FFシリーズ ~雪の魔女の洞窟~ その3
そんなわけで、水晶の洞窟に侵入することになるのですけれど、何か忘れていませんか?
そうですっ! 前哨砦、どうなったっ!? かなりヘルプ的な状況だったはずですけど!!
もはや『君』の頭の中に、この単語はありません。隊商の護衛をしていた記憶もありません。
シャリーラを倒して、一旗を揚げる気満々です。
侵入していくと、結構家来さんたちが出てくるわけです。
そしてやっぱり出てくるのはゴブリン。こんな極寒の地でも元気に活動中です。
どこにでもいる種族ですけれど、モブキャラでありながら、実は超ユーティリティで、ある意味、ここまで愛されているキャラはいないのではないでしょうか?
今の異世界ファンタジーでも頻繁に登場しますが、どこで登場させても違和感がないのは、こうしたゲームブック時代の名残りなのだということを、暗に気づかせてくれます。
洞窟の中では、色んな家来たちに出くわしますが、どの殆どが見ているだけで凍えそうなモンスターばかり。氷河をくりぬいた洞窟ですから当たり前ですけれど、これ、主人公である『君』って、どんな防寒をしているのでしょうか?手がかじかんで剣を握り損ねたり、動きが鈍くなったりなんてこと、あると思います。
今の異世界ファンタジーアニメでしたら、こうしたシーンはち密に描かれるのでしょう。
この『水晶の洞窟』を進んでいくと、あれこれあるものの、意外と簡単にシャリーラと遭遇します。
・・・で、なんやかんや、倒しちゃったりするんですが、あまりにも話があっさりし過ぎですね。
こんなにあっさりと、世界征服の野望を阻止できちゃうの!? なんてね。
ですが作者のリビングストン氏が、そんな安っぽいストーリーを展開するわけはありません。
奴隷としてとらわれていたエルフの赤速とドワーフのスタブとともに、ここからの脱出劇が始まります。
というよりも、ここからが本当の冒険じゃないのかっ!? 今までのは、単なるウォーミングアップなのかっ!? むしろ極寒の中だったから、寒すぎて仕方がなかったんですけどっ!!
なんて、つっこみを入れたくなってしまいます。
つまりは二部構成。一粒で二度美味しいとはまさにこのことです。
ゲームブックも既に第9巻になっていましたから、それなりの変化が必要になるわけです。
この手法は『盗賊都市』でも使われましたが、後半にあたる部分が短すぎに思えて、イマイチ物足りませんでした。
そうした反省を踏まえて、がっつりした後半戦へ突入という形なのかも知れません。
当時、大人気を保つことが出来たのは、こうした工夫が常に行われ、今で言うところのアップデートに余念がなかったのだろうと思います。
因みに何故エルフが『赤速』という日本語名なのかは、原文を見てみないとわかりません。直訳すると『赤き快速』みたいなものだったのでしょうかね。




