ゲームブックの時代 #01【ソーサリー・シリーズ】(2025年修正版)
全てはゲームブックから始まりました。この言葉を聞いて、すぐにピンと来る方は少ないかも知れませんね。この時のブームを私はリアルタイムで経験した世代ではありますが、同じように経験された方々は、恐らく現在(2025年)は五十代のかたが多いかと思われます。何しろそのブームが起こったのは、昭和の終わり頃だったのですから。
私が初めて手に取ったのは1985年(昭和60年)9月の半ば頃。どこの書店で何を買ったのかということまで、きちんと覚えています。ただ残念ながらその書店は、二十世紀のうちに閉店してしまいましたが。
その当時、私は原因不明の激しい頭痛(結局最後までよくわからなかったけど、検査内容から脳腫瘍や白血病などの疑いがあったのだと、大人になって察知した)で入院しており、一時的に外泊が許されたのです。一泊を終えて病院に戻る際、病院近くの本屋さんに立ち寄ったとき、並んでいるゲームブックを見つけました。
目に入ったのは東京創元社から発売されていた『ソーサリー・シリーズ』(英:スティーブ・ジャクソン氏、以下ソーサリー)でした。既に全巻が並んでいたかどうかは覚えていませんが(第四巻の発行日が同年10月10日と記されているが、この時代だとその日付より前に店頭に並んでいたとは思う)、その中で選んだのは第三巻の『七匹の大蛇』でした。
第三巻を選んだ理由は何となくだったと思いますが、後日学校の先生がお見舞いに来てくれた際、『今、これがクラスで流行っているんだって』と、第一巻の『魔法使いの丘』をプレゼントしてくれました。偶然ではありましたが、第一巻から買わずに正解だったというわけです。
発売当時『ソーサリー・シリーズ』は第4巻の『王たちの冠』を除くと、第1巻から第3巻(第2巻は『城塞都市カーレ』)まで480円、第4巻のみ650円(因みに消費税がまだ導入されていません)でした。
もし2025年現在の金額で表すなら、第1巻から3巻までが800円くらい、第4巻が1,200円くらいでしょうかね。いや、値上げラッシュに突入していますから、もっとかも知れません。
とにかく本や雑誌の物価は相当上がりました。時代の移り変わりを感じます。
そして2025年現在、『ソーサリー・シリーズ』で遊んでからちょうど四十年が経ちました。世の中では昭和百年と話題になっていますね。
この『ソーサリー・シリーズ』は当然のことながら、今も本棚にちゃんと並んでいて、改めて手に取ってみると、何度も何度も遊んだんだなという跡がしっかり残っていました。だいぶくたびれてしまった表紙は、それこそ冒険者に例えるならば、『名誉の傷跡』でしょう。
1985年当時、ゲームブックはほとんどが外国産でした。その挿絵がかなりリアリティのあるものだったので、むしろ洋画のひとこまみたいな印象がありました。可愛らしさなど欠片もありません。
画力が素晴らしいのです。私はこうした美術に疎いので、偉そうなことは言えませんが、とにかく手に取った者をワクワクさせるようなイラストばかりでした。これなら冒険に誘われてしまうのも、無理はありません。
現在の日本では美男美女で描かれるのが当たり前になっているエルフでさえ、ごつごつした感じの顔立ちでした。ぶっちゃけ、不細工でした。
因みに当時、『七匹の大蛇』の表紙になっていたお婆さんみたいな女性が、実はダークエルフだったとの話を後で何かで知った時は、『嘘だろ!?』って思いました。実際にそうなのでしょうかね? 細かくは良く知りませんけれど。
因みに当時の訳は『闇エルフ』でした。私は今もこの表現を気に入って、好んで使うことが多いです。
そしてこの時代の世界観は、今の日本の異世界ファンタジーとはまったく異なっているものと感じます。『危険』、『恐怖』、『狂暴』、『凶悪』、『混沌』と言ったフレーズがお似合いでした。ゲームブックなのに、危険と隣り合わせなのです。
だからこそ、余計にわくわくして楽しめたのだろうと思います。
一方で2025年現在の異世界ファンタジーは、どこか緩さや明るさ、コミカルさを感じます。言うなれば40年の時間をかけて、日本で独自に進化した世界観だと思います。これもお国柄みたいなものでしょうね。
私はこうした世界も大好きです。平和で牧歌的な世界に、魔族や人間が仲良く暮らしているなんて、素敵なことじゃないですか。時代は愛と平和です。
ですが、むしろ今だからこそ、こうした最初期の頃の異世界ファンタジーに触れてみると、まったく新しい発想が生まれてくるんじゃないかなと思います。




