FFシリーズ ~フリーウェイの戦士~ その1
FFシリーズの中で、リビングストン氏が手がけた唯一の異色作と呼べるのが、この『フリーウェイの戦士』。次々と新しいアイディアを出す相棒ジャクソン氏とは対照的に、一貫してアランシア大陸の大冒険を続けて来たリビングストン氏でしたが、近未来のカー・アクション系作品を生み出しました。FFシリーズとしては13作目の作品となります。
この作品が発表されたのは1985年。1980年代はカー・アクション系の映画『キャノンボール』シリーズや、近未来系の映画『マッドマックス』シリーズがヒットしていましたから、その影響があったのではないかと思います。リビングストン氏がそうした映画の影響を受けていたのかも知れません。
余談ですが米国のS・ジャクソン氏も同様に『カー・ウォーズ』シリーズを執筆しています。私も第一弾の『激走! バトル・ロード』だけ持っています(全三巻らしい)が、多分プレイしていません。そもそも何で買ったんだろう? もしかしたら英国のジャクソン氏と間違えて買っただけかも。そのうちプレイしてみましょう。
因みにこのシリーズの日本版はホビー・ジャパン社より発売されました。1980年代中ごろから後半にかけて、同社はゲームブックをよく発売していました。大きさは新書サイズで、他に『ローン・ウルフ』(昭和60年から昭和62年頃)シリーズがありました。
因みに私は第6巻から第8巻までと、設定集『マグナマンド・コンパニオン』を持っています(いつか取り上げたいです)。ゲームブックの方は滅多に売っておらず、たまたま売っている書店を見つけて、この三冊だけ手に入れました。設定集は注文して手に入れたはずです。
昭和の終わりころは、マイナーな書籍を手に入れるのは苦労しましたけど、一方で手に入れたときの喜びは格別でした。
さてこの『フリーウェイの戦士』の世界観。『殺人ウイルスによって、世界は廃墟と化した』と、冒頭の一文で明かされています。のっけからわかりやすいですね。
その頃はSFのネタとして『殺人ウイルス』は珍しくなかったと思いますけど、それに近いことが現実に起きていますからね。これから先も無いとは言えないでしょう。
そして僅かに生き残った人々は町を要塞化し、略奪者に怯えながら暮らしていました。今や暴力が支配する世界になっていました。
やっぱり、あの時代の映画の影響があるのではないでしょうかね。こういう世界観って、絶対に暴力が支配しますし、間違っても平和でのんきな世界になることはありません。なったらなったで、違和感あって怖いですけど。
時代は2022年(つまり我々にとってごく最近)。日時は8月21日。真夏ですね。
この時代、農業革命による飢餓の撲滅、週休四日(羨ましい!)、電力の大半が太陽光発電という正に理想的な世界になっていました。
この時サッカー・ワールドカップが行われていて、この日はシドニーでイギリス対アメリカの決勝戦が行われることになっていました。
ところがその日の午後、突然ニューヨークで出所不明の疫病が発生します。しかもあっという間に全米人口の半分が失われたという、正にホラー映画のような展開。
更にはその日のうちに世界中に飛び火して、各国に死体の山が築かれていきました。幾らなんでも早すぎだろ!? もしかしたらこの時代の交通機関だったら、超高速で世界中を移動できるようになっているのかも知れません。
そして世界中に広がってから、わずか四日で全人類の85%が死滅! インフラや政治機能は崩壊! 略奪・暴行・破壊が支配する暴力的世界と変貌!
一言で表すならば、正に『ヒャッハー!』なデストピアが誕生してしまったのです。




