FFシリーズ ~地獄の館~ その7
さて、これまでのレビューではネタバレが多かったので、今後はなるべくかいつまんで書いていきます。この作品も豪華本セットで再発されていますので、これからお楽しみになる方々の邪魔はしないようにと心がけたく思います。
前回、いずれにしても囚われの身になることが決定した『君』。どうにかしてその部屋からは脱出するものの、ここからが本当の恐怖の始まりです。
この『地獄の館』のストーリーは、いわゆる脱出ゲームですね。これまでのFFシリーズでは逆に相手のふところに飛び込んでいく展開が殆どだった(『雪の魔女の洞窟』は後半、呪いの回避が目的でしたが)と思われますが、それとは逆の趣向です。
そもそもホラー映画というのは、主人公が恐怖に耐え、どうにかやっつけて安堵する(と思いきや、最後にどんでん返しがあるホラー映画もあったようですけど)展開が多いです。
当然、ホラーを意識したこの作品もその流れがあるわけですが、そこは作者のスティーブ・ジャクソン氏、最後の最後で何かどんでん返しを引っ掛けてくるんじゃないか? そんな疑いを持ってゲームを進めてしまいます。
ダンジョン内ではトラップが仕掛けられていたり、モンスターの襲撃があったり。
ですがこの『地獄の館』は、トラップの代わりに『恐怖』が仕掛けられています。ある意味、それがトラップでもあるのですけれど、不意打ちに恐怖が襲い掛かってきて、精神的に『君』を追い詰める趣向がこらされています。
これ、中々難しいですね。体力点のダメージは、休んだり何かを飲食したりと、回復するポイントがところどころ用意されているのですけれど、この恐怖点に関してはなさそうでした。
つまりは雪だるま式に積み上げるだけ。まるで借金と一緒です。
これまでの異世界冒険とは違って、同じ感覚でプレイすると、どんどん恐怖点がたまっていってしまうのです。一回につき2点が多いのですけれど、最初のキャラづくりで恐怖点の限界値が低い(7点から12点の範囲)と、意外とあっさり発狂してしまいます。
むしろ、途中で戦う相手よりも、恐怖と戦う方が地味に辛いです。
かといって、あれもこれもスルーすることは出来ませんし、恐怖と引き換えに何か重要な手掛かりを手に入れることだってあるかも知れません。それが厄介ですよね。
もし現実世界で、ホラーそのまんまの展開が実際に起こったならば、きっと同じような心理状態になるのではないでしょうか? せまりくる死の恐怖はもちろんですが、未知なるものの恐怖や、現実から外れた異常に対する恐怖など、じわじわと蝕んでくることでしょう。
例えそうした恐怖が去り、解放されたとしても、一度壊れた精神は簡単には戻りません。
色々と心の病の原因となるものが多い世の中になりましたが、そう考えると、今の世の中の方がホラーよりもよほど恐ろしいものであると、そう感じますね。




