FFシリーズ ~死のワナの地下迷宮~ その5
あとは主催者であるサムカビット公。交易都市ファングを治める男爵であると、『タイタン』には記載されています。王様というわけではありませんが、特に悪政を行っているようなことも書かれていません。邪悪な連中が多い世界で、意外と普通の統治者みたいな感じでした。
先代の父親のアルカット男爵からこの土地の支配権を引き継いだのが二十一歳のとき。父親が死亡したことによる相続でした。
厄介なのが弟のカーナス卿。むしろこちらの方が邪な心を持っているようで、権力の全てを奪われた兄を憎んでいます。どこの世界でも長男世襲制ですね。
暗殺を企てたものの、内通者によってサムカビット公にばれてしまい、追われる立場になってしまいました。
その後の話は後の『迷宮探検競技』(つまり今回の続編)に絡んでくることなので、ここには書きません。ただこの作品、この辺りの関係性がちゃんと盛り込まれていて、更に面白さを引き出しています。
またこの『死のワナの地下迷宮』の時点では弟がいることにも触れていません。何も明かされておらず、『タイタン』や後の『迷宮探検競技』にてそれが明らかになりました。
さて、そんなこんなでダンジョンをくぐり抜けてきた『あなた』は、優勝者となります。トンネルの出口から現れると、拍手喝采に包まれる様子が描写されていますが、いったいどれくらいワクワクしながらここで待っていたのでしょうか? リアルに考えると競技中の様子もわからないのに、中々辛抱強いみなさんだなと思います。
スタート前の描写を読み直すと、夜明け前に起こされ、五番目にスタートを切りましたから、午前8時くらいにはダンジョンに入っていたのでしょう。
そこから推測すると、夕方くらいまでには、ゴールできたものと考えられます。三日も一週間も競技が続いていたら、みんな飽きてしまいます。
ゴールをすると主催者であるサムカビット公、呆然とした面持ちで『あなた』を迎えてくれます。ドヤ顔を見せていた自信が、ガラガラと一気に崩れた様子です。
『あなた』は金貨一万枚の入った櫃をもらい、月桂冠を頭に載せてもらいます。月桂冠は表彰者のお約束ですね。
そこでお話は終わるのですが、『タイタン』を読みますと、迷宮が制覇されたことと、そこから更に改良した迷宮が作られたことが記されていました。正式な設定として存在しているのです。
この新たな迷宮は先に書きました続編『迷宮探検競技』へとつながっていきます。ここで初めて、サムカビット公とカーナス卿の因縁が浮き彫りになるのですが、詳細はまたその時にガッツリ語りたいと思います。




