だが…今のこの状況を

乗り切るのが先じゃないのか?」


逢えての指摘に弦間はますます

不機嫌となり言葉が出てこない

「そ…それは解っている…」


ニオウサが思いついたように

「相手が吸ってるならこっちも

吸い返すってのはどうだ?」


「そんなこと出来れば既にやっている!」


ニオウサは?んと言う顔をして

弦間は苛立ちを抑えながら説明した


シャレーダーはこちらのエネルギーを

吸うと同時に燃料を消費していくから

吸い返せないのだ…逆に奪う燃料が

奴等にないのが問題だ


「そんなのせき止めりゃ済むんじゃないのか?」


弦間は言う

「どうやって止める!?貯蔵庫は

亜空間内だ…バイパスを繋げば

燃料を横取りしほうだいなんだぞ!」


「それじゃあ亜空間の畜燃料貯蔵庫に

燃料を盗ませないよう誰かを

送ったら良いんじゃないか?」


弦間はそれだ!と言う顔をし

言い出しっぺのニオウサと

先程から黙って

二人の遣り取りを見ている

セキサイ


それにもう一人の女幹部に目をやり

命令を下した


「ゲルサンドから神聖なエネルギーを

奪う悪辣な行為を直ちに止めさせてこい

これは命令だ!」


ニオウサと関犀は苦笑いしながら

「言われるまでもない

このまま貴様の無策のせいで

お目お目殺られる訳にいかないからな」


「ああそれと…ダークネスにも

一つだけいい制度がある」


関犀が殺気の籠もった目で

弦間を睨みつける

「力こそが正義という所だ…」

そして更に脅しを掛ける

「貴様のような無能な者に仕える気はない

此が終わったら俺が貴様を殺して

識見を剥奪してやるから覚悟しておけ」


それだけ言い終わると関犀は亜空間の

ゲートを潜った


弦間は蒼白である

この決闘はゾスターに認められている

無能な者をゾスターは徹底して廃棄する方針

だからである


下克上制度を許すのも絶対的な力を持つ

ゾスターの道楽だ

要するに遊びみたいなものなのである

徒党を組もうと油断をつこうと

もはやカイサルゾスターを脅かす存在など

この宇宙にいないという絶対的自信に

くわえ自負と満身である。


遊びの玩具を気に入っても

直ぐに飽きて壊すだけの

我が儘なゾスターだからこそ

弦間も些細な失敗も許されない

まして下克上されれば、せっかく掴んだ

地位が脅かされてしまうと弦間は焦った。


亜空間に入った怪物達は

巨大な城へと向かう

そこは星系にいるダークネス全ての

エネルギーを貯蔵する樽であり

城の形で厳重に守られているのだが


このエネルギー貯蔵庫に

迂回路を作りエネルギーを奪うための

巨大なパイプが出現していた


パイプは城の横腹にブッささって

いる、解りやすい。


此を破壊すれば事は済むのだが

「まあそう来るよな」


そのパイプを守るようにして

櫓が組まれその前には

見覚えのある出で立ちの侍衆が陣取っている


「このパイプには手を出させんぞ!」

最強と言われる

サムライディーヴァ達が徒党を組めば

何者も適わないだろう

その侍ディーヴァ達が待ちかまえる

場所にわざわざ襲うのは愚作だと言える


だが規模だけで言えば数万を数える

ダークネス軍を動かせるだけに

ニオウサも余裕はある


体長15メートルもの

ニオウサが先陣をきるだけで

ディーヴァ達にも大変な驚異だ


「野戦場では関犀の技も使い所が

ないであろう、ここはこのニオウサに

任されよ!」


突撃する時のこの言葉が関犀に送った

遺言だったのか、それとも

ニオウサはサムライディーヴァの陣に

躍り掛かるように金棒を振るった


だがサムライディーヴァの中に

ニオウサと同じくらいに大きい

闘神がいた、芝がサムライディーヴァ

として獲得した力は肉体を巨人化とする

力だった、その巨体は亜空間物質である

マグニタイトで構成されており

シャレーダーと同等の耐久力を持つ


亜空間から巨大化する材料を得る

事が出来るのはサムライディーヴァ

で、しかもシャレーダーが調節

したおかげである

当然、亜空間物質はシャレーダーが

自前で用意した物資だった


その大きさは10メートルと

少々15メートルのニオウサと比べれば

小兵ではあるが頑丈さでは遙かに勝っている


「どうせなら20メートル位に

してくれれば良かったのに」

自分より体格が一回りデカイ敵を前に

その迫力に否応無く押しつぶされそうに

感じる芝である

「なんだこの小さいのは

まさかおれ様とやろうってーのか」


だがニオウサといざ格闘になると

状況は変わった


「こいつ!チビのくせにやたらと堅い!」


ニオウサの金棒がまともに

サムライディーヴァ芝の肩口にズシンと当たるが

その金棒は芝の肩で受け止められてしまい

それを芝は片手で押さえて掴んだ

「どうやら力も堅さもこっちが上みたいだな

デカ物のおっさん」


芝の言葉にニオウサは顔を真っ赤に蒸気させ

怒りの表情がましく仁王になった


「このチビめがぁああブッ殺す!」


怒りに燃える仁王左の炎が明らかに

危険レバルにまで燃え上がり

もう一人の仁王が炎で形成された

「やばっ!」


そして二体の仁王が芝に向かって

金棒を振り下ろす


「ちょ!やば!これヤバいって!」

物理の金棒ともう一本は

炎で出来た金棒


炎で焼かれた場所を金棒で叩かれると

芝の闘神鎧の強度が見る見る

下がる、この猛攻はたまらん!


「ラッシュ!ラッシュ!ラッシュ!」と

叫びながら炎の仁王右と物理の仁王左が

乱打を続ける

それを必死で刀と盾で防ぐ芝


このままでは落命する!


そう思って身を引きそうに成るとき

「下がるな芝!」力強い言葉と共に

二人のサムライディーヴァが

芝の横に現れ剣で加勢した


サムライディーヴァ佐藤

サムライディーヴァ榊

二人もそれぞれの戦い方に特化した

鎧を身に纏っている


斉藤は見るからにスピード重視の軽量装備

榊は遠距離の敵を斬る次元刀の使い手と

なっており、こうしたパワー重視の

戦闘には不向きだ

だがそれでも追い込まれていた芝には

有り難い援護参加だった


勢いを盛り返したサムライディーヴァに

仁王左右は苦虫を噛み潰した顔をする

「3対1とは卑怯者め」


芝はそう言うニオウサの顔面に

拳を叩き込む

「女子供を容赦なく殺す貴様等に

卑怯呼ばわりされる覚えはねえな」

芝に続き榊も

炎の仁王右を剣の延びる斬撃で攻撃する

「自分はやってないとでも言いたげな

顔だな」


「だがそうしたことをする連中に

力を貸した時点で同罪なんだよ!」

そう言いながら高速の動きで

仁王右の顔面を斬る斉藤


物理的に炎で出来ている仁王右に

剣で斬られたダメージは皆無だが

「仕方有るまい…そうせねば

ゾスターに日輪の星を全て

喰われていたんだ!」


そう言って仁王左右は同時に金棒を

振るい戦士達を弾き飛ばした

「有無を言わさぬのがゾスターのやり方だ

解かったか小僧共!!」


「偉そうに言いやがって…

貴様等は勝手に敵に負けて勝手に

国を売り渡した卑怯者だ!」


「誇りも自由も失い何が国だ!」


それを聞いた仁王左右が怒りを

ブツケるように

金棒を両腕で掴んだ状態で

前に出したまま猛突進してきた

うおおおおおおお

此には頑丈なマグニタイトの装甲も

関係なく吹き飛ばされる


「芝ーっ!」


二人を庇って仁王左右の金棒突進を

受けた芝は凄まじい勢いで吹き飛ばされ

城の城壁に衝突した


芝の姿は朦々と立ちこめる煙のせいで

全く見ることが出来ない生死不明だ


「野郎…芝の敵だ!」


斉藤が高速で仁王左右に接近して

居合い切りを仕掛ける

「閃光一閃!」


その一閃でニオウサの腕を切り飛ばした

だが金棒を振る残った方の腕を振るわれ

技の発動の終わりしなを狙われ

金棒の一撃を喰らってしまう

ゴギャ!


軽量のサムライディーヴァ斉藤は

あっけなく大型トラックに弾かれた人みたいに

木っ端のように巻き上がった


「斉藤ーっ」


二人の仲間を失い

サムライディーヴァ榊はいよいよ

追いつめられた

「次はお前の番だ…」


そう言って仁王左右は二本の金棒を

前傾姿勢で構える

先程の技、猪突猛進撃の構えだ


斬撃を放つ技、断空斬で止められる

ものではない、圧倒的にパワー不足である

仁王左右は苦悶の表情で独り言を吐く

「確かに俺は女子供に手を掛けたことはない

例え命令されてもそれだけは断固拒否した

だが…娘の目の前で父親を殺したし

家族の見守る中で爺さんに手も掛けた

外道だ…だが殿を一人だけ地獄に置き去りに

出来る訳がない」


「名君と慕われ

誰よりも国を…民を思い…政をしてきた

あの方一人を鬼にする位なら俺も鬼に

成るしかなかったのだ」


「殿お一人を逝かせはしない」


ニオウサの失われていた腕の代わりの

パーツが亜空間から出現し装着された

それは元の腕と寸分違わぬ物である


「不死身か…化け物め」

サムライディーヴァ榊はこの

怪物の出鱈目な強さに息を呑むも

倒れた二人を放って置ける筈もなかった

「南無三!」


仁王左右が緒突猛突進で

突っ込んでくる

此を自分が止めなければ

後ろで倒れている二人も含め

命はない


「断空斬…二の構え」


それは居合いによって相手の力を

逆に利用し切断するが極意の

命がけの大業である

少しでもタイミングを誤れば

そのまま死に繋がると言っていい


「そんな細い腕でこの俺の…いや

左右の力が合わさった緒突猛進を

受け止めることが出来るとでも

思うのか!?」


「避ければ貴様一人は助かるぞ!!」

ドドドド

大地が割れんばかりの振動を轟かせて

仁王左右は今や決意を決めた表情で

ただ自分の友を守るために剣を構える

榊の姿に羨ましさを感じていた

その金棒が届く寸前

死と生の刹那


榊の剣は仁王左右の巨大な躰を居合いの

横一文字で切り裂いた


「!!」


それには斬った榊自身が一番驚いていた

「なぜ…!?」


榊は仁王左右に問わずには居られなかった

「なぜ突進を寸前で止めた?」


仁王左右はニヤリと笑い

「何…賭をしたのだ…貴様が引けば

俺の勝ち…貴様が引かねば負けとな…」


「ニオウサ殿…」


胸の心の臓を中心に躰の上下が

スライドしてずれていく


仁王左右は最後に満足な笑みを残し

原子の光となって消えていった

巨大な青いエネルギーが榊の刀の宝玉に

吸い込まれていく


見事だ若き剣士榊…最後に本物の剣士と

戦えて本望だ


「奴は…死に場所を探していたのか?」


榊の勝利を二人のサムライディーヴァも

見ていた、半死半生だったとはいえ

ディーヴァのしぶとさは伊達じゃない


「人類がゾスターを倒す目処がついて…

これからの行き場を

見失ったんだろう…同じ戦士として解る」


「ゾスターと合っていたのがもし自分だったら

…奴の脅しに屈しない自信は俺にも」


斉藤も戦いながら仁王左の無念さは

感じていた


今やゾスターに屈っした者は

その国を思っての行動も裏切りの

一言で纏められてしまう

悲しい状況にある


「仁王左殿の無念は我らサムライディーヴァが

必ずやゾスターに届けてみせましょうぞ!」


亜空間ブリッジで弦間はニオウサの死を知った

「ば…ばかな…あの仁王左が倒されただと~ぅ」


サムライディーヴァの力を見誤っていた

まさか此ほどの強さだとは…

ゾスター帝王は絶対に失敗を許さない


帝王がこの星系を生かして残したのも

地球から追撃する者達を撃退するのが

目的なのだ、それが撃退所か…

敵を一網打尽にするため敢えて残した

三種の神器をまんまと奪われ

それを解読までさせてしまって…

此がバレたら…儂は帝王に消されかねんぞ

…何としてでも、失敗を挽回せねば


幸い帝王は遙か宇宙の果ての果てにおわせられる

奴等を葬りさえすれば何も無かった事に

出来るのだ、白を切り通せば良いのだ


この弦間はこんな狭い星系で治まる

器ではない…帝王の側近として

お使えするのが神の御意志

儂はゾスター神に仕えるためにこの世に

誕生したと言っても過言ではない


そう言うとうっとりとした表情になり

大変気色悪い頬は蒸気し朱を帯びている

ゾスターを信奉する者はこんなのばかりだ

やはり類は友を呼ぶのか、それとも

ゴーラのような友を拒絶した報いか

何れにせよ碌なのが集まらない


「何としてでもこの失敗を亡き者に

…それにはこの星系ごと消滅させるのも

名案かも知れんぞ」


「幸いゲルサンドが自爆すれば

星系一つを壊滅させるエネルギーがある

いよいよとなれば…」

と言うように弦間はよからぬ事を考えていた


ニオウサよりも更に厄介なのが

関犀である、ダークネスの能力を

解放すれば恐らくサムライディーヴァでも

太刀打ちできない怪物だと予想できた


「関犀か…秘剣壁蹴りと言う

恐ろしい技があるが…蹴る壁なんか

ここにはないぞ」


敵の亜空間とはいえそんな仕掛けは

流石に仕掛けられないだろうな

亜空間物質はとても堅く加工することは

無論のこと採石する事も不可能だ


シャレーダーの鎧はこの亜空間物質で

出来ているらしいが、こんな堅い物質を

どうやって掘り出したんだ?

渡瀬聖子の創造力で産まれたのだから

創造力で亜空間粒子を粒子結合して

ダークネス細胞で人体と融合したに

決まっているじゃないか


亜空間物質も所詮粒子の集まりだからね

万物の元である粒子を自由に出来るなら

シャレーダーさえ造れるんだ


渡瀬聖子とはそう言った神に近い存在

なんだよ


祭文は自分の隣にいる稲葉に

理解不可能な類の話をした


宇宙を一人旅をするカオスは

恐らく亜空間にラボを持っている

そこで様々な研究をして

ゾスターに対抗する手段を

常に研究している筈だ


連絡手段があれば最新の研究成果を

是非ともお聞きしたい所だが

ゾスターの追撃から全力でお逃げに

なられている博士にそれは無理な話だ


祭文は出来れば天照棲でありカオスである

渡瀬聖子の側で研究のアシスタントが

したかった、だが彼女の願いで

ゾスターからこの日輪を守護する役目を

任された、ここは必ず

ゾスター軍と戦う為の最も重要な

拠点となると、そう言い残して

母は宇宙に旅立った

ゾスター軍の生命線である

敵の補給路を断つ!


全てのデーターを総合すると

自ずと答えが見えてくる


だがこの戦法では…渡瀬聖子の犠牲と言う

筋下記だけは避けられないだろう


祭文には解っていた

渡瀬聖子の使用としている事が

完全に解ってしまった

何という事だ…僕の考えが正しいなら

彼女の旅は紛れもなく

死出の旅立ちに他ならない


祭文はこの事実を母を慕い

こんな宇宙の果てまで来た兄に

話すのかと思うだけで気が重くなった


サムライディーヴァムラクモの稲葉と

人造天使祭文、そして

弓姫ディーヴァ日陰の3人で

構成されたパーティは

ダークネスセキサイと相対する

強敵中の強敵である事は間違いない

相手だ


「関犀か…」


今その関犀が目の前にいる


「拙者の相手は老体と姫には

勤まるまい…貴殿も侍なら

拙者と差しで勝負せぬか?」


関犀が稲葉をそう挑発する

「何を!」


稲葉が一瞬頭に来て詰め寄る風を

見せたとき姫が弓でそれを制した


「敵の挑発に乗っては成りません

敵は日輪でも指折りの手練れ

闘いの熟練度が違うのです」


ムラクモにしてみれば

セキサイに単騎で勝てる自信はなかった

それでも女と老人を闘いに引っ張り出して

どうすると言うセキサイの言いように

自分よりも姫様と祭文様を愚弄されたと

怒ったのだ、それが解るから姫も群雲を止めた


「私と祭文様が決して足手まといではないと

あの者に解らせてやりましょう」


姫はそう言うと弓を構えた


祭文も

「僕と日陰姫のために怒ってくれて

有り難うね、でもあの敵は

キャプテンストームでさえも

倒せなかった難敵だ、3人の連携で

何とか相手をするよ」


ストームが伝説のガイを召還して

初めて対等に戦える剣豪である

剣の腕の実力は本物だ

その技に不死身のダークネスの

能力が加算されて、最早どれほどの

怪物に成っているか想像もつかない


「さあ一手お手合わせ願おうか」





★付箋文★


敵は兎に角怖くて強いほうが面白い

それを目指して頑張ります

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ