ゲームブックの時代 #07【『ゲームブックマガジン』の役割】(2025年修正版)
この章の最後の話になります。
前回登場した日本版『ウォーロック』の少し前のこと。同じく社会思想社から『ゲームブック・マガジン』なる小冊子が発行されていました。
いわゆる同人誌的な作りだったので、書店などでは出回らなかったはずです。多分、通信販売だったのではと思います(『ウォーロック』以前の話ですが、確か『FFシリーズ』の後ろの方に、購入に関するお知らせが載っていたような気がします)。
後にバックナンバーのまとめ販売の広告が日本版『ウォーロック』に載り、私はそれに申し込んで手に入れました。もちろん当時は切手による支払いです。
実際に手に取ってみると文庫本サイズで、やや荒いワープロ文字(当時はインクリボンを使ったドットプリンターと思われる)で作成された小冊子でした。手作り感満載です。
久しぶりに開いてみますと、当時荒い文字と感じたワープロ文字は、老眼の影響もあって、特に気になりませんでした。
今となっては、昭和末期の時代を象徴しているような作り方ですが、一冊作るのにもきっと大変だったはずです。
それでも当時、ゲームブックについての情報や思いを広く届けようと、とても苦労と努力を積み重ねられたことが推察されます。
冊子の内容は作家さんや翻訳者さんによるゲームブックに関係するコラム。大半は読者による投稿記事で占められ、同人誌やサークル会員の募集なども、時々掲載されていました。住所と氏名が堂々と掲載されていますが、昭和時代は珍しいことではありません。悪用されることも少なかったのだろうと思います(そもそも個人情報がダダ漏れで、どこからともなくダイレクトメールは日々、たくさん届く時代だった)。
今であればこうした募集はインターネットを利用することが可能ですが、当時はまだ郵便で行うことしか方法はありませんでした。
このゲームブック・マガジンは全部で6号まで発行され、一冊100円でした。
私の手元にはその全部が残っていますが、なぜか第2号だけ2冊あるのです。誤って2冊入れたのか、それとも中途半端に残ってしまったから、おまけで入れてくれたのか。
ともあれ、2026年には発行から40周年になりますが、こうして今も私の本棚にきちんと残り続けています。
そう言えば東京創元社から発売するゲームブックにも、同じように『アドベンチャラーズ・イン』(冒険者たちの宿の意味)という、両面印刷の折り込みが挟まっていました。記憶だと、小冊子だったことも一回だけありました。
これが残念ながら手元に残っていません。どうやらこれも処分してしまったようで、殆ど記憶にありませんが、投稿コーナーに何度か掲載された覚えだけはあります。比較的、投稿したものが掲載されやすいものだったのか、それほど投稿はがきがすくなかったのかは、今となってはわかりません。
このような折込の情報誌はその後、他の出版社でも行われました。富士見書房のTRPG系の文庫本に挟まっていた『ドラゴン通信』があって、現在も何枚か残っています。
今でもライトノベル系の本を買うと、何か挟まっていることが多いですが、捨てずに残しておく(今は本に挟んだまま)癖はこの頃培われたものなのでしょう。
さて、かなり足早にゲームブックの時代を振り返ってきました。きっと、もっと色んなことを経験していたのだろうと思いますが、昭和・平成・令和の時代まで時間が流れてしまった現在、記憶の中にあるのはこのくらいなのです。何しろ最初に触れてから、四十年になってしまいましたからね(2025年現在)。
これから益々記憶が薄れていくはずです。年齢を重ねて、それを実感しました。
現在(2025年)、この日本には様々な冒険ファンタジー作品が存在しています。アニメ、ライトノベル、コミック、ゲーム(デジタル・アナログ問わず)ほか、幅広いジャンルに渡っています。もはや巨大産業にまで成長を果たしました。
その源流となるものを考えた時、やはりこのゲームブックにたどり着くんじゃないかなって、思えるのです。
もちろんその以前から『指輪物語』や新和版『ダンジョンズ&ドラゴンズ』は存在していましたけれど、それはほんの一握りのマニア向けのもの。
一般に『冒険ファンタジー』というジャンルを広めたのは、廉価で子どもたちの手に届いたこのゲームブックだと思います。あの頃が日本の冒険ファンタジーの夜明けだったのだと、こうして振り返ることで、ようやく実感することとなりました。五十歳を過ぎると、見えなかったことが見えてくるものですね。
長々とゲームブックの話題をつづってきました。駄文に付き合っていただき、どうもありがとうございます。
これにて、ゲームブックに関する話は一区切り。ホントはもっと書きたいことが多々ありますが、それはまた後の方でブック・レビューとして取り上げます。
次回からは、どんな流れで自分がTRPGに夢中になっていったのか。そのことについて、順を追って書いていこうと思います。
よろしければ引き続きお付き合いいただければ幸いです。
まずはここまで読んでいただきどうもありがとうございました。




