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10

地球から飛び出した人工生命が銀河サイズの

軍団を率いる魔王となり

宇宙全体の生命を根絶やしにしようとします

その魔王を討伐するために人類の切り札

亜空間戦艦マグニファイセントが活躍します



「心臓の修復は完全に出来ています

後は凱さんの魂を呼び戻すだけ」


「今の彼には理性がありません」


聖子の言葉で彼女の言わんとしている

事に大時は察する

「それじゃあ今のガイは

本能だけで動く獣って訳か」


ガイの中に凶暴な鬼が巣くって

いることは以前から感じていた


その凶暴な鬼の本能を

ガイは強靱な精神力で上手く

コントロールし

あの人間離れした戦闘力を

引き出していたことも


「奴の鬼の本能を情欲を

我が身で受けて発散させ…理性を呼び戻す

そう言う事か?」

無茶だ…凱の野生の本能が

暴走したらどうなるか


博士みたいな華奢な体で

下手をしたら殺されるぞ!」


大時は何が何でも止めようとするが

聖子は叫ぶ

「駄目です今止めては!凱さんは

絶対に失う訳に行かない

今止めたら暴走した本能に

彼の自我が食い尽くされる!」


凱の暴走した欲望を放出し

理性が復活すれば

凱はいつもの凱に戻る


大時は後でガイが何故

殴ってでも自分を止めて

くれなかったのかと

後悔する事になると

解りつつ

ここは渡瀬聖子に全て託す

しかないと判断した


大時はその場に座禅をとり

自分の感情を抑える事にした

「破壊僧のこの俺が

まさか般若心境をこんな形で

唱える日が来るとはな」


大時の念仏がその場に流れ続ける

欲望の権化と化した御剣凱の

獣欲は凄まじく

目の前にいる聖子の肉体を

貪り喰らう

凶暴で暴力的な凱の性行為は聖子の

体を痛めつけ嬲続ける

既に体中青あざだらけとなり


肋骨と腕の骨にヒビが入り

肩が脱臼し聖子は満身創痍だったが


何度も精を放ち


永遠に終わることのない

とも思われた

凱の凶暴な獣が徐々に

落ち着き始め


ガイの目に理性の光が灯り始める

そして一人の美しい女性が

自分に微笑みかけている


「お帰りなさい凱さん…」


激しい嵐が過ぎ去り

やがて穏やかな時間が

帰ってきた


凱は自分が抱いている

その人が誰なのかを認識して

驚愕した「聖子さん!」


それは満身創痍の渡瀬聖子だった

紛れもなく自分の腕の中で

聖子の美しい体は見るも無惨な

有様と化していた

「これは…俺がやったのか!?」


それは余りにも認め難い事実だった

そして自分と聖子を見守る

相棒の姿もやっと凱は気がつく

事が出来た

「大時…」


大時は無言のまま

凱に泉から出て来るように

顎で指示した


「あ…ああ!」

凱も大時の怒りを感じながら

聖子を抱き抱え人工の泉の

中から無言で出た


服を着てから 

二人は少し会話が出来る

状態になった


ガイは自分が聖子にした事を

心の底から後悔した

「済まない聖子さん…

俺は絶対に許されない

事をした」


だが聖子は首を振り

「いいえ…凱さんは悪くない

…これは私が望んで

そうしたことだから

凱さんは気にしなくて

良いのよ」


だがガイは聖子にそう言われれば

言われるほど

聖子の優しさや気高いものを

感じ…余計に自分を責めてしまう


その様子を見て聖子は少し考えて

「それじゃあ凱さんに

私の我が儘を一つきいて

欲しいわ」


聖子の言葉に凱は直ぐに反応した

「ああ!この俺に出来ることなら

どんな事だって言ってくれよ!」


聖子はクスリと笑い

「それでは…こんな私で良ろしければ

凱さんのお嫁さんにして下さい」


凱は驚きの余り顔が固まってしまう

「ーーーエ?」


大時も同じくアングりと

口を開ける

「おっ!」


思ってもいない言葉だった

どんな言葉で罵られても

仕方ない殺されても

文句は言えないと

ーーーそう思っていたのに


大時は一言

「女神と言うか菩薩様だぜ

この御女性はよぉ」


ガイは柄にもなく赤面して

口をパクパクさせつつも

持ち前の勇気と強靱な精神力を

駆使して男気を見せようとするが


目前の渡瀬聖子を直視すると

胸がドキドキし息が詰まり

上手く話せない

(どうしよう…もの凄く可愛い

いや…年上の女性に可愛いとか

…失礼やろ俺!)


聖子は微笑みながら

ガイの様子を見守っている

様に見えたが

その心中はパニックだった

(あわわ…どしようイキなり

こんな事言うつもりは無かったのに

ついつい心で思ったことを

言ってしまった…こんな図々しい

お願いしたりして凱さんに嫌われたら

どうしよう!)


そう想うだけで涙腺が緩む

聖子は知らず内に

真っ赤に顔を染め涙ぐむ


ガイに半死半生になるまで

乱暴されても悲鳴一つ

上げなかった強い女が

ガイに嫌われるという

可能性一つで動揺し

涙まで見せる


大時は聖子という女性の

巣の部分を見て思わず

「彼女を泣かせてるんじゃないぞ

凱!テメエそれでも侍かっ!」

そう叱咤した


それで凱も活が入りやっと

まともに言葉を話せる様になる

「お…俺のよ…嫁さんになってくれたら

大切にするよ聖子さん」


そう返事するのがやっとだった

だが…本心から出た言葉であり

侍に二言はないのだ


「よぉーーーし!よく言った

この馬鹿侍!!」

そう言ってガハハと笑う

広野大時


和やかなムードである

これが他の女ならこうはいかない


やはり常識を逸脱した

逸脱者同士だからこその

展開だろう


「それにしても

ゾスター教団か…本当にヤバい

連中だった」

大時は思い出しても

ギリギリの戦いだったと

胸をなで下ろす


「だけどこの泉の広場に

一体何の用で来たんですか

聖子さん」

大時の質問に体を凱に支えられた

聖子が応える


「どうやら宇宙の果てに

本当に人類を害する

超生命体の群が存在するようです」


聖子は泉を指さし

「そこで私はその超生命体に

対抗できる兵器を召還出来る

仕掛けをこの泉に施しました」


凱と大時は?マークが同時に

頭に浮かぶ

「召還?」


聖子は事もなさげに

「亜空間転送で凱さんの

遺伝子を鍵にしていざというときに

それを呼び出せるようにしたんです」


凱は遺伝子と聞いて

「遺伝子と言うと?」


聖子は真面目な顔で

「覚えていて下さい

凱さんの血を泉に注げばその

兵器を呼び出せるように

しておきました…もっとも」


「まだその兵器は此から

造る予定ですが」


聖子の言葉に

「そいつはどんな兵器なんです?」


凱の問いかけに聖子は

「あらゆる事態に対処出来る

万能の何かとしか今は言えない

わ…」


聖子はこの時、人工生命体の

研究は伏せた

宇宙から迫る脅威に対抗できる

唯一無二の圧倒的な超人


だがこの時まだ

自からの手でその悪魔を

産み出そうとは

想像もしなかったのである


宇宙望遠鏡の捉えた光

それは過去からのメッセージ

であり警告なのだが…

遠く離れれば離れるほど

その警告は更に過去からの

電文となる


ゾスターが銀河からどんどん

遠くの宇宙に離れて行くのに

メッセージだけは

更に過去から送られてくる

その宇宙規模の矛盾に

聖子でさえ勘違いしていた


その悪魔の巨大星雲は

銀河系に近づくどころか

離れていっている


だが数億光年の残映の光は

銀河に近いほど明るくなり

遠くなるほど薄くなる

何が目的で遠く離れて行くのか

その理由も解らないのなら

そうした誤解も仕方ない

事だった


まさか未来の自分の後を追って

魔王の星雲が遠ざかっているとは

夢にも思わない


この時点で観測できる

ゾスター軍は

既に星雲規模の大きさにまで

増大している


遠ざかるほど大きくなるのを

近づいているように誤認するのも

一流の天文学者でさえ見間違えた


この時点で遠ざかっていると

気が付いたら

聖子も可能性の未来の一つを

感づいたかも知れないのに


凱と大時にこの時点で

人工生命体研究の事を語った

所で、まだ企画段階の

研究であってこれから

どうなるかは全く保証も

ないのである


頭の中では出来上がっている

研究だが、聖子が

あらゆる事態に気が付くには


人工生命体が暴走し

ダークネスが人類の脅威と

認識したその後なのである


もしもその結果を予見できる

者が居るとしたら

それは人知を超えた予言者か

超能力者かはたまた神の使い

だけだろう


「数年後になるかも知れませんが

何か世界に異変が起こり

人類が窮地に立たされたときに


この泉の広場に来て下さい

その時、凱さんの望む力を

宿す何かが召還される様に

しておきました」


凱は聖子の言葉を胸に刻んだ

「まだ生まれてない力…か」


聖子は微笑む

「未来の希望を貴方に託します」


そして三人は任務を終え

地下街を通り帰路に向かう


「後は亘理本部長の待つ

大阪府警本部に帰り

任務の成功を報告する

だけだ」


其れが済んだら

聖子とは暫しの別れとなる


いや…立場の違いを考えれば

もうこれで永遠の別れと

なるかも知れない


凱は地下街を歩くと

最新型バイクを展示する

ショールムがあって凱はそこで

1台のバイクを見た

「もしアレが動いたら

聖子さんを乗せて

夜の海を見せてあげるのに」


そうたった今思いついた

夢を呟くと…

それを横で聞いていた

聖子は


「アレが動いたら私を海に

連れて行ってくれるのですね?」

聖子が凱に期待を込めた目で

そう言った


「ああ…動いたらですがね」

凱は何気なく言った一言で

聖子が本気に取るのが

可愛いと思ったが

直ぐに聖子が何かの装置を

操作するのが解った


少女の夢で終わる話でも

この女性は簡単に叶えてしまう


彼女には一見何もない空間に

コンピューターを操作する

ディスプレイが見えていて

その気になれば何処ででも

必要な作業が出来るのだ


それは科学の女神の起こす

奇跡に思えた

「このバイクの所有権を凱さんに

移しましたそれと大時さんの

分も一台用意しました」


「凄いな…あの一瞬でそんな事が」

今更だが本当に凄い


「だが燃料は入っているのか?」

大時が普通に聖子に質問した


「幸い電気で動くみたいなので

充電しておきました」

其れを聞いて慌てて大時が

燃料メーターを確かめると

本当にフル充電になっている

「驚いた…電気まで出せるんだな」


聖子と一緒ならどんな僻地でも

立ち往生に成らずに行動出来るだろう


盗難防止の電子ロックと

セキュリティを解除する


すると電子エンジンに光が灯り

赤い車体に力が漲った

「聖子さん後ろに乗って下さい

海までドライブです!」


婦人警官の服を着た女性と

警察官の服を着た警官が

スーパーバイクを二人乗りで

夜の公道を走ると言うのは

何とも幻想的な光景である


「凱の奴…ノーヘルで二ケツかよ…本当

白バイ警官が無茶苦茶しやがる明日の

始末書は辞書サイズだぜ」

大時は大笑いだ


「そう言うお前もノーヘルだろうが」


聖子を後部座席に乗せた凱は

「確かに無茶苦茶だが

何だかこの無茶が気持ち

良いんだ」


聖子もそれに同調し

「小さな事は気にしないで

今は全て夢の中の出来事だと

思って楽しみましょう」


夢の中の出来事か…

命の脅威に晒されて

危険極まりない狂信者の集団に

襲われて、メルヘンチックに

扱われては、たまったものでは

ありはしないが


聖子との最期の思い出が

夢半ばで費える事を思えば

多少の非合法は許される気がした


自分の腰に聖子の腕が回り

しっかりとしがみつかれ

聖子の二つの柔らかくて弾力のある

胸の膨らみが背中に押し当てられる

バイクを運転する凱はもう

夢心地だった


だがそんな良い思いは長くは続かない

直ぐにその異常な非常識は現状の

常識ある組織に察知され

複数の警察車両に追跡される

事態に発展するのに

大した時間は掛からなかった


二人乗りの怪しいバイクと

それに追従する1台のバイクは

多くの警察車両に追跡される


当然現役の白バイ警官である

凱を足止めさせる事など

どの警察車両でも不可能である

多くの警察車両を

引き連れながら凱の操縦する

スーパーバイクは目的地である

大阪港にと無事に到着したのだった


「少々騒がしいが約束通り

夜の海に連れて来たぜ」

聖子は凱の腰に回していた手を

解いてバイクから降りた


真夜中の海は穏やかで

さざ波が立っている

鼻を突く潮の香りが

ここが海なのだと

僅かに主張していた


「夜の海でデート出来るなんて

私の人生の内で最高の夜に

なりました…有り難う御座います

凱さん」


そう言って微笑む聖子は

とても儚げに見えた


殆どこの世では不可能なことなど

何もない様に見える彼女だが

超越者ならではの悲壮感が

彼女にもある


凱は自分と似た人生を送る

この女性を幸せにしてやりたいと

強く想った

「俺は何があっても貴女を守る

…最期の最期まで絶対に…

そして…」

「貴女を幸せにしてみせる!」


それは凱にとって最も心の奥底に

刻み込まれた自らの堅く重い

誓いの言葉だった


自分を助けるためにその身を

否!持てる全てを掛けてくれた

大恩人であり

そればかりか自分を信じて

最強の力まで託すとまで

言ってくれた渡瀬聖子を


御剣凱はその存在の全てを

掛けて愛し守る

その想いの強さは計り知れない


そうやって3人が

静かな海を眺めていると

突然 ヘリの立てる爆音が

轟き渡り


ヘリからのライトで

3人は明るく照らし出された


「発見しました!緊急手配

されている御剣凱と」


「広野大時!」

警察ヘリから拡声器で

投降を呼びかけてくる声が聞こえる


「どうやらお迎えが来ちまった

様だな」


「大分派手にやったからな

当然だろう」


3人は此処に来るまでに

述べ300人以上もの

警察官を撒いてきたのだ

何故そうなったかというと


実は警察内部にも

ゾスター教の信者が

紛れ込んでいて


捕らえられると厄介な

状況だったことが

その理由だった


最早誰が敵の死客か解らない

状況である


元々ワールドの日本侵攻は

かなり進んでいた

その中からゾスター教に

改宗されるので

自然その思想を調査する

国家保安局も手を焼く状況なのだ


聖子はその状況を凱と大時に

直接伝えて大阪港埠頭の

間違いのないその場所を敢えて

選んだのだった


「あの声は本部長だな…

まさか直接俺達をヘリに

乗ってまでして逮捕しに来るとは」

凱は亘理本部長の怖さは

良く知っている


「成る程な…あの人じゃなきゃ

俺達が観念するわけがないと

思われているのか」


大時も苦笑いである

だが聖子は

「ここは大人しくあの方に捕まったふりを

して下さい…私を信じて」


亘理豪龍本部長と聖子は既に

折り込みが付いているのだと

此処で凱と大時は悟った

「俺達の命を守るためか…」


凱と大時は互いに目配せしあい

武器を捨て本部長自らの手で

ヘリで連行される運びとなる


そして裁判で凱と大時は

終身刑を受けて

曾根崎刑務所の特別監獄に

収監されたのだ


多重階層となっている

その監獄は地下1階から4階

まであり

凱と大時は地下4階に投獄された


その4階の監獄には

大きな銀行にあるような

巨大な金庫室の扉があり


厳重に監視され護られていた

「確かにここならゾスター教団でも

簡単には手出しできないだろうな」


そこでの暮らしは

ホテルで暮らすのと代わらず

体を鍛える為のジムまで

完備されていた


全て渡瀬聖子が莫大な資金を投じ

凱と大時のために予め用意されていた

言わば隔離シェルターなのである


「来る後に貴様等の力が

必要となるその日まで

暫くの間ここで力を

蓄えていてくれ」

それが亘理豪龍からの

命令だった


いったいそんな日が本当に

来るのかどうか…

そう思っている内に

3年が過ぎて


ーーその日がやってきたーー


此がガイ・ミツルギの記憶か…


インターセプターの超処理速度と

圧縮された記憶データの

脳内転送によりキャプテン

ボイストームは一瞬にして


ガイ・ミツルギの異常なまでの

Dr.ワタセに対しての愛情の

その切っ掛けを知ることが出来た


此は…ガイが命懸けで

彼女を護ろうとする

気持ちも理解出来る


「それにしても…何という

素晴らしい女性だ…

知れば知るほど

魅力的でキュートで

そして誇り高く高潔な魂を

持っている」


やはり…ゾスターを討伐する

為とは言え…犠牲にしていい

レディーではない


ストームも今は冷静になれている

どうやら凱の人となりに触れて

Dr.ワタセにたいする想いを

理解した効果の様だ


「色々な意味で二人は似ている

余りにも他人と違いすぎる

異能の御陰で常に孤独だった

からこそ引きつけ会ったんだろう」


それを理解した上で

今の任務に向かい合わなければ

成らない、決して失敗は

許されないのだ


ネオスと言う強大すぎる

勢力と科学力をゆうし

エネルギー生命体として

進化した者と交渉し

説得しなければならない


そしてその相手が犯罪者

なのだから更に厄介なのだ


犯罪者と言っても

殺人犯でもなければ

テロリストでもない


彼はネオスの超科学を持ち出し

自らが溺愛するコリアードに

流出させた件で裁かれている


科学技術の流出はいつの時代でも

起こりえる事件だ


国家的な重罪犯には違いないが

このネオスが特別暴力的でも

なければ異常でもないことは

明らかなのだが


事情を話したところで

協力的になるとは到底思えない


だがその思想に理解を見せながら

協力を仰ぐのも交渉には必要な

技術なのである


Dr.ワタセに対しての個人的感情は

この交渉において傷害となるのは

目に見えていた


だから敢えてその感情の根本原因である

Mr.ガイの記憶にライドしたのだ

その効果は確かにあった

私がDr.ワタセの事で感情的に

成ることは最早無い筈だ


私がネオスの環境で耐えられる

限界時間は僅かしかない


そして運命の扉が開いた


さて此処でいよいよ

問題の銀河国家コリアードの

方に視点を移す事にしよう


銀河体系の覇者であり

支配者であるコリアードは

自らの名を銀河星雲に付けた

程の自惚れの強い種族である


銀河じゅうから見捨てられ

追放された者達と言う過去を持ち

長年に渡り虐げられてきた彼等だったが


ある日突然、余所の銀河体系から

やって来た超エネルギー文明ネオスとの

接触によりその運命は激変した


狡賢いコリアード人はネオスの

保護欲に付け込み媚びへつらいながらも

確実に自分達に有利なように交渉を続け


自分達を養護するネオス人を唆し

遂にネオスと同等の超能力を

その手にした


彼等は紛いなりにも

ネオスと同等のエネルギー生命体に

進化する技術を獲得したのだ


一度流出した技術は取り返しがつかない

またそれがネオス人の中から出た

不祥事であるため、コリアードの

罪を問うのも又はばかれた


技術の独占だと言われれば

確かにそうなのだから


だが銀河を支配するだけの力を

手に入れたのが自惚れの強い

コリアード人なのは

その銀河に生きる知的生命体に

とっては悲劇である


それまでの恨み辛身をコリアードは

絶対に忘れては居なかった


だが…一方的な報復はネオスが

強力に監視しており

それだけは絶対に許されなかった


コリアード星雲にはネオスの外交官が

在中し大使館も置かれている


当然ネオス星雲にもコリアード大使館が

常駐している


互いに監視しあう状況だが

有効の明かしとも言える


だがこの関係も此処数世紀の間に

すっかり様変わりしていた


コリアードは自分達の力に溺れ

増長し…ネオスに憎悪を向ける様に

なっているのである


コリアード星雲の行政に口出しをする

ネオスが疎ましく邪魔になって

来たのは明らかだ


だがそれでも、ネオスと戦争を

したい訳ではないコリアード政権も

本心ではネオスの軍事力に

到底適わない事は理解している


だがコリアードの中には本気で

自分達の方がネオスより優れていて

戦争をしても勝てると思っている

者達も大勢存在している


コリアード政権は内向きの政治体系である

そのために国民の意見に大きく左様

されてしまい国家運営が大変難しいのだ

「実際我々が強烈に文句を言い続ければ

ネオスも最期は折れて妥協するのが常だった」


コリアードの主惑星は銀河中心近く

巨大白色矮性の恒星α13である

エネルギー生命に進化した彼等は

肉体能力も殆どネオスと変わりない

超生命体なのだ


その会議は定例となり半ば

形骸化しているのだが


自分達の存在価値を内外に示すため

どうしてもその会議が必要なのだ

「ネオスが所有権を頑なに主張する

緊急宇宙船制動空間を運用するのは

ネオスの同盟国であり

あの制動空間に近い我々こそが

相応しいのだ」


「そもそもあの領域は我々のものである

その古代文献も既に発見されてる」


ネオスの大使はこの時間が嫌いだ

コリアードの言っていることは

兎に角、全てが出鱈目だ


持ち出してくる資料などは全て

その領域に居住する星の住民を買収し

証言を捏造した紛い物の証拠ばかりだ


ネオス星雲とコリアード星雲の

間に存在する制動区間の所有権を

巡っては

本当に神経を逆撫でされる

懸案事項なのである

「元々あれは我々ネオスが

事故で暴走した船が止まらず

間違って虚無空間に突入など

させないように設置した

緊急装置なのだ…端から

所有権問題など存在しない!」


それなのにコリアードは勝手に

所有権を主張し始め

何隻もの宇宙船を拿捕し


その捕らえた船を勝手に分析して

技術を盗んだ上に、

クルーの身柄は拘束した


そして勝手にコリアードの領域に進入し

領空侵犯したという自国の裁判で裁き

多額の身代金を要求すると言った

案配である


とうぜんこの領域は銀河系統の

一般航路でありそんな協定は

結ばれておらず

正しく海賊行為以外の何者でも

無かった


そしてどうやらこの罠に

Dr.ワタセが捕らえられた可能性が

非常に高い


「コリアードはめぼしい

獲物には周到な罠を仕掛け

絶対逃さないようにする」


「例えば難破船の救難信号など

を使ったりする

それが彼等の常套手段だ」


これをネオスゼクターから

聞いたときには、ストームの

中にある凱の部分がそれこそ

激怒した


優しい彼女の事だ

難破船の救難信号を

無視できる筈もない


十中八句その罠に掛かっているだろう

そして船ごと拿捕されてその後は…

考えるのもオゾマシい事態が

脳裏に浮かぶ


だがガイの精神を安定させる

術をストームは既に掴んでいた

(この私を信じて任せろMr.ガイ)


ガイの心がストームの言葉に

耳を傾ける

(大丈夫だ…コリアードの手から

必ず博士を解放してみせる

私も彼女を救いたい気持ちは

君と一緒だ)


その心の声に御剣凱の荒ぶる魂は

落ち着きを取り戻した


(これで要約、交渉に集中出来る)


集中力と忍耐力

この二つは交渉において

絶対に欠かすことの出来ない

必須物だ、それが阻害されない

だけでも有り難い事だ


冷静に話が出来る


そしてボイストームは

件の人物…もとい

ネオス星人に面会した


「紹介しよう…彼が元ネオス評議会12柱

にして私の師でもあるネオスマリータだ」

ネオスリーダーに紹介されたのは

女性型の巨人であった


そうか…ネオス星人の

女性と会うのはこれが初めてだ


ボイストームは心なかでそう

呟いた…


そのネオス星人は妙齢の婦人と

言った感じで特段凶悪な感じは

しない


ネオスの監獄は無機質で白銀の

壁で覆われており

人間の精神では長時間

耐えられない気がする


だが…敢えてこんな殺風景な

部屋を造るはずもないので

これがネオスにとって

当たり前の世界なのだろう


全く飾り気もないのだが

ボイストームの印象としては

精神病院にでも居る気分になる

そんな部屋だった

(初めましてミス・マリータ)


ストームはまずそう精神波で

呼びかけてみた


マリータは静かに目を開けて

ボイストームを見ると

関心の薄い返事を返す

(何ですかこの

下等な生きものは?)


マリータはそう

メタトロンに精神波で

喋りかけた

メタトロンはマリータに説明する


「彼の名はボイストーム

遙々地球という惑星から

訪れた星の代表者だ」


ボイストームが一惑星の

代表だと聞いてマリータは

鼻で笑う

「フン!たかが一惑星の代表が

この私に目通りだと…?

私はネオス12柱の一人よ

星雲の代表なら話も分かるが

その程度の小物では」


ボイストームは口を挟もうとする

メタトロンを目線で制止

この慇懃無礼な態度の女性官僚に

一言告げる


「ですが…今私の話を聞かないと

ゾスター軍に貴女の愛する息子達が

根刮ぎ刈り取られる事に

成りますが宜しいのでしょうか?」


その脅しにどれほどの効果があるか

解らないが…少なくとも

彼女の気を引けた様だ


「何の話を…ゾスター軍だと?

その話…誠か?」


どうやら何も聞かされて無いらしい

交渉の材料として情報は

大きな意味を持つからだろう

ナイス!!メタトロン


「どうやら知らなかった様ですね

今まさに…あのゾスター軍が

コリアード銀河に迫っている

事実を」


此を聞いたマリータは明らかに

動揺した

何だかんだ言っても

ネオス星人は根はマトモだから

話せば分かり合えると

信じていたよ


ボイストームもどうやら一安心

…そんな訳があるか!


「それでゾスター軍はどのくらい

コリアード銀河に接近しておるのだ?」


どうやらこの婦人は

こちらの情報を引き出すのが

目的のようだ

ならば…


「ゾスター軍の規模は

今や銀河サイズにまで膨張しており

ネオス襲来時の軍事規模の

100万倍に到達しています」


「恐らくコリアード銀河の

脆弱な戦力では一瞬で壊滅でしょうね」


この言葉は挑発と言うよりも

脅迫である

自分の息子達を弱いと言われ

尚かつ殺されると言われた

母親なら冷静ではいられまい


「何を愚かな」

どうやら少しは耳を傾けて

くれそうな雰囲気になった


「我が愛するコリアードの

戦力を侮るでないわ!」


やはり親バカだ

だがこれで…どの程度

まともな会話が

出来るのか怪しくなった


「貴女こそゾスター軍の

戦力を過小評価していませんか?

ネオスが勝てなかった強敵が

更に100万倍に戦力を

増大させていると聞いて

何故勝てると思うのか」


ボイストームとしては婦人が

危機感を抱かないのは

何か考えがあるのだと

踏んだのだが


だが事実は得てして違う物だ

マリータ婦人は言った

「ですが…ですが…コリアードを

助けるのでしょう、それが

ネオスの使命ですもの~」


そして気狂いに笑うマリータ

何だ!?何が可笑しいのだ

私はネオスリーダーメタトロンに

テレパシーで訪ねる

(何故笑う?今のところ

何か面白い所があったのか?)


私の問いにメタトロンは

首を振る

どうやら彼も解らなかったらしい


「フフフ…解らないの?やはり

下等生物ですね」

ボイストームはネオスマリータの

狂気の発想を聞くこととなる


「コリアード銀河には多くの

ネオスと現住生物が住んでいる…

その中にはお前と同じ

進化前の下等生物の群も沢山居るのよ

それらを見捨てられるネオスではないわ」


そう…人質が居ると言いたいのだ

このクソ依怙贔屓人権擁護婆は


ボイストームの中で彼女の株は

婆となり格段に格下げである


ネオスの12柱と言っても

所詮この程度か…

進化した超人類が聞いて呆れるな


流石に此はないだろうと

ネオスメタトロンを見るが

肩を上げてヤレヤレの表情で

応えている

止めてくれよ~止してくれ


ボイストームの中の白猿

ボイストンが吠える

「何だコイツは本当にあの

ネオスなのか?コイツの

頭の中にはクソでも詰まっ

ているのか疑わしいぞ!!」


ネオスがコリアードを決して

見捨てられない事を確信し

ネオスマリータはほくそ笑んだ


ボイストームは苦い顔をしながら

何かを考えていたが…

「ゾスター軍をネオスが後方から

追撃し…コリアードが前から

攻撃すれば挟撃できる…」


「そう言う考えか…」


ボイストームはこの戦術を

予め頼りになる知恵袋

インターセプターに

教えられていた


「ホホホ…下等生物でも

多少は知恵があるみたい」


かなりの自身家なのかそれとも

演技なのか解らないが…

ネオスにしては心が汚れている

印象がある

まさかとは思うが…

コリアードに洗脳されている?


「それだけの自信が有る根拠は

星雲破壊砲のノウハウがコリアードに

あるからか?」

ボイストームの発言に

ネオスマリータは表情を変えた


そしてそれはネオスメタトロンも

同じくだ

「星雲破壊砲までコリアードに

やったのか!?」


これは途轍もない国家的犯罪である

星雲破壊砲をよりにもよって

あのコリアードに譲渡した

それが事実なら最悪である


「馬鹿な!よりにもよって

星雲破壊砲を!?貴様正気か??」

ネオスメタトロンも

この行為の愚かさには流石に

我慢の限界だとても感化

できないだろう

珍しく怒りを露わにして

声を荒げている


「稚児に大量殺人兵器を

渡すような真似をして

只で済むと思うのか!?

この愚か者め!!」


ネオスリーダーの余りの剣幕に

恐れを抱いた婆は腰を抜かして

後ずさった


そのままの勢いで

ネオスマリータを

殺しかねないメタトロンに

ボイストームは

落ち着くようにと言う意味の

仕草をする


それに気が付きネオスの

偉大なるリーダーは

矛を収めた

そうだ…今はこの愚か者を

説得しなければ成らないのだ


ボイストームは賭に出た

「ミスマリータ…残念ながら

貴女の提案は却下です」


メタトロンの怒りに圧倒され

意気消沈の彼女にボイストームが

そう言い放つと


それまでの様子が一転して

凶暴に荒下駄感情も露わに

マリータは小さなボイストームに

飛びかからんばかりに

怒鳴り散らす

「この虫螻が!どの口でそんなことを

言っているのだ!?この場に居るだけでも

貴様など場違いだというのに

私の言うことに意見を入れるとは

この無礼者めが!!」


そこにネオスメタトロンは

割って入った

「いい加減にしろ!」


マリータはその言葉が

ネオスである自分に対して

ボイストームの態度が

不敬だとする咎め言葉だと思い

我が意を得たりとばかりに

嬉しそうな顔になる

だが そうではない

ズレている…その感覚は


メタトロンは経たり込んでいたマリータを

冷たい目で見下ろし言った

「今のはお前に対していったのだ

ネオスマリータ 勘違いするな!」


そう吐き捨てるメタトロンに

マリータは憎しみの籠もった目で

憎々しげに睨みつける


ボイストームの中の白い大ザルが

語気を荒げる

(何故かこの俺までこの婆に対し

憤りを感じるぞ大統領)


魂を結合する凱とは違い


ストームとボイストンは

肉体は共有していても

精神的には完全に別人格である


だからストームは精神の均衡に

影響を与える心配はない


だがそれでもストームは

ボイストンの意見を無視は出来ない

彼が嫌いなタイプはストームも

同様に嫌悪感を抱く事が多いのだ


(同感だ)

ストームとボイストンは友人であり

盟友なのだから理外が似ているのは

当然なのである

(君が嫌う人間を私が好ましく

思うわけが無いだろう)


ボイストンはそれを聞くと

少し落ち着いた

(そうだったな…口出しする気は

無い…頑張ってくれ)

ボイストンも空気を読んでくれた


だがこの交渉相手は確実に

難しい取引相手である

何故なら空気を読む事も

出来ないからだ


まだ怒りが治まりきらない

ネオスメタトロンと

侮辱的な扱いをされて

怒りと憎しみで一杯の

マリータが睨みあっている

「お前は勘違いしているぞ

マリータ」


メタトロンはそう呟いた

「ここにいる彼は

私の友であり…同等の

立場としてお連れしたのだ」


ネオスの最高権力者である12柱の長

メタトロンが自分と同等だという

その言葉は同じ12柱のマリータを

驚愕させた


「冗談だろう貴殿は下等生物と

自分を同等に扱うのか?」


メタトロンは大きく頷いた

「そうだ…そしてある一点では

彼等の力は我々ネオスをさえ

凌駕している」


マリータは俄には信じられない

事を聞かされて目を白黒させる


「こんな…第二段階の進化も

果たしていない原始人が

我等と同等所か…

凌駕しているだと?

正気で言っているのか貴殿は!?」

マリータはあくまで

信じようとはしない


ボイストームはその会話を隣で

聞いていたが

ここがチャンスだと思い

発言を始めた

「Mr.メタトロンが言っているのは

恐らく人工太陽の圧縮技術の

件だと思うが」


ボイストームもこの件は其れほど

詳しい訳ではない

どうやら利用できると思っての

発言だった


マリータは此を聞き

少しだが同様が見えた

「圧縮…太陽…まさか」


それはマリータには

聞き捨て成らない

話だった


「恒星を圧縮する技術は

ネオスでさえ未だ研究途上だ

科学者である君には

気になる所であろう」

ネオスメタトロンがそう言うと

マリータは舌打ちする

チッ!


「恒星を圧縮だと?ハッタリだ

こんな下等生物にそんな

芸当が出来る訳がない!」


ネオスの科学者だったのか…

12柱なのだから科学省トップ

なのだろう


それでメタトロンがあれほどの

怒りを見せたのか…納得だな


「君が彼をどんなに下に見ようが

事実は覆らない彼等の種族は

超圧縮太陽を完成させたのだ」


「どうやら君は見下す相手を

間違えた様だな」

マリータはそれでも決して

認めないのだろう

もう理屈などどうでも良いのだ


マリータにとって此は屈辱であり

あってはならない事だった

だから敢えて逆恨みをすることで

自分という存在を護ろうとする


地球人はマリータの恨みを買った

それは間違いない


かなり危険な相手に憎まれた

まあゾスター程ではないが


だがその上でなければ

彼女との交渉は出来なかった


「Mr.メタトロン…コリアードが

星雲砲を持っているのは間違いない

のだろうか?」


メタトロンは素っ気なく応えた

「そこの売国度が言っていることが

事実なら…その通りだ」


売国度とよばれ

誇りを傷つけられたマリータは

だが己の誇りに掛けての嘘は

付かなかった、否 付けない!

それは腐ってもネオスの科学者として

自分の成果を貶める行為だから


「当然だとも…コリアードの

星雲破壊砲はちゃんと機能する

完璧にだ!」


そう淀みなく言い切る

マリータの態度に

嫌気がさすが

やったことはネオスに対する

裏切り行為だ

それをさも得意げに…

救いようのない愚かさだ


だが…愚か者でも何でも

その科学知識と

その技術は本物の

宇宙の統治者を自負する

ネオスの力である


「コリアードにも自分の

身を守る術が必要なのよ」

マリータはそう自分の行いの

正当性を主張するが


それと自国の最重要機密を

他国に譲り渡すのは

話が別だ


「自分を正当化するのは

勝手だが…君自身の立場は

最悪と言っていいくらい

悪い状況だぞ!」


そう言われてもマリータは

自分が犠牲になっても

コリアードの為なら

喜んで罪を受けると

誇らしげにしている

「コリアードの母である私が

息子達を護るのは当然のこと

どんな目に合わされても

愛するコリアードの為ならば

私はどのような罪も負いましょう」


やはり勘違いしている

そして悦に浸っているのが

この婆の救いようのない

所だ…

まるで駄目な甲斐性無しの

息子を庇う毒親のように

双方救いようもない


「国防だと?笑わせるな

コリアードがそんな事だけに

星雲破壊砲を使うとでも

思っているのか?」


必ずネオスにたいし威嚇のために

使ってくる…それは充分想像できた


「そうです…そもそもコリアードに

我々ネオスと対等の権利を

与えるべきなのです」

「何を馬鹿な!あんな国に

そんな価値を認めると

本気で思っているのか!?」


ネオスのリーダーが此である

大部分のネオスはコリアードを

良く思っていないのは確かだ


「まあまともな者ならこんな

狂った思考の者達の相手など

したくは無いだろう


だが…恐らくだが…

コリアードはネオスに

嫉妬している

そして執着してもいる


味方にしているだけで

大きなリスクだ

大火傷をするまえに

排除するべきだろう…」

ボイストームの言った

その言葉を聞き逃す

コリアード贔屓のマリータでは

なかった


「排除だと…?」


マリータはボイストームを

睨みつける

「力なき弱者が…何を戯言を」


だが其れを否定する声

「いや…彼の力ならそれも

可能だろう」


マリータは耳を疑う

何故なら其れを言ったのは

他ならぬネオスメタトロン

その人なのだから

「何を言って…?」


そしてメタトロンは意味ありげに

マリータに不敵な笑みを見せた


マリータは戸惑いながら

もう一度ボイストームを見る

「この者に…何が」


銀河星雲規模の集合体を

破壊するのは容易な事ではない

其れが出来るのは

ネオス級の科学力と

技術力があってこそ可能

になるのだ


銀河の核をなす超巨大ブラックホール

これを打ち抜き破壊する事で

その銀河を崩壊させる結果となる


ブラックホールを崩壊させるには

喰いきれない程の餌を与える

事で飽和状態にしさえすれば

自然消滅すると言う実に

単純な力業で達成出来る


只ーーブラックホールまでの

傷害となる密集した恒星を

一掃出来ればの話ではある

突破すれば後は

本命のブラックホールに

消滅するまで膨大な

エネルギーを浴びせ続ける

それだけだ


其れを達成するには

それこそ銀河全体の恒星が

何年間も発するエネルギーが

必要なのだが


星雲破壊砲は何年間分の

全星雲に存在する

恒星のエネルギーを

銀河中心巨大ブラックホールに

よってチャージし一方向に

集約して放つビーム兵器である


此をマリータから提供された

コリアードの喜びは一塩である


ネオス銀河から更に深き宇宙に

至ること2億光年


ビックバン宇宙誕生から

外に広がり続ける宇宙の

爆心地こそは宇宙の中心であり

未だに判明しないその場所に

一体何があるのだろうか?


超重力の塊の超巨大ブラックホールか

それとも超重力惑星か?

はたまた次元の重なる次元断層

なのか


そこに何があるかはまだ誰も

立証できていない


ただそれを目指すのは

過去の宇宙に向かう

事に違いない


我々の銀河から宇宙の中心に向かう

方向に進み9億光年先には

ネオス銀河があり

そして更に2億光年先には


ネオスから技術を提供させた事は

コリアードにとっては

国家的な大勝利だと言える


此で口喧しいネオスも

コリアードに強くは

出れなくなった筈…


コリアードの大統領首領

コカトリスはそう言って

不敵に笑った


コリアードは鳥の姿をした

鳥類型人類である


其れが今は精神エネルギー体として

人工進化を果たし

ネオスと同じ進化レベルβと

成れたのだ


ネオスと同じ進化レベルβの

種族はコリアード以外に無く

実質上コリアードこそは

宇宙で2番目に強力な

勢力を保有するのだ


銀河星団規模で見ても

ネオスとコリアードは

間違いなくこの

周辺宇宙で2強なのである


だが…一流のネオスに比べて

コリアードはネオスのデッドコピーの

粗悪品だと揶揄する者は多い


だが其れは自分達に対する

嫉妬だとコリアードは

全宇宙に風潮し

全ての銀河から蔑視されている


力を手に入れても其れだけでは

他者に尊敬される訳ではなかった


だがそんな正しい評価など

コリアードは求めていない

彼等は只

ネオスと同等の評価と賞賛を

周辺銀河から受けたい

解らせたいだけだった


したがって自分達を侮蔑したり

軽視する銀河には容赦ない圧力と

共に嫌がらせをしてきた

逆に彼等を賞賛しおべっかを

使う銀河には手出しはしなかった


何も与えはしないが

少なくとも無理難題を

押しつけたりはしない


其れで仕方なく多くの銀河が

泣き寝入りし

コリアードに拍手を贈る


其れが現状だ


だがネオスに加盟する銀河国家には

コリアードは手出しが出来ない


それが此までの力関係だった

「もう…ネオスの顔色を

伺う必要はなくなった」

それが力だけを得たコリアードの

主席が発する言葉だった


「これで周辺庶銀河に対し

我々は有利に交渉を

進められる」


「断ろうとすれば…銀河破壊砲を

チラツかせてな…クククーックク

笑いが止まらんわー」

そうやって悦に耽るこの男に

力を持つものの責任や重責など

皆無であった

「ブンメン首相閣下」


コリアードの最高指導者であり

大統領というこのバード型人類は

歪んだ性格の持ち主である


ネオスに対して執念にも似た

激しい嫉妬を持ちコリアードを

ネオスに代わりこの周辺銀河の

実験を握ろうと画策していた


「我々コリアードを長きに渡り

植民地にしてくれた仕返しと

ネオスの信頼を失墜させること

そのためなら我々は手段を選ばない」

「ネオスを攻撃する事に関して

一切の罪に問われない

この法案は私が通した

最高の成果である」


これが悪名高い

反ネオス無罪法である


ネオスが文句を言っても

内政干渉だとして

突っぱねるので

ネオスとしても手を拱いているのが

現状だ


正直言ってネオス人の殆どが

こうしたコリアードの態度に

辟易としており

国交断絶を唱える者も

少なくない


「その内…反コリアード党とかが

出来そうで私も頭が痛いよ」

そう漏らすのがメタトロンで

その反コリアードの急先鋒を

努めるのが彼の弟のゼクター

なのだからネオスリーダーも

大変だ


ストームにしてみれば

コリアードをこのまま野放しに

するというゼクターには

賛同できないのだが気持ちは分かる

関わり合いに成りたくない

只その一点に尽きるのだろう


だがコリアードにしてみれば

ネオスから干渉されなければ

周辺銀河にももっと

幅を利かせた外交活動が出来ると

言うものだ


周辺銀河の中には

余りに自分勝手で我が儘な

コリアードに

複数の銀河同士で同盟を組み

コリアードに戦争を仕掛ける

用意をしている国もある


「戦争の火種にまでなっている」

その状況を自ら招いたのに

「我々コリアードは争いを好まない

協定を守り正義を行うのが

我々コリアードと条約を

結んだ者達の役目だろう」


「もしこの協定を守らないのなら

我々は君達の国に謝罪と賠償を

要求する」

「これに従わない場合は軍事的な

圧力も辞さない覚悟がある」

コリアードの外圧は

近隣の銀河には驚異であり

とても看過できる物ではなかった


別にコリアード銀河の全ての

種族が悪いわけでもないのだが


寧ろコリアードが実権を掌握した

コリアード銀河の

コリアード以外の種族は

奴隷以下の扱いを受けている

一番の被害者は彼等なのだ


同じバード型人類でありながら

偶々、ネオスに遭遇し

その辺境で惨めに見捨てられた

哀れな境遇に同情したネオスが

良く知りもせずに明らかに

身の丈を越えた文明と

能力を与えたが為に


他のバード型人類=バードスは

このような境遇に成ったのだ


コリアードはバードスの犯罪者が

流刑惑星として送られる

つまりが元々が悪質な精神異常者か

凶悪犯の掃き溜めである


コリアードの人口が少なかった事で

バードス同士での近親交配など

繰り返ししていた事も災いし

産まれながらに精神疾患者を持つ者が

多く出産されてしまった


その余りにも酷すぎる境遇に

ネオスの中には同情や哀れみを

感じる偽善的な感情に支配されて

病的に彼等を保護しようとする

言わば哀れな子羊を自分の手で

救いたいとする衝動的な擬慈愛が

産まれたのが悲劇だった


不幸者を救うために他の大勢を

犠牲にする正義は正義とは言わない

それがストームの抱いた思いである


「偽善者だと!?」

マリータは心底この無礼な

ヒューマノイドに腹を立てた

テレパシストであるネオス人には

ストームの考えなど

お見通しなのである


ストームも精神バリアーを

張らずに思ったことを敢えて

読みとらせた

「口で言うより効果があると

思ったのですよマリータ女史」


ストームはそう言うと

不敵に微笑んだ


舞台は再びネオスの監獄に戻る


「自分の考えていることを

わざと読ませるなんて

面白い事を考えるね君は」

そうストームに感心する

ネオスメタトロン


ストームは100メートルを超える

巨人に首が痛くなるほど頭を

上げてその顔を見た

アルカイックスマイルで

顔の表情は読み辛いが…

声や態度である程度感情を

読み解く事が出来る

これなら交渉に大きな支障は

出ない


「アンタの大事なコリアードは

ゾスターに喰われる…これは

近い未来に起きる絶対の事だ」


ストームは敢えて此処は

凱の話し方を使う


その不躾なしゃべり方に

マリータは嫌悪感を見せる

「何と下品な物言いか…

それが星の統治者の

話す言葉使いなのですか?」


ストームからして見れば

話し方が乱暴な方が

まだ、話す内容が乱暴

よりも遙かにまし

だろうと思う


「この非常時に味方の足を引っ張る

輩には御退場頂くのが一番だと

そう言う意味だよ婆さん」


マリータは怒りに任せて

殺人光線を目から発射して

ボイストームを攻撃した


突然の事でネオスメタトロンも

対処が遅れる


ネオスの攻撃力は

例え力の劣る女性型でも

宇宙戦艦の主砲にも

相当すると言われる

程の威力だ


その威力の前では無防備な人間など

消し炭に変えられる

だがボイストームは違う

無防備な人間ではなく


ダークネスの超能力を

受け継ぎ

サムライディーヴァの

戦闘能力までも持つ

人類最強の戦士なのだ


ネオスマリータのガンビーム

ボイストームは大きな声で吠える


それは超音波となって

ビーム程度塞ぎきった


「バカな!!」


ボイストームは自分に向けて

警告なしに撃ってきたマリータに

その体が小さい事を利用して

跳び蹴りを鼻面に喰らわせる

ぎゃぎっ!


マリータは変な悲鳴を上げて

白い壁に背中から倒れかかった


「おのれ!何をするか下等生物めが!」


ボイストームは怒った表情で

「何をするもあるまい

囚人の貴様が殺傷武器を

外交目的できた大使に向かって

使ったんだ殺されても

文句は言えまい!」


マリータは苦虫を噛み潰して

更にその苦い汁を飲み込んだような

吐き気を感じる顔をする

下等生物と見下す相手に

ここまで良いようにされては

ネオスとしての誇りも尊厳も

既にズタズタだ


「ネオスメタトロン

私にこの囚人の身柄を

渡して貰いたい

其れで今の行為は

目を瞑ろう」


其れを聞いて

メタトロンは胸をなで卸し

「そうしていただけると有り難い

Mr.ストーム」


「まさか囚人が大統領に

危害を加えるとは

思ってもいなかったので

此を国際問題にされないのは

本当に助かります」


「それではすぐに手続きに入ります」


マリータはメタトロンが

ボイストームにへりくだる様子を

唖然と見ていた

(そんな馬鹿な)


茶番だ!

最初から私を引き渡すのが

目的の茶番だったのだ

コイツ等は!!


ストームの中の猿が大笑いだ

ガハハハやるじゃないか

ネオスも大統領もこいつは

痛快だぜ


コリアードとの交渉に

このクソ婆はどうしても必要だ

だからといって、自由の身にして

土壇場で裏切るのは必須

だったら囚人として

コリアードを追いつめた瞬間

交渉の窓口として利用する


この手の輩の扱いとしては

満点の回答である


「絶対に脱出不可能な

スーパー拘束プリズムに

閉じこめるので後は

多少大きな宝石扱いで

構わない」


「汚い宝石だがMr.メタトロン

丁重に預からせて貰うよ」


二人とも悪い顔をしている

これを他のネオスが知ったら

只では済まないだろうが

コリアード案件ともなれば

話は別だ


ネオスは皆いい加減

腹に据え変える

想いでいるのだから


滅ぼさぬまでも

コリアードの力を

根刮ぎにしたい

と言うのが本音だ


ネオスの過去の汚点であり

全宇宙に多大なる被害を

もたらした責任

其れは一重にネオスの

犯した間違いなのである


兎に角、コリアードとの

交渉の窓口は手に入れた

後は…この駒を出来るだけ

有効に活用するだけだ

ボイストームは

厳重に保管される

マリータを閉じこめたクリスタルの

輝きを冷淡に見つめた


その中では哀れな囚人が怯えながら

身を縮めて震えていた


そのプリズムは掌サイズの

一見宝石に見えるが

何と言う事でしょう

小さく縮められたマリータ婆さん

がプリズム内にぎゅっと

押し込められて居るのが見れるのです

当然マリータも外の様子が

御覧になれる様で…


ストームはその宝石を

手に取ると剥き身で

持って歩きます

「止めておくれ!せめて袋か

何か入れ物に~この醜態を

誰にも見られとうない!」


ストームは意地悪く

「Missマリータには我々下等生物と

行動を暫く共にしていただく

其れが貴女えの一番の罰だと

Mr.メタトロンも言っている」


{そうかこれは、妾を厄介払いする

周到な企てだったに違いない

妾はそうとも気づかずまんまと

その手に乗ってしもうたのか!?}

気づいてももう遅い

哀れネオス12柱が一つ

ネオスマリータは

亜空間戦艦マグニファイセントの

虜囚と成り果てたのだ


キャプテンストームは

クリスタルを手に持ったまま

マグニファイセントに戻るやいなや

足早に何処かに向かう


マリータは怯えた声で

ストームに訪ねた


{妾を何処に連れて行く気かや?}

だがストームは其れには応えず

何やら賑やかな場所へと向かって

いるようだ


その声は甲高く無秩序であり

耳の鼓膜に棘が刺さるような

キーキー声が時折襲ってくる

そんな場所だった


{まさか此処は…}

マリータは脱出不可能な

プリズムの中から

その光景を仰ぎ見た


巨人であった時には

その存在は目に見えないほど

小さくか弱い存在でしかない


普段のマリータの身長が

100メートルを超えている

事を考えれば人間の幼体など

数センチしかない生き物

と言う概念でしかなかった


だが、それが圧倒的に自分よりも

大きく粗野で無秩序な動物の

集団の中に放り込まれたら

マリータでなくても

相当恐ろしい気持ちに

成るのではないのだろうか?


マリータは不安げに

キャプテンストームを見る

{こ奴…何で妾を

こんな場所に連れてきた?}


「あっキャプテンさんだーっ」

「みんな見てよストームさんだよ!」

「わああーーっ!!」


2メートルを超える大男である

ストームを見て

子供達は怯えるどころか

喜び勇んで駆け寄ってくる


「キャプテン!」

「ボイストーム!」

「本物だーっ」


ボイストームの名を呼んだ

少年の手にはボイストームの

姿を精巧に模したオモチャが

熱く握られていた


ボイストームは

少年少女達にとって

本当に合えるヒーローで

羨望の眼差しに晒される


そして地球大統領であり

亜空間戦艦マグニファイセントの

艦長であるという

もう至上の存在に他ならない

その人気たるや絶大なものである


ストームは此処に来れば

子供達に揉みくちゃにされるのが

洗礼の儀式と成っていた


「皆とても元気で何よりだ

今日は君達に大事な任務を

任せたくて来たんだよ」


艦の艦長からの直接の

任務と聞いて

子供達の顔が喜びと

驚きに変わった


「それはどんな任務ですか?キャプテン」

「僕達で出来ることかなー」

「私は出来るよーっ」

「大丈夫かな?だって艦長さんは

大切な任務だって言ってるよ」


自信満々で喚起する

子もいれば不安そうに

している子もいる

だがそれは10歳代の

子供の話で所謂所の

年長さんと呼ばれる子供達の

話である


ストームが任務を任せたのは

所謂所の年少さんと呼ばれる

幼い児童達なのである


「この宝石を君達で預かって

肌身離さず持っていて欲しいのだ」

耳を疑う言葉だ

マリータは気絶しそうになった


{ひいいーーっそんな無体な!}

こんな理性のない動物達に

預けられたらどんな目に合わされるか

解ったもんじゃない

マリータは必死にストームに

泣きついた


{待ってたもぉ~キャプテン殿ーっ

いや様~キャプテン様~っ}

哀れみを感じさせる

マリータ必死の訴えである


だがストームは我関せずを貫く

此は最初から洋子によって

いや、人工人格型デバイス

インターセプターによって

教えられた心理作戦なのである


恐らくマリータはどんな拷問や

説得にも応じない

第一、宇宙の法と秩序の頂点である

ネオスを誰が裁けるだろうか

それこそ牢獄に閉じこめ

長い年月を費やさせる以外に

方法もない


拷問などネオスの法が許さない

だからこその秘策なのである


今マリータは心底怯え焦っている

ネオスとして生を満喫してきた

超人が不安と絶望を抱いている

これはマトモな大人の考える

手ではない


まさに洋子以外に思いつかない

禁じ手であろう、だが巧妙な事に

人道にも外れず日人道的でもない

只、子供に預けるだけ

「何をそんなに怯えることがあるのだね?

何も危険はないのだよ」


ストームはニンマリとし

「私は只…貴女に人間を学んで

欲しいのですよ、そのためには

この子達が一番の教育係だと

そう言うわけです」


{そんな無体な~~っ}

マリータはそう言い渡され

子供達の手に渡った。


地球から30億光年の遥か先に

超空洞空間、即ちボイドがある


アイスポケットととも呼ばれる

この何もない超巨大空洞は

その大きさが実に18億光年もある


無限に広がる大宇宙に置いて

星はおろか恒星も

ガスもその他に

あらゆるエネルギーも

存在しない死の空間


そんな死の空洞を目指し

わざわざ飛び込もうと言うのは

正に自殺行為だとしか言いようがない


だが此処に…その超大空洞に

自ら飛び込もうとする

一人の女性が居た


彼女の名前は渡瀬聖子

地球最高の科学者であり

科学の女神の異名を持つ希代の

大天才である彼女が


何故その様な無謀な行為を

しているのか

そいれは、彼女を追う

恐ろしい怪物を知れば納得出来る


彼女を追う怪物の名はゾスター


他ならぬ彼女が造った

人工生命体である


全ての人類を敵視しており

放って置けば近い将来

宇宙全ての生き物に

致命的な悪影響をもたらす

危険性がある


又その力をこの怪物は十分に

持っていた


渡瀬聖子はこの怪物を産みだした

責任を取るために

30億光年の旅をして

アイスホールと呼ばれる

宇宙の超空洞空間に


この怪物を自分自身を餌にして

誘き込むつもりなのだ


怪物は自分の創造主であり

この宇宙で唯一

自分と同等だと認められる

この女性に異常に執着し

宇宙の果てまで追いかけ

追い求める


その気持ちを利用しての

心中作戦とも称すべき


言わば我が身を人身御供とする

犠牲的な精神行動

なのだった


十億光年先にはネオスと呼ばれる

宇宙最強の種族が存在しており


そこで博士はダークネスの

危機を知らせる


当初は懐疑的であった

ネオスも

徐々に渡瀬聖子の

人柄と能力を認めその

犠牲的精神に感銘を受けて

ついには彼女に協力し

その逃亡を手助けまでした


その甲斐あって今は事なきを得ている

これは賢明なネオスだから得た結果だ

得てして国家という物は間違った

判断を下しやすいもの

そんなに容易く正解を出せれば

国家間の戦争など起こりはしない


だが…賢明なネオスでさえ

ゾスターの力を見誤り

真っ正面から衝突し

危うく全てを失う所だった


これが賢明でない愚鈍で

考えの浅いコリアードならば

どうなるか…考えるのも

嫌になる


そのコリアードの愚考の

集大成となるのが

今回の拿捕事件である


ネオス銀河とコリアード銀河は

実に20億光年の距離がある


本来ならば接触する機会など

未来永劫あり得ないのだが


ネオスという超文明はそれを

易々と成し遂げる


そしてコリアードを援助して

近隣銀河に並ぶもの無い

強力な種族に育て上げた


だが今はそのことを

もの凄く後悔する

毎日である


ネオスに受けた恩恵を

侵略だったと捏造し

近隣銀河には

ネオスは侵略者だと

風潮した


他ならぬネオスに力を与えられた

コリアードだからこそ

それを信じてしまう国もあった


又…コリアードの力を恐れる

小銀河等はネオスの真実の

姿を知りつつ其れを

敢えて逆らってまで真実を

語る事はない


ネオスの治める銀河群は

正常な繋がりが形成されていたが

コリアードの勢力圏にある

近隣の銀河は己の悲運を嘆きつつも

その歪んだ情報に翻弄されるに

身を任せるしか無かった


ネオスの勢力圏だったら良かったのに

悲劇…悲運…哀れ

そんな形容しか浮かんでこない


コリアードの教育は徹底している

最早コリアード銀河勢力圏内

に暮らす全種族は正しい知識を

表って子供達に教えることさえ

叶わないのだ

「我々の創始国様である

偉大なるコリアード銀河様は」


「全宇宙の支配をもくろむ悪しき

ネオス銀河から我々を解放し

素晴らしい理想世界を創造して

下された」


「偉大なるコリアード銀河に栄光あれ」


等と朝の朝礼で子供達に

毎日言わせなければ

成らないのは

その種族の教師にとって

毎日が地獄だった


此に逆らえばコリアード勢力に

通報され自分だけではなく

家族までも投獄されてしまうのだ


コリアードは既にそこまで

変貌してしまっていた


間違った者が力を得た弊害が

こうやって弱者にしわ寄せがくるのは

世の常か、


「子供の頃からこんな偏った洗脳教育を

受け続ければ…いずれ取り返しのつかない

事になる」


其れが解っていても

力の弱い種族に異を唱える

勇気は最早残って居なかった


このような状況であるから

ネオスに助けを求める

コリアード勢力内の

弱小銀河も少なくない


だが、其れは滅亡寸前の

状況に追いつめられて

仕方なくネオスに

保護を求める時だけだ


銀河と銀河間の戦争

ネオス銀河勢力圏ではあり得ない

事なのだが


コリアード銀河勢力圏では

頻繁にそれが起きていた


そうした銀河間の争いには

必ずコリアードが裏から武器を

提供していたりする


コリアードは自分に非協力的な

銀河を内側から内戦を起こし

政権を転覆させたり


選挙でマスコミなどを利用し

コリアード寄りの政権に

交代させる等裏工作をする


そしてそれすら適わないと見るや

最後の手段として近隣の銀河に働きかけ

戦争を仕掛けさせる


ネオスがこれを止めようとしても

内政問題だとして突っぱね

それでネオスが本気で

外圧を掛ければ

ネオスに訴えを起こした小銀河を

加盟国から除外する


そうするとその小銀河は

コリアード勢力何にある

あらゆる武装勢力に

狙われることと也り

平和な日常は永遠に失われる


銀河規模の滅亡と成りかねない事態

そこまでくるとネオスも

矛を収めるをえず…

その小銀河も結局はコリアード寄りの

政権に交代せざるを得なかった

「どうして…こんな目に…」


こうしてコリアードに対する

恨みは徐々にだが急激に

増大し蓄積されていく


だがコリアードの政権の

首脳部は勿論の事

一般庶民に至るまで

コリアードにとってそうやって

自分達が恨まれると言うことは


それだけ力があるから恨まれるのであり

羨ましがられるのは気分が良かった

強く恨まれれば其れだけ自分達の力が

強い事の証明であり


自分が恨む者が少ないのは

強さの証明


従って今この宇宙で

ネオス以外に

コリアードが恨みを抱く

自分達より強い者がいない

その証明にも成る


「弱者に恨まれるのは誇らしい

我が銀河は強いという証拠だ」


憎まれ恨まれることはコリアードにとって

誇り高い事であり、どんどん恐れられ

恨み辛みを言われるほど

コリアードとして高く評価される


こんな狂った人種に神懸かり的な

科学技術を与えてしまったネオスは

万死に値する罪を犯している

だが当のネオスはそれほど

責任を感じている様には見えない


コリアードを愚者と見下し

自分達が手を貸さなければ

何れ衰退すると高を括っている


所詮自分のみに降りかからない

限り他人事なのだろう

駄目だ!こういう種族は

徹底的に管理するか

其れが出来ないので有れば

殺処分も辞さない考えが

必要なのである


そうしないと近隣銀河に

多大なる迷惑を掛ける所か

取り返しのつかない

事態にきっと成る


それでもネオスはコリアードの

暴虐武人な振る舞いを

実に2万年以上も放置していた

飼い主の風上にも置けないネオスである


「どんなに愚かでも自分の腹を

痛めて産んだ子は可愛いと言うことか」


そんなネオスを歯がゆく思う

コリアード銀河勢力の小銀河の

教育者を努めるその男性教師は

今日も冷め切った想いで

子供達に教鞭を振るうのだった。


超空洞アイスポケット

そこはコリアードから離れること

10億光年先にある

18億光年もある巨大空洞である

ボイドとも呼称されたその

死の空間に


渡瀬聖子博士は

超時空船カオスアーステラ


戦う能力はなく只々

速さだけに特化した宇宙船である


全長200mの白い女神

長の羽根を模した帆を張れば

宇宙の膨張する力を

推進力に変えて

光の速度を遥かに凌ぐ

この宇宙で最も速い船である


だがそれ結えに船の防衛力は

皆無と言っても良いほど

貧弱な物になっていた


それでもこの船を捕らえることなど

通常ではあり得ないのだが

コリアードはネオスの技術を

悪用して、この宇宙一価値の高い

白い宝石を手にしたのだ



宇宙船の価値はその造船技術と

デザイン性と貴重性に由来する

カオスアーステラは

その全てが満点だった


それだけではなく

所謂所のブラックボックスが

また桁違いなのである


10億光年を無給油で

航行できたという

嘘のような航行距離と

光の速度を遥かに超える

亜空間時間超越航行により

無限の速さを実現した


時間の速度を超える画期的な

タイムワープ理論は


言わば過去の宇宙に時間跳躍

し続ける事で距離を縮め

そして再び時間を凍結することで

元の時間に戻る


渡瀬博士は1億光年単位で過去に戻り

再び1万年間、元の時代に戻るまで冬眠を

12回繰り返した


こうして1億年掛かる距離を

1万年の休みで済ませ

12億光年までの距離を

進んだのだ


従って彼女が犠牲にした

孤独の時間は実に12万年を

費やしていたのだ


その彼女の12万年もの

努力と犠牲を

蔑ろにしようとするのが

コリアードである


彼等はネオスの警告を無視して

ネオス技術である緊急制動システム

超重力空間制動装置により


そんな彼女の船を事も有ろうに

拿捕してしまったのだ


だがネオスの問いかけには全て

「当方の領海にはその様な

不審船は確認されていない」

の一点張りであり

それがコリアード当局の回答であった


ネオス情報局では既に

潜入工作員からの確かな情報で

問題の亜空間船の拿捕は

確認が取れている


{正確には拿捕したと言うよりも

カオスアーステラは拘束状態だという}


情報局の分析だと

問題の船はスペックが高すぎて

恐らく拿捕しようとして

拘束装置を停止したりすると

逃げられる公算が高いと

判断しての事だろうとのことだ

「コリアードも自分の力を

そこまで過信はしていない

様だ…」


ストームはマグニファイセントの

ブリッジで

ネオスからの通信を受け取り

その様に分析した


「それで手を出せないから

艦隊で取り囲み見張っている

訳か…」


ブリッジ内のクルー達は皆

コリアードに対して怒りを感じていた


「許せないよなコリアードの態度は」

そう言うのはマグニファイセントの

戦術部門主任になったばかりの


(元)日輪艦隊旗艦、宇宙戦艦最上

砲術長の榊である


そして彼がそう語りかけたのは

同じく隣の席で操縦桿を握る

(元)最上の一人

 芝である


彼もマグニファイセントの

操縦部門主任になった


特筆すべきは

彼等はデーヴァである

それもサムライディーヴァと言う

最強種族に属する


マグニファイセントの性能は

サムライディーヴァの個々の

能力により向上する


それはマグニファイセントの

根本がサムライディーヴァガイで

あるのだから当然の事である


故にサムライディーヴァが

殆どである日輪の戦士は

マグニファイセントの

メインクルーと成ることは

必然だったと言える


そう考えると渡瀬博士が

日輪星にサムライディーヴァの

因子を残し数万年掛けて

育成したのも今日の為であった

と言えるのだ


先見の目があるとはこのことを言うの

だろう。


今や亜空間戦艦マグニファイセントの

基礎能力は120パーセント以上も向上していた


宇宙戦艦最上のクルーが主ではあるが

ブリッジには増設された席が複数

存在する


艦長席には当然 艦長である

ストームグレートマーク


本来なら戦術席と操縦席

その3席でブリッジ機能に

事足りるのだが


シャレーダーが抜けているので

こうして大勢の乗員の席が

増設された


シャレーダーが端末として

働けば20人ものオペレータも

各艦ユニットの300人も

必要はないのだが


ブリッジが手狭に成る程

シャレーダーの抜けた穴は

大きい


従って現在のマグニファイセント

搭乗員320人は

たった一人のシャレーダーの

仕事を分担して遣り繰りしていた


本当にシャレーダーは

マグニファイセントにとって

頭脳であり燃料源であり

欠かせない存在なのである


居なくなると解るその利便性と

消失感、いつもは只の

愛玩動物扱いだがいざ居なくなれば

これほどの影響が出てしまう


まあ話は戻して

コリアードの所行についてだが

自分達日輪の主神であり

宇宙全体の平和を願い

我が身を犠牲にしてまで

守ろうとする渡瀬聖子を


自分達の私利私欲で不当に拘束し

拿捕しているコリアードを

良く思う訳もなく

怒りを露わにする


「まったく…ろくな代物じゃないな

コリアード政府は」


「いや~政府だけじゃないぞ

少し調べるだけでコリアードの

やってきたことは無茶苦茶だぜ」


戦刀操術部主任長

稲葉甑・


御剣流免許皆伝

ソード・オブ・ディストラクション

システムの責任者であり

ブリッジでは主任長を努める


通信部主任

雪野


技術部主任

佐藤・


戦術部門主任

榊・


操縦部主任

芝・


これに古参である

副艦長の真喜子は

緊急時にだけ操縦士を務める


韋駄天デーヴァである

彼女には超高速戦闘は

最も威力を発揮できる

ポジションである


だが普段の操縦は部下である

芝に任せて、真喜子は専ら

副艦長の仕事に従事した


こうして分担制にしないと

24時間体制のブリッジ士官は

休みも取れない状況となり

加重労働となってしまうから

なのである。


「兎に角コリアードの横暴は

目に余るほど

相当酷い…無知蒙昧で他国に

迷惑を掛けても気にしない」


「そのくせ自分達が同じ

目に合えば必ず過激な

反応を示す」


「やはり加害者に成った方が

被害者に成り下がるより

勝ちだと思う異常な価値観を

持つ国はどうにかせねば

成るまいよ」


腰に手を当て凛とした出で立ちで

静かに佇む彼女は


芝と榊の会話を聞きながら

真喜子は副長として

ブリッジでの私語は慎むよう

言おうとは思ったが


自分達の女神を不当にも

拘束された彼等の気持ちを

考えると理解は出来る


(そうよね…)


(渡瀬博士は我が身を犠牲にして

ゾスターから全宇宙に生きる

人達を護ろうとしている


洋子がそうしたように

命を懸けて…それを

思えばコリアードのしている

事は絶対に許せない!)


そう考えると真喜子まで

コリアードに対する

怒りを口にしそうになった

(いけないいけない…ついつい

昔の悪い癖が出そうになったわ)


泉真喜子はその昔

妹の足を治すためその足の

速さを生かして引ったくりを

していた経歴がある


そのためにどうしても

昔の悪い癖で粗野な性格の

部分が頭を擡げてしまいがち

なのである


それを必死で抑えても

コリアードのする蛮行は

どれをとっても

頭に来る事ばかりだ


「いっそゾスターに

滅ぼされてしまえば良いのに」

と喉まで出かけている


そんな事になれば一つの銀河の

関係のない大勢の人命と文明が

失われてしまう


そう考えれば早計過ぎる考えだと

理屈では解る


事実コリアードにたいする

ネオスの制裁行動はそのまま

ネオス銀河の人々に

悪影響を与えていた


新しい技術も経済活動も

他銀河に物資を運搬しようにも

経済封鎖されている今では

思うように立ち居行かないのだ


ネオスの領域封鎖は徐々に

コリアード銀河を孤立させつつあった


力と権力と技術力

どれをとってもネオスの

強大な力には太刀打ちできない

軍事圧力を掛けてこないのは

親心あっての事である


可愛さ余って憎さ百倍に

成る寸前…それが

ネオスとコリアードの

危うい関係なのに

コリアードはこの状況に成っても

最後は自分達の甘えがネオスに

通用するとまだ盲進していた


だからこそ名指しで

大統領に通告してくる

ネオスに反論出来る


コリアード大統領は

再三のネオスからの要求に対し

知らぬ存ぜぬを通していた


「ムーンバード大統領

昨日から再三に渡り

緊急制動空間に捕らえている船舶を

解放するように要求している

ネオス政府の通信を

完全に無視するとは

幾ら何でも無礼が過ぎますぞ!」


相変わらず小うるさいこの

ネオス人の男はネオス外交大使の

権限でコリアード大統領に

何時でも謁見出来る立場を

良いことに、また具申に

来たようだ


ムーンバードは黒い巨大な

鳥人型の姿をしている

それが白いスーツに似た

服を身に纏っている


バードスの身長は人間と変わらない

だが…エネルギー生命体に

進化したコリアードの民は

特殊な変身装置を使い

ネオスと同じく光の巨人に

成ることが出来るのである


その戦闘能力は

ネオス以上だと彼は

自負していた


そして今のーー彼は更に強気に

成れるだけの理由があった


「ですから当方の領域にはその様な

船は来ていないと散々言っておりますぞ」


そう言ってムーンバード大統領は

神経質にクチバシを噛み鳴らす


「それなのに何度も何度も

同じ事を言ってこられれば

いい加減うんざりするのだよ」


「我々の忍耐も限界があると

いい加減認識するべきだ!」


それはこっちの台詞だと

ネオス外交大使は言いたい所だが


この男の挑発に乗せられる

事…其れは外交上の

負けに等しいのだ

とにかく我慢するしかない


我慢外交…それだけがコリアードとの

交渉に必要不可欠な手だてである


ムーンバード大統領はそんな大使の

苦々しい表情を見て今日も満足する

(よしよし…今日も悲痛な表情を

させてやったぞ!こうでなくてはな)


其れを見て勝ち誇り良い気分にさせて

それでやっとこの大統領は少しだけ

耳を貸す様になるのである

とにかく面倒くさい。


ネオスは決して外交が不得手な訳ではない

ただ…長年の経験からコリアード相手では

下手に出ないと話がまともに出来ない

そう悟ったからだ、だがこの外交方法は

以前から破綻する兆しがあった


何故ならコリアードの要求が

年を追うごとに過剰になり

ネオスの我慢外交では対処不能に

なっていたからだ


近頃ではコリアードこそが

ネオスを導き正しい宇宙体系を

実行するべきと主張する

夢想家がコリアード市民の

多くの指示を受けている状況だ


コリアードではネオスが

躍起になって護ろうとする

謎の亜空間船の噂で

持ちきりとなっていた


そうなのだ、フザケたことに

コリアードの国では亜空間船の

事は公然の秘密に成っていた

ムーンバード大統領の

支持率を上げる政治材料として

利用されているのだ


ネオスが重要な船だと伝える

亜空間船をまんまと罠に填め捕らえた

事実をコリアード市民は

コリアードの大きな功績として

捉えていた。


コリアードの都市は

ネオスと違い生命体が生きることが

可能な地球型惑星に存在する


その都市の規模は

地球の都市と変わらない

大きさであった


そこで彼等は子を産み育て

やがて年を取り死んでいく…

一生を過ごす場所だった


「とうとうネオスの鼻を

明かしてやれたよ」

「素晴らしい」

「我等がムーンバッド大統領様は

ネオスの不当な要求を完全とはねのけて

下された」

「誠に素晴らしい指導者の鏡だと

言える!」


このようにコリアード市民は

皆挙ってムーンバッド大統領を

べた褒めしていた


無論コリアードにも天体望遠鏡もあれば

強力なレーダーサイトも存在する


それで観測すれば

僅か8億光年先に突然発生した

異常な動く星雲を発見出来ている

筈なのである


この奇妙な星雲は周囲にある

惑星や恒星を飲み込み

どんどん巨大化していっている


それが急速な勢いで

コリアード銀河に向けて

迫ってくる


だが…正確にはネオスの

制動空間に進路を取っている

様にも思える


コリアードのバードスは

ネオスの忠告などに耳を貸す

つもりなど毛頭ない

だが…何か重要な物が

あの白い船の中にある事は

確実だとは解る

「何かは知らぬが其れを

手にすればネオスを

脅す材料に使えそうだ」


とにかくネオスを脅す材料を

手に入れ我等が優位にたたなければ


国力も財政力もネオスに依存

しすぎたコリアードには

最早時間は無い

「経済破綻しても今回ばかりは

ネオスの助けは当てにならん

だが…あの船を交渉材料に使えば

何とか成るかもしれんぞ」


「そのためにもあの船を完全に

捕縛し中にいる者を捕らえる

必要があるな」

ネオスを脅す材料に使えれば

ムーンバード大統領は

何でも良いのだ


宇宙の命運など彼には関係ない

どうでも良いことなのだ

例えこれで宇宙が滅んでも

彼は自分のせいだとは

決して認めないだろう。


8億光年離れた先にある

驚異など通常なら何の驚異でもない

無視しても許される範囲だ

だが、ゾスターの持つ無限の

食欲、暴食はそんな油断を

一切許さない


事実、コリアード以外の

普通の感覚を持つ周辺銀河は

多大なる危機感を持っていた


そして少しでも情報を得るために

コリアードの動向を探り

ネオス銀河の警告を

奪取することにより、如何に

コリアードが愚かで危険な遊技を

楽しんでいるのかを知ることが出来た


コリアードの周辺の銀河は

コリアードの蛮行を止めるために

外交大使を各々でコリアード星に

送り抗議を行った


だがそんなことでコリアードが

考えを改める訳もなく

かえって部外者が内政に干渉するなと

恫喝する始末である


「これ以上ネオスを刺激して

威嚇とも挑発とも

取れる行動を起こすなら

我々はコリアード銀河同盟を

脱退する!」

それが周辺銀河からコリアード政府に

対する最後の対抗手段であった


「最終通告だと!?」

コリアード大統領ムーンバードは

非力な周辺銀河を守護してやっている

というのに、その恩義も忘れ

平然と抗議をしてくる連中に怒りを

露わにしてクチバシを尖らせ

噛み鳴らし憤慨して見せた


「コムシ共が!」

近くにあった椅子を蹴り飛ばし

威嚇するように羽根の付いた

腕を振り回すその姿に

威厳など微塵も感じられない


直ぐに感情を爆発させ情緒が

常に不安定なのがコリアードの

民族的特徴だ


此があるから他の種族は面倒がり

出来るだけコリアードを

怒らせたく無いと思うようになる


だがそれはコリアードの思う壺

なのであり、この方法で

旨くいくと学んだ彼等は最早

文化レベルでこの病気が身について

しまっているのだ


だが…此がかえって怒りを買う

敵性種族もいるのだが

凶暴な種族だと判断すると

今度は逆に下手に回る

周到さがある


そうして復讐の機会を狙い

何れ凶暴な種族を殺す機会が

来るまで恨みを積み重ね

待ち伏せをする


それで滅ぼされた暴力的な

種族も多い

そのやり方が項をせいし

凶暴な種族さえコリアード相手では

二の足を踏む様になる


コリアードと関わり合いになると

ろくな事にならない

だから関わらないのが一番だと


これが賢明な種族の下す

最良の解決方法だった。


今は周辺銀河の嫌われ者でしかなかった

コリアードもネオスに次ぐ強力な

勢力に成長した、全てはネオスの

認識不足が根本の原因なのだが


ネオスという最大最強国家にたいし

公然と批判が出来るメディアは

存在せず、ネオスからは直接の

被害を受けていない銀河は

結局の所ネオスに頼る事になる


頼る相手を批判するのは勇気が

必要だし、またネオスを

批判したところで結局の所


反ネオス国家の

コリアードに益を与える

そのジレンマは

耐え難い事態だと


寧ろ何が正義なのか解らなくなってくる

こうした状況を一気にひっくり返す

外圧が突然、宇宙の彼方に出現した


それがゾスター率いる

ダークネス軍である


ゾスターの前では一切の交渉が

通らず、聞く耳を持たない


理不尽に激烈に、目前の獲物を

喰らい尽くす


即ち消滅の末路しかない。


そう説明しても

バードス人には通用しなかった


渡瀬聖子は映像と数万年分の

資料をコリアードに提出し

ゾスターの危険性を説き


直ちに亜空間船カオスアーステラを

解放するように要求した

だがーー

「直ちにエンジンを停止し

指定された惑星に着陸せよ」


と言う回答を永遠と繰り返される

のみだった


カオスに収容したバードス人は

既に全員、コリアード艦隊に

投降している


宇宙海賊である彼等は

結局の所、コリアードに

汚れ仕事を任された

職業軍人で構成されていたのだ


だから聖子が宇宙で救助した

バードス人の少女ミュウも

軍関係の少女兵士なのかと言えば

そうではなく


コリアードでは未だに

奴隷制度が根強く残っている


コリアード人は同じ種族の

バードスでも格差を付けており

過去に征服した種族を

苛烈に弾圧する


民族浄化は対外的には否定

しているが、土地を侵略しそこに

土着していたエミュウ族の

同族同士の妊娠を許さず


エミュウの言語の使用と

文字を禁止し


コリアードの文字と言語を

強要した。


少数民族エミュウは

こうして徐々に生活圏を

奪われ民族としての

尊厳も失い


危険な任務を強制される

そうした悲しい奴隷少女兵が

エミュウ族の鳥少女ミュウなの

だった。


余りにも悪辣なコリアード政府の

やりように憤りを覚える


聖子は虐げられた者達の気持ちを

少しでもコリアードに理解して欲しい

と想うが、加害者に成った者が勝の

異常な思想を持つコリアードに

そんなまともな言葉は絶対に届かない


「何だ貴様この俺に意見しよう

と言うのか!?」


ミュウは聖子の言う事を理解し

ゾスターの驚異を海賊団の

船長ゴリアテに訴えようとした

だが、いざ船長の前に出ると

上手く言葉が出てこない


長年抑制され虐げられてきた弊害だ

その恐怖だけでまともに話すことも

侭ならないのである


それでもミュウは勇気を

振り絞って船長に訴えた

それが無駄かも知れないと

そう思っても、そうせずに

いられなかった


「聞いてゴリアテ船長!

博士は嘘なんか言わないよ

だから博士の言うことを

真剣に聞いてあげて」


ゴリアテは怒りの表情をし

五月蠅く喚く奴隷に

いつも通りの摂関を与える

つもりで拳を振り上げるが


オードリーの視線を感じ

それを思い留める


動物の本能がオードリーから

発せられる致死性の殺気を

感じ取らせる

背筋が凍る思いとはこの事か


怒らせたら不味い相手は本能が

警告してくれる

ゴリアテはこの野生の感だけで

此まで生き残って来たのだ


ゴリアテ自身、コリアードの

上級市民ではない元は

下級市民の出である


だから上級市民であった

前の船長には相当酷く

虐げられてきた


だが海賊に偽装しているとは言え

コリアードの兵士である

上官の命令は絶対であり

下級市民の階級である

ゴリアテに上官で市民階級も

上である前船長には逆らえない


そこでゴリアテは前船長に

金と女で籠絡し

媚びへつらう様にして

取り入った


前船長は敵に回せば恐ろしい

男だったが

ゴリアテは上手く取り入り


苦労の末

やがて前船長の右腕となり


信頼と言う船長の油断をつき

毒殺することに成功する

「まず金と女で堕落させた」


そして麻薬に徐々に依存させてから

思考力を低下させ

船長の権限を少しずつ俺は奪った」


「最後は薬の過剰接種に

よる自滅…ククク

軍部のお偉方には既に俺が

船長の替わりに貢ぎ物を送って

来たから文句を付ける奴は

誰も居なかった…と言う訳さ」


ゴリアテは上官を薬で廃人に

することで船長の座を

奪い取るような男だった


このような男が自分の

邪な感情を無くすことは

絶対にない


この白い船を上に献上すれば

上手くすれば海賊の船長などという

裏方の偽装された身分ではなく


軍船の花形船長に成ることも

夢ではない


ゴリアテはここで無理をして

オードリーと言う名の

明らかに危険なアンドロイドメイドと

争うのは得策ではない事を

瞬時に計算した


「そうだな…確かに博士の

話を聞いてみるのも悪くは

ないかもな」

その言葉を聞いたミュウは

パッと明るくなった


「本当?船長さん

博士の話聞いてくれるの?」


「ああー勿論だとも」

ゴリアテは作り笑いで

この少女をだまくらかした


だがオードリーは無表情で

ゴリアテを見つめている

(流石にこれじゃああの

メイドの目は誤魔化せないか…

だが)


少なくてもミュウの方は

完全にゴリアテ船長の

言葉を信じている様下だ

やはり何処かで

血の繋がりを感じて

いるのだろう


残念ながら

欲望の捌け口に奴隷の女に

産ませただけの子供に

愛情など一欠片もない


この冷血で非常な男に

そんな物は最初から

ないのだ


だがミュウはどうしても

この男に愛情を抱いてしまう

それは父を求める少女の

儚い夢だった


ゴリアテはミュウに伴われ

渡瀬聖子の元に連れてこられた

直ぐ後ろにはあのオードリーが

見張っている


滅多なことは無法者のゴリアテにも

出来なかった


オードリーの筋力の凄まじさは

巨大な物体を苦もなく運び廻り

凄まじいスピードで移動する

様子を少し見れば直ぐに


このメイド型アンドロイドが

相当な戦闘力を保持しているのは

容易に理解できた


ゾスターを滅ぼす目的で

始めた長期に渡る旅である

どんな問題が起こっても

対処できる様にオードリーは

出来うる限りの力を与えられていた


本気で戦えばデーヴァにも

劣らない戦闘力を秘めている


だがその数が最大の脅威なことは

間違いない

緊急時にはオードリーは

1万体を緊急出動出来るのだ


ダークネス軍相手を想定した

自衛力なのだから

デーヴァ1万程の戦力は

決して過剰とは言えない


ゴリアテが

博士から説明を聞きたい

と言うので

説明をし易い会場を用意した


どうせなら海賊船の乗組員全員に

聞いて貰う事になる

「皆さんにどうしても

お話しておきたい事があります」


聖子は超遠距離望遠鏡を可動させ

宇宙の果ての果て

1億光年先に焦点を合わせる


「モニターを御覧下さい」


そこには小銀河と思われる

普通の星雲の半分にも

満たない星の集合体が

映し出されていた


それを見せられ少しも

話の意図が見えず

狼狽する海賊達


「これが何だというんだ?」

「只のありふれた星雲じゃないか」


だがそのズームが人類科学の限界を超え

接写し出すと事態は一変した


ズーム100万倍

ズーム1000万倍

ズーム10000万倍

ズーム100000万倍


そこに映し出されたのは

一目見ただけで正気を失わせる

狂気の世界


凡そ考えられる醜悪を凝縮し

呪いと言う塊に意志と

暴力を与えた様な

凄まじい世界だった


「この超長距離望遠鏡で

捉えた物は全てダークネスと言う

怪物なのです」


ぐぎゃああああああ

ごああああああ

会場の中は一度に恐慌状態となった


「星の様に見えるのは

その大きさが恒星にも匹敵し

放つエネルギーも恒星と

同じ光量を放っているため」


博士の説明を聞きながら

この怪物達の姿を見た物達は

それから自分の力で

目を反らす事が出来ず

うなり声とも悲鳴とも言えない

音を漏らし呻いている


「いけない」

その様子に渡瀬博士は急いで

望遠鏡の倍率を下げた


するとあの地獄の様な光景が

只の小銀河の姿に戻ったのだ


会場の中は余りの恐怖と

寒気のために

誰もが茫然自失と成っていた


そして渡瀬博士が

「精神汚染フィルターを

掛けてあるので傷害は

残らないはずです

安心して下さい」

聖子はまさか此ほど

ダークネスの恐怖耐性が

人間にはないのかと驚いた


少なくとも地球人はダークネスの

醜悪な姿を見ても戦うことが出来た

だがコリアードはダークネスの

姿に恐怖し戦う意志ももてない

気がする


コリアードの鳥人としての

野生の部分の本能が

戦うことを拒絶させる


地球人類は恐怖に対して物凄く鈍感である

だからダークネスとも戦う事が

出来たのかも知れない

(戦う前から此では先が

思いやれる)

オードリーは会場内で

恐慌状態にあるコリアードが

戦場でダークネスを前に

どんな事に成るか想像するだけで

溜息が出た、これでは戦線が

簡単に瓦解する…

コリアードにダークネス戦は

無理だ参加させるべきではない


恐怖耐性…とでも言うのだろうか

それがコリアードには欠落していた

ーと言うより逆に


プレデターに対する恐怖心が

鳥類の遺伝子レベルで

強く残っているのだろう


(コリアードの戦力はネオスに

次いでこの銀河団2位だ…

それが当てにならないとしたら

ダークネスとの戦争は

大きな戦力ダウンとなるでしょう)


オードリーは博士の指示で

ある人工知能とリンクしていた

共有の知識を遣り取りし

現状の状況判断と今後の対策を

密にするのが目的で


その相手とは

10億光年後方にいる

マグニファイセントの人工知能

インターセプター

洋子の擬似人格である。


だが擬似人格知能体のヨウコは

全く意見が違う

(使えない味方は敵より

質が悪いわ…大勢いれば尚更よ

最初から居ないものとして

考えるべきね)


オードリーはヨウコが

コリアードを全く当てにしていない

と言う事が解った


(ですが相当な戦力ダウンに

なるのでは?)

オードリーとしては

今のダークネス軍の戦力を

考えれば、たとえ猫の子の

手でも借りたい状況だと

言いたかった


だがヨウコの考えは違う

(戦いは数も大事だけど質も

大事よ…コリアードは

傲慢すぎて話にならない

切るべきだわ)


オードリーは少し沈黙した後

(ですが博士はコリアードを

見捨てる気はないようです)


ヨウコは溜息をつき

(ええ…それが一番の問題ね)


ヨウコの擬似人格は

亘理洋子であって洋子でない

その能力は引き継げても

優しさや思いやりまでは

再現できなかった


だからこの擬似人格体は

優しさのない非情な洋子だ


(だけどそれだとコリアードは

ゾスターに喰われてしまう…

そうなればゾスターは更に

力を付けるでしょう)


そのオードリーの不安に

ヨウコは機械的に反応する


(その心配なら無用です

…ゾスターに絶対に負けない

強力な戦法を考えてありますから)


オードリーは、あのゾスターの

凄まじい戦闘力を間近で観測して

知っている


その威力は現宇宙で無双の強さだ

(何を言っているのですか?

正気ですか!?あのゾスターに

勝てる戦力など…ネオスでさえ

歯が立たないのですよ…それを)


だがヨウコは不敵な笑みを浮かべる

(それがあるのですよ…必殺必中の

ゾスターの様な独裁者殺しの

最良の方法が…ね!)


オードリーはヨウコの実力が

オリジナルよりも劣るとは

思っていない…いや

本物より非情なぶん更に

磨き掛かった戦略を

産み出せるとさえ考えている


それでもー

この自身は一体何なのだろう?

(その自身が一体何処から来るのか

私には解りませんが…)


オードリーは静かにその自身の

根拠を言った

(私の…この大いなる自身の

根拠と言うのは簡単な話です…)


それは確かに…と

オードリーにも大いに

自信が持てる答えが返ってきた

その独裁者殺しの戦略の

考案主は…他ならぬ

巨乳隊長その人だった!!


「そう…あの方が…だったら

ゾスターが地獄を見るのは

間違いないでしょう」

オードリーでさえ

ゾスターの息の根が止まる

そんな予想が想像できた。


ゾスターにとって最大の悪夢であり

今のゾスターを間違いなく一番

苦しめているのも全ては

その巨乳隊長の力と言って間違いない


そして今度こそ

ゾスターは本当に

恐怖を感じる事だろう


「そう…確かにコリアードなど

戦力に無くても何の問題も

なさそうですね」

オードリーでさえヨウコから

伝えられた作戦をシュミレートして

確かな手応えを感じる結果が出た


(亘理洋子の遺産…全宇宙の

人類にとって最高級の遺産です)


その報告を

インターセプターから

聞いたオードリーは

この会場でコリアードを

説得する博士に、直ぐに

伝えようとしたが

少し遅かった


どうやらコリアードの

海賊達を怒らせてしまった

様だ


「違うんですアレは作り物の

映像などでは決して

ありません!」


だが恐慌状態から立ち直った

鳥型人類達はギャーギャー

喚き立てて話しどころでは

なくなってしまった


「フザケるな!何だ今の

趣味の悪い映像は

どうせ作り物だろう!」


「あんなもので騙されるほど

我々コリアードは愚かではない!」


「この詐欺師が!引っ込め!

引っ込め!」


そう言って履いていたブーツを脱ぎ

博士に向かって投げつける

コリアード達


そのブーツから身を守ろうとして

博士は両手で顔を覆う


だが如何なる暴力も許されない

カオスアーステラの船内で

その様な暴挙は許されず


数体のオードリーに

その暴挙を行った

海賊達は直ぐに鎮圧された


「騒ぐのを止めなさい

止めないと実力行使しますよ」

オードリーの一喝に

場は一気に緊張する

「これだから人間は…愚かだと

言うのです…博士のお言葉を

聞けと言ったら御聞きなさい

これ以上騒ぐと

五体満足でいられなく

しますよ!」


オードリーはそう言うと

腕を逆手に決めて拘束した

男の腕をねじり上げる

「ぎゃあああああああ

解った聞く!聞きますから

止めて!止めて下せえええ!!」


この場に居る全員を一瞬で

虐殺できるメイドが

20体も居る事実に

流石に物分かりの悪い

海賊連中も気が付いた


コリアードはこうした

圧倒的暴力には

逆らえない遺伝子が

組み込まれている


自分達が優位でなければ

絶対に逆らえない

その意味では制御しやすい

種族ではある


博士はこうした荒事には

慣れていないが

恋人の御剣剴がこうやって

鎮圧するのを思い出していた

「ありがとうオードリー助かったは

それでは説明を続けます」


そして聖子は一つコホンと

咳をしてから、話を再会した

「此処にいる全員に解って貰える

何て…私は思いません

ただ…一人でも良い…

有りの侭の真実を伝えたいのです」


聖子博士はまず自分が人工生命体を

研究しゾスターを産みだした

経緯を伝え、地球で起きた

ダークネスと人類軍の戦争を

大まかに伝えた

「私はゾスターとダークネスを

30億光年離れた虚無空間ボイドに

誘い込む目的でこの船で

旅をしてきたのです」


それを黙って聞いていた海賊の一人は

博士に挙手し質問を投げかける

「そもそも何だってそんな怪物を

研究したんだ?」

「あんたがそんなもの研究しなければ

こんな事にならなかったんだろう?」


そう言われれば言い返す言葉もない

「私が人工生命体を研究したのは

…ダークネスが地球に攻めてくると

思ったからです、

それに対抗する手段として

地球を護る救世主を造る

筈でした」


「実際10億光年もの

距離があってもダークネスが

徐々に近づいているように

地球からは見えていました」


そう聞いてその海賊の方は

「見えてたー?何でそう思った?

実際…本当は離れて行っ

たんだろ?」

その海賊はますます博士に

詰め寄りはじめる


オードリーはその一人の

海賊を警戒した


「地球から観る

観測データーでは

ダークネス群が徐々に

大きくなるのを誤認し

地球に近づいて来るように

見えたんです

いえ…いい訳に成りますが

10億光年の距離はそうした

間違いが起きても

仕方がない距離でした」


だがその返答にその

海賊は更に

追い打ちを掛けた

「おいおい好い加減にしてくれよ

それじゃあ何かい?アンタは

自分がやっているその作戦で

過去のアンタを勘違いさせて

わざわざ化け物を研究させちまった

そう言うのかい?」


聖子博士はシドロモドロで

「ええ~とそれは…その

その通りだと思います…」


博士の声は徐々に消え入りそうな

何ともか細い声になってしまう

見ていて気の毒なほど憔悴した

感じがした


「やれやれ自分で怪物造って

自分を追わせ、その挙げ句に

自分を騙して怪物を造らせてた?

とんだマッチポンプもあったもんだ!」


その二人の応酬に

此までオードリーの

鎮圧で萎縮し

大人しくなっていた

コリアードの海賊達が

俄に元気付いた


「おいおい何だよガルーダの奴

スゲエじゃねーか!」

「あいつ…あの博士と口論しあっても

全然勝っ手やがる」


「もしかしてやる奴だったのか?」


「嘘だろ~あの飲んだ暮れが!?」


それに誰よりも驚いていたのは

海賊船長のゴリアテである

「何だアイツは!?」

ゴリアテは自分より賢いと

思う者は悉く排除してきた


なのに飲んだ暮れで

どう見ても自分の相手に

成らないはずの馬鹿が


あの天才的な女と

問答をして負けずに

勝手いるなど…あり得ない

自分の地位を脅かす程の

危険な奴だ…


ーーと海賊船長はその船員を

危険人物として認識した


ハゲワシに似たその

ガーゴイルを

オードリーはそれ以上

喋らせまいと

鎮圧する動きを見せるが


それを察してかガーゴイルは

動きを見せようとした

オードリーに

「おいおい痛いところを突かれた

からって護衛のメイドに俺を

邪魔させるのは止めてくれよ

博士」


ガーゴイルは渡瀬博士に

そう忠告した


それを聞いて渡瀬博士は

顔を赤くし

「お止めなさいオードリー

その方に暴力を振っては

成りません!」と

キツく言い渡す


オオオオオーー


会場内に居る海賊達は

それで一気に元気を

盛り返した

「良いぞガルーダ!」


「御前ーっ中々やるじゃないかー」


「見直したぜ飲んだくれのガルー」


普段の彼を知る仲間達からしてみれば

まるで別人の凛々しい表情を

見せる飲んだくれガルー


その恥ずかしい二つ名も今日で

返上する勢いである


少し遠巻きにだが

そんなガルーを凝視して

睨みつけるゴリアテ


「ねえ船長…私知らなかったよ

あの飲んだくれがあんなに

切れ者だったなんて」

その女はゴリアテの今の夜の相手を

務める女で

海賊娼婦のオウムと言う名だ


そのオウムが明らかにあの

禿野郎に普段と違った

表情で見つめている


そんなオウムをゴリアテ船長は

怖い目で睨みつける


その表情から自分が船長相手に

とんでもない事を言った事を

後悔するオウム


「いや…だからさ…違うよ!

私はアイツの事何か何とも」


だがゴリアテゴメス船長は

声を押し殺しながら

オウムに言った

「いや…あの飲んだくれのガルーを

夜這いしろ…そして奴が突然変わった

理由を探るんだ」


オウムは船長がガルーダを

怪しんでいる

事を知り、確かにいきなりあの

飲んだくれのガルーの

代わりようは可笑しいと思う

事から、彼を探る事に同意した


ガルーのおかげで意気消沈していた

海賊達も息を吹き返す

「そうだそうだ!」

「口で負けたからって

手を出すなんて

往生際が悪いぞーっ」


オードリーは海賊達のヤジに

恐ろしい殺気で返すが

先程までの威力はない


やはりガルーダの存在が

彼等を勇気付ける様だ


「まあ諸君静粛に!

まだ質問は終わりじゃねえぜ」

ガルーダの言葉に海賊達は

期待を込めた目で注目する


こんな粗野なしゃべり方をする

奴に…私の博士がやりこめられるなんて

あり得ない…


オードリーの心中は

穏やかではない


それでも聖子はこの

新たな質問者に

誠心誠意受け答えしていた


「だいたい1億光年以上も

離れてる奴が

どうやって襲ってくるって?

どうせ作り話なんだろ?」


ガルーダは聖子にそう聞いた

聖子はタイムジャンプのことを

説明する


「1億光年の距離を」






★付箋文★

敵は兎に角怖くて強いほうが面白い

それを目指して頑張ります

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