ゲームブックの時代 #04【指輪物語とTRPG】(2025年修正版)
。 1985年(昭和60年)ごろには、冒険ファンタジー小説の元祖、『指輪物語』も既に日本語訳が発売されていました。このタイトルの方がしっくりくる人は、私と同じ世代以上でしょうかね。
多くの人にとっては、後に映画が大ヒットした『ロード・オブ・ザ・リング』の方が馴染みが深いことでしょう。
けど、私としてはどうしてもこのタイトルはしっくりきません。
この昭和末期の時代ですと、まだライトノベルと呼ばれる作品はありませんでしたが、似た感じのシリーズは既にあったと記憶しています。表紙がアニメみたいな若者向け小説があって、それは1980年代前半ごろから、書店で目にした覚えがあります。まだ小学校低学年の時代でしたね。
今となってはそれがどんなものであったのか、全くわかりませんが、もしかしたらそれはテレビや映画のアニメ作品を小説化したシリーズだったのかも知れません。
ただ少なくとも剣と魔法の冒険ファンタジー風ではなく、SFっぽい匂いを感じました。
それらも含めて、日本ではまだまだファンタジー小説は、限られた人たちが読むようなジャンルで、一般には殆ど浸透していなかったように思います。一種の漫画やアニメ(というか、当時はカタカナで『マンガ』がアニメを意味していた)の延長線上にあるものだったのでしょう。
この『指輪物語』というタイトルを知ったのは、日本版の『ウォーロック』(社会思想社)か、ゲームブックのあとがきなどで、その固有名詞が登場したことだと思います。他に思い当たりませんので。
ともかくそれが切っ掛けで、家から近くて、最も品ぞろえが多い駅前の書店(40年以上が過ぎて、今も生き残っている!)をあたっても、外国文学のエリアで見つけたことはありませんでした。
潮目が変わったのは中学生一年生になってから。いつごろか覚えていませんが、学校の図書室に何故か大判ハードカバーのとても立派な『指輪物語』が全巻ならびました。とても感動したことを覚えていますが、学校に入荷したということは、何らかの要望があったのかも知れませんね。
同じタイミングか、それとも多少ずれているのかは覚えていませんが、中学一年生の終わり頃(昭和63年の3学期)、駅前の大きな書店に文庫本が並んでいるのを当時の友人から教えてもらって、それで読み始めました。
当時は六冊のシリーズで、とにかく滅茶苦茶文字が小さくて難儀しました。今もこの六冊は本棚に並んでいますが、老眼になってしまった自分には、もはや読み返す気力がありません。
こうして手に入れてから15年くらいが過ぎた21世紀初頭、突然『ロード・オブ・ザ・リング』として映画となり、日本でも大ヒット。一般でも広く知られるメジャーな作品になり、とても不思議に思いました。
この作品には既にエルフやドワーフ、そしてホビットも登場していますが、冒険の舞台に人間以外の種族が登場することが当たり前になったのは、ゲームブック以降じゃないかなとも感じています。ゲームブックは、人間以 外の種族が市民権を得た大きな切っ掛けとなったと思います。
特にここで創造された『ホビット』は、後に大きな影響を与えました。似たような小柄な種族が多数生み出され、作品を彩るようになりました(版権の問題で使えなかったのでしょう)。
もしもゲームブックの登場が無ければ、その後の国産TRPGやライトノベルの前身とも言えるファンタジー小説も、始まりが少し遅れていたかも知れません。
安価なゲームブックで若い世代に浸透することにより、少しずつ基盤が作られていったように思えます。それらを遊んだ経験のある人が、大人になって小説を書いたなどということも、きっとあったはず。
言うなれば、2025年現在まで続く日本のTRPGやライトノベルの原点となった時代でした。
余談ですが、『指輪物語RPG』というものも、日本版が販売されていました。多分90年代前半ごろ、ホビージャパンからの発売だったと思いますけれど、買ってしまった当時の友人が、『ルールが難しい』とか言っていました。お値段も高かったはずです。
この頃からTRPGのセットは、5,000円前後と高額だったと思います。物価を考えると、やはり高級品でした。
私の手元に残る『旅の仲間』上巻の奥付を見ると、日本版の初版は昭和52年(1977年)4月10日付け。現在へと続く日本の冒険ファンタジーは、この頃、ひっそりと上陸していたわけですね。もうじき五十年です。
私が買ったのは昭和62年11月10日付けの第10刷。お値段は480円でした(消費税などありません)。
因みにこの時代、普通の書籍もコミックも雑誌も、500円あれば結構お釣りが来た時代でした。図書券が3,000円もあれば、かなりリッチな買い物が出来た時代でした。
覚えている限りでは、週刊少年ジャンプが170円(他の少年誌も同じくらい)で、月刊コロコロコミックが330円。どちらも良く買っていたので値段を覚えていました。
私が読んでいた1987年から1988年ごろ、六分冊だった『指輪物語』は、映画化された時は九分冊になっていました。
そして2025年現在、新版の『指輪物語』が7分冊となり、『旅の仲間』(上下)、『二つの塔』(上下)、『王の帰還』(上下)に加えて、最後の1冊は『追補編』となりました。『追補編』は未読なので何とも言えませんが、これが当時はなかった1冊になります。
出版元も変わらず評論社ですが、お値段は7冊セットで税込み8,250円ほど。高くなりましたね。
そう言えば調べる過程で、『シルマリルの物語』も文庫本が出ていることも知りました。これ、ハードカバーの豪華本を持っていたんですけれど、当時のTRPG関係の友人に借りパクされたんですよね(ほかにもう一冊、RPGマガジン)。関係を悪化したくないから催促せず、ずっと自主的に返すことを信じていましたけれど、ダメでした(今は行方も分かりません)。
RPGマガジンは諦めて、バックナンバーが手に入るうちに手に入れたので手元にありますが、『シルマリルの物語』は持っていないので、もしかしたら文庫本で買いなおすかも知れません。
もし、これを読んでいたら、今からでも返して欲しいです(本好きから見て、本の借りパクはタブー)。
最後は不満を書いてしまいましたが、今でも当時の友人のことが気がかりですし、最後に会ったときは何となく仕事が繁忙だったためか、元気がないように感じました。元気であってくれることを今も願っています。




