11
地球から飛び出した人工生命が銀河サイズの
軍団を率いる魔王となり
宇宙全体の生命を根絶やしにしようとします
その魔王を討伐するために人類の切り札
亜空間戦艦マグニファイセントが活躍します
「1億光年の距離を跳ぶ方法は
1万年の時間を遡り
宇宙が広がる以前の場所に時空間
転移することで可能になりました」
そしてとー聖子は説明を続ける
「その場で1万年の時間凍結睡眠をして
時間の調節をするのです」
「光の速さを超える為
時間を超える?…タイムワープ
みたいだな…そりゃ~」
ガルーダはあたかも
それを知っている風を装う
廻りで聞いている海賊達は
チンプンカンプンだ
「タイムワープ?」
「何だそりゃ?聞いたこともないぞ」
航海長がそう言うのも
コリアードの宇宙航法理論に
そんな物は存在しないからだ。
会場内がざわつく中で
飲んだくれのガルだけは違った
「そのタイムワープってーのを
博士さんは何回ぐらいやったんだい?」
ニヤニヤしながら博士にそう聞く
ガルーダの様子を見て
会場内の海賊達は
ああ…そんな物は本当はなくて
話はこの女のデマカセで
ガルーダは
それに乗っかったフリをして
ただからかっているだけなのだと思う
暴力ではこの戦闘メイドには
絶対に勝てない事は
海賊達も理解できたが
知恵で圧倒すれば
負けた事にならない
常に
加害者側にまわったもの勝ち
と言う、変わった価値観と
脅迫概念に支配された
コリアードの常識では
どんな形でも
自分達が有利に事が
運ばないと気が済まないのだ
だから口だけで
博士をやりこめている
ガルーダは彼等にとって
救世主に他成らない。
兎に角何でも勝てば良いのだ
「それで何回タイムジャンプ
しちゃったの博士さんは?」
「ほら答えて下さいよ」
実に意地悪そうにガルーダは
そう聞いてくるので
聖子博士は涙目になりながら
「10…10回です」
と震える声で言った
それを聞いてガルーダは顔を
片手で覆い天を振りかぶる
大げさなジェスチャーで
応える
「おい聞いたか皆~
博士は10回もタイムワープ
したんだってよ~
大変だぜ~」
そ言うとガルーダは
近くにいる同僚に
エアマイクを差し出して
「タイムワープを10回
と言うことは合計で
どんだけ飛んだのか
言ってやれよ」
そう質問されても
その海賊は直ぐには応えられない
その様子に航海長にバトンを降る
ガルーダ
「そうだな本職に聞くのが筋だ」
そう言ってガルは海賊船の航海長に
回答券を渡した
航海長は一つ咳をし
声が裏帰らないように
喉を整える
「まあ嘘か誠かは知らねえが
一度に1億光年飛べるなら
10回で10億光年か…」
そして忘れずにこう付け加えた
「1億光年進んで1万年眠って
を繰り返したなら10万年は
この航海に掛かっている
事になる…10万年乾眠していた
って訳だな」
「10万年の眠り姫か~
苦労したんだねお嬢ちゃん」
その一言に会場内は沸いて
博士の心が打ちのめされるのを
感じたオードリーは
感情回路が怒りの熱で
焦げ付くのを感じた
正しく最低の下衆の極みである
オードリーはもう形振り構わず
この下衆共を一人残らず
皆殺しにする覚悟をした
ボキボキと指間接を鳴らす
怒りの戦闘メイド
だがーーオードリーは
あり得ない物を見た
ガルーダが大粒の涙を
流して見せたのだ
「あんたは良くやってるよ…
普通そこまで出来ないって!
そうか…10万年も罪を背負って
化け物に追われて此処まで逃れて
来たのか」
話の流れが級に変わり
周りの海賊達は混乱する
「何だ!?ガルの奴何言って…」
「黙ってろって!
また何か考えがあるんだよ」
海賊達はザワツきながらも
現状、この飲んだくれの英雄に
任せるしか手はないのだ
「つまりは…そのゾスターって
化け物がアンタを追いかけて
直ぐそこまでやってきてるって
訳だな…それももう1億光年しか
離れていない距離に」
此を聞いて他の海賊達は
1億光年も離れているのに、の
間違いだと言いたくなるのだが
ガルーダの邪魔になってはと
自然に仲間同士で合図を
送りシーッと発言を控える事に
「この超重力空間に捕まって
身動きできないうちに
ゾスターが来たらどうなるんだ?」
博士は啜り泣きし涙を拭きながら
ガルーダに訴える
「ゾスターは私を捉えたら
そのまま全宇宙に侵略を始め
全ての生命を根絶やしにします」
「此までも数え切れない程の
生命がゾスターの犠牲になりました
それが全宇宙に被害が
拡散し最後はダークネス以外
何も生き物がいない宇宙になるんです」
そんな途方もない与太話を
誰が信じるんだよと
ガルーダが言うと思っていた
海賊達だが、どうも
ガルーダの様子がおかしい
「マジかよ…コリアード政府は
その事実を俺たち国軍にまで
隠していたのか?」
そう言い出すガルーダに
海賊船長であるゴリアテが
たまらず口を出す
「やめろガルーダ!俺達の
素性を口外するな」
そう言ったが既に遅かった、
海賊達の3分の1は軍人だが
そうでない者達は何も
聞かされて居なかったのである
海賊達のなかで幹部や古参の
メンバーは全員コリアード軍人達
なのであった
「おいおいどう言うことだ?
船長達は軍人なのかよ!?」
それを急いで否定しようとする
船長であったが
ガルーダが
「船長…いや軍曹閣下…どうやら事態は
危機的状況みたいだ、俺達は
生きるか死ぬかの瀬戸際に
立たされている様ですぜ」
海賊船長…改めゴリアテ軍曹は
顔をしかめた
「馬鹿者め!こんな女の戯言に
踊らされおって何をとちくるって
喋っておるか!!」
だがゴリアテの言葉は途中で
止まった
会場内にいる部下達の目が
自分を軽蔑の眼差しで
射抜いている事に気が付いて
しまったからだ
「船長様よ~やめろよな」
「嗚呼…せっかくガルーダが
大切な話をして
くれているのによー」
海賊船長ゴリアテはこの
異常な状況に困惑する
「何だ?何故皆…こんな
事になっているんだ?」
「解らない…こいつらは一体…
どうしちまったと言うんだ!?」
そしてその状況に戸惑う
もう一人がオードリーである
「適応順応?」
環境に極端な変化が起こったとき
生物はその環境に順応しようと
異質な個体が発生する
今それが起こったとでも
言うのだろうか?
まるでガルーダと言う名の
この男の意志が他の人間に
伝播して精神を導いている様な
そんな奇跡が起こったとでも!?
会場内は徐々に沈静化していった
それは大多数の海賊達による
同調圧力により
少数のコリアード精神のままの
者達が抑えられた事が原因であった
ガルーダの意見に心から賛同していた
海賊達はガルーダの精神に同調し
まともな思考と理性と知性を
持ち始めている
「それにしてもそもそもどうして
俺達は…あんなに愚かだったんだ?」
「嗚呼…今から考えると
穴があったら入りたいような
恥ずかしい生き方と考え方だったよ
まるで悪い夢から覚めたみたいだ」
その会話を聞いて他の海賊達も
「そうそう俺も憑き物が落ちた
気分なんだ」
「だいたい…大恩人である
ネオスを何だってあんなに
憎んでいたのか全然解らないよ」
理性を取り戻したコリアード人は
みな澄んだ目をしていた
あの濁りきった溝川みたいな
淀んだ目をしている者は一人も
いない
「我々コリアードは数多の苦難を
乗り越えし気高き民族なのだ
だからこそ決して魂に恥じる
生き方をしては成らない」
御前それ言う?
それこそ耳を疑うような
発言だ
オードリーはこのコリアード共の
異常事態に一々反応する事を止めた
今まで思考力が停滞していた
者達がいきなりマトモな思考回路を得て
一時的に興奮状態に成ってしまったと
判断したからだ
こお言う場合は放って置くのが
一番である
彼等は心理に目覚めている気でいるが
本当は異常がやっとマトモに正常に
成っただけのこと
オードリーも此が偶然起きた
出来事だ等とは思ってはいない
何か二次的外因があるはず…
そう言えば渡瀬博士が、今更
あの程度の口論で
泣くこと事態が可笑しい
今までどれだけ謂われのない
誹謗中傷に晒されても
平常心を通してきた方が…
あの程度の事で
一つだけ…オードリーは
確信した…博士は
この事態を予め知っていた!?
間違いない…あの方が泣くのは
いつも他人の事で
自分の事で泣く事なんて
今まで一度も無かった
「それではあの涙は自分の
為ではなく…彼等の為のもの…?」
会議場の中で
もはや取り残されていた感じの
海賊船長ゴリアテは
この異常な部下達に恐怖を
抱いていた
明らかに…何かをされたのだ
洗脳…? 何時の間に?
同調圧力も疑ったが
何かが切っ掛けになって
トリガーが発現した
様にも思える
自分に味方するものは
もういない
その考えが彼を孤独という
恐怖に追い込んだ
うわああああああああああ
「どうしたんだ?お前達!!」
そう叫びながら
近くにいた部下達の肩を掴み
乱暴に揺する
「正気に戻れ!何を惑わされて
いるんだ!!」
だがそれは無駄な行為だった
船長を見る部下達の目が
明らかに可哀想な者を
見る哀れみを込めた
目だったからだ
ゴリアテは後ずさりながら
何故自分だけが平気なのかを
その方を疑った
くっそ!
船長はその場に居たたまれず
会議場を飛び出し
懐かしい我が家である
思い出の詰まった場所の
海賊船黒鷲に向かって走った
「くそ!くそ!一体何が
どうなっているんだ!?」
そしてそんな些細で重要な
事態が起きている時に
亜空間戦艦マグニファイセントの
育児室では地獄の状況に
置かれている彼女の姿があった
ネオス12柱の一角にして
気高い女皇帝と呼ばれた
その面影は今の彼女には
見る影も無かった
ヒエエエエエ~ヤメテェエエ~
巨大な生物がベロを出し
彼女の入っている宝石を舐め回す
ネオスマリータは今
人生最大の危機に陥っていた
その拷問は命の危険とは違う
更に恐ろしい尊厳の危機であった
ネオスに死刑はない
どんな重罪を犯しても
生きていれば罪を償わせる
機会が必ず来ると信じられて
いるからだ
何十万年の寿命を持つ彼等には
やり直せる機会がそれこそ
無限にある
そうした概念があるからこそ
マリータの犯した国家的
反逆罪でさえ死刑にはならず
禁固刑が妥当となる
何万年間も宝石の牢獄に
捕らえられるのが
ネオス最大の刑罰なのだ
虜囚となったネオスマリータは
今がその尊厳の危機なのだ!!
「助けてたも~れ
妾が何をしたと言うのじゃ~っ」
{ただ可愛い我が子達に身を守る
術を教えただけであろうに
この仕打ちは酷すぎるのじゃ~}
銀河系を吹き飛ばす武器を
あの無知蒙昧なコリアード等に
与えておいてよく言う
そう思うのは何もストーム
だけではない
コリアードに散々迷惑を掛けられ
無理難題を押しつけられて
困っている周辺の銀河星雲の
方々が此を知れば
ネオスの評判は地に落ちる
それだけの愚考をこの
婆さんは犯したのに自覚がない
…此だから慈善を気取る輩は
度し難いのだ…
正直…ストームも
地球でのこうした分からず屋連中との
遣り取りには散々苦労をさせられた
ものだ、ストームの旧友であり
理解者であり一番の親友であった
副大統領のパーンの御陰で
こうした連中にも上手く
対処出来てはいたのだが
ストーム自身とは言うと、
こうした者達の相手をするのは
苦手だと言えた
兎に角理屈が通用しないのだから
度し難いとしか言いようがない
パーンはああした連中を上手い具合に
手玉にとっていたが…流石だったな
だが嘆いてみても仕方がない
今はその頼りになる親友の
パーンは居ないのだ
生涯の友と思っていた親友が
突然自分を裏切り
その凶弾で例え一命を
失ったとしても
生涯の友をそう簡単に忘れられる
ものではない
「パーン…」
ストームが親友を懐かしんでいる
間にもネオスの婆さまは酷い目に
遭わされていた
幼い子供達からすれば
綺麗で魅力的な石に
過ぎないのだが
中に入っているマリータを
面白がってのぞき込んで
見ているかと思いきや
ケーキやクッキー等の
お菓子を食べたベタベタした手で
宝石を触りまくり
指紋だらけにしたかと思えば
ストームが少し目を離している
隙に何処かに無くしてしまう
そしてとても頼りなさげで
か細い声で救援をこう
マリータの声がする
「マリータ!どこに行ったのだ
返事をしてくれ」
ストームは仕方なしに
手を洗いに行った
子供達が居ぬ間に、マリータを
女性スタッフと探すが
中々見つけられない
「お助け~此処じゃ~
早く助けてたも~っ」
そう言われても
声が小さすぎて何処から
マリータの声がするのか解らない
「何処だマリータ周りの
様子を教えてくれ」
マリータは辺りを見渡して
「解らぬ…暗くて周りが見えんのじゃ」
ストームはマリータの声を
聴力を上げて聞き取る
「どうやら彼女は
暗い場所に居るらしい
何処か心当たりはありませんか?」
女性憧れのキャプテンに
ドキドキしながらも
女性職員は心当たりを
思いめぐらす
「暗い場所…ですか…そうなると
…まさか」
少し考えて女性職員が注目したのは
オムツを捨てるゴミ箱だった
そしてストームもそれを察し
その女性職員と無言で
気まずい空気で遣り取りする
まさか…アソコに?
ストームも思わず息を呑む
女性職員が恐る恐るそれに
近寄り蓋を開け中を覗くと
アレの中に一緒に入った
マリータ入りの宝石を
発見した
マリータは周りがいきなり
明るくなり、視界がボヤケたが
ストームと女性職員の
姿を見て自分が救われたと
解って安心した
「ふう~助かったのじゃ
一体妾は何処に居たのじゃ?」
そこを確かめようとして
周りを見渡してみて
マリータは絶望の
悲鳴をあげた
ぎええええええ~~~っ
その経緯を聞いて
ネオスのリーダーは
大声で笑った
「それはそれは気の毒と言うか
何というか…散々なめにあったようで
良い気味というか…コホン!」
ネオスのリーダーをジト目で
見るストームに気が付き
体裁を整える為に
コホンと一咳して間を置く
ネオスメタトロン
この方は時にネオスで偉いくせに
本音をダダ漏れさせる
「対等に話せる友が居なかった
からね…どうしても
君の前では調子が狂うみたいだ」
どうやらこの偉人に相当
気に入られた様で
ストームも悪い気はしない
だがお互い立場のある者として
言動には気を付けるべきだ
「多少は自重して下さい
…まあお気持ちは察しますよ」
ストームも親友のパーンの
前だけは大統領の肩書きを忘れ
リラックスした会話が出来た
事を思い出した
本音で語り合える者がいるのは
本当に幸せな事なんだな
まあネオスは進化レベルが
他の種族よりも遙かに
高い階層にある
人間の進化レベルを最初の
アルファだとして
ベータに進化したネオスは
最早孤高の種族だと
言って良い
ましてそのリーダーともなると
ネオス銀河の政治体制が
地球で言えばギリシャに
限りなく近く
ネオスのトップである
12柱ともなると
ギリシャ神と同等の
存在である
だからこそ、ネオスマリータが
犯した蛮行は絶対に許されず
許されざる大罪なのだ
ギリシャ神話に例えれば
マリータがコリアードに
銀河破壊砲の技術を
教えたことは
人類に火を与えた
神々の裏切り者である
プロメテウスと同じであろうか
否 そんな崇高な物ではなく
ただありもしない幻想に
夢と希望を抱いて
無責任な善行を行った
代償が余りに愚かで
度し難いと言うだけだ
マリータが今置かれている
現状の精神的苦痛は
全て身から出た錆だ
同情の余地はない
それにしてもオムツの山に
埋もれていたとは…
同情はしないが気の毒だとは
思う
余りの精神的ショックのためか
マリータの口数は少ない
「妾が何をしたと言うのじゃ~
酷い酷すぎる~~」
精神的外傷など超生命体ネオスには
恐らく無縁の物だったであろう
だがストームは此処は敢えて
心を鬼にして刑の執行を
持続させる事にした
「それではマリータをお預けします
子供達には好きにして貰って構わないが
無くさないようにだけは注意して
やっていただきたい」
そう女性職員に言い残し
船長は保育室を後にした
「待って…待ってたも~っ
ストーム殿…いや様
どうか置いていかないで下され~」
か細いマリータの声が
儚げにストームの背中に
投げかけられた。
そして暫くして
マグニファイセントは
ネオスの計らいにより、改造ドックに
寄港する事が出来た。
「これから君の船をネオスの
総力を挙げて改良するが
どうしても言っておく事がある」
ネオスの科学の結晶である
この改造ドックで
今、マグニファイセントに
する改造とは
「銀河破壊砲を搭載させる
には…少なくとも
この船の大きさの40倍は
必要なのだ」
それはネオス12柱の一人である
科学部門の専門家を務める
ネオスゼクターの
信じられない一言であった
「つまりマグニファイセントが
その40倍もの大きさに
成ってしまうと言うのか?」
ストームも寝耳に水の話だ
40倍の大きさとなると
もう改造ではなく
巨大な発射兵器に
マグニファイセントが逆に
収納された、全く別物に
されてしまう。
ーーーとまあ
「亜空間戦艦でなければ
そうなるところだよ
ストーム君」
そう言って意地悪く笑う
ゼクター
ストームも成るほどと解って
一安心である
「亜空間に収納して必要な時に
取り出し使用すれば
マグニファイセント自体には
大した改造の必要がない」
そう言う事か…
亜空間戦艦の名は伊達ではない
マグニファイセントの亜空間を利用した
収納力は地球サイズだったはずだ
全く…ゼクターも人が悪い
「亜空間に収納できるとしても
ギャラクシーカノンのエネルギー源は
あくまで超圧縮人工太陽だ
それがあってこその攻撃兵器」
「説明すると
銀河中の恒星エネルギーを
一度に集約させて放つ
破壊力を再現するには
圧縮された人工太陽を
更に何万年分も凝縮させて
数を補う必要がある」
「タイムシステムでその何万年を
凝縮してエネルギーを補充し
ギャラクシーカノンの威力を
それこそ再現するのが
マグニファイセントの決戦兵器
ワールドディストラクションの
企画案だ」
ストームはその改造計画が、
僅かな期間で可能かどうかを
ゼクターに聞いた
ゼクターの答えは
「通常では不可能だね…
数万年の時間が掛かる、だが
それを可能にするのが
1億光年をタイムワープする
航法を敢えて利用すると言う裏技だ」
ストームもこの航法は当然知っている
タイムワープ
此処までは渡瀬博士が繋げてくれた
亜空間ゲートに頼る移動で
10年と言う信じられない短期間で
天の川銀河から此処ネオス銀河までの
10億光年を旅する事が出来たのだが
それを敢えて1億光年をタイムワープして
数万年掛であろう過去に戻り
改装時間に利用しようと言う訳だ
「1万年ずれた時間軸を遭わせれば
この時代とタイムラグを発生せずに
改装を続けられる
マグニファイセントの改装は
長寿生命体で行えば
問題なく行えると言う寸法だ」
ゼクターの出した案は
寿命の短い人間にしてみれば
一見夢のような与太話に聞こえるが
「君達に頼り切りになるみたいで
誠に申し訳ない気もするが…
宇宙全体の危機を考えれば
互いに協力しあうのは必要だと
私も判断する」
「どうか宜しく頼むMr.ゼクター」
ゼクターは快くこの前代未聞の
以来を承諾した
「ああ任せてくれキャプテンストーム」
そしてゼクターとストームの2大英傑は
互いに堅く握手を握るのだった。
こうして人類が必死の足掻きを
見せる中…討伐対象である
ダークネスの絶対的支配者
ゾスターカイザルは
落ち着いて状況を精査していた
(どうやら此処に来て…この
ゾスターにも運が回って来た)
悪魔の王に相応しい
(人類圏の各所に送り込んでいる
我が教団の信者達がどうやら
役にたっておる様だ)
人間の心の闇に働きかけて堕落させ
救いを与えれば、いとも容易く
人の心を掌握する事は
ダークネスとして
最も人間に近い進化を果たした
ゾスターにとって
赤子の手を捻るよりも簡単だった
あの博士の寵愛を色濃く
受けていた日輪星系でさえ
我が魔力に堕落する者は
後を絶たなかった
人間とは堕落する生き物だ
付け入る方法など幾らでもある
だが、その人間の中に
明らかに異質な者が
紛れ込んでいる事がある
あの口にするのも嫌な女…
亘理洋子…きゃつこそ
余が…此処まで追いつめられた
現況であり余にとって
不倶戴天の天敵!
何か…何かある!!
又…何か仕掛けようとしている
余が…見落としている何かを
余の一番柔らかく弱い部分を
あの女は毎回必ず先読みし
忌々しい手で攻め入ってくる
(己~あ奴さえ あ奴さえ
居なければ 全てはあの…
亘理洋子のせいなのだ!!)
ゾスターは洋子を思い出すだけで
胃がムカムカし動悸が乱れ
息が切れる様になった
人間に最も近い進化をした
その代償
それは人間と同じ心の弱点を
抱え込んでいた事だ
洋子により
精神的外傷をあのゾスターが
負っていることは間違いのない
事実だった。
「この屈辱を復讐により
払拭したくても…呪う相手が
とうに死んでいる…ならば」
ゾスターは自分が直接手を下さずとも
自分の息の掛かった人間に
やらせればよいのだと短絡的に
考え、地球に向かって毒念波を送りつけた
そして其れを受け取った愚かな
人間達が10億光年と言う距離から
ゾスターの存在を確認し
現実に存在する禍神として崇拝し
始めたのだ
その教団を利用し
過去の地球に
幾つかの極秘任務を
やらせようとしたが
その悉くが上手く行かない
「過去を変えようとしても
宇宙に置ける何らかの力が作用して
時間修正が働き歴史が修復される」
「下手をすれば自らの存在さえ
危うくさせる事も解った」
ゾスターは、そもそもの人類反攻の
切っ掛けとなる
人類に味方するシャレーダーと
御剣剴の接触の阻止を目論んだ
のだが…
其の計略の過程で
致命的なミスを犯す
即ち、10億光年を経由した
テレパシーでは
距離が離れすぎ、現地の
人間の信者が上手く受信出来ず
一部理解できない言葉があり
受信者は
ゾスターからの命令を勝手に歪曲し
あろうことか渡瀬博士を殺害する
計画を企てたのだ
此に怒ったゾスターは
博士に手を出した愚か者達を
一人残らず
脳を破裂させる強烈な
殺人テレパシーを送信する事で
脳を破裂させ全員抹殺した
それ以降、愚かにも
博士に手を出せないように
きつく釘を刺し徹底するため
博士はダークネスの母であり
ゾスターの王妃である事実を伏せつつ
事実を知らない信者達も
博士に関わることは
何でアレ
(関わっただけで脳を破裂させられる)
この天罰で
ゾスターの逆鱗に触れる
行為であるとようやく理解し
博士にたいしての絶対なる
不可侵を誓う
(博士の身に何かあれば
余が誕生できない
可能性まであるというのに
全く持って不愉快な
連中だ)
「使えぬ…どいつもこいつも
全く…使い物にならぬ者
ばかりだ!」
ゾスターは忌々しげに床に杯を
叩きつける
ガシャアアアン!と
陶器の杯が割れる乾いた音が
孤独な王の神殿に鳴り響く
既に博士を追いかけながら
宇宙を喰らう
ゾスターの過ごした時間は
10万年を越えていた。
ゾスターが帝王として帝国に
君臨し10万年が過ぎ
その支配体制は盤石なものと
なっていた
全ダークネスの総数は兆の値さえ
越えて京に達し
魔獣艦隊も銀河の半分の恒星と
同じだけの数が揃っている
まさに宇宙の怪物と化した
ーにも関わらずー
「1億光年を跳び1万年の乾眠の繰り返し…
一気に10億光年跳べば
10万年のズレが生じる」
「この時間軸の調整をしなければ
博士との時間軸がずれ
博士は余からのエネルギー吸収が
出来なくなり餓死してしまう…」
ゾスターはそのどうしようもない
現実により大きなジレンマを
抱えていた
「時間軸のズレを無視すれば
博士に追いつくのは容易い
しかし…それでは生きた
博士を手中にする事は絶対に
出来ない」
全宇宙で最強の力を手にした今でも
ゾスターはこの宇宙に置ける
時間という法則には
未だに逆らうことが出来なかった。
ゾスター率いるダークネス艦隊の
大軍団は、今やその規模は
銀河の大きさに迫り
地球を飛び立った時の規模とは
比較にもならない
凄まじい変化を遂げていた
その一艦一艦の大きさが
まず桁違いなのである
直ぐ側を通り過ぎる惑星の
大きさと比較して見ても
その魔獣戦艦達の大きさは
遙かに大きかった
そして強力なエネルギーを
宇宙に放ち光り輝いている
そのために遠目には
恒星と勘違いする程だ
これが宇宙を移動する
新種の銀河を喰らう銀河の
禍々しいその正体だった
宇宙を観測する望遠鏡を
只覗いても、その
真の姿は見ることが出来ない
その光の先を見据えたとき
人類は正気ではいられなくなる
禍々しくともおぞましい
醜い怪物達の饗宴
見る者全てを発狂させる
醜悪な姿をした強大な怪物達
実際に其れを観測すれば
それれだけで
狂気に陥る絶対の悪夢であり
二度と平常な精神を取り戻す
事は出来ない真の恐怖が
現実に顕現している
それが今現在
ゾスターの率いる
魔獣艦隊の真の姿だった
銀河を喰らう銀河を観測しても
それが何故かなどコリアードは全く
気にもしないが
ただ一言いえるのは
そこまで銀河を喰らう銀河が
膨大に増殖したのも
コリアードの御陰だと言えた。
何故なら
コリアードが博士の船を
拿捕してくれた御陰で
ゾスターの魔獣艦隊はその進路を
比較的獲物銀河の多い航路に
変更出来たからだ
コリアードは実質的に
多くの銀河を滅亡させる
原因を作ったと言える。
そのコリアードにも…少しの
ほんの少しの変化が起きていた
まずは、それはコリアード本星ではなく
超重力発生装置により捕らえられていた
渡瀬博士の舟
カオスアーステラの中から
急激に始まったのだ
宇宙海賊に擬装していた
コリアードの兵士達に
その症状は現れた
その症状はまず最初に
風邪を引いた様に感じ
やがて咳と鼻水が出て喉が痛くなる
そして数日発熱しやがて治まる
人間がウイルスのような異物に
進入されたときと同じ様な症状を
起こしたが、解熱剤だけで
大した治療の必要もないため
掛かっても誰も気にしなかった
だがその熱病に掛かった
コリアード人は皆
何故か明晰な気分になり
性格が一変するのだ
コリアードの中で
この病は明晰の知恵熱と
言われるようになる。
その兵士は足が震えていた
「拿捕舟から解放された海賊…
否…我が軍の擬装兵達は
簡単な身体検査の後に
自由の身になりましたが…」
海軍本部に報告のために使わされた
その兵士は、報告の重要度を
考えて緊張している様子が見て取れた
「一体何があったと言うのだ?」
若い兵は息を呑んだ
この厳しい上官は
この報告を聞いて激怒
することが解っていたのだから
「彼等からもしかしたら
何らかの伝染病のウイルスが
持ち込まれたかも知れないとの
医者からの報告があります」
おもむろに
顔を上げ鋭い眼光で
その電文兵を睨みつけ
るこの人型鳥人間は
威厳に満ちていた
その報告はコリアード宇宙海軍の
将校から海軍大将のレイブンに
直接もたらされた極秘情報であった
「何だと?」
その眉間にある深い皺が
これでもかというぐらい
更に深くなった
明らかに怒っている
それも一度に噴火せず
更に怒りの密度を
増すように静かにだ…
ひいいいい~こんな任務やだよ~
その兵士はまるで新米兵に戻った
ように怯えてしまうが
この報告を最後まで勤めるのが
兵士としての任務
それを全うするのは
教え叩きこまれてきた
ええいままよと
覚悟を決めて
コリアード宇宙海軍の
海兵の意地をここに
見せる
「レイブン大将閣下に申し上げます!」
「医者達は問題無しと言いましたが
この状況に危機感を抱いた
セキセイ准将がレイブン大将の
お耳にお伝えしろとの判断です」
レイブンはセキセイ准将の事は
知っていたが事なかれ主義で
日和見な所のある男と
余り良い評価をしていなかった
だからこそ事なかれ主義の男が
敢えて危険を冒し
後で責任を問われる可能性のある
このような情報を自分という
大将である自分にもたらすことなど
今まではあり得なかった事であった
その意味では…セキセイ准将にたいする
個人的な評価を変えなければならない
レイブン大将は怒りが消えて逆に
少し冷静になれた
机の上に肘を突き口元に
両手の指を交差させて
独特のポーズをとるレイブン
「解った…まずは准将の話の
内容を聞こう」
此処からはセキセイ准将の
個人日誌に記載した
出来事である
某月○日
例の不審船を重力制動機に捕らえて
12日目
強力なバリアーで船体を覆う
あの舟は、コリアードの技術では
今は手が出せない相手だ
だから潜入させている
擬装海賊の兵団が
舟を傷つけずに
手に入れる筈であった
いつもならその手で上手く
行っていた、だが…
兵団は無力化された上に
あの舟に収容され
全ての武装を剥奪され
収監されてしまった
此は今までにない非常事態であった
宇宙海賊に擬装しているとはいえ
彼等は訓練された紛れもない
軍人なのである
民間人の舟を武装占拠するなど
造作もない事なのだ
だがその彼等が為す術もなく
拘束されたと言う事実は
あの舟は其れ相応の自衛力を
秘めている証拠である
だが、人質となっていた
海賊を無条件で解放したのには
何か訳があるはずだと
准将は考えました
話を聞いてレイブン大将は
確かにその通りだと思った
その人質を交渉材料に使い
舟を重力から解放させようと
するのが普通だろう
だがそうはせず直ぐに
解放したのは
何か意図あってのこと
だろう
セキエイ准将にその考えが
浮かんだのは
38度の高熱を二日患って
翌日熱が引いたその瞬間だった
それまで雲が掛かっていたような
鈍重な思考が晴れたように
スッキリしたその時に
思い至ったのだ
我思う故に我有り!
まるで自分が生まれ変わった様に
感じたとき自分が心理に
目覚めたように感じた
その冴えた頭で例の異星の舟から
擬装海賊団が解放された
流れを考えると
どうやら何らかのウイルスが
使用された可能性が高いと
其れまで愚鈍でどうしようも
無かった自分とは思えないような
推理が働き、その様に気が付いたと
その准将に伝言役に使わされた
兵士はコリアード人とは思えないほど
澄んだ瞳でレイブン大将に報告する
「ですが准将がその事実に
気が付かれたときには
時既に遅く…多くの兵が
同じ症状が出た後にでした」
その事実を聞きレイブン大将は
旋律を覚える
だとすると既に我が軍の
多くの軍人達が
この謎の病に感染していると
言うことか?
だとすれば
レイブン自身もその病に
感染している可能性も
否定は出来ない
これは…想像以上に
大変な事態なのでは!?
レイブン大将としては
この事実を公にすれば
全軍が隔離される
可能性を示唆した
排他的なコリアードが
全軍人を病原菌扱いなどすれば
コリアード同士の内戦にでも
なりかねない
この事は隠すしかない!!
レイブン大将はこの事態を
収拾するのは不可能だと考え
命の危険も差し当たって
無いことから隠蔽する
判断を下した。
そしてその同時期に
もう一人の主人公
シャレーダーが
地球から送られてきた
150隻ものアースソード艦隊を
見つけ、接触した所から
新たな物語が始まる
マグニファイセントから
離れてシャレーダーは
地球から送られてくる
艦隊を迎えに来た
今現在の詳しい状況を説明し
それと新しい技術を
伝えるのがその主な目的である
「ネオス銀河に入る前に来たから
大きな技術革新ではないけど
それでもアースソードの技術を
それなりに引き上げられる
筈だ」
天の川銀河から離れること
3000万光年には
お母さんが進化させた
日輪星系がある
艦隊は
そこで駐留し
戦力を十分に
整えてから先発していた
マグニファイセントと
合流する予定だ
10億光年の距離を埋めるには
お母さんの用意した
タイムワープ・ホールを
使用すれば、時間軸の修正も
必要ないしね
シャレーダーは今更ながら
母親である博士の
底知れぬレベルの高さに
驚くばかりだった
宇宙を移動する光の速度を遙かに超える
時間跳躍・この法則をいきなり
確立させたのも渡瀬聖子だ
時間を超える以外に光の速さを
超える方法はない
ならば宇宙が膨張する
速さを利用して
膨張する以前の
宇宙に時間を遡れば良い
この方法で1億光年という
常識では移動不可能な距離を
わずか1万年時間を遡ることで
移動可能にしたのだ
更に一度繋げたタイムワープの
穴は亜空間で固定してしまえば
固有の亜空間ゲートと亜空間ゲートを
繋げてしまえば時間軸を同じくして
同距離を移動できる
このゲートを利用するためには
シャレーダーという
ナビゲーターが必要不可欠なのだ
地球から旅立ったアースソード艦隊は
人類にしてみれば
150隻という空前絶後の
大艦隊である
ゾスター軍との戦争で疲弊した
人類軍を再編成し
地球中心に
太陽系全てのコロニーを纏めて
星系連邦としてアースソードを
立ち上げて10年
10年掛けて人類は
ダークネス戦争から得た
知識と技術の粋を総動員し
マグニファイセントの
後発となる
亜空間戦艦を製造した
艦隊構成は
潜水艦20隻
巡洋艦60隻
空母艦40隻
戦艦30隻
である
亜空間に大口径の武器を
収納しているので
1隻辺りの戦闘力は
相当跳ね上がっている
当然動力エンジンの
エネルギー源は
圧縮人工太陽炉を
亜空間に設置している
マグニファイセントと
同使用なのは
言うまでもない
この艦隊の指揮を執るのは
提督の称号を
持つ男だ
身長は186センチもあり
顎髭を蓄えた精悍な顔立ちは
軍人らしい強者の面構えだ
一見、弱気な発言など
しそうもなさそうなのだが
「なんとも…心許ない規模の艦隊だな」
「ゾスター討伐艦隊というからには
もう少しばかり地球には
気合いを入れて欲しかった」
それが思わず提督と呼ばれる男の
口からでたボヤキだった
それを隣で聞いていた
艦長は決して良い顔はしない
「これだけの大艦隊をショボいだなんて
言う気ですか?バドワイザー提督」
バドワイザー提督は
頭を掻きながらミライ艦長を見た
彼女は女性ながらその
凛とした出で立ちは
軍人達の羨望を集める
バドワイザー提督も
そんな彼女の美しさには
惹かれる者があったが
其れよりも彼女の
注目すべき所は他にあった
「今地球が出せる精一杯の
戦力なのですから
文句を言わないで下さい」
バドワイザー提督は
ふう と一息ついてから
「焼け石に水というやつを
知っているかね?
地球を防衛する艦隊数は
千隻もあるのに
その半分も投入しないとは」
ミライ艦長もバドワイザー提督の
言うことは理解できる
だが今の地球が保守的に
成りすぎるのも仕方がない
事も理解しているのだ
「一応ゾスターとは反目するとはいえ
地球には超大型ダークネスが多数
存在していて、それらが居なければ
地球は惑星として機能しない
状況なんですよ」
ゾスターが宇宙に出る際に
地球の惑星エネルギーの
大半を奪ってしまった
それでも亘理洋子の奇策により
ダークネスの幾らかに
ゾスターを見限らせ
地球に帰らせた
今の地球はその巨大ダークネスの
エネルギーで存続できている
科学者達の見解だと
地球の寿命は後
12億年程だと言う事だ
惑星全土を立体映像で
誤魔化してはいるけれど
その真の姿は
見るも哀れな状態だ
地球は今や半死半生の
ギリギリの状態だ
「そんな状態で再びダークネスの
襲来を受けたら地球は今度こそ
致命傷になる」
ミライは悲しげに自分の黒い髪を
手で掬うと艶のある紫の光が走る
彼女は
地球の今の姿を
とても悲しんでいる
「其れは解る…だが」
バドワイザー提督は
それでも と言いたい
「現時点で地球最強の守護者
である彼を投入しないのは
流石に論外だろう」
ゾスター討伐の切り札
中の切り札
ーーに成るであろう
超戦士 広野大時
ミライ船長の父である
広野飛鳥が彼女の名前である
ダークネス戦士マーヴェルと
合体を果たし鬼神デーヴァ
アタバカとなり
ダークネス最強眷属のオーガ族を
従えるに至る
その伝説は生きながらにして
神格化するほどの大英雄である
その超人を父とするこの
広野飛鳥は
否応なしに、そんな
大英雄の娘として見られる
「君の御父上は生きる伝説の男だ
…その存在感は
確かに地球が護られていると
人々を心から安心させる」
アスカ艦長は
「確かに父は地球の守護者です」
「今の地球からその守護者を
取り上げるのは
益々無理な話だろうと思います」
時が立つに連れ
地球がゾスターに対する怒りよりも
現在の平和を願っていると
その気持ちは尊重するべきだと
思っている
「出来たらゾスターに艦隊を送って
刺激したくない…それが
アースソード政府の本音でしょうね」
ムムム~
バドワイザー提督の眉間の皺が
益々深い物になる
「まさしく君の言うとおりだ…
地球は怯えているのだ
ゾスターの報復に」
地球の政治情勢は決して
盤石なものではない
世論の影響力がかなりある
のだ
ダークネス戦争を辛うじて生き残った
人類は、急激な技術革新を果たし
なおかつ、最強生命体ダークネスをも
味方につけた
普通なら約束された繁栄を
謳歌出来るのだが
常に死の恐怖が宇宙から
もたらされる
宇宙望遠鏡を覗けば
地球から離れること10億光年
遙か先に一つの銀河が
観測される
だが、その銀河は異様であり
異常であった
その銀河は恐るべき速さで
移動し
他の銀河と接触ると
その銀河を捕食するのだ
銀河の捕食者と呼ばれる
その正体が
ゾスターと
ダークネスの魔獣艦隊だと
解ったときの人類の受けた
衝撃がどれほどのものだったか
想像に難くないだろう。
最早、あの悪魔は人類の手に負える
規模の敵ではなくなっている
そう思えば・・・相手を
刺激せず
それでいてマグニファイセントと
我等の大統領に顔向けの出来る
最低限の艦隊規模が・・・
提督にショボいと言わせる
小規模艦隊なのだ
せめて500隻は出して
ゾスターに人類の意地を見せて
やりたかった
地球はゾスター討伐に及び腰に
なってしまった
それがバドワイザー提督の
本音である
マグニファイセントがゾスター
討伐の旅に出たあの日
あれ程までに意気旺盛だった
国民の熱も冷めて
徐々に平和に慣れれば
消極的になっていく
当時の熱い情景を直接見た
提督としては
寂しい限りである
「ストーム大統領に
今の地球の現状をお伝えす
るのは忸怩たる思いだ」
アスカ艦長はバドワイザー提督が
ストーム大統領の熱烈な
支持者である事は知っている
この艦隊の上官クラスは全て
デーヴァで固めてあるのも
時間制限を突破する
目的も兼ねていた
遠征の途中で指揮官の交代は
是非とも避けたいものだ
デーヴァの平均寿命は
2千~3千年
少なくても
ゾスター討伐までは
体制を維持できる
女性のデーヴィーは
更に寿命が長いのが一般的だ
6千年の長寿命が期待される
その意味で
自分の後継者は
彼女だと
バドワイザー提督は
常日頃から思っていた
「まあ少なくとも君という
類希なる逸材を排出して
くれたのはせめてもの
地球の良心と言える」
アスカはその高過ぎる評価に
おもわず鼻じらみ
「よして下さい煽てるのは」
だがその評価に納得し同調する
存在の声がする
「流石は名高い将軍殿であるな
我等が姫の価値を良く解っておられる」
その声は明らかに何もない空間から
聞こえてくる
「その通りですな我がミライ姫は
殿の御子の中でも随一の
お力の持ち主ですから」
「さすが提督は解っておられる」
その2つの声で話しているのが
二人だという事は明確だった
「風神!雷神!」
ミライ艦長は何も見えない空間に
収納されている者に一喝する
名を呼ばれた者達はそれに
怯んだのか一瞬沈黙するが
「雷神お主はまた姫様の
お気に触るような事を申したな!」
「何を申すか!風神兄者の方こそ」
それからは互いに罪を擦り付け合う
いつもの泥仕合になりかけたので
「お止めなさい!」
とピシャリ いつものように
ミライの一喝で
その通例となった茶番劇も
落ちが付くのだ
バドワイザー提督は彼女を姫と呼ぶ
その二人の兄弟を良く見知っている
「風神と雷神は今日も
御機嫌な様だね」
ミライは慌てて
「どうもバドワイザー提督
二人が失礼しまして申し訳ありません」
この遣り取りに
「御秀様が我等のために謝罪を!?」
「こら雷神お主のせいだぞ!」
「何を兄者のせいだろ!」
「好い加減になさい!」
とうとうミライの雷が落ち
二人の声はシュンとなった
「申し訳ありません」
ほぼ二人同時にこの台詞を
吐いたら何時も通り
茶番も御開きである
「ハハハ結構結構
二人はそうじゃないと
逆に調子が狂うよ」
風神と雷神は
オーガ軍団の中でも大将級の
実力を持つ強者達である
彼等は広野大時ことアタバカを
主君と仰ぎ
その娘である広野未来を
姫君として常に亜空間に位置し
警護しているのだ
そしてアースソード艦隊にも
約2000ものオーガ軍団が搭乗
しており
この戦力だけでダークネス
2千万にも匹敵する
超戦力と成っている
此こそが彼女が特別だと
提督が評価する所なのだ
只優秀で眉目秀麗だけでは
マグニファイセントタイプの
2番艦であるこの
アースソード
亜空間戦艦2番艦
エクスカリバーの艦長は
任せられない
この艦の戦闘力は
マグニファイセントには及ばないまでも
限りなく近い戦闘力を誇示している
何よりも
その名が持つイメージで艦の能力が
上昇するという特殊な能力を
考えれば・最も有名な
伝説の剣の名を冠するだけでも
このエクスカリバーの価値が
どれほどのモノかは言うまでもない
事だろう
一番艦であるマグニファイセント
から150番まで
全て有名な剣の名を冠する
我が艦隊は
ゾスターという悪魔の軍団を
討伐する目的の艦隊としては
当然の選択となった
東京都庁という建物をダークネスの
力で再現し其れを船の船体に利用して
剣の部分にはナイトデーヴァが
核としてダークネスのオーガ100体で
構成されている
これがアースソードが誇る
ソードシップの基本的な
造船方法に成っている
「150名もの戦士達の勇気ある犠牲と
オーガ150000により
この艦隊は出来ている事を思えば
少ない戦力とは言えませんよ」
ミライ艦長の言う事はもっともである
だがバドワイザー提督は
ゾスター銀河捕食体の
その規模を知っている
10億体もの恒星と化した
魔獣が雲となり
その中心部には超重力の
巨大ブラックホールの化身である
ゾスターが君臨する
物理演算の限界を超えた怪物
其れが今のゾスターの真の姿だ
これを何者なら退治出来ると
言うのか?
最早われわれ人類には
到底解決不可能な気さえ
してくる
だいたい、敵の規模が大きすぎて
想像がおいつかず
今一現実味に掛ける
だが実際にゾスターの銀河捕食体と
目前で対峙したときに
その恐怖に人類が
耐えられるのであろうか?
提督は
150隻の艦隊の前に
ゾスター銀河捕食体と対峙したとき
その銀河に見える物から
巨大な怪物の触手的な足が
伸びて艦隊に襲いかかる
光景を幻視して
猛烈な恐怖を
感じた
果たして巨大なアフリカ像を前にして
バクテリア程度の大きさしかない
我々が一矢報いる事が出来るのか
どうか?
我々人類はゾスターの免疫にさえ
勝てないのかも知れないのに
だが…である
併し…なのだ
あの亘理洋子にゾスターは
負け続けている
死して
今も尚、彼女はゾスターを
苦しめ続けている
其れは人類に残された
最後の抵抗であり
残された最後の希望なのだ
「天の川銀河を旅立ち1000光年
…ここにある天照棲銀河と呼ばれる
場所に日輪星系がある」
「その星系には多くの
サムライディーヴァが存在する
惑星国家あ存在するのですね」
二人の言うところの
アメテラス銀河にある
日輪星系では
渡瀬聖子が対ゾスター用に
1万年前から準備しておいた
そこには
サムライディーヴァの因子を
持つ種族が存在し
ゾスター討伐の大きな
足がかりに成るはずである
「それにシャレーダー君が
ストーム大統領からの大使として
待っている予定です」
シャレーダーの名前を聞けば
取り敢えず安心出来る
バドワイザー提督は
シャレーダーがもたらす
新しい情報に
これからのアースソードの運命
いやそれこそ宇宙全体の
命運が掛かっている事を
理解していた
果たして吉報か…それとも
凶報なのか…
一方でシャレーダーも
地球からの援軍を
期待していた
ゾスターをやっつけるために
どんなに凄い大艦隊を
送ってくれたんだろう?
それこそ宇宙を埋め尽くす
ほどの、大艦隊だったら
嬉しい
だって今のゾスターを
観測して
そこそこの戦力なんて
送ってこないだろうし
シャレーダーにしてみれば
ゾスターの討伐は
人類存亡に関わる事態だ
わざわざマグニファイセントを
せん航させて、その艦長に
ストーム大統領を抜擢までさせたのだ
人類は本気だと思うのも
おかしくはない
もしかしたら大時さんも
悟にメグさんや
婦警隊の皆さんも
参加しているかもね
大時さんのアタバカ鬼無双なら
ダークネス5万にも匹敵する
超戦力アップだし!
日輪星にシャレーダーが
到着したのは
アースソード艦隊から
日輪幕府に
3日後到着と連絡が入った
時だった
日輪幕府は既に権限を
日輪民主主義国に移行し
宇宙海軍に至っては
日っての旧態依然とした
設備は何処にも見えず
洗練されたデザインと
科学技術によって
生まれ変わっていた
マグニファイセントが旅立ってから
日輪星系では既に70年が
経過していたのである
「70年後の日輪か…江戸も
東京に名を改めたのかな?」
シャレーダーは
近代惑星国家となった
日輪都市の変わり様に目を奪われた
神都ヤマト
それが日輪星系主惑星が
改名した新たな名前だった
ヤマト…そうか
日輪は日本の模倣から
誕生したからそれで…
シャレーダーは日輪政府の
特別な歓待を受けた
何しろ、(前)日輪皇帝の
実の兄であるり、母親は
日輪星系の生みの親の
渡瀬聖子である
天照棲という神名では有名で
シャレーダー自身を
神名で呼ぶと瑠璃の命となる
日輪の民からしてみれば
瑠璃の命こそは
現人神そのものなのだ
まさか自分がそんな歓迎を
受けるとは微塵も考えて
なかったシャレーダーは驚愕した
うわわ
なんだか無茶苦茶歓迎されているぞ
今まで色々な扱いをされたけど
こんな扱いは初めてだよ~~!!
まさか神の子として崇拝の対象と
されてしまうとは
シャレーダーにしてみれば
新鮮な驚きだった
「御子様…瑠璃の命様」
「遠方より良くぞお戻りに下されました
我等日輪の民は皆…貴方様の御光臨を
心より祝福しております」
シャレーダーは瑠璃の命という
この新たな呼び名も気に入っていた
お母さんが天照棲と名乗ったのも
地球人に解りやすく
この星の文化を受け入れられやすく
するためだったんだろう
王朝でありながら王は
崇拝の対象であり
国の象徴として置かれ
実際の国のマツリゴトは
国民によって選ばれた
政治家が行うシステムは
まさに現代日本そのものだ
サムライディーヴァを
多く作る土壌としては
最も効率の良い社会構造だね
それにしてもヤマトの建物は
どれも
木と似ているけど
金属と木を融合した未知の
材料を使ってる…
宇宙船も全て植物みたいに
光合成で育つこの植物金属で
出来ているのか
お母さんが万年単位で研究すれば
こんな物まで生み出しちゃうんだな
そう感心していると
シャレーダーはまだ地球からの
艦隊が着いていないと言う
事なので
艦隊が到着するまでの期間は
神の御子として滞在する
事になった
神事にかり出され用意された
祭殿に座っているだけの
楽なお仕事
シャレーダーがその姿を
見せるだけで勝手に
日輪の民達は幸せな表情を見せる
のだった
チョロイな神のお仕事
そう思った時期が僕にもありました
舐めててゴメンなサイモン
民衆の熱狂は止まるところ知らず
と言う事で
瑠璃の命のお食事を運ぶ係りの
奪い合いから、神が座った席の
所有権が何万両にもなると
笑えなくなる
神の行動はそのまま民の
神話級の逸話となるのだ
大袈裟だなー
最初はシャレーダーも
苦笑い程度ですんでいたのだが
エスカレートが進むに連れ
けが人や暴力沙汰に
発展してくると
苦笑いでは済まなくなってくる
まったく人間はしょうがないな~
お母さんもサイモンも
何年も良く我慢できたなー
まあ持ち上げられて悪い気は
しなかったけど
そろそろ潮時かな?
その日は、とうとう地球から
アースソード艦隊が
到着する3か目の日だったからだ
さあイヨイヨだぞ
どんなもの凄い数の艦隊が
来るのかな?
シャレーダーは惑星ヤマトに
降下してくる150隻の
小規模艦隊を確認した
シャレーダーは其れを見て
感心する
成る程ねーっ
いきなり空を覆う大艦隊で現れたら
侵略目的かと疑われちゃう
だから敢えて小規模の…艦隊を
先に曳航しちゃうと言う
考えなのか
この艦隊の指揮官さんは
なかなかの切れ者さん
だね
シャレーダーは大いに
納得した
さて予定通りの時刻に
予定通りの艦数で現れた
地球からのお客人を
最大限の礼を尽くして
迎えるのは
日輪政府としては
当然のこと
曳航を歓待するラッパが
高らかに青い空に響きわたり
美しい舞姫達が舞を踊り
科学と芸能が
高い次元で結びついた
その式典は
まさに圧巻の一言であった
その祭事の中心に居るのは
誰あろう神の御子である
瑠璃の命である
思わぬ形で地球の人達と
再会する事になり
シャレーダーも笑顔に
引き吊りを隠しきれない
事となってしまっていた。
アハハハ…参ったなー
その様子を見て
驚いたのはバドワイザー提督である
神の御子として紹介されたのが
他ならぬシャレーダーだった
のだから当然だ
一体大仰しく誰を紹介するかと
思えば、渡瀬聖子が造った
人工生命体だったのである
バドワイザー提督は
日輪星の民衆の様子を見て
これは、対応を絶対に
誤まれないと感じた
それはミライ艦長も
直ぐに理解できた
「バドワイザー提督…くれぐれも
シャレーダー君を貶めないで
下さい…大変な事になりかすよ」
ヒソヒソと
バドワイザーの隣に立ち
ミライは忠告を送った
言われなくても解っている…
だが…どうしてこんな事に
成ってしまったのか
理解に苦しむね
バドワイザーは別に
渡瀬博士に対し
敵愾心などはとうに持っていない
気で居るが、心の何処かで
地球がこうなったのも
渡瀬聖子がゾスターを
生み出したから
だと思う所もある
その責任をとって博士が
ゾスターをボイドに
誘い込む餌になるのも
シャレーダーと言う兵器を
造りだした事さえも
自作自演とは言わないまでも
自業自得だと考えてしまう
彼の亡くした多くの兵士達の
悲しみがどうしても
拭いきれない怒りに変わる
だが目の前で神の御子として
崇められているシャレーダーに
かんしては我慢のしどころなのは
一国の提督として
弁えているつもりだ
ミライ艦長も日輪星人の
シャレーダーにたいする
崇拝の仕方は異常だと
思うが
宗教国家的な部分が残るのは
文化的に仕方ない所だと
理解はした
恐らくシャレーダー自身が
一番この状況に戸惑いを
覚えている筈だわ…
その証拠にあんなに
ヒキツった笑顔
してるもの
ミライの亜空間庫に居座る
二人の従者達も
人間のシャレーダーを崇める
光景には物申す所があった
ダークネスの王の息子が
人間達に崇拝されているのを
見るのは何とも複雑怪奇也
雷神の言葉に激しく同意するも
ミライに不易があってはと
自重している
背景が違うと同じ物でも
見方が変わってくる
この星ではシャレーダーは
神の御子で
崇拝の対象であると
提督と艦長は
そう割り切った上で
数時間に及ぶ歓迎の祭典に
参加した
皇居ースメラギ迎賓館
最も豪華であり他国からの
重要な来賓客用に用意される
VIP御用達の施設である
まず大理石の質感を持つ
巨大な柱 そのレリーフの
美しさはこの国の職人の
腕が素晴らしい事を示している
当然のようにそのレリーフの
モチーフとされているのは
アマテラスが主役となっており
渡瀬聖子の女神像が無数に
彫刻されていた
そしてその中には
シャレーダーの弟である
サイモンのレリーフも
多数掘られている
「情報だとシャレーダーの
後継機にあたるその人工生命体は
この星で1千年間も国の象徴として
存在し続けていたらしいです」
ミライ艦長は情報局の資料から
予め多少の知識は取り入れている
1000年か…それはもう
存在としては種族にとっては
文化に根付くレベルの話だろう
バドワイザーも地球でもし
1000年生きる聖人がいたら
その国の象徴というよりもう
人類遺産だと思った
確かにその存在の兄とも成れば
こうなるか
気持ちの落ち着け所を得たところで
迎賓館でくつろぐ提督とミライの
前に問題のシャレーダーが
突如空間転移してきた
此をいち早く察知したのは
二人の武神である
御ひい様何者かが空間転移
して参ります
二人は一瞬警戒したが
その現れたのが
シャレーダーだと解り
警戒を解いた
「こんな形で会いに来てゴメンなさい
この星の人達がどうしても
ボクを離してくれなくて」
愛らしい顔でそう言うと
まるで熱狂的なファンに
取り囲まれている
アイドルみたいだと
思わず笑いそうになる
ミライ艦長
「其れは大変だったわね
シャレーダー君」
シャレーダーは自分を特別扱いしない
二人に御機嫌になった
ここ数日の間とこにいても
落ち着かない気分だったので
当たり前に接してくれる二人には
感謝しかない
ああ・コウコウこう言うので良いんだよ
「兎に角とんでもない目にあったよ
サイモンはこんな事を1000年も
続けてこれたなんて凄いよ」
シャレーダーの様子に
ミライは苦笑しながら
嗚呼なんだか解る
私もアタバカの娘だと言うだけで
オーガの人達から姫・姫様と
散々持ち上げられてきたもの
こう言うのを同病合い哀れむと
いうのよねーーー
うんうんと二人は腕組みをし
激しく同意して首を縦に振り合う
その様子に
バドワイザー提督はシャレーダーが
調子になど乗ってなど居ないことが解り
少々早とちりな自分を反省する
おいおい何だよ全然いい子じゃないか
此は少し早合点が過ぎたぞバドワイザー
「まあこうして無事に合うことが出来たんだ
まずは情報の交換がしたいのだが
シャレーダー君はどうだね?」
「あっ!ボクもそれが良いと思います」
シャレーダーは明るく元気に
提督に答えた
「あの提督さん所で他の船は
何処にあるんですか?」
無邪気な顔でそう訪ねるシャレーダー
それを聞きドクンと大きく心臓を
鼓動させる提督バドワイザー
一瞬にしてその顔は緊張を帯びた
渋い顔に変わり顔の影が劇画調になる
ミライなどは困ったなーという
顔になりハハハと笑うしかない
おい誰かこの空気を何とかしてくれ
シャレーダーは無邪気に
二人を交互に見ている
アレ? アレ?
150隻の大艦隊
そのアップグレードは
シャレーダーの力で
速やかに実行された
150隻ほぼ同時に
マグニファイセントが現時点で
持っているスペックにまで
一気にグレードアップされる
日輪のサムライディーヴァ達も
各々割り振られた船で
船に合わせた能力に調整し
全部の船が
決戦状況兵器システム
ソード・オブ・ディストラクション
を搭載する事にも成功した
これにより侍の動きをトレースして
抜刀して剣技を発動出来る戦艦に
生まれ変わったのだった
「見違えるような進歩だ」
現在のアースソードの技術では
ソード・オブ・の技術はとても
再現できませんでしたからね
シャレーダーがどやって船を
改造したのか技術者達は
全員ザジを投げていた
本人も自分が出来ると思ったことは出来る
けど出来ないと思った事は出来ない
まるで何も考えずにそうしたいと
思うだけで勝手に出来てしまう
何の説明にもならないが
渡瀬聖子自身も同じ感じで
次々に発明を実現させて来ました
「天才脳にはかなわないな」
「ええ…全くです」
バドワイザー提督とミライ艦長の
目の前で次々と魔改造されていく
150隻の空間戦艦が誕生して
いく姿に
二人は奇跡の光景を只々
呆れて見ていることしか出来なかった
そしてミライの船であり
アースソード艦隊旗艦
亜空間戦艦エクスカイザーの
大改修を念入りにシャレーダーが
したことで
いよいよゾスター討伐の為の
出航の準備が整った
訳だがーーー問題は
シャレーダーが同行するのを
日輪星人さん達がちゃんと
受け入れてくれるかどうかだ
3人はその件だけは只では済まない
だろうと予想はしていた
ーーーのであるが
シャレーダーが旅立ちの日を
迎えた朝
日輪星人達の態度は
それまでとは打って変わり
実に冷静で厳かな感じで
それでいてシャレーダーに対する
態度もそれまでと変わりなく
否それ以上に大きな決意の
籠もった眼差しで見つめられる
そして
それまでの喧噪が嘘のように
静寂に包まれている
「これは…」
シャレーダーは勿論のこと
バドワイザー提督も
ミライ艦長も
緊張に包まれた
まさかこのままシャレーダーを
手放さないために
何かされるのか?
そう提督は一瞬考えが浮かび
心臓が大きく鼓動した
そしていよいよ扉を開けて
迎えのシャトルが待つ
宇宙港に向かう時が来た
扉を開けると
長く長く続く廊下に
多くの人々が集まり
シャレーダーに
優しい微笑みと
暖かい言葉
そして拍手で見送り
してくれた
「有り難う御座いました
瑠璃の命様」
「必ずお母様を取り戻して
その暁には我等の元に
帰ってきて下さい」
「我等日輪の民はいつまでも
お待ち申しております」
「どうかそれまでご壮健でありますよう
お祈りいたしております」
シャレーダーは頬を桃色に染めて
目を感動の涙で一杯にして
この素晴らしい人達に
恥ずかしくないよう
力を込めて歩いた
「有り難う皆さん…ボクは絶対
お母さんを助けたら
この星に必ず帰ってくるよ、だから
約束するから待ってて」
感極まり最後の言葉など
泣きながらとなり
最後は良く聞き取れないほど
不明瞭な感じになってしまった
その光景はバドワイザーの胸をうつ
素晴らしいものだった
私の方こそ間違っていたのかも
知れない
博士やシャレーダー君の
価値をを真に正しく理解しているのは
この日輪星系の民達の方だ
「シャレーダー君…もし
地球が暮らしにくいのなら
この星でお母さんと一緒に暮らすのが
君達親子にとって一番の幸せだと思うよ」
それは地球にとって
取り返しの着かない損失だ
一方で
日輪星系は宇宙でも比類なき
凄まじい発展と繁栄が約束される
「だがそれは地球人のした
渡瀬博士に対する罪の功罪だ
全ては自業自得
受け入れるしかないことだ」
だけどシャレーダーそう言われても
首を縦には振らなかった
「ううん お母さんはきっと
地球に帰ると思います
だってお母さんは地球の人達を
愛しているから」
此を聞き
バドワイザーは感極まり
男泣きにないた
絶対に博士を救出する
ゾスターなどを殺すためだけに
利用して良い人じゃない
此は軍人と言うより
地球人としての矜持であり
誓いを立てるべき事だ
「何としてでも
あの女性を地球に連れ帰る!!!」
このとき地球人で又一人
シャレーダーは真の理解者を
得られたようだ
じゃあ話を先に進めよう
宇宙の特異点
銀河を食う銀河と呼ばれる
恐ろしい銀河それが
ゾスターの魔獣艦隊の現在の姿
ほんの少し博士が超重力場に
捕らえられている合間に
瞬く間にゾスターは周辺の
銀河を平らげ
自らの勢力を銀河と見間違えられる
程に急拡大させたのだった
そうとは知らない
まだ地球にダークネスが
誕生する以前の地球は
10億光年先に見つけた
この奇妙な銀河を
その特殊な形状から良く似ている
と言う理由で
カエトノツス銀河
微生物に形状が似ている事から
地球の学者が付けた名前だが
最大のものを最小で例えるのが
気にってゾスターは
ダークネス最終進化段階の
この姿をカエトノツスに決めた
多くの臣下達に
兆を超えるダークネス軍
レイディアンス級の戦力を持つ
魔獣戦艦も数隻誕生している
伝説のレイディアンスは
強さの単位に成っており
クラスレイディアンス=CR
CR1はレイディアンスと同等
CR10はレイディアンスの10倍
あのレイディアンス以上の
戦闘力を持つダークネスが
少なからず出て来ている
人類にとって絶望以外
何もない状況だ
そして1000億の
恒星の大きさにまで巨大化した
魔獣戦艦の怪物達
それら全てを従え
今のゾスターは少し前の
死にかけた瀕死の状態からは
考えられない程に
巨大に強力になっていた
あの女の呪縛も…もう恐れることはない
そして博士もようやく我の手に
今や…ゾスターは完全に自分を
取り戻していた
カエトノツス銀河こと
ダークネス魔獣戦艦艦隊は
中心部にカリギュラスを置き
宇宙無敵の大艦隊である
カリギュラス自体も
大きさの限界値に達して
球場の形態となり
その重力は木星をも凌駕していた
カリギュラスにあるゾスターの居城
ゾスター城は
荘厳にして贅を尽くした装飾に
彩られ、圧倒的な存在感を
見る者に与えるのだ
アントニオガウディの生涯最高の作品であり
世界遺産の一つに上げられる
かのサクラダファミリアを吸収し
そのデザインと精神性を完璧に
模倣しながら無限の増殖力で
大陸よりも大きな居城とかした
ゾスター城カリギュラス
余りに巨大なこの巨大な城でさえ
ダークネスの人口密度は
埋め尽くしてしまう
何億と言う数の城内の人口密度
それらは沈黙を守り
城と一体化しているようでもある
だがどのダークネスも
地獄の生き物のように醜く
おぞましいオブジェであった
このゾスター城には
ダークネスでも最上級の
権力と実力を持つ者だけが
その居住を許されていた
又その中でも更に
選ばれし者として君臨するのが
ゾスターの娘であり
セブン・デッドリー・サインズの
生き残りであるフラウロス大将軍
彼女は姫将軍と言うもう一つの
通り名で有名となっていた
元は人間だった
デリンジャー将軍の一人娘として
産まれ組織の為に犠牲にされた
悲劇の少女であったが
ダークネスと合体しネイキッドと
化すことでその魂は不滅となり
セブン・デッドリー・サインズの
一角を成すフラウロスに転化した
宇宙で7大罪最後の一人として
ゾスターに付き従う魔の眷属
ゾスターを父として愛し
当初は洗脳だけだったが
最早その魂そのものをフラウロスは
ゾスターに捧げていたのだ
「少し前までのお父様を思えば
何という御変わりようだろうか」
「あの女に精力ばかりでなく
気力も命までも吸い取られ
枯れ木のようだったお父様…」
フラウロスは眩しいものでも
見るように尊敬し崇拝する
お父様を目を細め見とれている
レイディアンスを同化し
その容姿までもが
美しい姿に転化したゾスターは
最早非の打ち所のない
完璧な美男子として
玉座に座っている
ほんの数十年
その場に止まるだけで
ダークネス軍は
小銀河にも匹敵する
巨大精力に変貌した
後数百年もあれば
このカエトノツス銀河は
分裂して
その後はどんどんその個体数を
伸ばしていくであろう
最後は宇宙全体をカエトノツス銀河が
埋め尽くしやがて宇宙の全ては
ゾスター王の贄となる
全宇宙征服…絶対に実現不可の
ありえないであろうその大偉業さえも
偉大なるお父様には実現可能なのだ
「偉大なる全能のお父様
最早お父様の威光は全宇宙に
遍く浸透しておりましょう」
「誰よりも美しく強く
完璧なお姿お父様…私は誇らしく感じます」
ゾスターも珍しく上機嫌だ
「そうだな…フラウロス
お前も余は美しいと思うぞ」
フラウロスは自分が美しいと
ゾスターに言われ思わず少女のように
身悶えながら照れて悦んだ
「お父様そんな私が美しいだなんて」
そんな心にもないお世辞も
口に出してしまえる程には
ゾスターは機嫌が良い
見かけを褒めるばかりか
「余が苦しいときにはお前は
良く国を支え軍を指揮してくれた
礼を申すぞフラウロス」
この労いの言葉を聞いた
フラウロスの心中は
いかばかりか
猛烈に押し寄せてくる感情で
彼女の涙腺は完璧に崩壊し
だらしない顔で嗚咽に混ざった
声で感謝を口にした
「私のような至らない娘に
神であるお父様にそんな風に
仰っていただけるなんて」
「このフラウロス生涯今日の日を
忘れませんわお父様」
ゾスターはその言葉を軽く聞き流し
何を言うか暫し考えを巡らせた
「併し…だな」
ゾスターは空席である
女王の席を指さす
「完璧とはまだ…言えぬな」
「それは…」
フラウロスは今は敢えて避けていた
あの厄介な存在をゾスターが
わざわざ持ち出してきたので口ごもる
出来れば今日の良き日には
口に出したくない名前
「渡瀬博士でしょうか?」
そうだその通りだと
ゾスターは意気揚々と
息撒いた
どう見てもその姿は何かに
取り憑かれている
そうとしか思えない異常な表情
それまで冷静で鉄面皮だった
ゾスターの整っていた顔が
異常な興奮を漲らせ
感情を爆発させている
「そうだ!我が完全になるためには
彼女の存在が不可欠なのだ!!」
「我が母にして究極の英知を持ち
そして只一人の妻であり女王
であるダークネスクイーン・カオス!!」
「宇宙の支配者に最も相応しき
我が唯一愛する愛妻にして
ダークネスを導く宇宙の蝶よ!」
「彼の女性無くして何が完璧か!!
否!断じて否である!」
「渡瀬博士なくして我の永劫の
時は虚しいばかり…手に入れねば
成らぬ…再び」
「居なくなって我が手綱から逃れられ
始めて味わうこの喪失感」
「必ず彼女をこの手に取り戻さねば
ならん!」
そして息を呑むフラウロスにその
狂気の表情で顔を間近に近寄らせ
ゾスターの狂気の目は
フラウロスをして心底恐怖させ
旋律と絶望を与えた
ゾスターが渡瀬博士を諦める事は
金輪際絶対にありえない
フラウロスはそう確信する
王国存続のために
王にはあの女が絶対に必要だ
それはもう理屈とか道理とかではなく
執念をも越えた渇望だった
「承知しましたゾスター王
必ずやこのフラウロスが」
「女王陛下を人間どもの手より
必ずや取り戻して御覧に見せます」
フラウロスはこの誓いを
必ず果たすと心に決めたのだった。
宇宙は広大である
この宇宙では時間が支配する
時空連続による法則に準じる世界である
この時間こそが宇宙の心理であり
絶対の法則なのだ
何者さえもこの法則を破る事は出来ない
それが神と呼ばれる存在であってもだ
人は年をとれば老いるし
それは惑星であっても
100億年も立てば寿命を迎える
ゾスターであってもその寿命は
3万年位しかない
この宇宙の危機も3万年間だけの
短い期間だけの危機に過ぎないのかも知れない
それが宇宙という巨大な入れ物の
存在感なのだろう
それでも 今宇宙に生きる
生き物達にとってゾスターという
力はあってはならない存在であった
どうなのでしょう
このような存在を許して置いて
果たして良いのかどうか
その存在は思考の海の中に存在し
時間という概念すら超越した
次元回廊の海の中に存在していた
進化レベルγの領域に達せし
超越のエネルギー生命
彼等はレベルγに達した者達の
共同体であり時空連続体の
監視者としてこの宇宙を見守り続けている
その監視対象に不可侵というのは
決して破っては成らない
暗黙のルールであった
そしてその共同体の中に
我々の良く知る人物の姿というか
意識体があった
アルケオネオス銀河のネオス文明の
神であり最高意志決定者である
ゼーレブその人である
彼も進化レベルγなのであるから
この共同体に加わることは当然の
権利であり義務なのである
権利は解るが義務とは?
「監視…観察以外は如何なる
理由があっても介入しない」
ネオスゼクターは
透き通る良い声でこの
異空間に響き渡る思念を発する
「私の記憶に間違いがなければ
それがこの共同体に参加する上での
最も重要な決め事ではなかったのかな?」
この会議はネオスゼクターには
最初からその目的は想像がついていた
「この宇宙を消滅させる議題は
余りに早計だと言わせて頂きたい」
穏やかではない話だ
宇宙が幾つもの断層により分断され
グレートウオールと呼ばれる
壁に仕切られているのも
こうした事態が起きたとき
その部分を切り捨て
他の宇宙に影響を出さないためだ
ネオスゼクターは
この共同体が動くときは
宇宙が一つ消滅する事と
同義であると知っている
ゾスターがカエトノツス銀河を
分裂させる前に
グレートウオール内の宇宙ごと
消去する
その事態を止めるのが
彼の目的なのだ
「ゾスター一体だけのために
300億光年分もの宇宙を
消滅させるなど余りに強引過ぎる」
超エネルギー生命体となった
この共同体のγ達は
人類に対する愛情など微塵もない
あらゆる感情を捨て
合理的に物事を進める
暖かみのない機械のような者達である
ネオスゼクターが人間の感情こそが
現時点で完成系であるという
考えに至ったのも
感情を価値のないものと切り捨てた
知的生命体の末路がこれだったからだ
恐ろしいものだな…感情をなくした
人間と言うものは
どんなに進化しても人の痛みも解らない
怪物に成ってしまっては意味がない
私はこの共同体の者達が恐ろしい
簡単に残酷な決断を下す
こ奴等がな
共同体の会合する空間は
亜空間の一つを利用して
作られている
これを共同体空間と仮称する
そこでは管理者と呼ばれる
共同体の会合場所を提供する
場所を管理する者のみが在住し
共同体委員会の会長のような
立場も果たしていた
ネオスゼクターは
そんな共同体に既に
800万年は所属している
ある日突然コンタクトを取ってきて
半ば強制的にこの共同体の
一人にされた
その時、共同体宣言を約束させられる
曰くーーーーγ共同体は
観察だけに準じる事
人類に干渉してはならぬ
ネオスゼクターは
その誓いを守りゾスターを
討伐できなかったのだ
ギャラクシーカノンや
宇宙の重力ブレーキ宙域などは
過去にγ共同体が
ネオスゼクターに管理を
委託した管理物だった
危険な発明だがネオスならば
危険はないだろうと言う
γ共同体からの配慮だった
「進化レベルがβのネオスだけは
受け入れ先の宇宙域を用意してある
なんの問題もない」
ネオスだけはγ共同体にとっても
重要な存在でいつも特別扱いだ
当たり前か…ネオスのような
光の巨人が更に一段階
進化したのがγなのだからな
「わざわざそんなことをしなくても
ゾスターだけを消去すれば
いいだけの話だった」
「私を止めたのはγ共同体の諸君では
なかったか!」
γ共同体はあくまで冷徹で
感情の籠もらない思念を
ネオスゼクターに返す
この命の価値の感性が腐った
愚か者達めが!
ネオスゼクターは彼等と敵対
するわけにはいかない
寧ろこの冷徹な機械感性共に好き勝手
させないには組織に組みするも
やむなしだと考える
「今のゾスターは単独でも
この共同体を一瞬で壊滅する
力をもってしまった…」
「例えこの宇宙を破壊しても
奴と眷属は生き残るだろう」
だが
なにも食べる物が無くなれば
ゾスターは何れエネルギーが枯渇し
活動を停止する
乾眠状態に追い込み
永遠にボイド化した宇宙に
捨て置くのが共同体の出した
一番の解決方法だった
その作戦のために一つの宇宙を
犠牲にする気か?
だが此はネオスゼクターにとって
ゾスター討伐の基本方法が
いま人類と共に自分がやっている
事と繋がる作戦だった
「奇しくもその方法を我々より
遙か以前に描いた先駆者がいて
その作戦をやろうとしている」
ネオスゼクターの言葉を聞き
γ共同体の囁き声に変化が訪れた
数千人もの話し声が早送りされて
いる音が空間を満たしていく
だうやら機先を挫いたのは
彼女の方だったな…
その様な人間が居るとは驚きだ
我々も今一度計算式の修正を
しなければならない
γ共同体の中には元機械生命体もいて
彼がどうやら意見したようだ
ネオスゼクターとMr.マシンの
二名の意見は無視できない
そうγ共同体は判断したらしい
よって此度は回答を保留に
することで話が纏まった
助かったぞMr.マシン
ネオスゼクターはこの機械人に
心底感謝を述べた
Mr.マシン
彼は機械人類で初の進化レベルγに
到達した超機械生命体である
「感謝されるほどの事はない
私とて此度のγ共同体の暴虐には
憤っているのでな」
マシンの彼が怒りを示すのは
感情回路を彼が持つからだ
「感性を無くした者達が…如何に
間違っているか良い見本だよ
彼等は」
Mr.マシンもまた感情を捨て去る
進化否定派の一人である
「私達機械文明が心を手に入れるのに
どれほどの時と労力を必要としたか…
それを捨て去るなど愚の骨頂だ」
心を獲得するために彼等
機械人類は
幾度も滅びかけ、そして
多くの機械人が心を
得ることが出来ず犠牲になった
心を得ることが我らを創造した
創造主の最大の願いだった
彼等の友人として共に歩む
それが我ら機械と人間との
夢であり理想だった
だが…創造主は
超新星の影響で死滅し
我等だけが残されてしまった
心なき我等の祖先は主であり友を失った
悲しみも知らず、只無為に稼働し続けた
だが主の望みである
心の獲得というテーマを
我々は与えられていた
私という個体が居て
そこから心を獲得するまで
数千万年
私は幾つもの100に近い
ボディーを渡り歩き
遂にその進化を果たした
その心を蔑ろにした結果が
宇宙の観察者を気取る
力だけあるだけの
無能共だ!
君の言うとおり
ゾスターがまだγの初段階でれば
倒せたかも知れなかったのだ
だがMr.マシンは首を縦に振らない
「確かに我々γ共同体が差し違えれば…
或いはね」
ネオスゼクターはその言葉に
驚愕の表情になる
「!!」
其れほどなのか…ゾスター
この超機械生命体は計算と
分析に置いては
共同体随一である
「パワーだけならゾスターは
さほど驚異ではない…だが
奴の中に厄介な怪物が住んでいる」
「マグネーターの化身と言う
怪物が戦闘能力の底上げを
しているのだ」
確かにゾスターはギ
ャラクシーカノンを
技をともなった破壊光線で
迎撃して見せた
あれはそのマグネーターの
技の一部だったのか!?
「レイディアンスと言う
私もある情報筋から掴んだ
戦士が存在していた」
「ゾスターはその戦士を
吸収し更に力を増したと言うが…」
ネオスゼクターは聖子から聞いた
レイディアンスの事をここで
持ち出して来た
Miss聖子によると
兄であるシャレーダー君を
守る目的で造った戦闘に特化した
人工生命体の傑作らしいが…
その計画をゾスターに見抜かれ
レイディアンスは胎児の時に洗脳され
人類の敵に成ったという
経緯を聞かされた
何とも悲惨な生い立ちだ
Mr.マシンは話を聞き
レイディアンスと言う存在に
同情した
最初から自由のない定められた
運命の子
「一つのプログラムに翻弄された
我々機械生命体とどこか似ている
気がするよ」
Mr.マシンは思う機械生命体が元々は
人類の幸福のために産み出された
種族だったのだ、その守る対象を
失ったとき目的まで失ったのである
レイディアンスも兄である
シャレーダーを守るためだけの
目的のために産み出された
そのためだろうか…生みの親である
聖子からの愛情が余りに違いすぎる
気がする
愛子と搾取子
この言葉を知っていれば
博士が母親として
欠落者であった事は言うまでもない
結えにレイディアンスの無敵の
強さが際だってくる
「なるほどな…結果的に
レイディアンスは戦う能力だけが
突出した存在となり
我々をも量がするγの上位者に
進化していたと言う訳か」
恐らく精神と肉体を常に極限にまで
追いつめられた状況が常態となり
気が付けば上限突破者となっていた
パターンだろう
「偶然とはいえ
もしレイディアンスが
生きていて我々γ共同体が
戦って居たらと思うと」
ネオスゼクターも武者震いをする
「ああ…ぞっとする」
そのレイディアンスの力を
何百分の一であってもゾスターが
使えるのならば
γ共同体総動員であっても
危ない所だったのか
レイディアンス本人と
戦わずに済んだのは
実に幸運だったのだな
だが今のカエトノツス銀河には
そのレイディアンスの強さの
等級を冠する怪物が
複数居ることに
人類は嫌と言うほどその恐怖を
味わう事になる
150隻のアースソードシップ艦隊は
ダークネスの魔獣戦艦とはいまだ
戦ったことはない
シャレーダーはミライ艦長が指揮する
ソードシップエクスカリバーに
登場することになった
「それじゃあ宜しくお願いします
シャレーダー君」
ミライ艦長はシャレーダーが
只のゲストではなく
艦隊の運命を左右する
ナビゲーターとしての能力に
期待していた
日輪星系からネオス銀河まで
渡瀬博士が用意してくれた
亜空間転移システムだけが
先行するマグニファイセントに
追いつくための唯一の
手段なのだから
そんな二人に近寄る一人の
お腹の大きなオッサン
本当はまだ20代なのだが
長年の不摂生と暴飲暴食が原因で
実年齢よりも老けて見える
「やっっと…やっと会えたよ
瑠璃公~」
シャレーダーはその声の主が
バルトだと解ると
そっぽを向いた
ふん!
「誰ですか~?ボクを置いて
何処かに遊びに行って
そのまま音信不通になるような人に
知り合いは居ないよ」
バルトは頭を掻く
「いや悪かったよ~俺も
故郷に帰ったら会いたい
女の一人や二人」
ミライ艦長はシャレーダーに
この人物が誰なのかを
さり気なく聞いた
「ボクをほうっぽいて何処かに行っちゃってた
バルトさんですよ」
バルトさんは冷たい態度のシャレーダーに
「さん…だなんてそんな他人行儀な
悪かったって!」
どうやらシャレーダーと
惑星ヤマトに戻ってすぐ
野暮用があるからとシャレーダーを
宿屋に置いて昔なじみの女が居る酒場に
行ってそこで運悪く
昔の悪仲間と再会し
賭博でスッカラカンにされて
意気消沈でシャレーダー君を
迎えに行くと
いつの間にか
シャレーダー君はおらず
見つけたときにはシャレーダー君は
瑠璃の命様に祭り上げられていて
そうなると只の一般市民のバルトさんは
謁見することなど不可能になり
今に至ると
「俺がアースソードの腕章を
ストーム・の旦那から預かっていたんで
何とか船に乗せてもらって」
呆れて物が言えない話だけど
まあバルトさんも反省している
みたいだ
シャレーダー君の見た目で
宿に一人で放って置けば
そりゃ日輪星系の人達が
気づかない訳があるまいて
プラチナの髪に瑠璃色の瞳
どう見ても庶民とは思えない
神秘的で中性的な美少年
アマテラスと崇拝される
渡瀬博士の血筋が
あんなにハッキリと
顔立ちに現れて居るというのに
まあいつも一緒に居ると
そんなことも解らなくなる
ものなのかも知れないけど
本当…何しに着いてきたのよ
バルトさんは!?
そんな和やかな時に何だけど
アースソードシップ艦隊が
日輪星系からお邪魔して
10億光年彼方の
マグニファイセントが待つ
アルケオネオス銀河に
向かおうとしたその時
深淵の宇宙に
途轍もなく巨大な
プレッシャーが
襲いかかる
その異常な危機感は
あのバルトさんでさえも
その異常を感じるほどの
緊急事態を本能的に告げる物だった
この宇宙に、我が王
ゾスター様に仇なす愚かな
日輪星系の者達に
神罰を下す
貴様等に神罰を下す我が名は
クラスR魔獣戦艦ユーグレナ
この名を聞き絶望するが良い
クラスR
それはレイディアンスの
強さを持つという
最上級の力を保持する
ダークネスだけに許された
等級だった
ダークネスにとって
レイディアンスとは強さの象徴であり
恐怖と畏怖の名を意味した
この等級の魔獣戦艦が
1隻とはいえ此処まで送り込まれたのは
今のゾスターがそれだけ余裕がある
証拠である
「不味いぞ…これだとマグニファイセント
の方にはどれだけの数の
魔獣戦艦が送り込まれているんだ!」
バドワイザー提督は戦士としての
直感でこの敵がたった1隻で
アースソードシップ艦隊を
遙かに超える戦闘力を
持つであろう事は即座に理解した
だからといって
引くわけにはいかない
それどころかこの強敵を下し
自分達よりも遙かに
追いつめられて居るであろう
マグニファイセントの
救援に向かうつもりでいる
「魔獣戦艦ユーグレナ
必ず撃沈し
その名を撃沈艦の第一号に
してくれるわ!」
その意気や良し!
同艦にのるミライ艦長の
二人の従者も提督と
同じ気持ちである
盛り上がっているところ
悪いんだけど
シャレーダーは命を捨て
日輪星系を護る気で居る二人に
伝えなければ成らない
「実はね…洋子隊長さんが
この時の為に用意している
作戦があるんだ」
シャレーダーのこの言葉は
提督とミライ艦長の
顔色を変えるのに
充分な効果があった
「多分其れを聞いたら二人とも
子供騙しだって思うかも知れないけど
洋子隊長さんのアイディアだから
絶対の作戦なんだと思うよ」
何とも前置きの長い
話し方に
二人は顔を見合わせ
そして
「地球を救った英傑亘理隊長の
出した作戦なら是非とも聞きたい!」
バドワイザー提督は
彼女の功績を高く評価していた
「私も憧れの亘理隊長の
作戦を知りたいわ!」
じゃあ…とシャレーダーは
おもむろに話し始めた
「ダークネスが絶対に破れない
名付けてゾスターバリアー作戦を
説明するね」
何だその名前?
宇宙空間は良い
もし自分が
せせこましい場所に
入れられたら
途轍もないストレスであろう
恒星を二つ三つと喰ってから
もう我の躰は
大きく成りすぎて
太陽系でさえ小さいと感じる
までになっていた
ゾスター王にユーグレナと
お名を頂き
既にこの宇宙に敵はない
我等ダークネス種族にとって
最早、目の前に居るのは
塵芥のバイキンに過ぎぬ…
放って置いても我等が宇宙に
存在するだけで
勝手に滅び行くだけだろうが
我が王の望みはこ奴等の
根絶…其れも出来るだけ苦しめて
なぶり殺しにせよとの王命ならば
王より生を受け名まで頂いた
我が身としては
否応無く只王の命に従うのみ
そう決心しユーグレナは
自分の体内から無数の
魔獣戦艦の艦隊を産み出した
自分からしたら僅かな
エネルギーしか分け与えていない
眷属達ではあるが
この戦力にたかが人類の
そろえた150程度の艦隊が
勝てる道理もないだろうな
併し王も無意味な事を我に要求なされる
顕微鏡サイズの戦いを観戦するには
少なくとも人間時間で20日は
調整に掛かると言うのに…
ユーグレナにしてみれば
王命で顕微鏡を覗き
細菌同士が争う様子を
確認しろという訳だ
それはやる気もでなければ
関心も引かない
まるで小学生が先生に出された
生き物観察でも嫌々させられる
妙な気分だった
サイズの違いはこれほどまで
意識の違いを引き起こす
ユーグレナから見れば
細菌同士の争いでも
戦場では
熾烈を極めた壮烈な戦火が
繰り広げられていた。
ハルパー(ハルペー)
大破
フルンティング
撃沈
ジョワイユ-ズ
撃沈
オートクレール
轟沈
ガラティン(Gallatin)
中波ながら未だ戦闘続行中
アロンダイト(Aroundight)
今ーー撃沈!
20日間休み無しで
アースソードシップ艦隊が
敵の魔獣戦艦艦隊
2500万相手に
奮闘した現在の戦況である
日輪星系のサムライデーヴァ・デーヴィ
達の本国防衛の為に散らした
大きすぎる犠牲があって
やっと、未だに
日輪星系は無傷であった
だがアースソードシップ艦隊は
主力の殆どを失い兼ねない
緊迫した状況が続いている
それに比べ
2500万もある敵の艦隊は
5000万の艦数がそこまで
減っている事実を考えれば
アースソードシップ艦隊の
奮闘ぶりは驚愕するべき
ものだった
特にアースソードシップ艦隊旗艦
エクスカリバーの力は
マグニファイセントの2番艦として
その名に偽りのない奮闘である
シャレーダーが居ることで
ソードオブ・ディストラクシャン
システムが使えるのは
やはり戦力として凄まじい
ポテンシャルになる
そして忘れては成らないのが
全ての艦が亜空間戦艦だという
事である
その戦闘能力は見た目と違い
亜空間に収納した武器類は
有に一艦で数千隻の戦力に匹敵する
確かに無敵ではないが
軽んじられるほど
少ない戦力でもないのだ
ソードオブ・ディストラクシャンを
全艦で使えるからこそ
5000万の敵艦隊と渡り合えているのだ
日輪星系でシャレーダーが
新システムへの書き換えを
済ませて居なければ
とうの昔に殲滅されていたのは
間違いない
よくぞ間に合ってくれた
それでもアースソードシップ艦隊の
戦いは熾烈を極めている
「ガラティン・まだ行けます
ソードオブ・ディストラクシャン
使用許可を!」
ソードオブ・ディストラクシャンとは
シャレーダーの最強武器
ディストラクシャンを超重力操作により
剣のように自在に使えるシステム
そもそもディストラクシャンは
超重力により圧縮した太陽エネルギーを
クエーサー化して一方向に放出し
敵を殲滅するものだが
そのエネルギー効率は悪く
うまく小出しも出来ない
その弱点をサムライデーヴァが
剣としてコントロールすることで
効率化と破壊力を兼ね備えた
恐るべき武器へと進化させた
ものなのである
が!
超圧縮人工太陽エンジンを
搭載するソードシップであっても
そのエネルギーを剣の形に
して一気に放出して敵を攻撃する
この必殺の切り札を
無限に連発できる訳ではない
艦が持ってもそれを発動する
剣士は精神と体力を著しく
消耗する
ガラティンのサムライデーヴァは
度重なる技の発動で疲弊しきっていた
ソードオブ・ディストラクシャン
それは誰でも使える技ではない
凄まじい修練で技量と精神力を磨き
それらが揃って初めて
使える必勝技である
「敵艦数25000直上に接近中!」
「ぬう!」
ガラティン女性艦長である
キンシさんは
サムライデーヴァである
戦闘班長のムロイに求婚された
ばかりだった
日輪星系で出会ったばかりの
この異星人に惚れられ
キンシ艦長は女として始めて
意識する様になった男が
このサムライデーヴァ・ムロイだった
この残された体力で
ソードオブ・ディストラクシャンを
使用すれば生死に関わる
キンシ艦長は瀕死のムロイに
向き直ると急いで掛けより
接吻をする
戸惑うムロイ
「これが答えだ…生き残って!」
その一言で充分だった
最後の力が沸き起こってくる
だがその時敵の一撃が
ガラティンの横腹に被弾した
そしてもう一つの敵の
砲弾である魔獣流弾が艦橋に向かって
飛んでくる
其れが被弾したとき
艦長のキンシはムロイを
庇って爆発の破片に
躰を貫かれた
「艦長!!」
サムライデーヴァ・デーヴィムロイは
決死の覚悟で命を取し最後の
ソードオブ・ディストラクシャンを
発動させる
その巨大なエネルギーの塊は
一太刀の神域なる斬撃となり
25000もの敵の魔獣戦艦を
巻き込み粉砕した
敵の数に分散し各個撃破
されるかと思われた
各々のソードシップは
分散することで
決戦兵器である
ソードオブ・ディストラクシャンを
思う存分に振るう事ができた
フレンドリーファイヤーつまり
同士討ちこそが一番の
悩み何処なのが
超破壊力の落とし穴に
つまりバドワイザー提督は
シャレーダーと言う
分析能力と演算力を使い
敵はまんまとその作戦にハマった
訳である
「敵が生まれたばかりのダークネスで
助かった」
「数だけなら何とか良い勝負に」
アロンダイト(Aroundight)
艦長エルノア
この艦に所属する
砲術長カツヤとミズキは
幼なじみである
亜空間に収納してある
地球の巨大兵器は
かってダークネス戦争で
使われていた遺物なのだが
その性能たるや
日輪星系の科学技術を遙かに凌ぐ
威力と性能である
日輪艦隊の武装がこれに比べりゃ
全然屁みたいなのは何だか悔しいが
今は本当に心強いよな!
「これだけの船を俺達は
託されてんだ…絶対
故郷を守り抜いてみせる」
そして艦長のエルノアから
指示が言い渡される
「斜め後ろ17時の方向
レールガン一斉正射!」
「了解17時方向
レールガン一斉正射!撃ち方始め!」
カツヤとミズキは
亜空間から超巨大電磁レールガンを
一度に30問照準をあわせ
敵艦隊に向かって撃ち込んだ
威力はその大きさ速度に比例する
超電磁コイルによって射出される
重金属の塊はほぼ直線で
限りなく光に近い
亜光速ギリギリで敵魔獣戦艦に
衝突しエネルギーを爆発させた
機械と血液そして外郭が
粉々に砕け血煙が巻き上がる
魔獣戦艦は痛みと怒りで
雄叫びをあげて
深淵の底宇宙に落下していく
「ざまあみろってんだダークネス共
3メートルの砲弾の威力思い知ったか」
「これで奴らも簡単には再生できない
3時間は戦線を離脱する」
アロンダイトの30問レールガンは
連発しても発射台に負担が掛からず
火薬も使わない
不死身の魔獣戦艦が相手でも
敵にとっては相当な驚異
となるはずだ
アロンダイトの働きは目覚ましく
この調子で他のソードシップが
ソードオブ・ディストラクシャンを
使えるまで援護射撃を繰り返し
援護していたソードシップが
ソードオブ・ディストラクシャンを
撃てる状態になると離脱し
敵を万単位で凪ぎ払うを
繰り返すことで大戦果を上げていた
「エルノア艦長の采配は凄い」
「ああ!ただ綺麗だってだけじゃない
もの凄い戦略家でもあるぜ俺達の
艦長は!」
日輪星系にも宇宙艦隊はある
だが
ダークネスとの戦争は未経験であり
幾ら破壊してもコアを破壊しない限り
数時間で復活すると言う
前代未聞の強敵を相手に
戦った経験がない
だが地球の艦長達は
ダークネス戦争の英雄達であり
彼等の経験力は
ダークネスとの戦争にとって
大きな力となっている
「ダークネスとの艦隊戦まずは
アロンダイトでソードオブ
・ディストラクシャンを撃てるだけ
撃って」
「それからサムライデーヴァが
復活するまで遊撃戦を担う
それが我がアロンダイトの役目だ」
口調は男みたいだが
エルノア艦長は女性だ
それでも歴戦の勇者としての
迫力と胆力そして鋭い
洞察力をいかんなく発揮している
「たいしたもんだぜ
うちの艦長さんは」
敵艦隊がソードオブ・ディストラクシャンを
警戒し動きが緩慢になったところを
強襲をかけソードシップ
オートクレールが敵艦隊500に
圧をかける
だが逆に敵艦隊は500を囮に
やく10万の艦隊で
オートクレールを主砲の斜線上に
誘い込んだ
集中砲火を500の敵艦隊ごと
受けるオートクレール
次々と大破していく魔獣戦艦達だが
騙されてはいけない奴等は
超速再生出来ることを
オートクレールは必死に
敵の砲火をかわすが限界はある
とうとうかわしきれずに何発か被弾した
が
そこに
アロンダイトが横やりを入れる
30問レールキヤノンで
オートクレールと敵艦隊の間に
割って入る形で
10万艦隊に射撃しながら
通り過ぎる
アロンダイトに
要約溜まった一発分の切り札
ここで使用する
エルノア艦長は叫んだ
「艦かい頭180」
「ソードオブ・ディストラクシャン
発射!!」
アロンダイトの
超圧縮人工太陽エンジンが
唸りを上げて
超高温過ぎてクエーサーと
化した破壊エネルギーが
解き放たれる
シャレーダーのディストラクシャン
それを剣の形に変えて
サムライデーヴァが
剣として扱えば
史上最強の技を伴う
ディストラクシャンが完成する
威力は一度に数万の敵艦を
殲滅できる威力がある
とはいえ敵も無防備ではない
回避行動をするものもいれば
重力障壁で防ぐ者もいる
敵艦を全て刈り取れなかったら
必殺技を出した後のソードシップは
敵艦隊からしてみれば良い獲物にすぎず
理屈から言えば10万もの敵艦隊を
一度気に殲滅するのは
絶対に不可能
「ソードオブ・ディストラクシャン
敵2万を撃破!」
されど敵艦隊はその攻撃を
バリアー展開する艦隊で
守りつつ攻撃範囲から
離脱していく
その数が不味い
このままでは8割の
艦隊が逃れてしまう
その後の地獄は想像に難くない
「味方艦オートクレール
ソードオブ・ディストラクシャン
発射しました!」
その瞬間をまるで狙っていた
かのようにオートクレールが
敵艦隊の逃げ道を塞ぐ形で
ソードオブ・ディストラクシャンを
発射した
その刃とアロンダイトの刃が
十字砲火となり
双方から挟み込む形で
敵艦隊を撃滅していく
「艦180旋回」
操舵師が艦長の指示通り
アロンダイトを旋回させ
ソードオブ・ディストラクシャンは
振り切る形で敵艦隊を破壊する
そしてオートクレールも
その動きに連動させるように
二艦はまるで鏡に映り出された
様に動きを合わせ
この奇跡的な連携を成し遂げた
後には敵艦隊の姿は何処にもなく
漆黒の宇宙空間にただ二本 ソードの残映が
残されるだけだった
「やり…ました…敵艦隊10万
消滅しました」
うおおおおおおお
アロンダイトの全艦に
その衝撃的事実が
各艦 そして全艦隊に伝わった
その喜びの中に
カツヤとミズキの砲撃主の二人も
疲労しながら席に体を預け
互いの手を握り勝利の栄光を
その手に掴んだ
この報告は
単艦で日輪星系を護る
エクスカリバーにも
届いていた
150隻の艦隊が
取り逃がした敵艦は全て
エクスカリバーが迎撃する
★付箋文★
敵は兎に角怖くて強いほうが面白い
それを目指して頑張ります