ゲームブックの時代 #02 【大冒険時代の始まり】(2025年修正版)
さて入院中は『魔法使いの丘』と『七匹の大蛇』、その2冊を随分と楽しんでいました。その時点では第2巻の『カーレ』が抜けていたので、ストーリー的には飛んでいましたけれど、それでも十分に楽しめました。
外の空気を吸うこともままならず、何より辛い検査が続いたこともあって、私にとってこの空想世界の冒険は、とても大きな存在になっていきました。もともとそうした空想世界に憧れの強い子供だったからかも知れません。
そしてこの出来事こそが、その後十年以上に渡って続く私の大冒険時代の始まりとなりました。
その後、半月ほどしてから私は退院しました。
実際は夏休み明け、一日も登校することなく入院してしまったため、一学期の終業式から数えると、およそ二か月半ぶりの登校となりました。
教室へ戻ってみると、クラスメートたち(ただし男子のみ)の手の中には、様々なゲームブックがありました。ソーサリーの他、社会思想社から発売していました『ファイティング・ファンタジー・シリーズ(以下FF)』が主なところだったと思います。
この2シリーズ、どちらも同じ作者(英:スティーブ・ジャクソン氏)がからんでいました。実は世界観も同じでして、同じ世界の中の別の大陸のお話ということになっていました。この辺りの詳細は、設定資料集『タイタン』(社会思想社より、奥付にある初版は1990年1月30日付けなので、実際の発売日は1989年末頃かも知れない)に書かれていました。
なおFFの方は他にイアン・リビングストン氏がメインライターとしておりまして、この二人を中心に様々な作家の様々な作品も発表されていました(その中には同姓同名で、米国のスティーブ・ジャクソン氏も含まれていた)。
因みに社会思想社のFFシリーズは、ネットで調べると最終的に日本版は33巻まで出たようです。
そこで手持ちを調べたところ、第1巻の『火吹き山の魔法使い』から、第27巻の『スターストライダー』までありました。どんだけ買ったんだっ!?
ただし今回改めて確認すると、第12巻の『宇宙の暗殺者』と第15巻の『宇宙の連邦捜査官』はありませんでした。それは多分、何となく興味を持てなかったのか、お小遣いの関係で買わなかったのか・・・。まあ、両方ですかね。
それでも25冊となります。どこまで遊んだのかも怪しいですけれど、それだけ熱を入れていたのでしょうね。
なお本国では2025年現在でもシリーズが続いています。70巻を上回る巻数となり、これもまた長寿シリーズとなりました。
日本では2021年から『ファイティング・ファンタジー・コレクション』と銘打ち、作品が5冊+その他1冊の計6冊セットとして、立派な箱入りとして5種類(2025年現在)発売となりました。当時日本語訳で発売された作品以外にも、これまで未発売だった日本語版が1冊から3冊含まれていることもあって、大きな話題となりました。
まだまだこうしたセットは続くかも知れません。
私は当時の思い出を大切にしたいので、今のところ手を出していません。
今でもその頃買い集めたゲームブックは全て本棚に並んでいますが、それを見て、触れて、開いて、あの頃のことを思い返せればそれで良いかなと思っています。
けれど、まさか五十歳を過ぎて、改めてこんな形で触れることになろうとは、全く思いませんでした。ある意味、奇跡です。
処分せずに残しておいて良かったですが、きっと本好きの性格が功を奏したのでしょう。
ここでちょっとだけ話に登場した設定資料集『タイタン』のことを。
当時、消費税3%込みで880円でした。440ページほどの厚さがあって、中々の重量感がある文庫本でした。
中身はFFシリーズ、ソーサリー・シリーズの舞台となる世界、タイタンのことが非常に細かく記されていました。目次の見出しを借りますが、『タイタンの世界』、『歴史と伝説』、『善の勢力』、『中立の勢力』、『邪悪と混沌の勢力』、『邪悪と混沌の代表者』、『水の王国』、『タイタンの暦』、『冒険の生活』。その中にはまた小見出しが多々あって、「異世界の社会科の教科書かっ!」ってつっこみたくなるくらいのボリュームでした。
因みにこの『タイタン』は2025年現在、大判タイプで再発されています。TRPGを扱う書店や通販サイトで手に入りますので、興味のある読者様は是非手に取ってみてください。
表紙も当時と同じですが、社会思想社から日本訳が発売された時は、表紙のドラゴンが左に向いていました(ネットで検索すると見つかるかも知れません)。
ですが再発版は全く逆の右向きのもの。
実は再発版が大正解です。
社会思想社版が発売された当時からわかっていたことですけれど、敢えて左右逆にしての発売でした。
それは何故か? 答えは単純で、日本の縦書き仕様(左側のページを開く)にならっただけのことでした。
もしも英国版と変わらない向きで、本だけは日本の縦書き仕様で書籍化したら、ドラゴンが真っ二つになってしまうからです。格好悪いですよね?
当時、色々と体裁を考えての出版だったことが、今になってわかることとなりました。
因みにあの頃の『ウォーロック』誌(社会思想社より発売されていたゲームブックの専門誌)でも、確かその表紙が使われたことがあったと記憶しています。『ウォーロック』の大半を処分してしまったので、何年の何月号かまではわかりませんが。
今となってはとても残念です。




