FFシリーズ ~ 火吹き山の魔法使い~ その7
今回は番外編です。
実は意外なところから、1984年当時の状況を知ることが出来ました。
貴重なお話でもあったので、それをここで少しばかり紹介いたします。
筑摩書房さんの筑摩文庫より、井狩春男さんという方のエッセイ、『返品のない月曜日』にて、興味深い話を見つけました。この作者さんは元々本の取次業者さんだった方で、そのお仕事の話をエッセイにしたものでした。
中身は1980年代の話ばかりですが、その中に『ベストセラー「火吹山の魔法使い」のこと』という項目があるのです。
この作品、日本で初めて紹介したのが実はこのエッセイの作者である井狩春男さん。
当時、このかたが発行されていた『日刊まるすニュース』という手書きの書籍情報ペーパー上にて、紹介されていました。
この文庫には実際にその時の『日刊まるすニュース』の縮小版が掲載されています。
日付を見れば『昭和59年10月26日』。記事を読んでいくと、『12月6日に社会思想社より発売』する旨が書かれていましたから、初めて具体的な発売日がこれで判明しました。何とも貴重な資料ですね。
この『日刊まるすニュース』を通じて二か月に渡って書店や大学生協(そう言えば大学には本屋さんがあるんですよね~)に流し続けたものの、まだまだ話題にはならなかったそうです。
ですがそのペーパーを目にしたあるラジオ番組のディレクターさんが、担当のラジオ番組で取り上げたことが切っ掛けで世に知れ、一気に大ヒットしたという事実が書かれていました。その事実は全く知りませんでした。
実際に当時の売り上げはどうだったかまではわかりませんが、重版しても数日で売り切れ、書店からの注文の札が五千から六千もたまる状態だったとのことですから、相当な売れ行きだったのだろうと思われます。
実は私は『火吹き山の魔法使い』を2冊持っていて、最初に買ったときのものが最初の話で書いた通りに第3刷。
数年後、何故かもう一冊(保存用? それともボロボロになったから買いなおしたのか?)を購入したのですが、その奥付を見ますと第47刷で、『1987年2月10日』となっていました。その辺りまではブームが続いていたのだろうと思います。
このエッセイは何年も前に絶版となっているようで、2018年に神保町を訪れた際、東京堂書店さん限定復刻として販売されていたのです。
買った理由は取次さんのエッセイであったり、コレクションしている『サイン本』であったからです。
でも、こんなお話が書かれているとは思いませんでした。
現在では新品は入手困難ですが、大手通販サイト様経由の古本であれば、意外と簡単に手に入りそうです。興味があるかたは是非どうぞ。
最後に、同じ日の『日刊まるすニュース』を読んでいくと、『中国残留日本人孤児』が『90名の訪日と帰国』の予定が書かれていました。それに関する本の紹介でした。
今の若い人たち、全く知らないでしょうね・・・。私が子どもの頃は定期的に中国大陸に残された戦争孤児が来日して、肉親捜しが行われていたのです。
ですが見つかってもほんの数例。やがていつの頃からか行われなくなってしまいましたね。
私が子どもだった頃、昭和の末期でしたが、まだまだ戦争の傷跡が残っていました。
平和が一番です。
長々と書いてきましたが、『火吹き山の魔法使い』に関する話はこれにて終了。
次回は『バルサスの要塞』を全4回の予定で取り上げます。次の話もよろしくお願いいたします。
(追記)
書き忘れに気づきましたので、追記します。
日本版のタイトルは『火吹山の魔法使い』ですが、現代は『The Warlock of Firetop Mountain』です。直訳に近いタイトルになりますけれど、『Firetop mountain』を『火吹山』と訳したわけですね。
当時のFFシリーズやソーサリーシリーズは、一部の固有名詞をそのまま日本語にあてはめていたのですけれど、どれも秀逸で、冒険心にかられた小学生時代の私には魅力的でした。




