小説 ~『トロール牙峠戦争』~ その2
読みたい! 早く読みたい! そう思いつつも、購入したのは実は最近のこと。去年(2022年)の秋頃でした。
遅くなった理由は単純で、読むべき本がたくさんあったから。なので、『トロール牙峠戦争』を読み始めたのは、今年(2023年)の春先からでした。
毎日10ページ程度、チマチマと読み続けていましたが、それだけでもあの慣れ親しんだ『FFシリーズ』の情景、『アランシア大陸』の危険な様子が、鮮明に頭に浮かび上がりました。
そして何よりも忘れていた何とも説明しがたいとびきりのワクワク感。きっと四十年近く前の自分は、こんな気持ちで冒険していたんだろうなと、そう感じました。
ネタバレになってしまうので、内容に関するところはあまり書けません。未読のかたは自分で読んでみたほうが絶対に楽しいからです。
ただし、『ザゴール』、『バルサス・ダイア』、『ザラダン・マー』のいわゆる『悪魔の三人』が登場することは、事前に明かされていました。小説の帯にも記載されていますので、これはネタバレにはならないでしょう。三人とも確実に登場します。
ですが、誰がどのように登場し、どうからむのかは書きません。ただある場所では、ゲームブック(作品名は秘密)で実際にあったイベントが、そのまま小説に取り込まれているので、プレイした者としては思わずニヤリとしてしまいました。
また一つだけネタバレをしますが、『ヤズトロモ』じいさんも登場します。このキャラって、リビングストン氏の作品にしか登場していなかったので、リビングストン氏が生み出したキャラだと思いますが、いわゆるゲスト出演みたいなものでしょう。
表題の『トロール牙峠戦争』が、何故発生したのか、最初から読めば直ぐにわかります。意外と単純な原因ではありますが、戦争など本当に些細なことで始まるのだと、お話の世界でも、現実の世界でも変わらないと感じました。
途中のことはやはりネタバレにつながるので書きませんが、『FFシリーズ』の雰囲気を損なうことなく、やはりそれっぽい世界でした。『アランシア大陸』も、『タイタン』も、素晴らしいくらい危険で混沌とした世界です。
そして最終章では予想もしなかった展開になります。それを読んだ時、『そういうことだったのか!』と思いました。
このパターン、いや発想と言った方が良いかも知れませんが、今年見たアニメでも同じような発想(あくまでも物語の視点的な部分)があったことを思い出しました。別にパクリとかではなくて、この発想、今の時代ならテンプレとして使われているんじゃないのかなと。
それを三十年以上前の1989年頃(現地イギリスでの発売)に小説で使っているのですから、いかにアイディアを生み出す能力に長けていたかが感じられます。実際に当時の『FFシリーズ』は様々なアイディアが込められていましたから、そうでなくては人気作品にはなれないものなのでしょう。
あとがきには訳者である安田均氏が、この作品についての『解説』を載せています。そこにはこれまでの経緯も詳しく書かれていました。一読の価値があります。
ゲームブックの下火、『ウォーロック』の休刊が、一番の要因のようです。あとは二十一世紀初頭の社会思想社の倒産でしょう。
90年代に入って以降の10数年は、不遇の時代だったのだと思います。
二回にわたって、読み終えた後の思いを書いてきました。
五十歳目前にして、自分にとって、ついに最後のピースが埋まりました。これでようやくあの時代の冒険が終わりを迎えたような気がします。
ですがこれからもまだまだ、『FFシリーズ』はもちろん、『ソーサリー』やその他のゲームブック、TRPGなどについて、あの時代のことを書いていきたいと思っています。




