FFシリーズ ~モンスター誕生~ その1
いきなりですが、帯に記された文言は『スティーブ・ジャクソンの最高傑作!』です。FFシリーズにおいてはもちろん偽りはありませんし、また最大のパラグラフ数(460)を誇る大作であることに間違いありません。
あくまでこの時代(1980年代末期)においては、ジャクソン氏自ら「最後の作品」と宣言していました(これは『ウォーロック』誌のイベントで来日した際のファン・ミーティングの席でだったと思う)し、次は小説を書くとも宣言していました(それが後の『トロール牙峠戦争』)。
それだけに全身全霊、持てる力の全てを注ぎ込んだ超大作であったのでしょう。
ですがこのFFシリーズのうち、ジャクソン氏がアランシア大陸での冒険を描くのは、実は『バルサスの要塞』以来。『バルサスの要塞』がシリーズの第2作目でしたが、この『モンスター誕生』は第24作目。実に22作分もの開きがありました。
またリビングストン氏との共著でもある『火吹き山の魔法使い』を含めても、ジャクソン氏が展開したアランシア大陸での冒険は、僅かに三作品。今更ながら極端に少ないことに気づきました(小説『トロール牙峠戦争』は除く)。
ただし『タイタン』全体を見ますと、『ソーサリー・シリーズ』や、『タンタロンの12の難題』なども作り上げています。どちらかと言えば、それらの舞台となったカーカバード(カクハバードとも当初は訳されていた)大陸の方が、ジャクソン氏の世界だったように思います。
そう考えるとアランシア大陸はリビングストン氏の世界になるのでしょう。
ですがアランシア大陸においてのジャクソン氏は、ザゴール、バルサス・ダイア、ザラダン・マーの強烈な個性を持つ三悪を生み出しました(ザゴールはリビングストン氏と共作かも知れないど)。
もしこの三悪が存在しなかったら、アランシア大陸における冒険の危険度がグッと下がったのではないでしょうか?
もちろんリビングストン氏の作品に登場する悪役たちも、みな魅力的です。
ですが印象がやや薄くなってしまうのは、こうした悪役を生み出す一方で、それらと対になる善人キャラも数多く生み出しているからでしょう。
どちらかと言えば、物語のバランスを重視しているように思います。
一方でジャクソン氏は冒険重視です。圧倒的な悪が存在し、主人公は孤独に近い存在であると感じます。その辺りは小説『トロール牙峠戦争』でも同様です。
当時はこんなことまで考えずにプレイしていましたが、大人になってから改めて振り返ってみると、あの時とは全く違った見方が出来ることを知りました。




